TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~   作:あずももも

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53話 理由がないのに悲しくなった

「最近さ、僕の孤独耐性が弱まっている気がするんだ」

 

【なんか前に似たこと言ってなかった?】

【大丈夫大丈夫  アーカイブで結構似たことをいつも言ってるから】

 

【酒の席の話ってさ、いつもループするよな】

【お年寄りの話ってさ、いつもループするよな】

【子供の話ってさ、いつもループするよな】

 

【草】

【草】

【まぁずっと続けてるとね】

【で、どしたん? 話聞こうか?】

 

「……言っとくけど僕は男だぞ。話聞いてもらっただけでー、とか、そういうのはないぞ? 万が一は、ない」

 

僕はジトッと――今日もまた少し新しい人を入れてもらったけど、まだ耐えられるんだ――画面を見つめる。

 

【かわいい】

【かわいい】

【えー? ほんとぉ?】

【女の子はね、共感が大切だからね】

【わりと一定以上の好感度があれば、そのあとが期待できるからね】

【男子サイテー】

 

【でもこはねちゃんさんの配信でのトーク、そのことごとくで思っきし男らしい話し方してるのよね  口調もそうだけど、話す内容っていうか展開っていうか】

 

【それはそう】

【かわいい声とかわいいアバターとかわいい話題な女の子の配信は好きだけど、たまには普通に男のも聞きたくなるよね】

【分かる】

【必ずしも男女で別れてるわけじゃないけど、傾向としてはそうねぇ】

 

「分かる。人によるけど、人によるけど! ほんっとうに人によるけど、一般的に女子は話が飛び飛びでオチがないんだよなぁ……」

 

優花とかはかなりロジカルに話す――まぁ理系分野得意だし――子だし、僕の灰色に見えて僕的にはそれなりに青かった学生生活でも、数少ない女子の知り合いとかも、僕より普通に頭良くって普通に目的のある会話をする子も居たしなぁ。

 

ていうかクラスの上位層って結構女子だもんね。

少なくとも頭の良さでいえば、僕たち男より全体的に賢いんだもんね。

 

【草】

【予防線張りまくってて草】

【もう注目される配信者になっちゃったからね、大切だからね】

【あー】

【前からそのへんの危機管理は完璧だった気がする】

 

【え? ギャン泣きがなんだって?】

 

【草】

【草】

【もうやめたげてよぉ!】

【泣くぞ! また泣くぞ!】

 

「や、泣かないって……今はメンタル安定してるし」

 

まぁ、ついこないだ玄関先で漏らしてから優花にすがりついてたんだけどね。

 

大丈夫、これは肉体のせいだから。

僕のせいじゃないから。

 

そうだってお医者さんもお姉ちゃんも――じゃない、優花も言ってたんだから。

 

「むふんっ」

 

【かわいい】

【かわいい】

【なんでドヤ顔してるの草】

【\500 おいしいものおたべ】

 

【おじいちゃん……もう物価高で、ものの値段は体感で倍くらいだから、事実上500円玉の価値は250円よ……】

 

「250円あったらそこそこ満喫できない? あ、投げ銭ありがと。500円のうち何割かぽっけないないされるけど、もらった分でおいしいもの食べるね」

 

収益化が通っても、今度はプラットフォーム側――ムーチューブの一方的な規則により、なぜか僕たちはどれだけ稼いだとしても数ヶ月に1回しかお金をもらえないらしい。

 

会社ですら翌月から毎月払ってくれるのに……あと調べたらファンボってのもだいたい月払いなのに、なぜかムーチューブは3ヶ月も溜め込むんだ。

 

しかも途中で理不尽な凍結――その中にはアンチとか炎上での通報連打とか、いまだにぽんこつなAIたちによる謎判定で「うん、これはえっち! 死刑!」ってアカウントを取り上げられると、振り込まれる前のまで没収される理不尽もあるとか。

 

「ふっ……まだまだAIには負けないぞ」

 

少なくともあと数年は、まだまだ人類はやっていけるだろう。

そのあいだに、もっと賢くなりたいところだ。

 

【????】

【?????】

 

【(おい、今の脈絡あったか?)】

【(わからん)】

【(ちょうちょ)】

【(なんか最近のこはねさん……具体的には声バレの前くらいから、ときどきこうなるのよ)】

【(おい誰だ今羽ばたいたの)】

【(草)】

 

【で、孤独がなんだって?】

 

「あ、そうだ。軌道修正ありがと。……いや、ほら。最近はちょっとだけいろいろあったから、ゆ――おっと、メン限でも気持ち悪いやつらが入ってるやつだった――妹が過保護なくらいに世話してくれるからさ」

 

【草】

【急に罵られたんだけど!?】

【でも?】

【興奮する】

【だよな!】

【\50000】

【ひぇっ】

【わかる】

 

【こはねちゃん……せめて一般リスナーとか準介護班のこと、気持ち悪いとか呼ばないであげない……?】

 

「え、だって気持ち悪いもん。このコメントの君も、見てるだけで吐き気してくるし……新入りさんでしょ」

 

うっぷ。

 

僕の横隔膜と胃袋は、常に臨戦態勢なんだ。

 

【は?】

【いや、あの、これでも声バレ当日からなんですけど……】

【草】

【ぶっちゃけ興奮する】

 

【かわいいロリっ子にね、心底気持ち悪がられたいのがおじさんだからね】

 

【えぇ……】

【やっぱこの配信、ちょっとおかしいのが集まってきてる……】

【ちょっとか?】

【こはねちゃん自身が軽ーい下ネタとか性癖ネタに寛容だからねぇ……】

 

「下ネタとか直接的なワードはやめてね。――先生」

 

【ひより「はい……」】

 

「勉強は?」

 

【ひより「今、問題集です……」】

 

「分かってますね?」

 

【ひより「はい……」】

 

「お勉強会してるんです、嘘ついたらバレますよ」

 

【ひより「はい……知ってます……」】

 

今までそういうネタにも乗っかったりしてきたし、なんなら僕自身もお酒が入ったら結構ノリノリだったけども――ひより先生が居るって、あんなに……今の僕並みに、いや、それ以上に儚い存在が居るって知っちゃった以上、今後は適度にセーブしないといけない。

 

【草】

【草】

【あいかわらずママにだけめっちゃ厳しいこはねちゃん】

【もしかして:こはねちゃんがママ……いや、ないな】

【ないな】

【ないね】

 

【しいて言うとしたら……3姉妹の真ん中? お姉ちゃんには敵わないしお姉ちゃん頼りだけど、普段は妹へお姉ちゃん面してドヤ顔してる感じの  普段お姉ちゃんにべったりだからこそ、離れてるときはとたんにお姉ちゃんぶりたくなる感じの】

 

【おお】

【それだ】

【解像度高い】

【そうか……ママではなく姉妹……この路線で行こう】

【何勝手に決めてるんだよ草】

【草】

 

「ひより先生が妹は、ねぇ……いろいろと迷惑かかるっていうか……ん?」

 

ぷるるるる。

 

発信元は――

 

「……なんですか先生。出ませんよ。言い訳は直接に聞きます」

 

【草】

【草】

【速報・こはねちゃんとひより先生、連絡先交換してる】

【!!!!】

【感動した】

【これが百合か……】

【いいね】

 

【\5000】

【こういうので良いんだよ】

【分かる】

【仲良いママとVも良いよね】

【まぁ普段は一方的に叱る間柄だけどな】

【草】

 

【愛がなければ勉強とかSNSとの距離の取り方とか個人情報の大切さとか、事あるごとに配信で言い含めないから……】

 

【それはそう】

【かなりしつこいくらいに言うもんな】

【「好き」の反対は「無関心」  「嫌い」じゃなんだよなぁ】

 

【熱烈なアンチ≒熱烈なファンだしな】

【呪いを受けて反転しちゃっただけだもんね】

【あー】

【好きすぎて憎くなる  良く言ったものだよなぁ】

 

「そうそう、本気で興味なければ目にも耳にも入らないから。学生時代の僕ろろろろろろろ」

 

びしゃしゃしゃしゃ。

 

しまった、急に来たから用意し損ねた……あーあ、買ってもらったばっかりの服が。

 

「おろろろろろろ」

 

今回のは僕の深層心理さんあたりがトラウマを引き起こしただけらしく、僕の意識としてはへっちゃらなんだけど、体が勝手にえずくしお昼ごはんの中身を吐くし、涙もにじんで苦しくなっている。

 

「う゛う……けへっ、けへっ……」

 

【あっ】

【あっ】

【こはねちゃん!?】

 

【介護班!】

 

【御姉様へは通報済みです  御在宅ですので問題ありません】

 

【助かる】

【マジ助かるわ】

【ほんそれ】

 

……とっとっとっとっ――ばんっ。

 

「こはねさん!?」

 

「だいじょ――ろろろろ」

 

べしゃっ。

 

……どうやら過去の僕は、意識していないところでトラウマを抱えていたらしい。

 

けど、そこまでかなぁ?

 

だって僕は特段に学校生活で、

 

――ぱちっ。

 

「?」

 

何かが、僕の中で切り替わる。

急に涙がにじんできて、唇がへの字に曲がる。

 

悲しくなって、悲しくなって、怖くなって――

 

「……あ゛ぁーん、おねえち゛ゃあぁぁーん……」

 

「こ、こはねさん!? 落ち着いて……」

 

こわい。

 

いやだ。

 

学校は怖いんだ。

友達は怖いんだ。

 

友達じゃない人たちは「こはね」のことを――――――――

 

「あ゛――――――――!!!」

 

【!?】

【!?】

【どうした急に】

【えっ……】

 

【まーたギャン泣きしてるよこはねちゃん……】

【これはかわいくてかよわいいきもの】

【介護班たちが全力を出した相手だからなぁ】

【草】

 

【でも今回は結構ガチ泣きなんじゃ……】

【安定してるとか嘘じゃん……こはねちゃん……】

 

「あーん、あーん……」

「よ、よしよし……ひとまずマイクだけ落としますね」

 

ぎゅっ。

 

僕はゆうかお姉ちゃんに抱きつく。

 

小さいころからいつも、泣いたらすぐに助けてくれてたお姉ちゃん。

 

でも、もう――

 

「あ゛――!!!!」

 

「だ、大丈夫ですからねー……」

 

【お姉ちゃんのナイスプレー】

【ミュートにはなったけど、今も泣いてると思うと……】

【なかないで】

【しなしなしちゃった】

【最初のギャン泣きまでは良かったんだが】

【ああ、今日は不安定な日でマジ泣きになっちゃったか】

 

【しかし難儀だよなぁ……泣く前に嘔吐がいきなりくるレベルのトラウマとかパニック持ちだろ? なのに普段はあんなに落ち着いて理知的な面もあるから、余計に……自称成人男性なメンタルだし、余計に来るんじゃ……】

 

【だよなぁ】

【自称で草】

【お、俺は信じてるから……設定としては】

【Vは細かい設定があるほど良いからね】

【草】

 

【あ、カメラの前から退いたか】

【ベッドでゆっくりあやしてもらって】

 

【\2000】

【\1000】

【\3500】

 

【やさしい】

【こはねちゃんには、幸せになってほしいからな】

 

【リアルの性別と年齢はともかく、このメンタル具合に定期的になるんなら……まぁ、普通の生活は難しいよなぁ……】

 

【普通の会社はね、「普通」に365日のスケジュールを「普通」に働くことが大前提だからね……】

【調子良いときだけ働くってのは……理解と制度と、なにより会社の体力がないとだからなぁ】

【学校も似たようなもんだよなぁ】

【学習指導要領からして、通年を休みなく出席することが大前提だからね】

 

【こはねちゃんみたいな子が通いやすかったり、こはねちゃんみたいな人が働きやすい会社とか仕事  探せばあるけど、それでもねぇ】

 

【自分の能力が、かなり飛び抜けるラインまで行かないと難しい社会だからねぇ……】

 




今年もお付き合いくださり、ありがとうございました。
来年もこはねちゃんやハルちゃん、柚希くんやジュリオンくんをよろしくお願いします。
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