正義の魔王   作:しらこつの

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VSサルバトーレ・ドニ

2日が経ちサルバトーレ卿との決闘の日がやって来た。

場所はミラノから少し離れた所にある公園。

赤銅黒十字の皆さんが辺りを封鎖して誰も近付けないようにしている。

これで周囲を気にせずに戦うことができる。

 

「待っていたよ。

 早速はじめようじゃないか。」

 

待ち合わせの場所にはすでにサルバトーレ卿が待っていた。

その後ろにはアンドレア卿も待機している。

 

「サルバトーレ卿、本日の決闘の立会人はアンドレア卿と神藤 昴の巫女である沙耶宮 馨、そして我が王の騎士である私エリカ・ブランデッリが務めさせていただきます。」

「そう、よろしくね。」

 

サルバトーレ卿は興味なさそうに告げる。

すでに彼は僕しか視界に入っていないみたいだ。

鋭い視線がビンビン伝わってくる。

 

「ルールを確認しておきましょう。

 今回は先に決定打を与えた方が勝者とさせていただき、その判定は私達が決めさせてもらいます。

 よろしいですね。」

 

「わかりました。」

「・・・それで構わないよ。」

 

サルバトーレ卿不服そうだな。

 

「それでは両者の準備ができ次第始めようと思います。」

「僕はいつでもいいよ、早く始めよう。」

 

早く始めたくてうずうずしている。

僕は少し待ってもらって後ろに控えていた馨お姉ちゃんの方を振り向く。

馨お姉ちゃんもわかっていた様に手に持っていた1mほどの長さの物が入った布を渡してくれた。

 

「君位なものだよ。

 剣の王に剣で挑もうとするなんて。」

 

そう、馨お姉ちゃんから受け取った物の中には一振りの刀が入っていた。

今回の旅行にあたって馨お姉ちゃんが持ってきていた物の一つだ。

名刀と言うわけではない、どこにでもあるような刀。

サルバトーレ卿の権能の前では大して打ち合えないかもしれないが・・・。

 

「やっぱり一度剣で挑んでみたいんだ。」

「・・・はあ。

 今回のルールは理解しているよね。

 そんな刀じゃ一撃で終わってしまう事も有り得るんだ。

 慎重にね。」

「わかってるよ、それじゃ行って来るね。」

 

僕は再び前を向いて歩きだす。

そんな僕を見てサルバトーレ卿の表情が変わった。

 

「お待たせしました。」

「この僕に剣で挑むなんて・・・。

 本当に君は面白いね。」

「両者共に準備が出来たようですね。

 それでは・・・始め!!」

 

その掛け声と共に僕はサルバトーレ卿に向かって走り出す。

相手はまだ一歩も動いていない。

それどころか、剣すら抜いていない。

走ってくる僕をとても楽しそうに眺めている。

 

僕は持っている刀を左腰に構え、右手で刀を握る。

最初から出し惜しみ無しだ。

剣術では間違いなく彼の方が上。

だからこそ最初から全力で挑まなければ意味がない。

刀を持っている間僕は挑戦者だ。

 

「行きます。

 神道流剣技抜刀術奥義『一刀羅刹』。」

 

右足に全体重を乗せ、刀を振り切る。

その際、体中の氣を全て絞りつくすように刀に乗せる。

そしてその速度は人の目では捕える事の出来ないスピードに達する。

この一撃は未だ動かずこちらの様子を窺っているサルバトーレ卿に一撃を加えるはずだった。

でも・・・

 

「なかなかのスピード、力も上々だけど・・・。」

 

キンッ

 

「それ位じゃ僕には届かないよ。」

 

いつ手に取ったのかもわからなかった。

サルバトーレ卿はその何処にでもありそうな無骨な剣で僕の一刀を受け止めていた。

 

やはり届かなかった・・・。

剣の王の名はだてではなかった・・・。

 

僕は急いで距離をとるために後ろへ下がろうとする。

でもさっきの一撃の後遺症で体がうまく動かない。

ほんの少しもたついた間にサルバトーレ卿の剣がもう目の前に迫っていた。

 

「くっ!」

 

何とか刀で防ごうと刀を構えたが・・・。

 

「ここに誓おう。

 僕は、僕に切れぬ物の存在を許さない。」

 

彼が聖句を口にした瞬間、彼の氣が、彼から伝わる圧力が爆発的に高まった。

これが剣の王サルバトーレ・ドニの権能、すべてを切り裂く魔剣の力。

 

銀色に輝く右腕から繰り出される斬撃を躱しきる事ができないと判断して、思わず持っていた刀を彼の顔目掛けて投げつけた。

思わぬ攻撃に一瞬怯んだ隙に動かない体を何とか駆使して距離をとることに成功する。

サルバトーレ卿も追って来ていない。

 

「いい状況判断だね。」

「・・・今の攻撃は当たったと思ったんですけどね。」

「剣士としてはまだまだだよ。

 ・・・次はこっちから攻めさせてもらおうかな。」

 

そう言ってゆっくりと歩み寄ってくる。

 

刀は捨ててしまった。

ということは今まで通りのスタイルに戻さないとな。

もう少し刀で戦いたかったけど・・・。

 

当初はさっきの攻撃で決める予定だった。

まあ、そんな簡単に決まるとは思ってなかったけど・・・。

実際、完全に見切られちゃってたからね。

僕も剣術はまだまだってことだ。

 

これで予定を変えて長期戦に挑まなくちゃいけなくなった。

理由は簡単。

まともに戦えるようになるまで体を回復させなくちゃいけないからだ。

サルバトーレ卿を相手にそれも難しそうだけど・・・。

やっぱりウプウアウトから奪った権能を使わないといけないみたいだ。

 

 

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「先ほどは素晴らしい一撃でしたね。」

 

そう話しかけてきたのは反対側にいたアンドレア卿だった。

 

「本人に言ったらまだまだだというはずですよ。

 実際サルバトーレ卿には効果は無かったようですし。」

 

昴君は今、体のキレが無くなっている。

おそらくさっきの技の反動だろう。

それでも攻撃を食らわずに避け続けているのは以前言っていたウプウアウトから奪った察知の権能のおかげかな。

 

「それにしても彼はなぜ剣術で挑んだのですか。

 彼は羅濠教主と同じ体術使いだと聞いていたのですが・・・。」

「彼の使う流派は体術だけで無く、武器も同じように教えているんですよ。

 自分も剣を使う者として、戦ってみたかったんだと思いますよ。

 人類最強の剣士に・・・。」

 

昴君も武術家だからなぁ・・・。

戦ってみたかった気持ちもわかるけど・・・。

わざわざいきなり大技を使って決めようだなんて、剣の王相手に無謀すぎるよ・・・。

 

現在も昴君はサルバトーレ卿の攻撃を躱し続けている。

本格的に使うとあの権能、あそこまで効果のある物だったなんて・・・。

隣にいるアンドレア卿も驚いているみたいだ。

 

「すごいですね・・・。

 彼の攻撃をあそこまで躱し続ける人をはじめて見ましたよ。

 あれも何かの権能ですか?」

「その通りですよ。

 あれは前回戦った神ウプウアウトから簒奪した権能です。

 まあ、その能力はただ相手の気配を察知するだけの物らしいですけどね・・・。」

「・・・なんと言いますか、あまりぱっとしない力ですね。」

「そうでもありませんわ、アンドレア卿。」

 

今まで黙って二人の戦いを見ていたエリカさんが口を開いた。

 

「どういうことです?」

「あの権能は確かに気配を察知する力が強くなるだけの物・・・。

 ですが、その力を目の前のことにのみ集中させると、カンピオーネ特有の体質も相まって御覧のように、素晴らしい力を発揮しています。」

「僕たちも驚いているんですよ・・・。

 あの権能がここまですごいなんて思っていませんでしたから・・・。」

「・・・・・御2人はどちらが勝つと思っていますか?」

 

・・・どちらが勝つか。

もちろん勝って欲しいのは昴君だけど・・・。

 

「「わからないですね(わね)。」」

 

僕たちは声を揃えてそう答えていた。

 

「わからないですか・・・。」

「ええ、今の状況からしたら昴が断然不利でしょうけど・・・。」

「・・・そうだね。

 でも、昴君の回復が間に合ったら・・・。」

「回復ですか?」

 

アンドレア卿は不思議そうに聞いてくる。

 

「気付きませんか?

 彼の魔力が少しずつ増えているのが。」

「!!」

 

アンドレア卿も気づいたみたいだ。

 

「なぜです?

 彼は権能を使っているのでしょう。

 それなのに・・・。」

「おそらくですが、彼のあの権能はカンピオーネの鋭い直感がさらに研ぎ澄まされるといった物だと思われます。」

「・・・その推測通りだとすると、魔力は消費されていないと。」

「恐らくですけどね・・・。

 っと、そろそろ戦況が動きますね。」

 

 

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「そろそろ魔力も回復したかな?

 さすがに待ちくたびれきた所だよ。」

「・・・やはり気付いていましたか。」

 

僕達は今距離をとってお互いの様子を窺っている。

それにしても察知に権能は使えるな。

氣を使わないし、相手が何をしてくるかが読めるから避けるのが格段に遣り易くなった。

その代わり避けるのに集中しすぎるから攻撃が全くできないのが欠点だね。

何度か攻撃のチャンスがあったけど、とっさに反応が出来なかった。

いつもなら動けるはずなのに・・・。

 

「これからが第二ラウンドってところかな?」

「そうですね、僕もそろそろ反撃に移ろうと思っていたところですよ。

 体の調子も戻ってきましたし。」

 

そういって僕は今まで避けることに集中していた頭を切り替える。

そんな僕を見てサルバトーレ卿は嬉しそうに表情を変える。

 

「へぇ・・・いいプレッシャーだ。」

 

そういう彼も、彼から感じられる圧力がまた膨らんだ。

ここからが本当の戦いになりそうだ。

 

僕は最初の一撃以来の攻撃に移るため前に足を踏み出した。

今までもそうだったけど、今回もリーチは相手の方が上。

何とかして相手の懐までたどり着かないと。

それに今回は一撃を決めたら勝ちなんだ。

勝機は十分にある。

 

攻撃を加えるためサルバトーレ卿に向かって走る。

迎え撃つつもりなのか、彼は腕をだらんと下げて僕を見据えている。

あれが彼の、サルバトーレ・ドニの剣の構え。

恐らく彼のたどり着いた境地なのだろう。

さっきまでの戦いでも使っていたけど、あの構えから繰り出される攻撃は自由自在。

そしてとてつもない速さだった。

それがわかっているけど僕は走っていく。

 

「はあああああ!!」

 

こぶしに氣を込め、力を込める。

彼の間合いに入った、その時にはすでに彼は動いていた。

右手に持った剣を振り下ろし襲い掛かってくる。

それを見極め、避けながら彼の心臓目掛けてこぶしを突き出す。

彼は剣の腹でそれを受け止めた。

 

「さっきの力は使ってないよね?

 どうして避けられたのかな?」

「・・・・・覚えたんです。」

「えっ??」

「・・・氣を回復している間、ずっと。」

 

そう、僕は感覚が鋭くなっていた間になるべくサルバトーレ卿の攻撃を覚えるように頭をフル回転させていた。

もちろん彼は僕が回復するために時間を稼いでいるとわかって本気で攻撃していなかったのかもしれない。

それでも、こうして成果は表れた。

 

「はは・・・あはははははは・・・・・・・・・面白い。」

 

そう言うと彼は力を込めて僕を弾き飛ばしてきた。

2mほど飛ばされたけど体制は崩さず前を向く。

今度は彼が攻撃をしかけてきた。

目で追うのが難しいぐらいの攻撃。

しかもだんだん速度が上がってきている。

それでも何とか避け続け、攻撃の隙を探す。

 

攻撃を繰り出しているサルバトーレ卿の顔は楽しそうな笑みを作っている。

さらに速度が上がり剣がかすって小さな傷が出来てきた。

 

くそっ!

隙がなくなってきてる。

このまま隙を待っているだけじゃだめだ。

そう思ってすぐに行動に移す。

 

「天上にあっては太陽、中空にあっては稲妻、地にあっては祭火。

 世界に遍在する火、惑わしの罪を取り除き、善き路によって富を導く者為り。」

 

言霊を紡ぎ氣を高めると同時に火の権能を行使する。

今回は前回と違い日輪を背負う形ではなく、両手に火を纏うだけにとどめる。

 

「ほう・・・それが君の権能かい。」

 

サルバトーレ卿はその笑みを深める。

僕は隙を作るため攻撃を避けるのではなく、弾き飛ばすことにした。

向かって来た剣にタイミングを合わせて、剣の腹を横から叩く。

 

魔剣の権能によって強化された剣。

氣を纏わせるだけじゃ足りないと思って火の権能を追加した。

何とか軌道をずらすことには成功した。

・・・だが。

 

「っ!」

 

剣を弾いた僕の手は剣に切り裂かれたかのような切り傷が出来ていた。

少し無理があったみたいだ。

でも隙を作ることには成功した。

ほんの少しできた隙をついて攻撃を繰り出す。

 

「はああああ!!」

 

ガンッ!!

 

その手に伝わった感触は人の物とは違った。

そこを見てみると、サルバトーレ卿の体がそこだけ鋼に代わっていた。

 

「ふう、危なかった。

 けどこれで僕の・・・。」

「いいえ、僕の勝ちです。」

「何を言って・・・ガハッ!!」

 

攻撃するため剣を振りかぶっていたサルバトーレ卿は動きを止め膝をついた。

 

「・・はぁ・・はぁ・・・これはどういうことだい?」

「神道流攻式壱乃型『火波』。

 これは相手の体に氣を流し込んで攻撃する技です。

 例え体の一部を鋼に変えたところで、全ての攻撃を防ぐことはできませんよ。」

「・・・この体にはあまり魔術による攻撃は効かないはずなのに。

 それだけの威力だったってことか・・・。」

「あなたの鋼の権能のことは知っていましたから・・・。

 火の権能も使いました。

 鋼は火に弱いと聞いていましたから・・・。」

「ハハハ・・・僕の負けみたいだ。」

 

「この勝負、神藤 昴の勝ちといたします。」

 

エリカさんの声が響き渡った。

この瞬間カンピオーネ同士の異色の決闘の決着がついのだった。

 

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