正義の魔王   作:しらこつの

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プリンセス

馨さんと心を通じ合わせてから数日が過ぎて、イタリアに来て1週間以上が経っていた。

パオロさんも会う予定だった方も忙しいらしくなかなか予定が合わない。

パオロさんはカンピオーネとして命令すればと言ってくれたが、迷惑はかけられないので断り、気長に待っている。

 

僕達は待っている間観光ばかりしているわけにもいかないので、結社の修練場を借りて稽古をしていた。

今はその真っ最中だ。

 

「皆さんいい調子ですよ。

 そのままの状態をキープしてください。」

 

僕はここにいた人に頼まれて氣のコントロールの稽古をつけてあげている。

現在目の前には20人ほどの結社の人達が座り集中している。

初めてここに来たときは僕に気付いて出ていく人や、端っこの方に下がってしまう人ばかりで申し訳なく稽古をしていたけど、次の日僕と同じか少し幼い男女が5人ほど来て、

 

「お初にお目にかかります。

 私達は赤道黒十字で見習い騎士をしている者です。

 神藤昴様、私達にも稽古をつけていただけないでしょうか。」

 

一気にまくしたてるように話し、全員が頭を下げた。

周りからは息をのむ声が聞こえる。

それはそうだろう・・・カンピオーネは魔術師にとって畏怖される存在。

もしその怒りを買ったら殺されても文句は言えない。

まあ僕はそんな事しないけどね。

しかも5人をよく見ると、全員が震えている。

 

僕はそんな彼らに歩み寄り、僕に声を掛けてきた子の肩に優しく手を置く。

その子は手を置いた瞬間びくっとしたがおずおずと顔をあげた。

そんな彼女に僕は優しく微笑みながら、

 

「いいですよ。

 一緒にやりましょう。」

 

と言ってあげた。

僕の言葉に残りの全員が顔をあげる。

声を掛けられた彼女は少し顔を赤くしながら、

 

「は、はい。

 よろしくお願いします。」

 

と頭を下げ、つられる様に全員もう一度頭を下げた。

 

そんな事があってその次の日からはもっと人が来て、今ではこんな大人数に指導する事になってしまった。

全然後悔してないんだけどね。

 

さすが歴史ある結社なだけはある。

例え見習い騎士であってもレベルが高い。

教えがいがあるというものである。

 

「っと、そろそろ時間ですね。

 今日はここまでにしましょう。」

 

僕がそう言うと全員が目を開け、深く息をついていた。

その後立ち上がり僕の前に並ぶ。

 

「お疲れ様でした。

 皆さんここ数日ですごく上達してきてますよ。」

 

僕が労いの言葉をかけてあげていると、修練場にエリカさんがパオロさんを連れて入ってきた。

今日は仕事を手伝うといってエリカさんは欠席していたのだ。

馨さんは僕の隣に立っている。

エリカさん達は僕達の話が終わるのを待っているようで、部屋の隅にいる。

察した僕は早々に話を切り上げた。

 

「それでは皆さん、今日もありがとうございました。」

「「「ありがとうございました。」」」

 

僕達は解散し皆さん修練場を後にしていく。

恐らくパオロさん達に気付いていて、邪魔をしないようにだろう。

僕と馨さんはエリカさん達に近づいて行く。

 

「お待たせしました。」

「構わないよ。

 私の方こそお礼を言わなくてないけない。

 結社の若い子達を指導してくれてありがとう。」

「僕も刺激になるので、気にしないでください。

 それよりもどうかされましたか?」

 

僕の問いかけに表情を真剣なものに直すパオロさん。

 

「ようやく日程がまとまったよ。

 急で悪いが、明日こちらに見えるそうだ。」

「わかりました。

 それじゃあ明日の稽古は無しですね。」

「そちらについても私の方から連絡しておこう。」

「ありがとうございます。

 明日はどうすればいいですか?」

「午前中には見えられるという事だ。

 すまないが、朝の内から準備だけはしておいてくれ。

 それと・・・・・。」

「何か心配事でも?」

「・・・・明日、私は仕事で会談に同席することができない。

 くれぐれも気を付けてくれ。

 言葉は悪いが、腹黒い方だ。

 ・・・何を考えておられるのか私も想像できない。」

「・・・大丈夫です。

 僕にはエリカさんと馨さんが居ますから。」

 

二人に笑顔を向けると、二人も笑い返してくれた。

 

「二人とも頼んだぞ。」

「任せて、叔父様。」

「お任せください、パオロ様。」

 

力強く返事をした二人に安心したのか、パオロさんも満足そうだ。

 

「それではこの話もここまでにして移動しましょう。」

「そうだな。

 そろそろ食事の用意もできているはずだ。」

「でしたら僕達は汗を流してきますね。」

「じゃあ、食堂で待っているわ。」

 

話を終えて僕達も修練場を後にした。

 

 

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次の日の朝。

今日の稽古は休み。

朝食を食べたら着替えをするためにエリカさんの部屋に集合した。

 

「今日お会いするのはとても高貴な方よ。

 神殺しであるあなたでも失礼のないようにしないと。」

「今回の会談ではそこまで慎重になる必要はないけど、王としての威厳だけは示して置かないといけないからね。

 うん・・・よく似合っているよ。」

 

僕はエリカさんと馨さんに見繕ってもらったスーツに身を包んでいる。

人生初のスーツ。

着慣れてないからちょっと恥ずかしい。

これに決まるまでに何回も着替えた。

まだ会談の前なのに少し疲れてしまった。

 

「昴はこれでいいわね。

 私達も着替えましょう。」

 

エリカさんがそう言うと、二人はまだ僕が室内にいるのに服を脱ぎだそうとした。

僕は慌てて、

 

「ぼ、僕は外で待ってますから。」

 

扉に向かおうとした所、後ろから抱き付かれた。

背中にやわらかい物が押し付けられ、さらにいい香りが漂ってくる。

 

「私が用意している服一人じゃ着れないのよ。

 手伝ってくれないかしら?」

 

抱きついてきたのはエリカさん。

 

「か、馨さんに手伝ってもらえば・・・。」

「ごめんね昴君。

 僕も手伝ってもらえないかな?

 それに急いで着替えないと、あのお方もいらっしゃるかもしれないし。」

「・・・わ、わかりましたよ。

 だから離れてください。」

「ありがと。

 何だったらこっち向いて着替える所を見てもいいのよ?」

「け、結構です。

 手伝う事があったら声を掛けてください。」

 

エリカさんは僕の頬にキスをしてから離れた。

僕は外に出ることも出来ずにそのまま扉の方を向いて待っている。

服の擦れる音が気になって仕方がない。

 

「昴君、こっちに来てくれないかな?」

 

早く解放されたいと思っていると、ついにお呼びがかかった。

馨さんの声のした方に顔を下にして向っていく。

 

「・・・昴君、ちゃんとこっちを見てくれなきゃ。」

 

下を向いている僕の顔に手をやり強引に上に上げられた。

そこで目にしたのは、着物の帯を締めず、前を肌蹴させた状態の馨さんだった。

顔が熱くなっていくのがわかる。

目を背けたいけど、顔を固定されているからどこに目をやっても馨さんの肌が目に入っちゃう。

 

「着物の裾を抑えていてくれないかな?

 どうにもうまくいかなくて・・・。」

「わ、わかりました。

 こ、これでいいですか?」

「OKだよ。

 そのまま抑えていてね。」

 

僕が抑えている間に器用に帯を巻いていく。

 

「もう大丈夫だよ。

 ありがとう、助かったよ。」

 

すぐさま手を放して離れる。

そこでやっと馨さんにちゃんと目を向けた。

馨さんは白を基調とした着物で、花の種類はわからないけど、青い花がきれいに着物を彩っている。

馨さんの中性的で整った顔つきによく映えている。

 

「どうかな?」

「は、はい。

 よ、よくお似合いです。」

「そう言ってくれて、とてもうれしいよ。」

 

どんな男でも見とれてしまうような笑顔で言われ、赤くなっていた顔がもっと赤くなってしまった。

そんな僕に馨さんが近づいてきて、耳元で囁いた。

 

「僕って着物を着るとき、下着は着けない主義なんだ。」

「!!!!。」

「上を着けて無いのは気付いたと思うけど・・・下も確かめてみる?」

 

馨さんは僕の手を取って自分の大事な所に持って行こうとする。

突然の告白に動けなかった僕に救いの声が掛けられた。

 

「昴、こっちに来てくれないかしら?」

「は、はい!!!!

 今行きます。」

「残念。

 確認するのはまたの機会だね。」

 

とってもいい笑顔で言われた言葉を背にしてエリカさんの所へ向かった。

エリカさんは胸元を抑えながら、僕を待っていた。

 

「遅いわよ。

 何やらお楽しみだったみたいだし・・・。」

「そ、そんな事ありませんよ。」

 

少し怒った表情でこっちをにらんでくる。

怒った顔も綺麗だなぁ・・・。

 

「・・・まあいいわ。

 背中のチャックをあげてくれないかしら?」

 

そう言って後ろを向き、髪を退かすエリカさん。

そこに現れたのは、傷一つない綺麗な白い肌だった。

腰から背中、肩にかけて大理石にも引けを取らない白く透明な肌。

しかもまだちゃんと締まっていないのか、一歩間違えればお尻の方も見えてしまいそうだ。

 

「・・・そんなにじっと見られると、さすがに恥ずかしいわ。

 後でじっくり見せてあげるから、今は早くしてくれないかしら?」

 

はっと我に返り、エリカさんの方に手を伸ばす。

 

「す、すいません、今あげますね。」

 

肌を噛まないように注意しながらゆっくりと上げていく。

その間も綺麗な肌が目の前にあるから、ドキドキが治まらなかった。

 

「後は腰にある紐を縛って・・・・・。」

 

チャックをあげ終わってからは、エリカさんの指示に従って熟していき、

 

「・・・ありがとう昴。」

 

そう言ってこちらに向き直る。

エリカさんは赤を基調としたドレスだ。

赤は赤銅黒十字の色でもあるから、こうした大切な時には赤色のドレスを選ぶそうだ。

肩は剥き出しになっていて、胸元も強調されている。

スタイルのいいエリカさんによく似合っている。

目のやり場には困るけど・・・。

 

「どうかしら?」

「・・・・・・・・・・。」

「昴?」

「はっ・・・す、すみません。

 と、とてもよく似合っています。」

 

見とれてしまってボーっとしていた。

エリカさんは全てを見透かしているように微笑んで、

 

「そう、うれしいわ。」

 

そう言ってくれた。

馨さんも何時の間にか僕の隣に立っていた。

 

「そろそろいらっしゃるんじゃないかな?」

「それもそうね。

 行きましょうか。」

 

二人に促され部屋を出た。

そのままエレベーターに乗り込み、エントランスを目指す。

 

「エリカさん、今日いらっしゃる方はどういった人なんですか?」

「叔父様と私の両親とは、古くからの知り合いよ。」

「知り合いですか・・・。」

「それにしたって、今回の事は特例の事だと思うよ。

 何たって相手は、あのグリニッジ賢人議会の元議長なんだから。」

 

聞きなれない言葉。

 

「グリニッジ賢人議会ですか?」

「簡単に言ったら、対魔王組織かな。」

「グリニッジ賢人議会はカンピオーネの暴挙を食い止めるために立ち上げられた組織よ。

 元はすでに亡くなられたヴォバン侯爵がロンドンに住んだ事が原因だったかしら?」

「神々とカンピオーネについての情報収集を行っていて、そのレポートも定期的に発表しているね。」

「そこの元議長様が今回会う人って事ですか?」

「体が弱い方で、すでに隠居してしまったけれど、いまだに強い発言権を持っているお方よ。」

「そんな人がわざわざ出て来て会ってくれるなんて・・・。」

「何か考えがあっての事かもしれないから、慎重に行きましょう。

 うまくいったら、大きな味方を得る事が出来るわ。」

「はい!!」

 

エレベ-ターが到着し、エントランスに入る。

通常は多くの人で溢れ返っている時間なのだが、今日は誰もいない。

昨日、失礼のないようにと人払いをしたみたいだ。

 

暫く待っていると、結社の前に車が止まった。

降りてきたのはプラチナブロンドの髪がまぶしい美しい女性だった。

その女性はこちらに目をやると微笑んで、こっちに向かって歩いてきた。

後ろに数人従えている。

俺達も迎えるために歩み寄る。

 

「わざわざお越しいただきありがとうございます。

 初めまして、この度新しく神殺しとなりました神藤 昴と申します。」

 

そう言って頭を下げる。

頭を上げると全員何か不思議な物を見たかのように驚いていた。

プラチナブロンドの女性も驚いていたが、すぐに先程の微笑みに戻り、

 

「こちらこそ、王自ら出迎えていただけるなんて、恐悦至極にございます。

 申し遅れました、私グリニッジ賢人議会元議長アリス・ルイーズ・オブ・ナヴァールでございます。

 以後お見知りおきを。」

 

これがプリンセス・アリスとの出会いだった。

 

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