ふう・・・。
エリカさんの掛け声でサルバトーレ卿との決闘は終了した。
「ありがとうございました。」
「僕も楽しめたから満足だよ。
欲を言うなら、君と本気でやりあってみたくなったかな・・・。」
顔はとっても笑顔なんだけど、目が笑ってない。
背筋を震わせているとエリカさん達が近寄ってきた。
「御二方の決闘を目の前で拝見できたことを光栄に思います。
サルバトーレ卿、今回の勝者に贈られる報酬を覚えておられますか。」
「覚えてるよ。
確か、勝った方の言う事を一つ聞かなきゃいけないんだったよね。
残念だなぁ・・・僕が勝ったら今後は命懸けの真剣勝負をしてもらうつもりだったのに。」
・・・やっぱり。
・・・勝ててよかった。
「・・・昴、報酬はあなたの物よ。
何かサルバトーレ卿にしてもらいたいことがあったりするのかしら。」
「何でもいいよ。
何だったら再戦なんてものだったら僕も嬉しいけどな。」
それはあなたの希望でしょ。
僕はあなたと命のやり取りをしたくはありません。
それに・・・。
「その事だったらすでに決めていますよ。
サルバトーレ卿・・・。」
「何かな?」
「僕があなたに頼むことは・・・僕の依頼を受けてほしいんです。」
「??どういう事かな??」
「この先も僕は・・・僕たちは多くの戦いに巻き込まれていくと思います。
そんな時僕達だけでは手に負えない事件もあると思うんです。」
「・・・つまり代わりに戦ってほしいってことかな?」
「簡単に言えばそう言う事ですね。
もちろん受けていただいたら報酬は出させていただきます。
・・・いかがでしょう。」
「ははは、敗者である僕に拒否権はないよ。
それに僕にとっても悪い事どころか、好条件だ。
それって依頼内容によってはまつろわぬ神やカンピオーネの人達とも戦う事になるかもしれないって事だろ。
願ったり叶ったりだよ。」
今後のことを考えているのかとても楽しそうに笑っているサルバトーレ卿。
エリカさんに目配せして、エリカさんもうなずき返してくれた。
「それでは、今後神藤昴より依頼があった際にはその依頼を受けていただくという事でよろしいですか?」
「問題ないよ、いつでも連絡をしてきてくれて構わないから。
あっ、そうだ・・・僕の連絡先を教えておかなくちゃね。」
そういって自分のポケットを探し始めるサルバトーレ卿。
そこに、
「携帯電話ならこちらに。」
そういって差し出したのはアンドレア卿。
「ああ、ありがとね。
はい、これが僕の連絡先ね。」
僕のアドレス帳に二人目のカンピオーネの名前が載った。
「最初はルール有の決闘なんてって思っていたけど・・・有意義な時間を過ごせたね。
それじゃ、僕は帰らせてもらうね。
また会おう、昴。」
連絡先を交換し終えると、すぐにこの場を去るために踵を返し歩き始めた。
「はい、これからよろしくお願いします。」
サルバトーレ卿は僕の言葉に振り返り、笑顔で手を振りながら去って行った。
「それでは私も失礼させていただきます。」
「あっ、はい。
今日はありがとうございました。」
アンドレア卿は多くはしゃべらず、僕たちに頭を下げてサルバトーレ卿を追って去って行った。
去っていく二人を見送っているとふいに後ろから抱きつかれた。
「よくやったわ昴。
私たちが思い描いていた最高の形で今回を乗り切ることが出来たわ。」
「何とかなりました。
最初はどうなることかと・・・。」
「それはこっちのセリフだよ。
剣の王に剣で向かっていくから・・・。」
「ははは・・・すみません。」
「終わりよければ全て良しよ。
お疲れ様昴、これはご褒美よ。」
エリカさんは後ろから抱きついたまま僕の頬にキスをしてくれた。
「わわっ、エ、エリカさん。」
すぐに離れてくれたけど柔らかい感触が頬に残って顔が赤くなってしまった。
そんな僕を見てエリカさんは笑っている。
「確かに昴君は頑張ったからね・・・。
僕からもご褒美だよ。」
まだ赤くなっている僕の顔を正面から覗き込んできた馨お姉ちゃん。
そのまま両手で優しく僕の頬を包んで・・・。
「え・・・えっ・・・むぐっ。」
目の前には馨お姉ちゃんの顔。
キスされてる!!!
「ちゅ・・・ちゅっ。
喜んでもらえたかな?」
「・・・・//////。」
僕は今起こったことに混乱していたから気付かなかったけど、隣で見ていたエリカさんは機嫌悪そうにしていた。
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「お疲れだったね、昴君。」
「・・・はい、疲れました。」
・・・いろんな意味で。
あの後エリカさんは不機嫌だし、馨お姉ちゃんは逆に機嫌がよさそうに僕と腕を組んで離さないし・・・。
エリカさんもそれを見て逆の腕にひっついて離れないし、余計に疲れた。
僕たちはサルバトーレ卿との戦闘を終え、赤銅黒十字に帰って来ていた。
今はパオロさん達に結果を報告している。
「すべて計画通りに進めることが出来ました。」
「そうか、それは良かった。
エリカ達もご苦労だったな。」
労いの言葉に彼女達は頭を下げた。
僕達はサルバトーレ卿との決闘が決まった後、丸一日使って話し合いをしていた。
もちろん話し合いの内容は、勝った時と負けた時の対応だ。
負けてしまった際の事はすぐに決まった。
満場一致で再戦を申し込まれると思ったので、僕が頑張って戦う・・・それだけだった。
問題だったのは勝った時だった。
この条件はサルバトーレ卿を納得させるために付け加えたもの。
別に僕には彼に望んでいる事があったわけではない。
それはパオロさん達も同じだった。
みんなが悩んでいる時に僕はサルバトーレ卿の事についてエリカさんからレクチャーを受けていた。
主に彼の性格と戦闘スタイルとよく使う権能。
その時に今回のことを思いついて提案した。
戦う事が好きであるサルバトーレ卿。
有事の際僕達の手が回らないことも多くあるはず。
そんな時に代わりに戦ってくれる人がいると心強い。
もちろん彼がほかのカンピオーネと同じ問題児であることはわかってる。
でも同じカンピオーネである僕のそれも依頼という形なら無下には出来ないのではと考えた。
それに依頼内容も戦う事だけにするつもりだ。
そうなったら依頼こそが彼にとって最高の報酬ということになると思ったのだ。
僕の提案に皆賛同してくれた。
この契約だけで彼の問題行動がなくなるとは誰も思ってなかったけど、彼とこれからも付き合って行くならこの案が妥当という事に落ち着いたのだ。
「これで少しはあのお方も落ち着いてくれると嬉しいんだがな・・・。」
「それは無理だろう。
あの方にとっては戦える可能性が増えたとしか思っていないだろうからな。」
「・・・それもそうか。」
「依頼内容にそういった項目を入れておけば多少気にしてくれるかもしれません。」
「・・・・・本当に多少でしょうね。」
なんて話していたけど、ここにいる全員が思った。
無理だ!!!!
「さて、これからの予定なんだけどね。」
気を取り直してパオロさんが話し出す。
「本当は今日ある人に会ってもらう予定だったんだけど・・・こんな事になってしまったから予定が崩れてしまってね。」
「・・・そうだったんですか。」
「また後日という事になってしまった。
でも近い内に会えるように話はつけておいたから決まり次第連絡するよ。」
「わかりました。
それまで僕達は何をしていれば・・・。」
「そうだね・・・・・これから予定が入るかもしれないからね・・・。
ゆっくりできる内にしておいた方がいい。」
そういってパオロさんはエリカさんの方に顔を向ける。
「エリカ、二人にここミラノを案内してあげなさい。」
「・・・よろしいのでしょうか?」
「結社のことを気にしているのかい?
大丈夫だよ、エリカも夏休みを堪能してくるといい。」
「わかりました、ありがとうございます叔父様。」
エリカさんは嬉しそうに頭を下げた。
パオロさんも満足そうに頷いていた。