教室に入った彼女は自己紹介を済ませると指定された席にはいかずこっちに向かってきた。
俺の前に来ると、
「御久し振りでございます。
このたびはご挨拶が遅れ申し訳ございませんでした。」
そう言って恭しく礼を取ってきた。
絶句。
言葉も出ない。
「勘弁してくれ、ここ学校だぞ。」
思わずつぶやいてしまった俺は悪くないと思う。
リリアナが来た時や、万里谷と仲良くなってからもすごかったが今回は・・・・・。
「また後でちゃんとご挨拶に伺わせていただきます。
ですので今回はこの辺りで。」
そう言うとエリカは自分の席へと戻って行った。
このことに担任も呆気にとられていたが我に返りこれからの説明に入った。
担任が居なくなると、多くの女子生徒がエリカのもとへ殺到。
エリカもあれだけの大人数に囲まれているのに1人1人丁寧に対応している。
素直に尊敬する。
何て現実逃避をしてみる・・・。
だって俺は現在、クラスの男子全員に囲まれているのだから・・・。
「なんで、なんでお前ばかり。」
「リリアナさんと万里谷さんだけでは足りないと言うのか。」
「あんな丁寧なあいさつをされて、いったいどういう関係だ。」
「羨ましい、羨ましいぞ草薙。」
などなど皆さん好き勝手言ってくれる。
どういう事だと問いただしたいのはこっちだ。
それとなく対応して何とかやり過ごすことに成功した俺達は昼休みに突入していた。
隣にいるリリアナと万里谷と目配せをして頷き合う。
そしていまだ女子に囲まれているエリカのもとへ向かった。
「なあ、エリカ。少しいいか?」
「皆さんごめんなさいね、少し失礼するわ。」
俺が声をかけるとわかっていたかのように席を立つ。
「ここじゃなんだし屋上へ行こう。」
「わかりました。」
俺達4人は屋上へ向かった。
流石にまだ初日、屋上には誰もいなかった。
屋上に着くとエリカは俺の前に跪き頭を下げる。
「先程のご無礼お許しいただきたく存じます。」
「ああ、待って待って。
お願いだ、勘弁してくれ。
前に会った時も言ったと思うけど、俺そういう事されるの苦手なんだよ。
頼むからもっと普通にしてくれ。」
「そう、わかったわ。
王のご命令ですもの、従わせもらうわ。」
俺がそう言うとすんなり立ち上がり、言葉もかなり崩れた。
俺達が最初に会ったのはアイーシャ夫人の権能に巻き込まれる前。
ドニの奴が主催した悪巧みを事前に阻止するために赴いたイタリア。
そこのホテルでリリアナに紹介された赤銅黒十字の総帥と挨拶する時にパオロさんの後ろに控えていたのだ。
あの時はあまり言葉を交わさなかったけどこんな奴だったとは・・・。
「久しぶりだな、エリカ。」
「ええ、久しぶりねリリィ。」
「なれなれしく呼ぶな。
親しくもない奴に愛称などで呼ばれたくない。」
「あら、いいじゃない幼馴染なんだし。」
「違う、エリカお前とは幼馴染じゃなく腐れ縁だ。」
なんて言い合いを始めてしまった2人。
慌てて止めに入る。
「まあまあ、落ち着けって。
それにしても久しぶりだな。あの時はあんまり離せなかったけど、お前ってこんな奴だったんだな。」
「失礼な人ね。あなたが普通に話せって言ったんじゃない。
あなたがカンピオーネで無かったら絶対にかかわり何て持ってなかったと思うわ。」
イラッとするなぁ。
いちいち気にしても仕方ない。
「悪かったな。
それで、日本に何しに来たんだよ。
わざわざ留学までして・・・。」
1番気になっていたことはそれだ。
どうしてにほんに、それも俺のいる城楠学院に来たのか。
普通に考えても裏があるとしか思えない。
「それに、エリカ。
先日あったイタリアでの件、どうなっている。」
リリアナもイタリアであった事の詳細が気になっているようだ。
「リリィ、それについては何も言えないわ。
結社の方からそう指示されているの。ごめんなさいね。」
「お前、それで通ると思っているのか。」
「ええ、例えカンピオーネの命令であっても私からいう事は何もないわ。」
完璧なる拒絶。
これは俺が言っても本当に無理だろうな。
たとえ死んでも話しそうにない。
「くっ!!」
リリアナも悔しそうにしている。
「それで、結局日本に何しに来たんだよ。」
「ああ、それは・・・・・。」
エリカが理由を話そうとした時、俺達のいる屋上の扉の開く音がした。
顔を向けるとそこには、
黒髪で少し長めの髪、身長は小柄、顔も女の子にも見える中性的な顔。
屋上に入ってきてきょろきょろ見渡していると、こちらに気付いた。
するととたんに笑顔になり、こちらに走り寄ってきた。
--------------------------------------------------------------------------------
屋上に入りエリカさんを見つけると、自然と顔が笑顔になった。
「エリカさん、探しましたよ。」
「ごめんなさい、少しこの人達とお話していたの。」
そう言われて改めてここにいる僕達以外の人達を見る。
なぜか全員呆気にとられていた。
その中の1人が、
「おい、エリカ。
そいつは誰なんだ、やけに親しそうだが・・・。」
初対面の人に「そいつ」呼ばわりされた。
「リリィ、彼に失礼なこと言わないで頂戴。
ごめんなさいね、昴。私の幼馴染なの、許してあげて。」
「あっ、そうだったんですか。
気にしていないので大丈夫ですよ。」
そう言うとエリカさんは「ありがとう」と言いながら僕の頭を撫でてきた。
頭を撫でられる感触は気持ちよくずっとしていてほしいと思ってけど、ここには僕達だけじゃないんだ。
そのことに気付いた僕はあわててエリカさんの手を振りほどいた。
エリカさんは残念そうにしながらも、
「ふふっ、相変わらずこういう所は可愛いわ。」
なんて言っていた。
呆気にとられていた人達も我に返ったのか、
「それで、エリカさん。
この方はいったいどなたのでしょうか?」
この中で一番まともそうな女の人が質問してきた。
「ああ、そうだったわね。
彼があなた達の質問の答えよ。」
「???どういう事だ???」
男の人が首をかしげている。
僕も何のことかわからないから黙っておくことにした。
それに多分この人が・・・・・。
「エリカふざけているのか。」
「リリィ、ふざけてなんかいないわよ。
彼が私が日本に来た理由よ。」
「だからどういう事だ!!」
エリカさんがリリィと呼ぶ女の人は怒っているみたいだな。
エリカさんの幼馴染だって言ってたのに、仲悪いのかな・・・。
「言葉通りに意味よ。
だって彼私の婚約者だもの。」
「「「・・・・・・・・・・。」」」
「「「えええええぇぇぇぇぇーーーーーー!!!」」」
一瞬の沈黙の後三人とも大声を上げて驚いていた。