正義の魔王   作:しらこつの

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VSウプウアウト

「エリカさん、私からも一つよろしいでしょうか。」

「何かしら?」

 

声をかけてきたのは今まで黙っていた万里谷祐理だった。

今昴は私との戦いで発現させた権能を使って善戦を始めていた。

 

「私はあの方から全く神の神気を感じ取ることが出来ませんでした。

 それがあの方の権能の1つなのでしょうか?」

「違うわ。

 彼の権能は見ての通り、炎に関するものよ。

 隠ぺいなんてできないはずよ・・・。」

「でしたらどうやって。」

「彼の技術よ。

 あなた達は神道流という流派を知っているかしら?」

 

私がそう聞くと皆首をかしげる。

いや1人だけ思い当たる節があるみたいね。

 

「確か、古くからある魔力を使う武術だよね。

 魔力を完ぺきにコントロールできるようになって初めて神道流の真髄を教えてもらえるって言う。」

「さすが武力をつかさどる清秋院家ね。

 その神道流よ。

 彼そこの現当主なのよ・・・。」

「では、彼の魔力コントロールによって全く感じ取れなかったと言うんですか!!

 ありえません!」

「私も最初はそう思ったわ、カンピオーネになったって言うのにまったく呪力を感じなかったんですもの。

 彼に聞いてみたら・・・

 『確かに増えてますよ、あり得ない位に。』

 って笑って答えてくれたわ。」

「・・・・・・・・。」

 

万里谷はもう何も言えなくなってしまったみたいね。

 

「現に彼が今やっているでしょう。

 彼の呪力コントロールが無かったらこの辺り一帯火の海になっているはずよ。」

 

誰も反論できなかった。

あれほどの呪力の塊、普通だったらあんなふうになるはずがない。

 

「・・・エリカさんから感じ取れる魔力の量が少なく思うのはそのせいなのかな?」

 

清秋院が聞いてきた。

 

「その通りよ。

 私は情報収集の傍ら、昴から稽古をつけてもらっていたわ。

 おかげで魔力効率も上がって、魔術の威力も制度も上がったわ。」

「・・・・そうだったんだ。」

 

そんな話をしている間に、昴の氣の質が変わった。

これで決める気ね・・・。

 

 

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何度か『火波』を当てることが出来た。

ダメージも蓄積してきているのだろう。

動きが悪くなってきている。

 

この辺りで決めよう。

 

そう思って火の質を変化させる。

今までは普通の『火』で攻撃してきたが、これを変化させられることに気が付いた。

これを『太陽』に変化させる。

 

僕は日輪に氣を送り込み変化させると、周囲の温度が上がってきた。

背負った日輪は太陽のように輝きだす。

 

まず僕は今までと同じように火の玉・・・今回は太陽の欠片を弾幕のように放つ。

それに隠れるようにして接近。

今まで以上に込めた氣も太陽に変えてこぶしを握る。

 

何個かは地面にぶつかり土煙を上げる。

それでも構わず近寄っていく。

今まで繰り返してきたことと同じだ。

 

これで決める。

 

土煙の中に飛び込みウプウアウトの懐へ・・・・・。

しかしそこにいたのは、槍を構えこちらを見据え、万全の態勢で待ち構えるウプウアウトだった。

 

どうして!!

 

僕はもう止まれない。

この一撃で決めようとしていたからかなり隙がある。

ウプウアウトは僕の心臓目掛けて槍を放ってくる。

 

避けきれない!!

 

何とか体に当たる前に槍に触れ、軌道を逸らすことはできた。

心臓は外すことが出来たが、槍は止まらず僕の脇腹を抉り取った。

 

「ぐわぁぁああっっ。」

 

あまりの激痛に思わず叫び声をあげてしまう。

しかし攻撃はやまず、刃のついていない方で殴り飛ばされた。

僕は吹き飛ばされ、エリカさん達のところまで飛ばされてしまった。

 

「!!昴、大丈夫!!」

「ごほっ・・・エ、エリカ・さ・・ん・・・。」

 

何とか立ち上がったが足元が頼りない。

抉られたところを確認してみるとかなり出血している。

 

これは・・・まずいなぁ・・・。

 

「神藤!!お前、大丈夫なのか。」

 

草薙先輩の声も聞こえる。

・・・が気にしている余裕はない。

何とか出血だけでも止めないと・・・。

 

そう思い、手に炎をだし傷口に当てる。

 

「ぐっ・・・・うあぁぁぁ・・。」

「あなた・・・。」

「・・・はあ、はあ、はあ・・・。」

 

傷口を焼き何とか出血を止める。

こうしている間にもウプウアウトはこちらに近づいてきている。

 

・・・・・急ぎすぎた。

でも何が原因だったんだ?

 

その疑問にはエリカさんが答えてくれた。

 

「前に話した草薙護堂の権能に太陽を落とすってものがあったでしょう。」

「はい・・・。」

「ウプウアウトが現れた時、その太陽を矢で切ったのよ。」

「・・・それで・・ですか。」

「おそらく、彼には太陽に関して何か強みがあるみたいね。」

 

勝負を急ぎすぎた為にこんなに怪我をしてしまった。

エリカさん達にも心配をかけてしまった。

 

「やはりここは引いた方がいいみたいだな。

 草薙護堂、今のうちに・・・。」

 

リリアナさんはここは撤退するしかないと思っているみたいだ。

でも・・・。

 

「・・・こいつを野放しにはできませんよ。」

「その怪我で何を言っている。」

「そうだぞ、神藤。

 ここは引こう。」

 

先輩もそう言っているが、

 

「引けません。

 引くにしても、簡単にはいきませんよ。

 僕が殿を務めますから・・・先輩達は早く。」

 

そう言って僕は前に出る。

後ろから何か言っているのが聞こえるがもう聞こえない。

僕には彼しか見えていない。

 

「まだ立ち上がるか。」

「・・まだまだこれからですよ。」

 

すでに二人とも傷ついている。

僕の方が重傷だが・・・。

再び言霊を紡ぎ氣を高める。

 

日輪を背負うようなスタイルにはせずに、幾つもの火の玉を自分の周りに待機させておく。

先程のように太陽にはせずに最初の炎に戻して。

 

「何だ、太陽ではないのか。」

「同じ轍は踏みませんよ・・・。」

 

そう言って僕は傷ついた体にムチ打って駆けだした。

もう長くはもたない。

何とかしなくちゃ。

 

ウプウアウトも槍を手に持ち駆けてくる。

僕は手にも炎を纏って槍を逸らしつつ迫り、相手は近づけさせようとしない。

そこで僕は周りに待機させていた火の玉をウプウアウトの後ろに送り攻撃する。

大したダメージは与えられないが隙はできる。

そこに『火波』を叩き込みダメージを与える。

消費した火の玉はすぐに補充。

僕は大技を決める為、大きな隙を作るべく立ち回る。

 

周りにあったすべての火の玉をウプウアウトに向けて放った。

ウプウアウトは槍を振り回しすべてを薙ぎ払った。

辺りが爆炎によって遮られるが、関係ないとばかりに突っ込む。

氣の全てを右のこぶしに集中。

大振りになった僕の攻撃をやすやすと避け、隙だらけの僕に一撃を決めようとする。

 

そこで思わず笑みがこぼれてしまった。

これから攻撃が当たるって時に。

 

だって・・・。

 

ウプウアウトが振り下ろすはずだった槍は僕に当たる寸前にとまった。

その槍には何処からか鎖が巻き付かれ動きを止めていた。

その鎖はエリカさんの剣が形を変えた物。

 

エリカさん・・・ありがとう。

 

僕はエリカさんがサポートしてくれるって信じていた。

だからこうやってわざと隙を作った。

全てはこの時のために。

 

僕はすべてを出し尽くす勢いで氣を放つ。

隙だらけのウプウアウトの顎を蹴りあげ真上に吹き飛ばす。

僕も追いかけるように後を追う。

 

「神道流攻式伍乃型『獅子炎弾』。」

 

右足を振り上げ相手の右脇腹に叩き込む。

ウプウアウトも反応し防ぐ。

 

「甘いぞ!!」

「まだまだ!!」

 

それも想定済み。

極限まで高めた氣を炎に変えた左手で地面に向け裏拳を叩き込む。

ウプウアウトは反応できずもろに喰らい地上へと向かう。

それを僕も追いかける。

相手が地面にぶつかると同時に、燃え上がったかのような錯覚さえ見える炎を纏った左足で地面にたたきつけた。

それにより凄まじい爆発が辺りを駆け巡る。

 

土煙が晴れたその中心には、小さなクレーターが出来ていた。

そこには立ち上がろうとしている昴と、クレーターの真ん中で倒れているウプウアウトの姿が見えた。

 

「・・はあ・・はあ・・これで・・・どうだ!!」

「・・ははははははっ。

 まいった・・・もう動けない。」

 

倒れているウプウアウトの体は上半身を下半身で分かたれていた。

その言葉を最後にウプウアウトは塵になって消えて行った。

 

「昴!!」

「エリカさん・・・何とか・・勝てました。

 後、助かりました。ありがとうございます。」

 

そうしている時体の中に何かが入ったような感覚があった。

 

「??」

「どうしたの?」

「何かが体に入ったような・・・。」

「それは新しい権能を手に入れたんだと思うぞ。」

 

不思議な現象を教えてくれたのは近づいて来ていた草薙先輩だった。

 

「それにしても神藤が俺の同輩だった何てな・・・。」

「すみませんでした、今まで黙っていて・・・。

 本当はもっと早く挨拶するべきだったのに・・・。」

「気にするな。

 エリカから聞いたよ、事情があったんだろ。」

「はい・・・ありが・と・・・う・・ござい・・。」

 

そこで僕の意識は途切れた。

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