正義の魔王   作:しらこつの

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まつろわぬ神

Side 昴

 

ふと夜に目が覚めた。

何処かで大きな氣を感じる。

僕は隣で寝ている友人を起こさない様にして部屋を抜け出し、氣を感じる方へ駈け出した。

しばらく氣の感じた方へ走っていると空が赤く光っている場所を見つけた。

そして今僕の目の前で街が炎に包まれている。

 

「-----。-----。」

 

イタリア語で何を言っているか分からないが、女の人が泣き崩れていた。

あの様子からあの街の中にまだ人がい居るんだろうか?

 

僕には関係の無い事だ。

・・・僕はただ氣の事が気になって来ただけ。

ただの野次馬に過ぎない。

・・・でも・・おじいちゃんの最後の言葉が頭を過ぎる。

 

『誰よりも優しく・・強く・・・生きるんじゃぞ。』

 

僕は炎の中に飛び込んでいた。

 

 

 

 

 

Side エリカ

 

その日私は特に用もなく街をうろついていた。

こんな事をしている暇があったら魔術の特訓でもすればいいのに。

だから幼馴染のリリアナ・クラニチャールにリードを許してしまっているのだ。

 

日本に誕生した七人目の神殺し『草薙護堂』。

去年の今頃の季節。

イタリア・サルデーニャ島にて軍神ウルスラグナの殺害に成功。

その時近くにいたリリアナは彼に気に入られ、彼の騎士の座に就いた。

その後の彼の活躍は目覚ましく、女神アテナ・斉天大聖・ランスロットなど多くの神に勝利している。

 

そしてとどめの最後の王だ。

 

最近の事だ。

神殺しを殺す為に顕現すると言われている「最後の王」。

この神に挑んだ最古の王『デヤンスタール・ヴォバン侯爵』。

そして妖しき洞穴の女王『アイーシャ夫人』。

この御二方は最後の王に敗れ去り命を落とした。

まだ詳しい情報は入っていないが草薙護堂がそんな最後の王に勝利したらしい。

・・・そしてまたリリアナに差を広げられた。

 

 

 

才能に差があるとは思っていない。

努力も怠っていない。

 

原因は環境だ。

 

私にはまつろわぬ神に遭遇した事は無い。

カンピオーネの戦闘を間近で見た事が無い。

 

リリアナとは経験の差が違いすぎる。

父も母も叔父様も過保護なのだ。

そういった経験をまださせてもらえない。

 

 

 

そんなもやもやした気持ちで訓練をしても身にならないと思い、こうして街を歩いているのだ。

ふと前を見ると15歳ほどの少年が目に涙を浮かべながらおろおろしている。

普段だったら無視するのだがこれも気分転換になるかと少年に声を掛けてみた。

 

「そこのあなた、迷子かしら??・・・大丈夫??」

 

声を掛けて話を聞いてみると、どうやら旅行中に友達と逸れたらしい。

これも何かの縁だと思い、彼の道案内を買って出た。

 

少年は神藤 昴と名乗った。

 

神藤 昴

 

・・・どこかで聞いた事がある気がする。

気のせいだろうか??

 

思い出す事が出来なかったので重要な事では無いのだろう。

私は彼の手を取り歩き出す。

その時の彼は顔を真っ赤にしていた。

・・・可愛い。

 

彼が行く予定だった場所へ案内してあげたが彼の友達とは会えなかった。

寂しそうな顔をするので私はそのまま彼を色々な場所に連れて行ってあげた。

旅行では行かないであろう地元の人しか知らない様な所ばかり。

 

彼の顔に笑顔が戻った。

本当に可愛いな。

弟がいたらこんな感じだろうか・・・。

 

暗くなる前に彼の泊まる予定だというホテルに連れて行った。

彼の友達とも合流出来た様だ・・・よかった。

 

「再会出来たみたいで何よりだわ。

 それじゃあね、昴。

 機会があればまた会いましょう。」

 

私は彼のお礼を背に受けながら、その場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

私は家に帰る前に<赤銅黒十字>の本社に寄った。

どうしたのだろう。結社の中が慌ただしい。

私は状況を把握しようと急いで<赤銅黒十字>のトップであり私の叔父でもあるパオロ・ブランデッリのもとに向かった。

 

「叔父様。どうしたのですか。」

「エリカか。ちょうどいいところに来た。少し厄介な事が起きたかも知れん。」

 

叔父様のいる部屋に入り声をかけると、叔父様もどこか焦っている様に見えた。

こんなに焦っている叔父様を初めて見た。

 

「本当だったらブラウやサーシャに頼むのだが・・・。

 エリカ、このミラノ近郊にまつろわぬ神が顕現したとの情報が入った。」

「なっ!!!」

 

何かが起きているのは予想していたがまさかまつろわぬ神だとは。

 

「申し訳ないがエリカ、今すぐ現場に急行。

 住民の避難と、出来ればどういった神かを調べて来てくれ。」

「私がですか・・・。」

「今私がここを離れるわけにもいかない。

 ブラウ達も出払っている。

 エリカ、初のまつろわぬ神との接触になる。

 ・・・無茶だけはするなよ。」

「・・・わかりました。

 それでは行って参ります。」

 

私はすぐさま部屋を飛び出した。

やっとだ・・・やっとまつろわぬ神を拝める事が出来る。

その時の私にはまつろわぬ神と接触出来る事にしか頭に無かった。

 

 

 

 

 

まつろわぬ神が目撃したとされる辺りにたどり着いた。

確かにこの辺りに濃密な呪力に満たされている。

こちらの気がおかしくなりそうだ。

 

街の中を捜索していると見つけた。

人ではないと一目見ただけでわかる圧倒的な存在感。

押し潰されそうだったが、何とかその神の前に進み出て膝を付き、頭を垂れて声を掛ける。

 

「御身の御名を伺わせて頂きたく存じます、まつろわぬ神よ。」

 

まつろわぬ神がこちらに視線を向けたのを感じた。

ただそれだけだ。

それだけの事なのに震えが止まらない。

 

「そうだな・・・見つかってしまったか。

 仕方ない、もっと趣のある場所で堂々宣言する予定であったが・・・。」

 

彼が声を発しただけで周りにいた人が全員立ち止まり彼を見ていた。

そして・・・。

 

「我が名は『アグニ』。火神アグニだ。」

 

自分はここにいると宣言しているように神の呪力が爆発した。

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