駄文ですが、楽しんでいただけると幸いです。
Side エリカ
スウェーデンに到着後、道中で叔父様から連絡を受け現場へ急行していた。
現に天候は悪く、辺りには神の神気を感じる事が出来る。
「・・・やっぱりこうなってしまったわね。」
「連れていかれた時点で何か起こるとは思っていたけど・・・。」
「仕方ありませんわ・・・それが神殺しという物です。」
途中詳しい話を知っていると言う現地の結社へと寄る。
そこでは表情を落とした現地の結社メンバーが私達を待っていた。
「・・・お待ちしておりました。」
「挨拶はいいわ・・・それよりも・・・。」
「わかっております。」
此処のリーダーと思われる男性が今の状況を掻い摘んで教えてもらう。
その大方は私達が予想していた通りの物だった。
状況を確認し終えたので、彼らに指示を出す・・・これも大手結社の役目なのだ。
「私達はこのまま神藤 昴の下へ向かいます。
あなた達は引き続き辺り一帯の立ち入り禁止を行って下さい。」
「・・・畏まりました。」
私達が早速移動しようとした時・・・。
「私は先に現地に向かいます。」
アリス様は一言そう告げると消えた。
幽体であるアリス様。
今まで私達に付き合って一緒に行動して下さっていた。
しかし、ここまで来たらもう着いて動く必要はないと判断し先に向かったのだろう。
私達もアリス様に追いき、昴と合流する為急ぎ移動を開始した。
彼らの戦っている場所はこの近くの海辺。
その場に近付くにつれて、戦闘音と共に感じ取れる神気と昴の呪力が高まっていく。
最愛の人が戦っていると思うと居ても立っても居られない。
それは隣に座っている馨さんも同じだろう。
現場が近くなり走るスピードが上げる。
到着した現場で目にした物は昴が今にも巨大な大男に攻撃されそうな姿だった。
「なっ!!」
「まずいっ!!」
状況を把握するや否やすぐさま己の武器を手に全速力で駆け出す。
しかしその前に大男・・・まつろわぬ神の攻撃が昴へ届く。
・・・だがそうはならなかった。
「今すぐ息を止めろ!!」
上空から鋭い声が掛かる。
その声と共に昴達の前に白い翼を持ち下半身が蛇の姿をした女性が現れる。
「あれは確か・・・。」
「あれはアレクサンドルがよく使う権能の1つ『無貌の女王』です。」
私の言葉に被せる様に続けたのはいつの間にか隣に立っていたアリス様だった。
彼女はこちらに目を向ける事なく昴達の方を凝視しながら話す。
「戦闘だけでなくその他様々な事に使える便利な権能ですね。
ですが・・・。」
しかしアリス様の言葉はそこで途切れる。
アレクサンドル様の権能『無貌の女王』はその場で息を吐きかけ消え去った。
ただしその吐息は毒々しい色をしていたが・・・。
息を吹きかけられたまつろわぬ神は苦しみ出した。
まつろわぬ神の様子からあの吐息はやはり毒だったみたいだ。
それを見て一番驚いたのはアリス様だった。
「そんなまさか!!
・・・あれはヨルムガンドの力。
神獣の力が権能に昇華されるなんて・・・。」
小さな呟きを漏らすアリス様の様子からただ事でないのがわかる。
だがそれを気にしている余裕はない。
昴はかなり傷ついている。
あの攻撃を避けようとしなかったのはもう体を動かす程の体力が残っていないから。
今すぐ助けに行かなくては・・・。
馨さんも同じ判断をした様で私を見て頷いてくれた。
だが・・・。
動こうとしたその時昴から感じられる呪力が変化した。
今まで現れていた背中の日輪が消え、昴から感じられる呪力が高まったのだ。
権能を消した事に最初は心配だったがそれもすぐに無くなった。
「心配なさそうね。」
「そうだね。
この状況であんな顔付きが出来るんだからね。」
いつの間にか毒から解放されていたまつろわぬ神が再び昴に襲い掛かる。
迫る電気を帯びる槌を前にしても不敵に笑う昴。
そして次の瞬間昴が叩き潰された。
ごおおぉぉぉぉぉぉ!!
ミョルニルにより叩き潰されたその場から凄まじい火柱が立ち上る。
昴を倒した事に歓喜を浮かべていたトール。
だがその表情は一瞬で驚愕に変わった。
そして立ち上った火柱は更に強まりトールを飲み込んだ。
「・・・凄いわね。」
「あぁ・・・そうだね。」
「昴様の権能にはあの様な使い方があったのですね。」
「いいえ、私達も初めてみます。
恐らくこの戦いの中で見出したのでしょう。」
「その切掛けは・・・。」
馨さんの言葉に私達は全員顔を上へと向ける。
そこには表情を驚きに染めたアレクサンドル様の姿があった。
「アレクサンドルなのでしょうね。
あれは彼の権能の1つ『電光石火』の雷化にそっくりです。」
「普通なら他の神殺しの権能の真似をするなんて出来ない筈なのに・・・。」
「それを可能にしたのは昴君の魔力コントロールの賜物だろうね。」
「・・・神藤 昴様・・・・・・本当に規格外なお方ですわ。」
そんな事を話している間も戦いは続いている。
全身を炎へと変え攻撃を繰り出す昴に対しまつろわぬ神も反撃に出た。
「さすがは北欧神話最強と言われる戦神・・トールですわね。
すでにあの状態への弱点に気付きましたか。」
アリス様がトールと呼んだまつろわぬ神は全身から雷を放ち始めた。
雷神トール・・・あの容姿と雷、そして手に持つ槌「ミョルニル」から全て一致する。
そんな大物と昴が戦っていたなんて・・・。
「ああぁぁぁぁぁ。」
雷を浴びた瞬間昴から悲痛の声が上がる。
「あなた達も知っているでしょう。
アレクサンドルの雷化は物理的な攻撃は効かなくなり、そのまま攻撃できるという利点もありますが、大きなデメリットも存在する事を。」
「・・・魔術的な攻撃への態勢が極端に低い事ですか?」
「つまり昴君の炎化も同様だと?」
「・・・あの叫び声からしてそうなのでしょうね。」
恐らく激しい痛みに見舞われているだろう。
だが昴の炎化が解かれる気配はない。
昴はわかっているのだ・・・ここが最後の勝負だと。
しかし徐々に炎を勢いが無くなり始めた。
「あのままだとまずいわ!!
昴!!」
「昴君!!」
思わず叫び彼の名を呼んでいた。
次の瞬間・・・彼の炎がすごい速さで勢いを増した。
その様子を見たアリス様は・・・。
「あらあら・・・愛の力かしらね。」
と言って微笑んでいた。
その後炎の勢いは衰える事は無くトールは燃え尽き、昴の勝利が決まった。
炎化から元の姿に戻った昴はそのまま倒れこんだ。
私達は急いで駆け寄る。
私達が昴の下に辿り着いた時には既にアレクサンドル様が上空から舞い降りていた。
「ふん・・・。」
彼は昴を観察する様に、そして何処か暖かい視線で見つめていたが、私達が近づいて来た事に気付くと顔を背けた。
そして私達も昴の下に漸く辿り着く。
昴の状況はかなり酷い物だった。
服の多くが原形を留めておらず、体も全身至る所に火傷を負っている。
特に右腕と右足の状態が悪い。
他とは火傷とは違い大きく焼け爛れてしまっている。
これは・・・神殺しとはいえ早く治療をしなければ・・・。
そう判断しアレクサンドル様の前なのも関係無いと馨さんと共に動こうとした時、アレクサンドル様が声を掛けて来た。
「心配しなくともその程度の傷ならば少し時間は掛かるが完治する。」
顔は背けたままの状態で話し出す。
その様子をアリス様はとてもいい笑顔で見守っている。
「普通ならば治療が必要だろうがよく見てみろ。
そいつは気を失いながらも自らの呪力を活性化させ治癒力を高めている。」
そう指摘されよく見てみると僅かだが昴の体から呪力を感じ取れた。
これにはアリス様も驚いている。
「あれだけの戦闘の後にも関わらず、治療用の呪力を残しておくとは・・・こいつの用意の周到さには目を見張る物があるな。
まぁ、神殺しの本能がそうさせたという可能性もあるがな・・・。」
昴の規格外さをこんな所で再認識させられたが、そうは言ってもこのままという訳にはいかない。
私達は予定を変える事無く昴を運ぶ為に動く。
年頃の男の子にしては小さな体。
その体で魔術界から畏怖され、神殺しとしての宿業を背負っている。
そんな小さな体を刺激しない様優しく背負う。
いつかこの子の背中を守れる位力を付けたいと切に願いながら・・・。
「アレクサンドル様、アリス様。
私達は先に失礼させて頂きます。」
「昴様にはとても面白い物を見させて戴きました。
何か力になれる事がありましたら、何でも仰って下さい。
また御逢い出来る事を心から願っております・・・そう伝えておいてください。」
アリス様は眠る昴に視線を向けながら告げる。
私達は深く頭を下げその場を後にしようとした。
「・・・神藤 昴に伝えておけ。
・・・・・一度だ・・・一度だけお前に力を貸してやる。」
突然告げられた言葉が理解できず声の主アレクサンドル様の方を振り返るがそこにはもう彼の姿は無かった。
この現状にアリス様は声を上げて笑い出す。
「うふふふ、随分気に入られたみたいですね、昴様は。」
「えっ??」
「いいえ、何でもありません。
それよりも早く休ませてあげて下さい。」
「・・・それでは本当に失礼します。」
アリス様達の言葉が色々と気になったが、今それを聞く訳にもいかず私達は本当にその場を後にした。
Side 昴
目を覚ますとそこは病院のベッドの上だった。
自分の状況を確認する為に体を起こす。
体には包帯が巻かれ動き辛いが痛みは感じない。
しかし酷使した右腕と直接攻撃を食らった右足は少し痛んだ。
動かす事には問題は無さそうだが、完治にはもう少し掛かるだろう。
ガラッ!!
体の調子を確認していると病室の扉が開きエリカさんと馨さんが入って来た。
2人は僕を見ると表情をほころばせ近寄って来る。
「やっと起きたのね、昴。」
「おはようございます、エリカさん、馨さん。」
「その様子から見るにもう大丈夫そうだね。」
「えぇ、ご心配おかけしました。
もう右腕と右足以外は治っていますよ。」
「でも、本当に心配したのよ。
あなた3日も目を覚まさないんだから。」
「僕は3日も眠っていたんですかっ!!」
「激しい戦闘だったからね、かなり疲れていたんだと思うよ。」
そうか・・・3日も眠っていたのか。
・・・心配かけちゃったな。
「でも得た物も大きかったんじゃないかしら?」
「雷神トールから簒奪した権能。
そして新しい炎の権能の使い方・・・僕達は『炎化』って呼ぶ事にしたけど。」
そして新しい権能。
言われて意識してみれば、確かに僕の中に新しい力を感じる。
・・・今はまだどんな事が出来るか分からないけど。
「確かに新しい権能を感じます。
・・・・・僕は権能を手にする資格があったんでしょうか。」
「昴君は、アレクサンドル様に助けられた事を気にしているのかい?」
「・・・はい。」
「気にする必要は無いわよ。
確かにアレクサンドル様に命を救われたわ。
けど、まつろわぬトールと戦ったのも、倒したのも昴何だから。」
「そうだね。
パンドラ様だってそれが分かっているから昴君に新しい権能を与えたんだと思うよ。」
「・・・・・わかりました。」
すこしもやっとする所はあるけど、今は気にしない事にした。
「アレクさんとアリスさんは?」
「あなたが倒れた後すぐに帰られたわ。」
「御2人共迷惑をかけたので挨拶位したかったんですけど・・・。」
特にアレクさん。
命を助けて貰っただけじゃない。
炎化・・・アレクさんの権能をパクってしまった。
あの時は無我夢中だったけど・・・今考えれば失礼な事をしてしまった。
・・・一言謝りたい。
・・・そしてお礼を言いたい。
・・・怒ってないよね?
少し不安になって来た。
不安そうな僕にエリカさんが教えてくれた。
「御2人から伝言を預かっているわ。」
「えっ??」
「まずはアリス様から。
『昴様にはとても面白い物を見させて戴きました。
何か力になれる事がありましたら、何でも仰って下さい。
また御逢い出来る事を心から願っております。』だそうよ。」
「アリスさんにはこれから沢山お世話になりそうですね。」
その分あっちの要望をそれ以上に聞く破目になりそうだけど・・・。
「アレクサンドル様からは『一度だけお前に力を貸してやる』だそうよ。」
「・・・・・???どういう事ですか???」
「私達にもわからないわ。」
「僕達はアレクサンドル様の事をよく知っている訳じゃ無いからね。」
てっきり僕は『俺の手を煩わせるな』とか『一人で満足に戦う事も出来ないのか』とか『このパクリが』とか怒られる物だと思っていた。
う~~ん・・・アレクさんの考えが分からない。
「この辺りは叔父様に聞いてみるのが一番ね。」
「パオロさんにですか?」
「えぇ、若い頃にアレクサンドル様が起こした騒動に巻き込まれた事があるそうよ。」
「そうだったんですか!!」
・・・知らなかった。
パオロさんもかなりの実力者だからなぁ。
今度武勇伝でも聞きたいなぁ。
「なら昴も起きた事だし結社の方に戻りましょうか。」
「想定外の事で時間を食ったからね。
もう1週間もしたら二学期が始まるよ。」
「・・・あっ、本当だ!!」
気付けばすでに8月も終わりに近付いている。
僕達は結社に戻る為そのまま病院を後にし、イタリアへの帰路を辿った。
「アレクサンドル・ガスコインは捻くれ者であり、全て自分でやろうとする所がある。
だから今回昴君を巻き込み、まつろわぬ神と戦わせてしまった事を『貸しを作った』と考えたんじゃないかな。」
「貸し・・ですか?」
「あの御方の考えは理解できない所が多いから当たっているか分からないけどね。」
結社に戻り今回あった事を報告。
そのついでにあの時疑問に思った事を聞いてみたが・・・うん、やっぱりアレクさんの考えは分からなかった。
でも、また会えると思うし・・・その時にちゃんと謝ろう。
今年の夏休みは充実した日々を過ごせた。
アリスさんとグリニッジ賢人議会という協力者も得る事が出来たし、サルバトーレ卿とアレクさん・・・二人との接点を持つ事が出来たのも大きい。
・・・でもちょっと疲れたかなぁ。
暫くはゆっくりできればいいなぁ・・・。
その後僕達は残り少ない滞在日数を結社の騎士達との訓練やエリカさん達との買い物などに費やした。
そして長くて充実したヨーロッパ旅行は終わりを告げ、僕達は一路日本へ。
新学期に向けて頭を切り替えるのだった。
・・・夏休みの宿題?
うん・・・そんな物は知らないよ・・・。
・・・・どうしよう。
Side アリス
エリカ達が昴様を連れてここを去ってすぐの事。
帰ったかの様に見えたアレクサンドルは未だ近くの海岸に居た。
「随分と昴様の事を気にしているようですね。」
「・・・貴様か、何の様だ。」
突然現れた私に驚く事も無く一瞥すると再び前を向く。
その表情から何を考えているのか読み取る事は出来ない。
そして私の言葉は無視された。
いつもの事なので気にせず続ける。
「いえ、少し伺いたい事がありまして・・・。」
「・・・俺の権能の事か。」
「わかっているなら話は早いです。
あの権能は何なのですか?
あれは確かにヨルムンガンドの力でした。
ですが・・・。」
「・・・神獣の類を倒して権能に至った事は無い・・か・・・。」
「その通りです。
私はあの時自分の目を疑いました。
・・・その事についてはどの様にお考えですか?」
アレクサンドルはしばし悩み、そして顔を私に向けると言い放つ。
「・・・はっきり言うと何もわからんな。」
「・・・・・。」
「だが、とても興味深い。
これから忙しくなりそうだ。」
「・・・・・・・・はあ。」
彼の研究対象がまた増えたみたいだ。
まぁ、この事については私もこれから調べてみるつもりだ。
これが続く様なら、権能を持つ人間が乱立する可能性もある・・・由々しき事態になりかねない。
・・・そうならない事を切に願おう。
「あぁ、それともう一つ。」
「・・・何だ。」
「随分と昴様の事を気にしているようですね。」
「・・・・・何の話だ。」
先程も聞いた事をもう一度言ってみると途端に不機嫌になった。
こういう所は分かり易い方です事。
「あなたがあんな事を言うのは珍しい・・・いえ、初めてではないかと思って。」
「・・・お前には関係ない事だ。」
彼はそう言うと逃げる様にその場を去って行った。
そんな彼の様子に私は笑いを堪える事が出来なかった。
Side アレクサンドル
アリス・ルイーズ・オブ・ナヴァールの前を去った後、俺の先程あの女に言われた事考えていた。
神藤 昴
確かに今までにない神殺し。
あいつと違い自分な立場を理解している。
あいつと違い此方の考えを汲んで行動できる。
他の神殺しに無い物が多く、人間らしさが多く見られる。
今まで会った事の無い神殺し。
今回の件で一つわかった事がある。
あいつは他の神殺しとは違い自分の為に戦っている訳ではない。
・・・何となく思っただけだが間違いないだろう。
俺があいつにあんな事を言った理由はただ一つ。
興味を持ったからだ。
今までの神殺しらしくない神殺し・・・あいつの今後の軌跡に。
それをあの女に言わなかったのは変な邪推をして来ると思ったからだ。
気になる事はもう一つある。
俺の権能を真似自分の力にした事。
普通ならあんな事ありえない。
権能は自分の本質に合わせて姿を変え定着する。
それを自分で新たに編み出し自らの力とした(俺の真似だったが)。
その事がさらに興味をそそった。
それにあいつの権能は役立つものがある。
これから長い付き合いになる予感がする。
そんな考えが頭を過る。
俺は自分の口角が上がっている事に気付く事は無かった。
現在頻繁にインターネットを使えない状況にあります。
その為書き溜めた後投稿する予定です。
なるべく早く投稿出来る様に頑張ります。