正義の魔王   作:しらこつの

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決着

Side 昴

 

再開したトールとの戦い。

現在は遠距離からの打ち合いを繰り広げていた。

 

「はあぁぁぁぁあぁぁ!!」

「おぉぉぉぉおぉぉ!!」

 

僕は炎の塊を打ち出し、トールは稲妻を落とす。

トールはミョルニルを使い炎の塊を打ち落とし、僕は稲妻に炎の塊をぶつけ相殺していく。

 

戦況は拮抗していた。

どちらも決め手に欠け、この状況を打破出来ずにただ時間と労力だけが流れていく。

 

しかし僕とトールの心持ちは正反対だ。

トールは嬉々としてミョルニルを振り回すのに対し、僕は全身から汗を流し、息を乱しながら戦っている。

神と神殺しでは基本的な体力が違う。

今までの戦いもあり僕の体力がすでに底を尽きかけているのだ。

 

くそっ!!

このままじゃだめだ!!

 

長期戦になれば早々に僕の敗北は必至。

それはトールの様子を見れば明らかだ。

あれだけの怪我を負っているのに、攻撃が止む事は無く僕の攻撃も全て防がれる。

 

「如何した!!

 お主の力はこんなものか!!」

 

トールは大声を張り上げ、僕を煽りながら更なる攻撃を仕掛ける。

あの一撃程の威力は無いが、それでも徐々に威力が増してきている。

それに対応しようとするが削られた体力がその反応を鈍くする。

 

「しまった!!」

 

稲妻に向かわせた炎の威力が足りず打ち破られた。

このままでは直撃する。

当たれば勝負が決する威力があり、その上未だ僕の足は動かない。

僕はとっさに小さな炎の塊をすぐ近くに作り出す。

そして稲妻が当たる前にそれを爆発させ自分自身を吹き飛ばした。

 

「うぐっ!!」

 

威力を調節したとはいえやはり痛みはある。

というより爆発させるなんて初めてやった。

・・・とっさの判断だったけどうまくいって良かった。

 

僕が吹き飛んだ次の瞬間さっきまで僕がいた所に稲妻が落ちた。

そこには小さなクレーターが出来ていた。

冷や汗を流しながらすぐさま体勢を立て直しトールと対峙する。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」

 

そろそろ限界だ。

早い内に何とかしないと・・・負ける。

 

「何じゃもう終わりか??」

「・・・ま・だま・だ・・・まだまだぁ!!」

 

力を振り絞りさらに炎の塊を作り出す。

トールはそれを見て獰猛に顔を歪める。

 

「ハハハっ!!

 そう来なくてはっ!!」

 

そしてトールはミョルニルを握り直すとそれを振る事無く僕に向かって歩き出した。

その光景に僕は戦慄に包まれる。

 

ここで接近して来るのかっ!!

 

足と腕が一本ずつしか使えないこの状況で接近戦は不可能だ。

トールはそれを理解しているはず・・・勝負を決めに来たのだ。

距離を取る為片足で移動を試みるが徐々に距離を詰められている。

この状況を打破する為思考をフル回転させ、なるべく近づかせない為に攻撃を加えている時だった・・・。

 

ガラガラガラッ!!

 

突然僕達とは別の氣の高まりと共に僕の後方から何かが崩れる音が聞こえた。

僕達は動きを止め音のした方を見る。

あの洞窟のあった崖が崩れていた。

そして感じ取れた氣はアレクさんの物。

・・・いやそれだけじゃない。

微量だが別の者も氣も感じ取れる。

・・・・・恐らくヨルムンガンドの物だろう。

それはトールも感じ取ったみたいだ。

 

「ふんっ、すでにあの蛇は他の者に倒されたか・・・。

 ・・・・・まぁいい。」

 

そう言って再び僕に視線を向ける。

 

「お主を倒したら次はそやつを倒せばいいだけの事!!」

 

トールは闘志を漲らせ再び歩き出す。

アレクさんの事も気になるが、今はそんな事を気にしている場合じゃない。

僕もさらに攻撃を加えるがトールの足を止める事が出来ない。

 

・・・一か八かだ。

 

僕は攻撃する手を止め、氣を高める事に集中する。

あの一撃を・・・トールの脇腹を焼切った太陽の炎を使う為に。

 

トールも僕の氣の高まりを感じ取ったのだろう。

少し警戒しながらも楽しそうに笑みを浮かべる。

 

「まだそれほどの力を隠していたか!!」

「これで決めるっ!!」

 

この距離なら避けられない。

最大威力まで高めた炎をトールへ飛ばす。

 

「いっけぇぇぇぇぇぇ!!」

「嘗めるなぁ!!

 ぐおぉぉぉおぉぉおぉぉ!!」

 

トールの神気も高まり僕の炎を迎え撃つ態勢に入る。

そこで僕は自分の目を疑った。

帯電していたミョルニルから炎に向かって稲妻が奔ったのだ。

それは今迄の稲妻に比べたら微々たる威力だ。

一瞬競り合ったが最終的に炎が稲妻を消し飛ばした。

あの程度で受け止められる威力ではない。

目の前で爆発が起こり、視界を遮る。

 

今できる最大威力で撃ったのだ。

これで決まってくれ・・・。

 

体力は尽きもうすでに体に力が入らない。

 

しかし・・・その願いは届かなかった。

砂煙が晴れたその先には左腕を無くし満身創痍ながらも立っているトールの姿があった。

 

「なっ!!」

 

体の中心を狙って放った筈!!

どうして左腕に攻撃が当たっているんだ!!

 

その答えは獰猛な笑みを浮かべたトールが教えてくれた。

 

「やってみるものだな。

 少々お主の真似をさせてもらった。」

「・・・ま、まさかっ!!」

 

トールの笑みはさらに深くなる。

 

「ミョルニルによる稲妻はお主の攻撃を止める為ではない。」

「・・・僕の攻撃を逸らせる為。」

「左腕は無くなってしまったが・・・我の勝ちだ、神殺し。」

 

トールはすでに僕の目の前に立っている。

もう真面に動く事さえ出来ない僕。

 

だけど、最後まであきらめない!!

 

動かない体でも視線は力強くトールを見据え、氣を高め戦う意思を見せつける。

そんな僕の様子にトールが高らかに叫ぶ。

 

「その気概はよし!!

 だが・・・もう勝負はついている。

 潔く・・・・・散れ!!」

 

その言葉と共にトールがミョルニルを振り下ろす。

最後の一撃が迫る絶体絶命の状況であろうと思考を止めない。

極限状況の中でさらに思考が加速する。

 

迎え撃つ事は体が動かないから無理だ。

また自爆覚悟で権能を使う?

いや、ダメだ。

今それをしたらもう立ち上がれない。

どうする・・・どうする・・・どうする・・・。

 

ミョルニルがもう目の前に迫り、今にもこの勝負に決着が着こうかという時だった。

視界の端で何かが通った気がした。

そして・・・。

 

「今すぐ息を止めろ!!」

 

頭上から怒鳴り声が掛かった。

僕は声の主の方を確認する事なく息を止める。

そして僕達の目の前に白い翼を持ち下半身が蛇の姿をした女性が現れた。

彼女はその場で毒々しい色の息を吐き出し、役目を終えたとばかりに消え去った。

その毒々しい吐息をトールが吸い込んだ瞬間・・・。

 

「うぐぅぅぅ・・・これは奴の・・・。」

 

トールが苦しみ出した。

僕はあの時聞こえた声の主を探す為顔を上げた。

予想はついている。

この周辺で神を苦しめる事が出来る人なんて彼しかいない。

 

黒王子 アレクサンドル・ガスコイン

 

視線を向けた先にはその人の姿があった。

彼は些か苛立ちながら此方を見据えている。

その鋭い視線は『早く終わらせろ』と言っている様に感じた。

 

・・・アレクさん・・助けてくれたんだ。

 

そう思った瞬間様々な感情が溢れて来た。

九死に一生を経た安堵。

こんな状況をアレクさんに見られた情けなさ。

アレクさんの手を煩わせてしまった不甲斐無さ。

そしてそんな自分に対する怒り。

 

あぁ・・・情けない。

苦戦している所をアレクさんに見られてしまった

あぁ・・・不甲斐無い。

アレクさんの手を借りてしまった。

そして・・・。

助けられ命拾いした事に安堵している自分が許せない。

 

どうしてこんな事になっている。

僕の力が足りなかったから?

 

違う!!

僕はまだ全てを出し切っていない!!

 

相手が最強の戦神と言われるトールだからか?

 

違う!!

そんな事は関係ない!!

僕は・・・僕は神殺しだ!!

 

だったら力を振り絞れ!!

思考を止めるな!!

全てを出し切れ!!

 

体は動かないが戦う方法ならまだある。

アレクさんを見て思い付いた。

今僕が出来る唯一の攻撃方法。

 

トールが苦しんでいるこの時間を利用して僕は自分の体の内に集中する。

体にめぐる氣を・・・その全てを掌握していく。

背に出ていた日輪も体の中に入る。

そして・・・。

 

 

 

次の瞬間・・・目覚めた。

・・・新たな僕の権能の使い方に。

 

僕が集中している間にトールも苦しみから解放された様だ。

頭上に佇むアレクさんを警戒しながら僕に向き直る。

 

「奴が蛇を倒した者か・・・あの毒も奴の・・・。

 つまらぬ事を・・・気が削がれたが・・まぁいい。

 どの道、次は奴の番であり・・・貴様はここまでなのだからな。」

 

そう叫び再びミョルニルを振り被る。

 

「邪魔が入ったがお主との戦いはここで仕舞だ。

 ・・・さらば!!」

 

迫り来るトールの攻撃。

僕はその場から一歩も動く事なくトールを見据える。

その顔に不敵な笑みを浮かべながら。

 

 

 

 

 

僕はミョルニルに叩き潰された。

 

 

 

 

 

しかし次の瞬間ミョルニルにより叩き潰されたその場から凄まじい火柱が立ち上る。

僕を倒したと歓喜を浮かべていたトール。

だがその表情は驚愕に変わる。

 

「な、何だこれはっ!!」

 

火は更に強まりトールを飲み込んだ。

 

「ぐうぅぅぅ・・ぐうおぉぉぉ。」

 

トールの悲鳴が辺りに響き渡る。

これが僕の新しい力・・・体を炎に変える力。

切掛けはアレクさんの権能の中に体を自在に雷に変える物があったと思い出したから。

一か八かだったけど何故か成功すると確信があった。

 

トールは腕を振るい何とか炎を振り払おうとするがその手は空を切るだけ。

この炎全てが僕であり、その全てを僕の意思で操り動かす事が出来るのだ。

振り払える訳が無い。

方法があるとすれば・・・。

 

「ぐうぅぅぅ・・・嘗めるなぁぁぁぁぁ!!」

 

トールは雄叫びを上げると全身から雷を放った。

それと同時に僕の体に激しい痛みが襲う。

 

「ああぁぁぁぁぁ。」

 

覚悟はしていたが想像以上だ。

この使い方はアレクさんと同じ様に物理攻撃には無敵を誇るが、魔術の様な特殊な攻撃にはとても弱いのだ。

・・・やはり都合よくは行かないらしい。

 

僕は痛みに耐えながら、さらに氣を高め炎の出力を上げる。

ここからは我慢比べだ。

・・・どちらが先に力尽きるか。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「ぐおぉぉぉぉおぉぉぉ!!」

 

辺りは炎と雷が入り乱れ、最初の景観が見る影もない。

常人がその場に居たら一瞬で蒸発してしまうであろう温度の中で僕トールが凌ぎを削る。

元より力尽きる一歩手前だった僕。

少しずつ・・少しずつだが押され始めたその時・・・。

 

この場に僕の大切な・・・命を賭けて守るべき人達の氣があるのを感じた。

そして・・・。

 

「昴!!」

「昴君!!」

 

2人の声を聴いた瞬間残った全ての氣が解き放たれた。

押され気味だった炎はトールの放つ雷さえも焼き尽くし、さらに燃え上がる。

 

「ぐぅうおぉぉぉぉぉ・・・・・・・・・は、はははははっ。」

 

トールからの雷はもう感じられない。

そしてトールの悲鳴は笑い声へと変わった。

 

「我の負けだ・・・・・・神殺し・・・いや神藤 昴よ。」

 

そう言われて僕も気付く。

炎の中でトールの体が徐々に崩壊し始めているのを・・・。

それに気付きながらも、僕は炎を弱める事はしない。

 

「少々邪魔が入りはしたが・・・いい死闘だった。」

 

トールは上空にいるアレクさんに一瞬視線を送りながら話す。

 

「今回は我の負けだ。

 ・・・だが、次は負けぬ。

 覚えておけ・・・お前の命を貰うのはこのトールだという事を!!」

「・・・・・負けません。」

 

その言葉を最後にトールは燃え尽きた。

それと共に僕は力尽き気を失った。




本当はもっと戦闘描写が上手く書ければいいのですが・・・
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