「あの、会った事があるって・・・。」
パウロさんは一泊置くとこう聞いてきた。
「そうだね。
まず君はご両親の事をどれくらい覚えている?」
「ほとんど覚えていません・・・。
おじいちゃんには僕が小さいころに事故で亡くなったとしか・・・。」
僕がまだ小さかった頃僕の両親は事故で亡くなったとおじいちゃんは教えてくれた。
両親が亡くなった後、その時は生きてたおばあちゃんとおじいちゃんが僕を引き取ったそうだ。
最初は両親が突然居なくなったことに塞ぎ込んでいたらしく、見かねたおじいちゃんが道場に連れ出し僕に神道流を教えたそうだ。
そうしているうちに元気を取り戻た。
けど小さい頃の話なので、両親の事はほとんど覚えていない・・・。
「そうか・・・。
君のご両親と私達は親友同士だった。」
パオロさんは懐かしそうに両親の事を話し出した。
「彼らとは彼らが新婚旅行でイタリアに来ているときに会ってね。
いや違うな・・・。助けられたんだ。」
「そうだったな。
私達が三人で調査をしているときだった。
はぐれの魔術師連中が神獣を呼び出してしまってね。
その時彼らが助けてくれたんだよ。」
「その時に彼らの強さに感動してしまってね。
私たち<赤銅黒十字>に特別顧問として招いたんだ。」
そうだったんだ・・・。
お父さんたちはイタリアにいたんだ。
「彼らに指導をして貰ったり、一緒に仕事をしたりしながら日々を楽しく過ごしていった。
そんな彼らとも契約期間が切れてね・・・。
君のご両親は日本に帰って行った。」
そこでサーシャさんが話し出した。
「そんな時にエリカちゃんが生まれたわ。
それから何年か経って彼らがふらっと訪ねてきたの。
その時よ、初めて昴君に会ったのは。」
僕はイタリアに来た事があったんだ・・・。
知らなかった・・・。
「当時の君は人見知りでね・・・。
お父さんとお母さんの傍をあまり離れたがらなかったんだけど、エリカちゃんが無理やり遊びに連れ出してね。
私達が仕事から帰ってくると二人して遊んでたわ。
本当の姉弟みたいだったわね。」
とても嬉しそうに話すサーシャさん。
エリカさんと前に遊んだことがあったのか・・・。
エリカさんも驚いている。
「彼らしばらくこっちにいるっていうから、また一緒に仕事したりして過ごしていたの・・・。」
ここでサーシャさんの表情が暗くなった。
それを見たブラウさんが口を開いた。
「ある日まつろわぬ神が顕現したかもしれないという報告が入って、周辺の調査を行っていた。
その時にまつろわぬ神を発見。
すでに周囲に被害が出ていた・・・。」
「私達はイタリアに来ていたというアレクサンドル・ガスコイン様に連絡を取り、対処してもらおうとしていたの・・・。」
「連絡もしてアレク様が到着するのを待つだけだった・・・。
そんな時普段人間なんか気にも留めないまつろわぬ神がその時だけ私達に気付いた。」
三人とも話すのがとてもつらそうだ・・・。
「私達はお心を鎮めてもらえるように懇願してけどだめでね。
有無を言わさず襲い掛かってきた。」
「その時私が深手を負ってしまってね・・・。」
ブラウさんがそういったきり言葉を発しなくなった。
「私がブラウを連れて退却してる間に、あなたのご両親が殿を務めてくれたの・・・。
そうして私達は無事に退却、その後到着されたアレク様がまつろわぬ神を討伐されたわ。
戦闘が終わった後、私達のところに二人を抱えたアレク様がやってきて、
『遅れてすまなかった・・・。』
そう言って去って行ったわ。
連れらてて来た二人はもうすでにこと切れていたわ・・・。」
そこまで話し終えてブラウさんが僕に頭を下げてきた。
「本当にすまなかった。
俺があそこで怪我なんてしなければ、四人で戦っていたら君のご両親は死なずに済んだかも知れない。」
サーシャさんも続いて頭を下げてきた。
「本当にごめんなさい。
あなたのご両親が死んだのは私たちのせいなの。」
父と母の死の真相を聞いた。
というより初めて父と母の事を詳しく知った。
おじいちゃんもおばあちゃんもあまり教えてくれなかったから・・・。
エリカさんの方を見ると彼女も頭を下げていた。
「頭を上げてください。」
しばらく考えをまとめ、僕はこう切り出した。
「僕は二人を恨んだりなんかしませんよ。
僕は両親を誇りに思います。
そして・・・。」
顔を上げた二人の目をまっすぐ見て、
「御二人が生きていてくれて本当に良かったです。
御二人が亡くなられるとエリカさんが悲しみますから。」
そう言って微笑んだ。
2人は僕の手を取って泣いていた。
ずっと自分を責め続けていたんだろうな。
しばらくして泣き止んだ二人。
ブラウさんが、
「君はおじいさんと同じことを言うんだな。」
と言ってきた。
「君のおじいさんに誤った時も、私達が生きてくれていてよかったと言ったんだ。」
「そうだったんですか。
おじいちゃんらしいですね。」
本当におじいちゃんらしい。
修業は厳しかったけど、それ以外は優しかったからな。
「君のご両親も同じような人だった。
君は確かに彼らの子だな!!」
そう言ってブラウさん達は笑っているのだった。
「さて、昴君。
君に決めて置いて貰いたい事がある。」
パウロさんがそう切り出した。
「なんでしょうか?」
「君は自分がカンピオーネになったことを理解してくれたかな?
そしてその存在が我々にとってどれほど大きな存在か。」
「はい・・・。
なんとなくですが・・・。」
パウロさんは僕ぼ言葉に満足そうにうなずいた。
「だったらいいんだ。
君はカンピオーネとしてこれからどうやって生きていく?」
「あ、あの・・・日本で今迄通りに過ごして往きたいんですけど・・・。」
これが僕の切実な願いだ。
もうあんな怪物と戦うなんて御免だ。
もし目の前で人が襲われているなら別だけど・・・。
「すまないがそれは恐らく無理だろう。
脅すようで悪いがまつろわぬ神を始め、他のカンピオーネの方達が放って置かないだろう。」
「それってどういうことですか・・・。」
「良くも悪くもカンピオーネという存在は目立つんだよ。
実際今回の件も新たなカンピオーネが誕生したのではと騒がれ始めている。」
「それじゃ、僕の事はもう・・・。」
もうばれてるの・・・。
これからどうなるの・・・。
「いいや、まだ大丈夫だ。
君がそう言うかもしれないからね。
ちょっと工作をさせてもらったよ。」
何と<赤銅黒十字>の皆さんがあの場所に神を封印したように見せかけてくれたらしい。
「まあ、直ぐにばれるだろうがね。
でも君が考えるぐらいの時間は確保できた。」
「あ、ありがとうございます。
・・・あの、他のカンピオーネの方達はどうしてるんでしょう。」
何かの参考になればと聞いてみた。
「そうだね・・・。
我がイタリアのカンピオーネ・サルバトーレ卿はどこの結社のも属さずその力だけでイタリアの敬愛と畏怖を我が物としている。
イギリスにいるアレクサンドル様は自ら結社を立ち上げているね。
中国の羅濠教主も同様に自らの結社を持っている。
アメリカにいるジョン・プルートー・スミス様はちょっと変わった人でね。自分の正体を身近な人にしか明かさないんだ。だから少数精鋭で活動しているね。」
皆さんいろんな風に活動しているんだな。
「最後に日本にいるカンピオーネ草薙 護堂様だ。
この方は君の一つ年上の高校二年生だ。」
えっ!!
「草薙様はどこの結社にも所属されていないが、自らの傍に数人連れているらしい。
そして日本の呪術界とも協力関係を結んでいるようだね。」
「草薙様が連れている一人にイタリアに結社<青銅黒十字>の騎士がいるわ。
そのおかげで<青銅黒十字>ともいい関係を築けているみたいよ。」
最後にエリカさんが付け加えた。
それにしても驚いた。
日本のカンピオーネの方って僕と同年代だったんだ。
「さて、これで全員だ。
何か参考になったかな?」
「い、いえ・・・余計にどうするのがいいのかわからなくなりました・・・。」
そう言うとパオロさん達も困った顔をした。
「そうか・・・。
そうだ、これだけは伝えておかなくてはいけない。」
「なんでしょうか?」
思い出したかのようにパオロさんが真剣な顔で話し出す。
「私たち<赤銅黒十字>には君がどのような決断を下そうとも、君を支え続ける準備がある。」
あ然とする。
すでにイタリアにはカンピオーネの方がいらっしゃるのに・・・。
僕なんかを・・・。
「私達にとって君のご両親は命の恩人だ。
それにこの結社には君のご両親にお世話になったものがたくさんいる。
これは私達だけじゃない、<赤銅黒十字>の総意なんだよ。」
ブラウさんが笑ってそう言ってくれる。
ここまで言ってくれるんだ。
この時僕の中で決まった。
「パウロ・ブランデッリ様。」
僕の真剣な顔を見てパウロさん達も姿勢を正した。
「『誰よりも優しく、そして強く生きろ。』
それが祖父の最後の言葉でした。
分不相応にもこのような力を手に入れてしまった僕ですが、
僕はこれを誰かのために使いたい。
それが祖父の言葉に報いることだと思うから。」
ここで僕は皆さんに頭を下げる。
「ですが僕はまだ魔術界について何も知りません。
お願いします、こんな僕でよかったら力を貸してもらえないでしょうか。」
頭を下げた僕にパオロさんの優しい声がかかる。
「頭を上げてください。
王がそんな簡単に頭を下げてはいけません。
それに先ほど私達の考えは伝えました。」
僕は頭を上げる。
それを見たパウロさんが外まで聞こえるんじゃないかと思われるほど声を張り上げ宣言する。
「これより我ら<赤銅黒十字>は新たな王『神藤 昴』様を王とし、彼の傘下となる事をここに宣言する。」
そう言うと僕の前にいる四人は膝を付きこうべを垂れる。
「これからよろしくお願いします、我らが王よ。」
それを見た僕は照れ臭そうに、
「はい!こちらこそよろしくお願いします!!」
そう答えるのだった。