TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~ 作:あずももも
「……やっぱ、入らないとダメだよなぁ……」
――僕は、今、風呂場に来ている。
脱衣所。
服を脱ぐところ。
そうだ。
ここは、服を脱がなきゃいけない空間だ。
そう、僕自身に言い聞かせる。
罪悪感とか羞恥心とかのいろいろを、「これは必要なことだから」って大人の論理 で封じ込める。
大人は都合が良いんだ。
小賢しいから生き残れるんだ。
「鍵は……閉めた。スマホもOK。さすがの優花も、風呂とトイレまでは鍵NGとは言ってない……」
『ヒートショックは危険なんです』って前にぼそっと言ってたことがあるから、冬場は分からないけども……今は大丈夫なはずだ。
どきどき、ばくばく。
心臓が喉から出そう――そんな表現はマンガのものかと思っていたけども、実際になってみると本当にうっかり出てしまいそうだ。
ただでさえ吹けば飛ぶような心臓でも、肉体ほどには縮んでいないはずなのにね。
――脱衣所の洗面台、その上の鏡には上気してこわばった顔をした女の子が映っている。
ただし背が低すぎるために、首から上だけだけども。
「……今日くらい風呂は入らなくても……いやいや、1日でも風呂キャンとか僕的にはないし……体力さえあるんなら1日2回でも3回でも入りたいくらいだし……」
僕は、男のくせにお風呂が好きだ。
引きこもりニートを――部屋からなるべく出ない生活をしていても、お風呂だけは毎日掃除して入ってきた。
とにかく体が汚れているのがとてつもなく嫌なんだ。
一時期はトイレに行くたびにお風呂へ直行していたほどだ。
けども洗いすぎるのも良くないらしいから、しょうがなく我慢しているだけ。
例外は熱を出した――いや、そんなときでも湯船に浸かってきた。
それくらい好きなんだ。
そんな僕だからこそ、「たかが女の子になって恥ずかしい」くらいでお風呂に入らないとかいう選択肢は存在しない。
「……大丈夫、やらしい気持ちじゃない……それにほら、さっき漏らして腰から下が濡れちゃったし……」
僕は――服の下の女体を思い浮かべつつ、同時にかすかに上ってくる、甘いし香ばしいけどもそれでも排泄物には変わりのない臭いを吸い、諦める。
「漏らしさえしなければ。いや、どうせ髪の毛だって……こんなに長いんだし……」
そうだ、優花が――兄離れできなかった優花が、中学に入ってもしばらくは僕の風呂にすっぱだかで突撃してきてたからしょうがなく髪の毛と背中を洗ってやってた、あのころを思い浮かべるんだ。
「……ここに長く居すぎると、具合が悪くなって倒れてるかと勘違いして、優花がドアを壊してでも。時間的には寝てるはずだけど、優花、妙なところで勘が鋭いから……えいっ」
僕は、男だ。
男はこういうときにぐじぐじしない。
引きこもりニートはぐじぐじの極致だけど、それはしょうがないことだから脇にのけといて。
――たかが人間関係で何回かやらかして引きこもって勉強と労働を放棄しているのはともかく、今はちっぽけなプライドこそが原動力。
そうして僕は、勢いよくシャツを――がばっと剥ぎ取った。
「………………………………」
ふぅ――と、ひと息。
そして視線を戻す。
――鏡には、髪の毛がぼさぼさになったものの、変わらずに美少女な女の子の顔。
そして下には――胸が、
「………………………………………………………………」
足先からふとももまでは白くてすべすべで細くて、そのくせに腰は気持ち横に広がっていて。
股から下にはぶらぶらとしていた邪魔な物体も、部屋に増殖するのを嫌って定期的に剃っていた黒々としたもの――全身脱毛へ行くのは他人とコミュニケーションをする上全裸を見られるからNG――も存在せず、白くて丸い感じのかすかな膨らみ。
その上にもかすかに膨らんだ下腹とおへそ――そして、左右にわずかに、けれども確実に「男」のものではなく「女の子」の胸と、桜色の先端があって。
――男だった昨日まではまったく意識していなかったけども、たぶん色は焦げ茶色だったのが肌と同じく色素の薄いピンク色に変化していて、男だったときとは明らかに違って。
薄い薄いお椀状の脂肪がふよんと、確かに膨らんでいて――――
僕は無理やりに、意思で目を閉じる。
男としてのスケベ心は、意思でかなりコントロールできるんだ。
男だから生殖本能として脳みそまで女体を求めるのは仕方ないけど、優花相手と同じく興奮しちゃいけない対象には興奮しないように努めるんだ。
「……いやいや、視界に入るのは仕方ないけども、まじまじと見るのは犯罪……そう、これは子供だった優花のお世話、あるいは緊急事態で仕方なくするだけの、見知らぬ少女の介護……うん、落ち着こう……そもそも興奮すべきブツは天に召されているし……」
無くなった悲しいブツのことを想いながらぶつぶつと、沸騰しそうな頭を無理やりに誘導。
シャツを置いてタオルを手に取り――体を、決していやらしくならないように気をつけながら流して湯船へ。
……どうしても股周りをちゃんと流さないといけなかったのが、なんだか無性に恥ずかしいのを根性で抑えて。
「……ふぅ」
――ちゃぷり。
普段よりもすっごく高くなった浴槽を――恥じらいもなく脚をおっぴろげでまたぎ、そのままおしりまで沈もうとしたら口元まで来ちゃったお湯に慌て、腰を浮かせて腕でなんとか肩までで抑えてから……ため息。
「体……やっぱり、小さくなってるな」
首まで浸かるのが好きだからと、お風呂を入れるときに湯量を増やしていたら「節約してください」と優花に怒られて、泣く泣く戻した記憶。
……あれはたぶん、単純に――男の中で平均くらいの僕の座高で首まで浸かるお湯の高さにすると、きっと優花の背丈じゃ高すぎたんだろうな。
今の僕で溺れそうだったんだ、優花だって困ってたんだろう。
毎回お風呂のたびにお湯を少し抜く手間もあったんだろう。
ああ、他人への配慮が足りない。
自分のことしか考えていなかった。
普通の男として生まれて普通の男として生きてきて――その「普通の男」ってのがどれだけ恵まれてるかなんて考えたこともなかったから、今になってようやく知ったんだ。
「普通の男」すら、失ってから。
……そんなことも分からなかった僕と、そんな僕へ恥をかかせないようにって別の言い訳で改善させた優花とは、もう女神となめくじくらいの差ができあがっている。
「優花の方が、よっぽどしっかりしてるよな。当然か、大学だって模試の結果も、僕の入ってたところも余裕な成績だって言うし……そもそもの出来が違うからしょうがないけどさ」
ドア越しの、ささいな会話。
――ささいだけど、その日その日の報告を聞いていたら妹がどんな生活をしているのかってのが分かるんだ。
そうだよな、会話は大切なんだ。
家族だから、なおのこと――なのに、僕は。
お湯の中でクラゲみたいに広がってゆらゆらと揺れる薄紫色の毛先を眺めながら――その下の、水面以下の光の屈折で見えにくくなって安心する股と脚を眺めながら、僕は思う。
――当時の僕は若かったから、大学でゼミに入らないなんて選択肢は取れなかった。
後から思えば、うちの大学のうちの学科には……ゼミに入らないと卒業できないって決まりはなかったんだ。
ただただゼミ――大学生なら誰でも入るものだって思い込んでいたゼミナールに入り、教授に気に入られ、卒業論文を書かなきゃいけないんだって思い込んでいただけ。
だから、いざ入ろうと思っていろいろ探しても――良いなって思ったところほど人気で、面接にはたくさん人が居すぎてどこもお断りで。
そんな中、面接でがくがくしてた僕でもなんとか滑り込めたゼミでやらかして。
ゼミへ、そして大学自体へ――気まずいからと行かなくなった日々。
数ヶ月の引きこもり。
単位が足りなくて留年。
そして退学。
ニート。
引きこもり。
「……絶対に無理ってわけじゃ、なかったんだ。僕の失敗も、気にしないで良いって教授も先輩たちも……同級生も、言ってくれてた。成績は充分だし、がんばってくれればそれで良いんだってさ。数合わせだったとしても、こんな僕でも居て良いって言ってくれて。専攻分野も全然違うから、ゼミでの勉強に着いてけなくっても別に良いからって……そもそも僕なんかを、たとえ人数合わせでも入れてくれた聖人のごとき人たちだったもんな」
それは、デビューに失敗した高校も同じ。
無理をして無理な学校へ入って、無理な性格設定で無理なコミュニケーションを取ろうとしてできあがったのが、対応に困る人間。
「ただのコミュ障」。
「害はないけど変なやつ」。
恐らくはその程度の認識だったはずだ。
同級生たちは、一応普通に接してくれてはいた。
それを気まずく思い、学校へ行く途中に吐くまでになったのは、ただ僕の自意識過剰。
他人は、そもそも僕が存在したことすら忘れている。
分かってはいた。
分かっては、いたんだ。
「……でも」
そうだ。
自意識が強すぎて、引っ込みがつかない。
僕自身がかわいすぎて、周囲の人のことを誰1人認識していなかった。
ただ、それだけ。
ただそれだけの理由で、僕は高校3年間と大学の後半2年を――ついでで前半の2年も無駄に投げ捨て、ほんの少し気を強く持って「なんとか卒業させてください」ってがんばって――がんばりきったら「こんなドジしちゃってさぁ」って笑い飛ばせていたら。
そうしたら、今ごろは。
「……今も、だもんな。今も、こうして……父さんと母さんにも、優花にも迷惑と心配をかけて」
ちゃぷ。
小さな女の子になってしまっている、僕の白い肢体が嫌でも目に入ってくる。
「……とうとう、息子でも兄でも、男でもなくなった。……いや、家族でも……か」
もし、世界が正常で。
もし、この肉体も正常で。
ただ僕っていう個人の肉体だけが――今認識している事実の通りに、原因不明の理由で変わっただけだとしたら。
「TSしただけ」だと、したら。
「……優花と顔を合わせちゃったら、最後か……」
大学中退引きこもりニートの部屋――世間一般的には犯罪者予備軍どころか実質犯罪者と断定される身分の男、その部屋の中で発見された少女。
――たとえその子がどんな擁護をしようとも、その部屋の主は犯罪者として糾弾される。
それは――その男の家族だったからこそ、そんな男を養うほどの優しい人たちだからこそ責任を感じるはずの、僕の家族――妹の優花もだ。
失望、贖罪、絶望――軽蔑。
この2年のあいだ、とうとうに1回も――家族のグループチャットで送ってくる3人の写真以外では見ることのなかった顔が、それに染まる。
「……分かってる。これもまた、後延ばしにしてるだけだ。発覚を遅らせたいってだけの、僕の弱さだ」
ちゃぷり。
片脚を水面から出してみる。
――どう見ても普段の靴では歩けない、小さすぎる足先。
「……分かってても、できないんだよ。元から、人付き合いは苦手で……友達だって、冬休みくらいになってようやく何人か仲良くなれるくらいだったんだ」
僕たち手遅れな存在は、夢を見る。
ある日突然に世界が滅びるとか、そうでなくても家が木っ端みじんになって追い出されるとか、それとも暴走したトラックの犠牲になって異世界に飛ばされるとか。
どんな理由でもいいんだ。
どんな理由でもいいから――僕たちの、つまらなすぎるプライドが通用しない事態に放り出され、仕方なく動き始めなきゃいけないっていう、理由が。
そうすれば――僕だって、何かはできる。
今からでも、たとえ遅すぎてもやり直せる。
そう、思いたいんだ。
「……女の子になっても、中身は変わらない。そんなもんかなぁ」
ぽつりと呟いた声は、むかつくくらいにかわいくって――落ち込んだ気持ちを、ちょっとだけ慰めてくれた。
◇
「その気があるのなら、今からでもやり直せる。肉体的な病気もなにもない、若者なんだから。……そう言われたって、無理なのにな」
残念ながら、世界は平和だ。
少なくとも、僕たちの周りは。
だから町も家も平和で、僕たちのしょぼい城は健在で――勝手に兵糧攻めを耐えて、居もしない敵と戦い続けている。
昨日も今日も、明日も――遙か先も。
「それが、ずっとは無理だってのも……分かってる。……でも……」
――ぴちゃん。
「うぴゃっ!?」
びくん。
浴室の天井から、雫が垂れる。
「ぐす……」
それがなぜか絶妙に僕の肩に落ちてきて、変な声が出ると同時に泣きたくなってきた。
しょうがないんだ、この体はなぜか涙もろいんだ。
――ざばっ。
「家族としての好意に甘えてぐうたら暮らしてきてるのに、僕の望む形で連れ出してほしい――なんてのは、都合が良すぎだもんな」
ふともものかなり後ろ――ほとんどおしりまでが浴槽のヘリに擦れる感覚を覚えつつ湯船から脱し、しゃーっとシャワーからお湯を出す。
「……お酒が切れるといつもこうだ。けど、お医者さんが出してくれた精神薬をいつも飲むようになっちゃうと、もう後戻りできない気がするから」
顔に温かい水滴を浴びつつ、シャンプーを手に取って髪の毛へ塗りたくる。
………………………………。
「……あ。全然足りない……そりゃそうだ、男の髪から女の子の、それもすっごく長いんだから……」
結局5プッシュくらいしてあわあわしてようやくに髪の毛を流しきり――普段のように頭頂部から後頭部へ、そこからは横髪に後ろの髪の毛と、毛にシャンプーをすり込ませてあわあわさせる作業に没頭した。
なんだかすっごくきしきししたけどもとりあえずそのままにして、体も軽くあわあわして。
「……さすがに、まだここを洗う勇気は……うん……」
……さっき漏らしてぐしょぐしょになってた部分を、男と違うところ以外をなんとか洗ったけども。
動揺して、両手のひらで洗ったけども。
腰から下のラインが――間違いなく僕自身の肉体の感覚だけれども確実に土台から作りの違う、腰に向かって広がる形と、その肉感。
「……ぎ、ぎりぎりまでちゃんと洗えば……うん、そもそもお湯に浸かってるから殺菌とまでは行かなくても、ほぼ綺麗になってるはずだし……」
――そうして慎重に避けて洗ったからこそ、なおさらに男と違う造りが手のひらから分かっちゃって気まずくって恥ずかしくって。
なによりも、やけにぞわぞわとする敏感になった肌の感覚が――僕の全身を、ぞくぞくとさせた。
◇
「……長い」
ぶわーっ。
もう5分はしてるだろう、ドライヤー。
まだ半分も乾いていない髪の毛と、それを乾かしているうちに肩と腕がつりそうなほどに疲れてきているせいで――まだすっぱだかだったけども、僕はもう女の子の裸体に目が慣れてしまっていた。
「……おっぱいが目に入るよりもめんどくささの方が……か。まぁ当然か、興奮すべき物体が存在しないんだからな」
視線を落とすと、ほんのりと膨らんでいる桜色の、おちょこをひっくり返して貼りつけた感じの双丘。
その先にうっすらと桃色に染まる肌を伝う雫――その下の、何もない股。
「男として興奮できないのが、こんな子供に興奮しないで安心してるのに繋がるけど……悲しい……安心できるのに悲しくって複雑……ふぐぅ……!」
TS――その中でも、男から女へ。
その事実が、感覚でもはっきりと自覚できてしまった喪失感で胃液がこみ上げる。
「うぷっ……大学生ですらなくなって、高卒の資格しかなくなったって理解したとき以来だな、これ……」
ぶぉぉぉ。
乾かない髪の毛と格闘しながら、僕はまたひとつ要らないトラウマを植え付けられた。
……ちなみにドライヤーはその後すぐに諦めた。
そもそも長くし過ぎたら――起きていたら優花に変だと思われるし。
とりあえず今は夏だし、ほっとけば乾くだろうってことで。
けども、お風呂ってのはやっぱりいい。
脱衣所から気配探知と気配消失を同時並行しながらなんとか部屋に戻った僕は――ちょっとだけ、元気になったから。
それでも僕は、平均身長で中1の女子。
遺伝子的に、どう見ても元の僕どころかこの家に居座る権利のない存在。
しかもシャツ1枚、はいてない、お風呂の熱が冷めたらすーすーする。
けども、僕は僕だ。
「……とりあえずお酒飲んでゲームでもして忘れよう……」
僕は、定期的に汚くなる――空き瓶やゴミ袋で足の踏み場がなくなる部屋の床をかき分けてできている動線を伝い、パソコンへ向かう。
僕が唯一拠り所としている世界へと。
◇
「………………………………」
……もにゅ。
「………………………………」
……もにゅもにゅ。
誓って言う。
最初は無意識だった。
途中からも、半分以上は仕方がなくって……もう半分は、男としての本能だった。
だって、女の子の胸だよ?
男には存在しない、おっぱいだよ?
興味――なかったら男じゃないし、完全に女の子でしょ?
とはいえ、
「……なんでぴりぴり痒いんだこれ……虫さされみたい……」
シャツの下から――猫背になってると目立たないけども普通にしてるとかすかに主張する、ふたつの丘。
その先端から――不定期に、ぴりぴりじくじくとした謎の感覚。
顔とか体がなぜか急に痒くなり、無視しても結局掻くまで止まらない、あの謎の現象が――よりにもよってセンシティブ過ぎる場所に、ピンポイントに起きている。
かゆい。
痛がゆい。
田舎に行ったときの虫さされ並みにしつこくてかゆすぎるんだ。
「ちゃんと洗わなかったから……? いや、でも、下はともかく上は汚くなってないはずだし……んっ」
ぴりっ。
指先で、布越しで軽くつねると体がぴくっとなる。
それはまるで、虫さされを爪の先でいじめるような痛がゆい、あの感覚。
それと同じくして、軽い刺激を与えるとしばらく意識に上がることもなくなる。
「……なになに? 『成長期の女の子は、ホルモンバランスの関係で……刺激を減らすために、ブラジャーの着用を』。……まじかぁ……」
――どうやらこれは、虫さされと同じく、刺激は厳禁だったらしい。
まさか、シャツの擦れる刺激だけでこんなにもぴりぴりするだなんて、知らなかった。
そりゃあ女子は小学校のあいだにブラジャーとか付け出すよな。
優花だって小5くらいに……いや、だって、洗濯物畳むの僕の仕事だったから毎日のように触るしかないじゃん……今だって畳まされてるからしょうがないじゃん……。
で、これは虫さされと同じように、なるべく触らないようにして忘れるようにしさえすれば大丈夫らしい。
あとは、
「『どうしても我慢できない場合には、人の見ていない場所で』……いやいやダメダメ、そういうのじゃない。よく分かんないけど、そういうのは良くないんだ」
とりあえずとして病気とかでもないらしいし、虫さされみたいに軽くぎゅっとしとけば引いてくれるから大丈夫。
……でも、最近の小学校女子用の情報って、ずいぶん進んでるんだな。
なんかもう、かつての僕が中学の終わりとか高校になって知ったようなことまで平気で書かれてて、ぎょっとしちゃったよ。
まぁ女子は……その、ほら……ね?
平均的にかなり早熟で、しかもおませさんだから年上の男に憧れがちで……そういうことに手を出すっていうか出されがちで、そうしてそういう知識がないと大変なことになりがちだからね……うん、僕たち男子が小中学生なんてマンガ読んでゲームしてただけなのにね……。
そんな感想を持ちつつ、僕は通販サイトを開く。
……しょうがない、買っとくか……ブラジャー。
とりあえずでジュニアブラってのを買っとけば……とてつもなく罪悪感があるけど、この痒みを治すためにはシャツと擦れないようにするしかないらしいし……うん、しょうがないよな。
あ、調べたらああいうのがあったな、ブラジャーのブラの部分だけが縫い付けられてるシャツってのが。
うん、あれなら抵抗も薄い気がする。
あ、優花も使ってるみたいなブラトップってやつ……これが良いな。
………………………………。
「んっ……」
……けど、虫さされよりもすっごく痒いし、かいたら気持ちいいけど……女の子ってのは感覚が鋭いらしいし、こういうもんなんだろう、うん。
そういや優花も一時期、僕に触られるたびにこんな感じの声出してたし、やたらと体をくねくねと擦りつけてきてたし……きっと敏感になって痒くなってただけなんだろう。
ちょうどお風呂に一緒に入らなくなってから少しして止めてくれたし、きっと対処法を母さんにでも聞いたんだろう、うん。