TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~   作:あずももも

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83話 【速報・こはねちゃん、お外に出る】1

「しぬぅ……世界の光に包まれて、しぬぅ……」

 

「こはねさん、まだ着いたばかりですよ。駐車場なんですからまぶしくはないでしょう?」

「今ならまだ車に引き返せるぅ……」

 

【草】

【草】

【悲報・配信開始30秒未満で帰りたがるこはねちゃん】

【えぇ……】

【よわよわすぎる】

 

【なにこのかわいいいきもの】

 

【こはねちゃんっていうの かよわきかわいいいきものだよ】

【絶滅危惧種のレッサーパンダでもあるよ】

【だいじにしてあげようね】

【はーい】

【草】

 

僕は優花に捕まり、必死の顔を演技してふるふると抵抗する。

 

「……!!」

 

優花は――怖い顔をしている。

ひょっとして、僕が情けなさ過ぎて見限ろうとしてるんじゃ……。

 

「こはねちゃんさん、行きますよ!」

 

そんな僕の腕を取るひより先生。

 

「せんせぇ……」

「……ま、負けませんっ!」

 

何に負けるのかさっぱりだけども、気分が高まるとすぐ顔が赤くなる彼女は、真っ青になっている優花とは対称的な印象。

 

……どちらにしても、僕を許してくれそうではない。

 

僕はもうだめだ。

 

「あぁぁ……」

 

【よわよわすぎる声が聞こえる】

【奇遇だな……俺たちもだよ……】

【こはねちゃん……さっきまではわりと乗り気だったのに】

 

【まぁマジモンの人見知り、トラウマ経由で発症した引きこもり生活だったんだ、ストレスはあるだろうな】

【しかも実質的に何年も引きこもり状態でなぁ】

 

【レッサーパンダ?】

【待て……レッサーパンダこはねちゃんになったら逆にお着替えも楽しんでしまうぞ】

【幼児退行で人見知り発症前?に戻るっぽいもんなぁ】

 

【それはまずい】

【かわいそうな鳴き声を聞いてるのが楽しいんだ】

【わかる】

 

【\50000】

 

【草】

【ひでぇ】

 

【ひどいけど、この鳴き声を聞いてると、俺、男なのに胸とお腹がきゅんってなる……この気持ちは一体?】

 

【愛だよ】

【父性だよ】

【意外と子煩悩なお父さんって多いからね】

 

【男の子でも女の子でも撫で回して嫌われるレベルで溺愛するお父さんって居るよなぁ】

【大きくなってきた子供たちにおふろ拒否られてマジ落ち込みするまでがセット】

 

【うちのお父さん、そんな気配なかったのにペット飼ったとたんに没交渉だったはずの娘の私にまで突如として豹変したことあるわ】

【あるある】

【愛でるスイッチって男女関係なくあるよな、やっぱ】

 

【やっぱ人間に眠ってる保護欲を刺激されるかどうかなんだろうなぁ】

【どんな悪い奴でも動物には優しかったりするしな】

【だってレッサーパンダだもん、鳴き声聞いちゃったらきゅんきゅん来ちゃうよ】

【草】

【ああ、かよわきかわいいいきもの……】

 

「先の温泉施設は入り口が1か所でしたし、なによりも『お湯の入れ替え中』という――申し訳ないですが訪れた方にも諦めたり待ってもらったりできる明確な理由がつけられた都合上、充分な時間を貸し切れました。けれど今回は、駅前の商業施設――エスカレーター、エレベーター、階段、非常階段と出入り口は10以上あり、一応で階下のそれぞれには警備員を立たせてもらいましたが……強引な客も居るでしょうし、偶然で上がってきてしまう客も居るはずです」

 

「つまり1時間の限度とは言ってもなるべく早くに……ということですね」

「そういうことです、こはねちゃんさん!!」

 

「むぇぇ……」

 

【草】

【なるほど】

【鳴き声が哀れみを誘う】

【かわいそうがかわいい】

【わかる】

 

【お、進み出した】

【カメラ、かなりボカシがきついけど、なんとなく状況が分かる範囲で配信してくれてるのほんとありがたい】

【声だけでも満足だったけどさらに満足】

【\5000】

 

【投げ銭は待とう……こはねちゃんに着せたい服へそれぞれ投げることで擬似的に買ってあげられる配信なんだ、今日は】

 

【なにそれ最高】

【私が……こはねちゃんにおべべを着せてあげられる……?】

【介護班限定でお店のリスト共有助かる】

【いいなー】

【介護班以外も見られてるだけで嬉しい】

 

【コメントできない勢はミラー配信で泣いてろ】

【草】

【ひでぇ】

【こはねちゃんがね、1日にMAXで10人しかコメント欄に受け入れられないからね……ギャン泣き配信の連中ですらまだだからな……】

【それならしょうがない】

 

僕は両手を引かれ、さらには後ろからそっと如月先生に背中を押され。

 

まるで、かの有名な両手でドナドナされる宇宙人――それとも動物園の飼育員たちに誘導されるレッサーパンダ。

 

そんな心持ちで、地下なはずなのにまぶしい駐車場からエレベーターへと向かった。

 

 

 

 

「うぷ……」

 

「!!!!!」

 

がささっ。

 

僕の口元へ、ビニール袋が用意される。

……やめて……用意されると余計吐きたくなっちゃうから……。

 

「……大丈夫ですか?」

 

「つい数分前まで大量の見知らぬ人たちが居た気配で酔ったぁ……」

「そんなものが……?」

 

うん、なんだか分かるんだよ……こう、もやっと「ちょっと前までそこに居た人の気配が、まるでお化けみたいに」感じられて……いや、怖くはないし幻覚とは分かってるから良いけどさぁ……。

 

「お店の人たち、今は介護班さんたちですよね……?」

「え、ええ……ですが確かに、ネット越しの相手すらげろげろの吐き気で判定できるこはねさんなら、あるいは……」

 

【草】

【すげぇ】

【なにその特殊能力】

【ただでさえすごかったのに、この幼女、とうとう数分前にそこに人が居たかどうかすら識別可能だぞ】

 

【捜査とかに普通にお役立ちしそう】

【警察犬ならぬ警察レッサーパンダか】

【音の響きからして役に立たなそう……】

【草】

【ますこっととしてもかわいくてお得だね!】

 

お店は――広い。

 

ぎらぎらと輝く真っ白な電灯に真っ白な床、遠く響く店内アナウンス。

 

「……こういう場所に来たの……もう何年ぶりかなぁ……」

 

「家族で出かけたのも、最後は……ですものね」

「うん……僕が嫌がるようになったから……」

 

【あー】

【ぶわっ】

【かなしい】

【なかないで】

 

「大丈夫です! 今日から少しずつ慣らせば良いんです!」

 

「先生がまぶしい……」

 

先生が、きらきらしている。

 

「? 私、今日は特におしゃれしてませんよ? こはねちゃんさんを愛でる日ですもん」

「そういうとこがまぶしい……」

 

物理的にではなく――陰と陽の陽、純粋無垢、純白――生物として、魂としてのまぶしさに、僕は現在進行形で焼かれている。

 

【わかる】

【わかる】

【ひよりママって、ちょっとだけ人見知りなところはあっても、こはねちゃんと比べるとねぇ】

【20代のおじさんにもなるとね、学生ってだけで輝いて見えるんだ……】

【そう……女も20代なら、うっすら分かるの……あの、無邪気に楽しめていた日々には二度と戻れないんだって……】

 

【      】

【      】

【      】

【      】

 

【草】

【視聴者たちがこはねちゃんの流れ弾を受けている】

【うん……そもそもとして今居るメンバーの大半が、こはねちゃんの発言に共感してたからこそ見てた古参だからねぇ……】

【ひよりママ?? 無邪気に全体攻撃はやめてくださいね?? 俺たちが死ぬぞ】

【草】

【無茶言うなよ草】

 

「げろげろ……」

 

「――は大丈夫そうですので、チェック済みの店舗へ急ぎましょうか、こはねさん」

「うぅ……」

 

「直接着てもらう服は限定してますから! 体の前に当てるのは疲れませんよね!」

「たぶんつかれるぅ……」

 

【草】

【悲報・女子たち、着せ替えを楽しみにしすぎ】

【気持ちは分かる、すごく分かる】

【こはねちゃんもげろげろの気配はないし……大丈夫だな!】

【まぁこれくらい強引じゃないと、こはねちゃん、お家出ないからねぇ】

 

 

 

 

「まずは私が普段おこづかいで買ってる、お安いとこのです!」

「ファストファッションも組み合わせと着こなし次第ですからね」

 

「ゆうかが外国語話してるぅ……」

 

「……こはねさん? 肉体が女子である以上、いずれ覚えませんとご自分で服を購入できませんよ?」

「ネット通販で良いのにぃ……」

 

【よくない】

【よくない】

【かわいいのにそれはもったいない】

【かわいそうだけど譲れない】

【悲報・こはねちゃん、味方が居ない】

【かわいいからしょうがないね】

 

かつての僕もときどき着て必要な服を買っていたチェーンのお店――のはずなのに、やけにピンクとか赤とかが多いわ普通にブラジャーとかぱんつが見せびらかされてるわ――な、売り場。

 

僕の敵地。

そこで僕は身ぐるみを剥がれ、囚人服を着せられたんだ。

 

「こはねさん、どう……!! なんでも似合ってかわいいですー!」

「はぁ……良いですね……この年ごろの背丈だと、まだ体型によって着られない服や似合わない服がないだなんて……」

 

【わかる】

【すごくよく分かる】

【女はどうしてもね……】

【あー】

【男は背丈と体格程度だけど、女性はなぁ】

 

「視聴者の皆様には、今、こはねさんが着ている服の組み合わせを送っています……あら、有志の方がこちらのURLに載せてくれているみたいですね。こはねさんの立ち絵を使って雰囲気までぴったり」

 

【助かる】

【おお】

【これは有能】

【すばらしい……】

【まさか、リアルタイムで楽しめるだなんて……】

 

【\7520】

 

【あ、ずるっ】

【もう買われちゃった……】

【大丈夫大丈夫  ムーチューブに何割か取られるから追加で \7520】

【あ、ずるっ】

【草】

【これは早い者勝ちになりそうだぞ……!】

 

【なんかもう孫に服を買い与えるのを競う構図になってるような】

【ペットへの服をみんなで吟味してるんだよ】

【当のお孫さんorペット本人が嫌そうな顔してるのまでそっくりだね!】

【草】

 

【ほ、ほどほどにね……? こはねちゃん、こういうの苦手だし……】

【お医者さん監修だから大丈夫でしょ】

【そのお医者さんもノリノリだからダメなんじゃ?】

【そうだったわ  こはねちゃん、ガンバ】

【ひでぇ】

 

【かわいいは、罪……こはねちゃん、受け入れようね……】

 

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