正義の魔王   作:しらこつの

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調査

Side 昴

 

あの後目的地も知らされずアレクさんの自家用ジョットに乗せられた。

今までアレクサンドル様と呼んでいたけど、長いからとアレクと呼べと言われた

 

飛行機を降りたら車に乗せられ現在とある海辺。

アレクさんは待っていろと言って何処か行ってしまった。

 

それにしても此処何処だろう?

あの石版と関係あるだろうから、北欧の何処かだと思うんだけど・・・。

・・・しかも黙って出て来たからエリカさん達心配しているだろうな。

 

暫く一人寂しく待っているとアレクさんが戻って来た。

 

「神藤 昴。

 この辺りに気になる所は無いか?」

 

突然の質問だったけど、ここに来た理由はある程度理解しているからすぐに答える事が出来た。

 

「それでしたら此処に来た時からあの石版と同じ力を感じています。」

「詳しく分かるか?」

「はい、こっちです。」

 

僕は力を一番感じ取れる場所へ案内する。

暫く歩く事になるので今の内に聞いておこう。

 

「アレクさん、ここ何処なんでしょうか?」

「・・・・・ここはこの石版が見つかった場所だ。

 この海岸に打ち上げられている所をスウェーデンのとある結社が回収したらしい。」

 

それじゃあ、ここはスウェーデンの何処かという事か・・・。

 

「俺もこの石版が気になってな・・・少しの間借りている。

 それにあの結社の奴らも大して調査もせずに放置していた・・・問題ないだろう。」

「先程までは何処へ?」

「その結社に話を聞きに行っていた。

 まぁ、たいして情報は入らなかったがな。」

 

・・・多分敏感な人はこの力に気付いているはず。

でも最近の事だからまだ調査を始めていない。

そこにアレク様が来たから手を出さずに任せてしまおう・・・とか考えているんだろうな。

・・・僕もその場所まで案内したらお役御免かな。

 

「・・・着きました。

 この辺りが、一番力が強いです。」

 

海岸近くの坂を上り、崖の上まで来ていた。

辺りには何も見当たらない。

何かないかと権能を使い周囲を探る。

 

・・するとある事に気付いた。

より強い力をこの下から感じる。

その事を教える為にアレクさんを見ると、アレクさんも何かを期待している様に僕の事を見ていた。

 

「・・・何かわかったか。」

「はい、この下です。」

 

そう伝えると、アレクさんは考え込んでしまった。

少ししたらアレクさんは崖に近寄り下を覗き込む。

僕の位置からは崖の下は分からないけどアレクさんは何かを見つけたんだろう。

覗き込んだアレクさんの表情は笑っていた。

 

「よくやった此処まででいい。

 ・・・あとは好きにしろ。」

 

アレクさんはそう告げると僕の返事も待たず飛び降りた。

 

「えっ!!ち、ちょっと!!」

 

急いで崖下を覗き込む。

しかしそこにアレクさんの姿を見る事は出来なかった。

どういう事かともう少しよく見てみると、そこには人が一人通れるぐらいの穴が開いていた。

しかもご丁寧に波がぶち当たっている高さだ。

さすがにあれは簡単に見つからないな。

もう一度権能を使って調べるとアレクさんの気配もあの穴の中から感じられた。

 

 

・・・これで僕の出番も終わりだなぁ。

これからどうしよう。

アレクさんの調査も時間がかかるだろう。

エリカさん達と連絡取りたいけど携帯の充電が切れてる・・・。

アレクさんの言っていた結社に助けを求めるのも手だけど場所も名前もわからない。

もう日も暮れ始めている。

海外は日本と違って夜遅くまでやっているお店も少ない。

しかもこんな周りに何もない場所じゃもっと少ないだろう。

何処か泊る所を探そうにも財布にお金が入っていない。

 

・・・・・手ずまりだ。

本当にどうしよう。

 

・・・・・・・・・・よし!!

とりあえず言葉の心配はいらないから、近くに誰かいないか探してみよう。

そこで電話を借りればいいし、もしかしたら泊めてくれるかもしれない。

決めたら即行動。

僕は辺りに何かないか歩き始めた。

 

 

 

 

 

Side アレクサンドル

 

今までずっと探し続けていた最後の王の謎も解き明かした。

俺だけの力じゃないのが心残りだが・・・。

 

次の調査に向かおうとしている時、ある報告が入った。

何でも新たな神殺しが誕生したらしい。

場所は日本。

よりにもよっていけ好かないあいつのいる所だ。

その時は俺には関係のない事だと気にも留めていなかったが、次々に入ってくる情報はあまり無視できない物であった。

 

魔王デヤンスタール・ヴォバンの再来。

 

パオロ率いる赤銅黒十字に対して無茶な命令。

日本の神殺し草薙 護堂の獲物の横取り。

ほんの数日前のサルバトーレ・ドニとの決闘。

 

まだ生まれ変わって数ヶ月という短い期間にこれだけの事をしでかした。

あの戦いで死んだヴォバンの再来というのも頷ける。

 

そして昨日・・・あの女から一つの手紙が届けられた。

その内容は今でも見なかった事にしたい。

 

『明日かの噂の王を連れて行きます。

 楽しみに待っていてくださいね。』

 

ふざけている。

無視しようかと思ったがこの辺りに被害を出すわけにはいかない。

俺は幹部連中に住民を含めて全員避難させた。

 

そして今日・・・現れたのはサルバトーレとの決闘中継でも見た少年。

見た目は優しそう・・・いや、弱そうに見える。

あの容姿で魔王の再来かと思ったものだ。

 

「御初に御目に掛かります。

この度新たに神殺しとなりました、神藤 昴と申します。

先達に当たるアレクサンドル様にご挨拶に伺いました。」

 

丁寧に挨拶をしてきた。

神殺しという者は決まって何処か可笑しいものだ。

容姿は良く見えてもあの中華女の様に振る舞いが自分勝手などよくある話。

 

「挨拶だと??

 俺にも勝負を挑みに来たという訳か・・・生憎俺は忙しい、他を当たれ。」

 

大体の内容を予想した俺は突き放し無駄な時間を終わらせようとした。

そこの待ったをかけたのは・・・今回の首謀者の女だった。

 

「だから少し待ちなさい、アレクサンドル。

 あなたともあろう御方が噂話を真に受けて、真実から目を背けるのですか?」

 

普段ならいつもの様に聞き流す挑発だったのだが、なぜか今回は心の何処かで見極めなくてはという気持ちがあった。

あの女に言われたという所が気に食わなかったが・・・仕方がない。

 

俺は噂話に踊らされていた事に気付かされた。

この少年・・・神藤 昴を見誤った。

・・・恐らく噂の殆どが出鱈目だろう。

そう判断できるだけの意思がこの少年には感じられた。

 

真っ直ぐな視線。

目上に対する気配り。

少年らしからぬ対応。

 

どれをとっても素晴らしいに尽きる。

・・・まぁ、偶に少年らしい所も見受けられたが。

 

今まで会った事の無い神殺しだ。

興味を引かれたから俺らしからぬ事をしてしまったのだろう。

もう少し話してみたくなり昼食に誘ってしまった。

あの女の顔にむかついてしまい話す事が出来なかったが・・・。

 

そして今のおれの状況を決める出来事が起こった。

 

食事を終わらせた神藤 昴が、我が結社の収集品を見たいと言い出したので案内した。

ここにあるのは俺の集めた物ばかり。

今見せている物は一般公開している物だ。

俺は離れて観察していたがその時の様子は何処から見ても年相応の少年にしか見えなかった。

 

しかし立ち止まると此処に来てから見た事の無い鋭い視線でその展示物を見ていた。

俺にもあの感覚がわかる。

恐らく神殺しとして何か感じ取ったのだろう。

気になって近づくと、そこに展示していたのは北欧神話に出てくる毒蛇ヨルムンガンドの事が書かれた石版だった。

・・・確か放置されていたスウェーデンの結社から拝借した物だったか。

 

後ろから声を掛けると驚かれたがすぐに気付いた事を話してくれた。

この石版、力を放っているらしい。

その指摘に俺もすぐさま確認した。

よく感じてみると確かに他の物より力が強い。

いや・・・徐々にその力が強くなっている。

たったこれだけの変化・・・恐らく力を出し始めたばかりだ。

 

思わず問い詰めるような形で聞いてしまった。

如何して気付いたのか・・・。

 

答えに「なるほどな」と納得した。

権能の力ならあり得る話だ。

今までただの一般人だった此奴がこうも簡単に違いに気付くなどそれ位しか考えられん。

 

スウェーデンから遠く離れたこの地でも力の反応が出始めた。

という事は、現地ではもうすでにもっと大きな力の反応があるはずだ。

 

しばし黙って考えを纏めた。

 

いつもなら一人で行く所だが此奴の権能はかなり役に立つ。

それに此奴なら俺の考えを察して行動できる。

そう判断して此奴を連れて俺はスウェーデンに飛んだ。

 

 

 

石板の発見場所・・・スウェーデンのとある海辺。

予想通りかなりの力が感じ取れる。

俺でも此処まで感じているのだ・・・此奴ならもっと強く感じているだろう。

 

そして見つけた。

少し歩いた所にある崖の上。

その崖から見下ろした所に人一人通れるほどの穴を。

 

これ以上は迷惑だろうと、そして調査の邪魔だと判断して俺一人で穴に入る。

穴の中は思った以上に暗く深い。

しかも波がちょうど当たる位置に開いている穴なのですでに全身海水で濡れている。

足元も膝下辺りまで浸水している。

ここの長時間の調査は厳しいと判断して早速中に進む。

 

穴の中は洞窟になっていて、かなり奥が続いている。

神殺しは夜目が利くから明かりが無くとも困らない。

 

ずっと続く一本道。

石板が出て来ていた事から遺跡かと予想していたがどうやら違うみたいだ。

遺跡であるならばもっと道が複雑なはずである。

壁も何かが彫られている訳ではない。

 

少し違和感を覚えながらさらに先に進む。

この先から神に準ずる力が感じられる為、間違っている訳ではないだろう。

洞窟が深くなるにつれて通路の幅が広くなる。

この洞窟は起伏が激しい。

初めは下っていたが次は急な坂道だった。

その下りで冷たい海水とおさらば出来た。

そして今はずっと下っている。

 

 

少しして漸く最奥部に辿り着いた。

そこはちょっとした広間になっていてかなり広い。

注目すべきはその中央。

不自然に大きな石が置かれ、その石がこの力の発信源となっていた。

恐らくこれを壊せばヨルムンガンドが復活、もしくは誕生するのだろう。

 

ここが遺跡ではない事から、人に封印されたという線は薄い。

それにこの辺りに現れたという記録も無かった。

 

・・・ならば如何して此処にこんな物があるのか。

 

いくつか考えはあるが、どれも決定性に欠ける。

手っ取り早いのはこの石を破壊してヨルムンガンドを呼び出す事だが・・・。

神獣は決まって言葉を話さない。

神であれば何かしらの情報を手に入れる事が出来るが・・・。

それにヨルムンガンドは毒蛇の化物だ。

周囲の事を考えたらやめておいた方がいい。

そう判断して今回はここまでにして外に出る事にした。

 

その時だった。

 

しっかりと持っていた筈の石板が俺の手から離れ地面に落ちたのだ。

地面に落ちた石板はあっけなく割れた。

その瞬間嫌な予感が全身を駆け巡った。

予感を頼りに視線を石に向ける。

するとどうした事だろう・・・石に罅が入っていた。

この石版が石を壊す条件だったのか、石板によって封印されていたのかはわからない。

 

だがまずい。

どうしてこうなった。

 

次の瞬間石は砕け散り、広間に凄まじい力の奔流が流れ込んできた。

俺はすぐさま意識を切り替え、最善を尽くす為次の行動に移るのだった。

 

 

 

 

 

Side 昴

 

海辺を後にした僕は、人または家を探して道に出ていた。

だがしかし・・・この辺りは街灯も疎らにしか無く、周囲に何もない。

日本に比べるとかなり暗いのだ。

こんな所では人に会う事なんて出来ないだろう。

 

途方に暮れていた時、道の向こうに一筋の光が見えた。

それはだんだん近づいてくる。

 

・・・車だ!!

 

今日は色んな事(災難)があったけど、天はまだ僕を見捨てていなかった。

こんな所を車が通る何て・・・何て付いているんだろう。

僕は急いで道に出て相手が気付く様に大きく手を振った。

近づいて来る車はそれに気付いたのか、僕の手前2mほどで止まってくれた。

 

乗っていたのは4人。

まずは厳つい顔付きの40代位のおじさん。

2人の背の高いイケメン。

最後に僕と同じ位の藍色に輝く綺麗な髪をした女の子。

 

「あ、あの・・・えっ??」

 

一番に降りて来たのは女の子。

勢い良く僕に向かって来たかと思うと、何処からともなく剣を取り出し僕の喉元に突き付けて来た。

・・・思わず体が反応しそうになったけど我慢した。

 

「貴様何者だ!!」

 

ちょっと怖いけどこれ位なら簡単に対処できるから気にしない。

剣を突き付けられて動けないでいると残りの人達も車を降りて来た。

全員僕を警戒しているけど、厳ついおじさんだけ表情に出していない。

この辺りは経験だろうな。

 

「落ち着きなさい、ジークルーネ。

 それでは話す事も出来ないだろう。」

「・・・わかりました。」

 

ジークルーネと呼ばれた彼女は渋々ながらも剣を収めてくれた。

だがその視線は僕が不審な動きを見せればすぐにでも剣を抜くと、そう言っている様に見えた。

彼女が下がった事で彼女を注意したおじさんが前に出てきた。

顔は厳ついがその雰囲気には何処か優しさが滲み出ている。

 

「突然すまなかったね。

 ところで君は誰だい?

 どうして此処に居るのかな?」

 

優しく問いかけてくる彼。

僕はどう返すか迷った。

 

本当の事を言っていいのか。

少し様子を見た方がいいのか。

彼らがどういった人物なのか。

 

返事に困っていると、彼がさらに言葉を続ける。

 

「この辺りはある御方の指示で我々が封鎖しているんだ。

 それにこの辺りは誰も住んでいない。」

 

あぁ、そう言う事か。

彼らはあの石版を発見した結社の人達だ。

指示した人もアレクさんだろう。

カンピオーネの指示だし、そりゃ必死にもなるか。

 

そう判断して僕は名前を名乗る事にした。

 

「・・・・僕は神藤 昴といいます。」

 

これだけ言えばわかるだろう。

・・・今の僕は色んな意味で有名だし。

 

実際彼は気付いたみたいだ。

後ろの人達は名前だけ言った僕に訝しげな視線を送っている。

唯一気が付いた彼は恐る恐るといった感じに聞いてきた。

 

「・・・も、もしかして・・・あなた様は・・・。」

「えぇ、あなたの想像している通りの人間だと思います。

 僕もあなた達に指示した人に連れられて此処に来ました。

 あぁ、そのままで構いませんからね。」

 

話の途中で跪こうとしたから慌てて付け加える。

今までの雰囲気は何処へ行ったのか、彼からは恐怖しか感じない。

・・・ここでも僕は魔王の再来と思われているのかな。

少し落ち込んだが気を取り直して話を続ける。

 

「僕のやる事はもう済んだみたいなので・・・もう勝手にしてくれと言われました。」

「貴様はいったい何を言っている!!」

 

とうとう彼女が吠えた。

名前だけ言って話を続ける僕は確かに不信だろうしね。

僕を警戒する事だけに気を向けていたからか、彼の様子に気付いていない。

彼女が声を上げた瞬間その顔が青くなったのだ。

 

「も、申し訳ありません。

 どうかこの者の命だけは・・・。」

「大丈夫ですよ。

 別に気にするような事ではありませんから。

 僕の事を知らないのなら仕方ないです。」

 

すぐさま謝って来る彼にそう諭すと、驚いた表情をした。

その後すぐに嬉しそうにお礼を言ってくれた。

そんな様子に後ろに控えていた人達は困惑している。

 

「ヨ、ヨルダン様、どうしてこの様な何所の馬の骨とも知れない輩に頭を上げるのですか!!」

「馬鹿者!!

 この御方は新たに誕生されたカンピオーネ、神藤 昴様だぞ。」

 

さすがの彼女も僕が誰だか漸くわかったみたいだ。

その表情を一気に青くした。

 

「こ、この方が、カ、カ、カ、カンピオーネ・・・。」

 

残った二人もその表情を恐怖に染めた。

・・・うん・・・ショックだ・・・。

 

彼女達は止める間もなく僕の前にそろって膝をついた。

そこにさっき止めたヨルダンさんも加わってしまった。

 

「し、し、知らなかったとはいえ、も、申し訳ありませんでした。」

「えっと・・・ジークルーネさんでしたっけ?」

「は、はい。」

 

あぁ・・・とても怯えてしまった。

 

「別に気にしていませんから。

 皆さんもそんな所に膝を付いたら服が汚れますよ。

 そんな畏まらなくてもいいですから、立ってください。」

 

しかし誰も動いてくれない。

どうしようかと悩んでいた時ふとヨルダンさんと目が合った。

彼は何となくだろうけど僕が噂の様な人物じゃ無いと分かってくれたのかもしれない。

期待を込めて頷いてみると、彼も頷き返してくれた。

 

「皆立つんだ。

 神藤様が言った事を聞かない訳にはいくまい。」

 

そう促し、自分が率先して立ってくれた。

 

ありがたい。

・・・あの状態じゃあ遣り辛くってしょうがない。

 

残った人達も恐る恐る立ってくれた。

・・・その表情は恐怖に染まったままだけど。

 

「先程は申し訳ありませんでした、神藤様。」

「も、申し訳ありませんでした。」

 

再び謝って来るヨルダンさんとジークルーネさん。

残りの二人も一緒に頭を下げる。

 

「さっきも言いましたが、別に気にしていませんよ。

 それよりも皆さんはどうしてここに?」

 

このままじゃ、話が前に進まないと判断して話題を変えた。

 

「我々は数時間前にいらっしゃったアレクサンドル様の指示でこの辺りの封鎖の為に動いておりました。

 私達は最後の点検の為に車で見回っていたのです。」

 

うん、予想通りだ。

 

「その時アレクさんが持ち出した石板の事も聞かれましたよね?」

「はい、その通りです。

 数日前から起こっているこの辺りの異変には気付いていました。

 アレクサンドル様のお話で漸く私達は理由が分かったのです。

 ・・・どう考えても私達には手に余る事案です。

 だからアレクサンドル様が来て下さって渡りに船でした。」

 

彼らにとってはそうだろう。

エリカさん達に聞いたけど、普通神獣と戦うのだって一般的な魔術師にとったら命懸け。

それが神をも殺した逸話がある奴だったら尚更だ。

 

「神藤様はどうして此処へ?」

「さっきも言った様に僕は今回の調査にアレクさんに連れてこられたんですよ。

 僕はある権能のおかげで他の人より色々と敏感ですから。」

 

この人達に権能の事を詳しく言う必要はないだろう。

エリカさん達にもあまり言うなと言われているし。

 

 

 

ある程度両者の事が分かった所で僕の頼みを言おうとした時だった。

突如地面が揺れたと思ったら、僕がさっきまでいた崖の方から巨大な神力が吹き出した。

僕は崖の方を注視しながら倒れないように踏ん張る。

他の人達も同じ様にしている。

暫く経っても揺れは治まらない、それどころかだんだん大きくなっている。

 

アレクさんが調査しているあの洞窟で何かあったのだろうか?

あの人がそう簡単に危険な事をするとは思えないけど・・・。

 

崖の方で何かが崩れる音が聞こえた。

この揺れで崖が崩れた?

 

揺れが大きくなる中、不安が心を支配していく。

不意に揺れが止まった。

それと同時に崖から放たれていた力も止まり、代わりにアレクさんの氣がこの辺りまで伝わって来た。

 

これは・・・アレクさんが権能を使った?

 

何の権能かはわからないが、アレクさんは無事みたいだ。

当たり前か・・・神殺しになった人がそう簡単に死ぬ訳ないな。

 

揺れも収まった事だし状況を確認する。

ここにいる人達は全員無事だが、その表情は優れない。

突然の地震に崖の方からの神力。

魔術に関わる人なら何が起きたか分かっただろう。

 

恐らく神獣ヨルムンガンドが目覚めた。

 

僕も何かあった時の為に準備をしておいた方がいいのかもしれない。

そう判断して、未だ放心状態の彼らに声を掛ける。

 

「すみません、頼みたい事があるんですけど・・・。」

「は、はい、何でしょうか。」

「赤銅黒十字と連絡を取りたいのですが、電話を貸していただけませんか?」

「それでしたら・・・。」

 

それに反応してくれたのはジークルーネさん。

さっきの事があったからか、僕の事はもう怖くないみたいだ。

自分の携帯電話を取り出し僕に渡そうとしたその時・・・。

 

ピシャヤヤヤァァァン!!・・・ドゴォォーーン!!

 

今まで経験した事の無い規模の落雷が落ちた。

それと共に先程の比ではない神力がこの辺り一帯を包み込んだのだった。

 

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