俺達は今まつろわぬ神との戦いに向けて周囲に何もない場所に移動し、神がやって来るのを待っていた。
本当はこんな事したくは無いけど・・・。
封印も間に合わないみたいだから仕方がない。
今ここには俺とリリアナ、万里谷に清秋院、そしてエリカがいる。
今回はいつものメンバーに加えてエリカに協力してもらっている。
リリアナ曰く、
「近くに使える人材があるのだから活用しましょう。」
との事だった。
巻き込むのは申し訳ないと思ったが、頼んでみたら承諾してくれたので甘える事にした。
神の到着を待つ間俺達はリラックスして雑談なんかをしている。
エリカは俺達に遠慮してか少し遠くに控えている。
そんなエリカに清秋院が近づいて行った。
「あなたがエリカ・ブランデッリさん?」
「そうだけど・・・あなたは確か清秋院恵那さんであっていたかしら?」
「初めまして。
・・・リリアナさんから聞いてて期待してたんだけどなぁ。
期待外れだったよ。」
「・・・どういう事かしら?」
「そのままの意味だよ。
貴方からはあまり強さを感じない。」
それだけ言うと清秋院はこっちに歩いてきた。
エリカは気にした様子もなく黙って目を閉じた。
俺はリリアナに、
「エリカってそんなに弱いのか?」
「いえ、そんな事は無かったはずです。
私があなたと出会う前は対して実力に差は無かったはず・・・。
経験に差はあるにしても清秋院があそこまで言うほど弱くは無いはずです。」
それを聞いて清秋院は、
「リリアナさん、それ本当?
私にはそんな実力ないと思ったんだけどな・・・。」
「・・・私が思っているよりも実力が離れていたのか。
あるいはエリカが何かを隠しているのか・・・。」
「ふーーん。
祐理はどう思う?」
「私ですか?
私は後者ですね・・・エリカさんからは体に力を溜めている感じがします。」
「へぇ~~。
祐理はそう思うんだ。
それが本当だったら、楽しみだなぁ。」
「駄目ですよ恵那さん。
これから戦いになると言うのに、不謹慎です。」
「ごめんごめん、そんなに怒らないでよ。」
そんなこんなで時間をつぶしていると・・・。
「・・・!!護堂さん!!」
「ああ、来たみたいだな・・・。」
体に力が漲って来る感覚。
まつろわぬ神が近くに来ている。
そう思って周囲を見渡すと、東の空から何かが飛んできているのが見えた。
近づいてきているそれは飛んでいるのではなく、空を踏み締めているかのように走って此方に向かっていている。
その姿は大きな犬、それもジャッカルみたいだ。
大きさも普通じゃない、普通の犬よりもかなりでかい。
見上げるほど大きいわけではないが、人と同じくらいの大きさはある。
その犬は地面に降り立つと、こちらを・・・正確には俺を見て、
「我が力の欠片をたどってやって来たが・・・貴様神殺しだな。
よもやこのような異邦の地で巡り合うとは・・・。」
「あんたが求めているのはこれか?」
話しかけてきた犬・・・神にポケットに入れていた発掘品、何かの獣の形をした置物を取り出す。
「それは我が力の一部だ。
渡してもらおうか。」
「これを渡したらおとなしく帰ってくれるのか?」
「何を馬鹿な・・・我が力が完全とならば、我が主たちを蘇らせる事も不可能ではない。」
「そうか・・・だったらこれは渡せないな。」
そう言って睨みつける。
「ならば力づくで奪うのみ。
我が名は冥界神『アヌビス』覚悟してもらおうか。」
そうして俺の戦いが始まった。
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やって来たのは大きな犬だった。
何やら草薙先輩と話しているようにも見えるが、僕はそれどころじゃない。
「神藤君!?どうしました!!」
甘粕さんも心配そうに声をかけてくれるが僕の耳には入っていない。
僕は今神様を見た辺りから溢れようとする自分の氣を抑えるのに必死だった。
エリカさんから聞いていた通りだ。
神様に会うと体が勝手に戦闘態勢に移行するって。
せっかく隠れてるのに今ここでばれるのは拙い。
溢れ出る氣に慣れるまで僕は周りの事をシャットアウトして自分の事に集中していた。
暫くしてこの感覚にも慣れてきたので目を開け前を見る。
「神藤君、どうしたんですか?」
目を開けた僕に気付いた甘粕さんは心配そうに聞いてきた。
「もう大丈夫です。
神様を確認してから自分を氣を抑えるのに苦労しました・・・。」
「そうでしたか。
確かにカンピオーネの方々は戦闘になるといろいろとパワーアップしますからね。」
「それよりもどうなりましたか?」
僕は目をつぶっていた間に戦闘がどうなったのか確認するために目を移した。
色々と変わっていた。
まずは犬がいたはずなのに犬の頭をした人がいた。
あれが神なのはわかるけど・・・。
そして今戦闘を行っているのはリリアナさんと清秋院さん。
その後ろで草薙先輩と万里谷先輩がすっごく濃厚なキスをしているのが見える。
エリカさんはそんな二人を庇うように立っている。
そんな光景に唖然としている僕に甘粕さんが教えてくれた。
「わかると思いますが犬の被り物が、まつろわぬ神です。
あの容姿から『アヌビス』だと予想します。
初めは優勢に戦っていたんですけど、草薙さんが隙を付かれたときに彼の神具を奪われまして形勢が逆転。
おそらくあれが本来の姿でしょう。
ですが本来の姿に戻ったおかげで祐理さんに霊視が降りてきたのでしょう。
リリアナさんと恵那さんが代わりに戦っています。」
「・・・それであの行為にいったい何の意味が?」
「あれは彼の権能の1つ『戦士』の権能を使うための儀式の様な物です。」
「・・・儀式・・・ですか・・・。」
「彼が軍神ウルスラグナから簒奪した権能の事はご存知ですか?」
「はい・・ある程度は。」
「彼の戦士の権能は神の知識を言霊に乗せて相手の神力を切り裂く智慧の剣。
その使用条件が相手の神の知識。」
「その事とあの行為の繋がりが見えませんが・・・。」
「聞いていると思いますが、カンピオーネには強い魔術耐性があります。
普通に懸ければすべて弾かれる・・・懸けるとすればあのように経口摂取位しか方法がないんですよ。」
「じゃあ、あれは・・・。」
「あれは祐理さんが霊視した内容を魔術によって教えているってことですね。」
「毎回あれをやってるんですか!!」
「まあ・・・そうですね・・・。」
あんな恥ずかしい事を戦闘の度に毎回。
あの様子からやり慣れてる感が・・・。
「彼平和に過ごすつもりだからって神様について勉強しないんですよ。
私は確信犯だって思ってますけどね。」
少し可笑しそうに甘粕さんは言った。
それが本当だったら・・・。
僕達が話している間も戦闘は続く。
アヌビスはリリアナさん達をながらあしらいながら何かしている??
何か違う事を立っている感じが・・・。
そんな話をしている内に戦況が変わった。
草薙先輩の周りに金色の玉が幾つも浮いている。
それを確認したリリアナさん達が後ろに下がった。
その玉はアヌビスに飛んでいく。
うまく避けていくがいくつか当たっていた。
そして当たった事による変化に気付き警戒を深めたみたいだ。
その後は一進一退の攻防が続く。
どちらも決定打を負わせられない。
そんな時アヌビスは何か完成したかのように一瞬隙を見せた。
その隙を見逃さず草薙先輩の一撃が入る。
「これは決まりですかね。」
草薙先輩は東に空を指さしながら何かを叫んでいる。
「あれは『白馬』の権能ですね。
太陽の欠片を落とすんですよ。
確か大罪人にしか使えません。
今回はアヌビスが周囲に死を撒き散らしている御蔭で使えるみたいですね。」
甘粕さんが何か言っているが僕には届いていない。
何か違和感がある。
そう思ってよく見てみると、皆は東からやって来ている白馬に目を取られていて気付いていない。
アヌビスの後ろに黒い靄の様な物が出来ている。
「・・・・・まさかっ!!
甘粕さん!!緊急事態です!!」
「いきなりどうしたんですか?」
「アヌビスの後ろ見てください!」
「!!あれは!!」
「僕の予想が正しければまだ戦いは終わりません。
というより今のままでは皆さん危ないかもしれません。
急いで馨お姉ちゃんに連絡してもらえますか?」
「わかりましたが・・・神藤君はどうするおつもりですか?」
「・・・僕は今からあそこに向かいます。」
「!!いいんですか!!
まだ準備もできていないんですよ!!」
「味方をしてくれている皆さんに悪いと思います・・・。
でも・・・もう黙ってみていられません!!」
そう言って僕は飛び出した。
私は飛び出して行った神藤君を止めることが出来なかった。
慌てて携帯を取り出し電話を掛ける。
「馨さんですか?
緊急事態です、神藤君が飛び出してしまいました!!」
『・・・そうか。
結局そうなってしまったか・・・。
わかった、甘粕さんはそのまま監視を続けてて。』
「どうするおつもりですか?」
『何、少し予定が早まっただけさ。
これから少し忙しくなると思うけどよろしくね。』
そう言って電話は切れた。
暫く監視を続けていると、神藤君が現れ草薙さんの危機を間一髪で救っていた。
我らの王は正義の味方なんですかね・・・。