TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~ 作:あずももも
「……今日はみんなおとなしいと思ったら、なんか同接ランキングがバグってる……」
【それな】
【アベレージに比べると半分くらいか】
【薄情者め】
【まあ平日だし】
【なんでも数百の配信者がまとめておんなじ企画始めたんだとか】
【すげー】
【ほぼおんなじタイミング、今日の夕方からとか】
【はえー】
【あ、こいつら こはねちゃんのために爆撃して凍結か収益停止に持ち込んだのに、もう新しいチャンネルで同じくらい伸ばしてやがる】
【知ってる? 人間ってね、やっぱり下世話なコンテンツが好きなんだよ】
【需要があるから供給が存在するわけだし、こいつらだけが悪いわけでも……それはそれとしてこはねちゃんをいじめた罪は重い】
【それな】
【人間って愚かだね】
【たとえ嘘だとしてもゴシップは魅力的 古事記は分からんけど絶対古代文明の石版とかに書かれている】
【草】
【ピラミッドの石とかにらくがきされてそう】
【ばかばっか】
【今の俺たちもな】
【文明と物資の蓄積があるだけで数千年程度じゃ進化なんてしないからなぁ俺たちは】
【ていうかみんながいっせいにTSしたとかほざいてるんだが】
【え? じゃあこはねちゃんの仲間?】
【トランスジェンダーとTSは似て非なるものだぞ】
【そういうこと言い出すとホルモン治療や工事じゃどうなのかっていう、もう何度目かの論争になるからやめとこ?】
【そうする……】
【TSっ子はかわいいよね! でもこはねちゃんには誰も敵わないよ!】
【草】
【うわでた】
【一瞬で出てきたよこいつ……】
【こわいよー】
【ま、まぁ、無害だし……】
結局飽きることもなく居座っているらしい、僕をTSっ子呼ばわりしてくるアカウントで盛り上がるコメント欄。
……僕は気にしてないけど、なんだか最近、僕を素で「TSっ子」扱いしてくる人が多いんだよなぁ……本当のことだから良いんだけどさぁ……。
どうせ、仮に僕が本当にTSしたってことを懇切丁寧に説明したって、本気で信じる人なんて居ないだろうしさ。
信じるとしたって半信半疑、せいぜいが「VTuberの設定」どまりだろう。
「そうです! こはねさんは世界で1番です! 心は男性で体は女性……つまりはTSっ子でも世界一です!」
「優花は静かにしていようね」
素早く部屋に入ってきた優花が妹バカっぷりを発揮している。
でも今日はドアをばーんってしなかったのはえらいね。
【草】
【お姉様が壊れた!】
【いつものことでは……?】
【そうか? そうか……】
【こはねちゃんに関してはね……】
【なまじ学校でのお嬢様っぷりが広められてるから余計にね……】
【草】
【おもしれー女のお姉様 こはねちゃんをください】
「わたしが今描こうとしてる漫画のヒロインはこはねちゃんさんです!」
「先生、そういうのはナマモノはNGなんです。あと当の本人の目の前でネーム切らないでください」
「え? でもこはねちゃんさんなら的確なアドバイスくれますし、ポーズとかお願いして目の前でスケッチできますし」
「ん、ひよりちゃん、そこのコマは縦に裂いて時間経過入れるのおすすめ」
「みなみさんとも一緒なら無敵です! 編集さんです!」
「……そう……」
僕のベッドでは、タブレットでおえかきをしている――漫画と言っても少女漫画チックなイラスト、CG集的なものの下書きを作っているひより先生、その横のみなみさんが声を上げる。
【草】
【あ、さっきから静かだと思ってたら】
【ひより先生の躍進がすさまじい】
【なにしろ引きこもって漫画ばっか呼んでるミナミちゃん先生という編集者が着いてるからな!】
「……恋愛もので、本人に『こういうとき僕ならどう反応するのか』って聞かれるんだけど」
「取材は大切です!」
「そしてそれを読者が望む方向へ適度に変化させるアドバイスも大切」
【うむ】
【わかる】
【完璧な布陣だな!】
「………………………………」
……ひより先生の作画能力が爆速になっているのは嬉しいけど、その内容がまさかの「ひより先生×僕」のってのはちょっと……あと先生はそれ、僕に見せてどうしたいって言うんだろう……。
「やっぱりこはねちゃんはひよりちゃんには弱い……だからそこから堕として一線を越えさせて、あとは私たちも参戦。計画は順調ね!」
【悲報・ハルナ姉、こはねちゃんをハイエナのごとく狙っている】
【年頃の女子はね……男には想像もできないくらいに計画的犯行を複数同時並行できるからね……】
【ま、まあ、こはねちゃんもなんだかんだ満更でもないっぽいし……】
【百合ハー配信者、ここに至る】
「うっぷ」
あ、炭酸で思わずげっぷが出そうになって――――
「げろげろ!!!」
――――ばんっ。
「先生、ただむせただけです」
「残念です……」
――――ぱたんっ。
「……優花?」
「こはねさんの配信時間ですから」
「……そう……」
如月先生は……どうしたいんだろう。
ていうか普通に忙しいはずなのにね……。
【悲報・女医さん】
【せ、性癖は……うん……】
【介護班の1人としてバレてからストッパー解除されたやべー人】
【し、幸せそうだから……】
今日も、僕の家にはみんなが来ている。
なんで僕なんかに――ってのは、さすがにもう、それほど卑下はしてないけども。
「言えば、1人にしてもらえるんなら……ま、いっか」
部屋の隅に立て掛けてある全身鏡の中に映る、薄い紫の髪に三つ編みを垂らしているパーカー姿の幼い女の子な僕。
その顔は――――――――しょうがないなって思っている笑い方をしていた。
こはねちゃんをお読みくださり、ありがとうございました。
こはねちゃんのお話は、今度こそおしまいです。
本編から60話ほど、ぎりぎり200話に届かないここで完結となります。
こはねちゃんはこの先も視聴者たちに介護班、そしてヒロインの子たちに囲われながら楽しくアイドルをやっていくでしょう。
捕食のタイミングは……きっと、こはねちゃんが女の子の体と一緒にもうちょっとだけ大きくなってから。
大丈夫です、優花ちゃんたちの努力の結果で……それでも足りなければこっそりと手助けが入り、無事子沢山の未来になるはずです。
去年の夏から今年の春まで、長いお付き合いをありがとうございました。
よろしければ感想やフォロー、拡散をいただけますと嬉しいです。
最後にレッサーパンダこはねちゃんのイラストを投稿しています。
ぜひほっこりして行ってください。