転生したらゾルディック家の長女でになっていた件について。兄(イルミ)の溺愛がめっちゃこわい···。 作:Honey*bee
あれ?
さっきまでとても温かくて安心する温もりに包まれていたのに、暗いところから明るい所に出た途端に、なんだか寒くて安心出来なくて、気が付けば「おぎゃあぁぁぁぁー!!」と赤ん坊の声が自分の口から出てきていた。
(····?、おぎゃあ?)
困惑している中で、聞こえていたのは自分の泣き声だけじゃなくて、もう一つの泣き声が聞こえて来ていた。
何がどうしてそうなっているのか、自分でも意味不明だった。
混乱するのもつかの間···。
「奥様、おめでとうございます!可愛らしい双子のご誕生、心よりお祝い申し上げます」
(え、···双子?)
「えぇ、ありがとう!あなた···この子達の名前···」
ふわりと抱かれた母であろう胸の中。
「あぁ、そうだな。ミルキについで兄がキルア、妹がルキアでどうだろう?」
やけに良いバリトンボイスが嫌でも耳に入って来た。
「まぁ!それは素敵だわ!キルアにルキア···使っている文字も二人一緒だなんて!双子にピッタリな名前だわ」
え?、え?···今、何と言っただろう。
イルミにキルア···?双子?
情報過多に私の頭が混乱する。
ちょっと状況を整理しよう。
まず、イルミとキルアと言えばHUNTER × HUNTERに出てくる主要人物だ。
そこに私(ルキア)と言う名のキャラクターは存在しない。
ついで、やたら聞いた事のあるこの声は、言わずもがなキルア達の母(キキョウ)であり父(シルバ)である人物の声だ。
だとすれば、先程「奥様おめでとうございます」と言いながらズビズビと鼻水を啜り感動に泣く彼の声は、あの執事の物だろう。
私、なんて世界に転生しちゃったのかしら···。
「あら、やだわこの子ったら女の子なのに白目むいちゃうなんて!」
ぎゃあぎゃあ騒ぐ母親の声をBGMに、私の意識は暗転した。
赤ちゃんだから、考えるだけで疲れちゃったらしい。
♦
驚きの爆誕から早くも3ヶ月が経った。
私の視界もぼんやりからやっとハッキリと見えるようになり、その頃からベビーベッドを覗き込んでいた黒いモヤモヤの正体が兄であるイルミだと言う事が発覚した。
「あら、イルミちゃんたら偉いわねー!2人の子守りをちゃんと出来るなんて、もう立派なお兄ちゃんね!」
私とキルアが眠りについて、目が覚めると黒い何考えているのか分からない闇の深い瞳が、私達をジッと見つめているのだ。
無表情で。
これには私もビビり倒して「ヒッ···」、イルミ怖ぇ···と喉を引き攣らせた。
そんな私の心いざ知らず、母はイルミの成長に褒めていた。
そうよね。
そう言えばイルミはキルアに対して激重感情(違った方に)丸出しだった物ね。
ブラコン過ぎてヒソカにブチ切れしていた物ね。
「さあさあ、ミルクの時間ですよー」
「あー、うー!」
兄のキルアが紫色の瞳を輝かせて、哺乳瓶に手を伸ばす姿を見て、片割れなのに赤ちゃんの時のキルアに思わず可愛くて見蕩れていた。
(兄のキルアが可愛い···)
そりゃそうよね。
こんな天使な笑でキャッキャッしていたら、イルミもゾッコンする気持ちがわかるわ。
「ほらほら、ルキアちゃんのぶんもちゃーんとありますからね」
「うぶっ」
キルアを見ていたのが、ミルクの催促だと勘違いした母に口に哺乳瓶をぶち込まれた。
「···母さん、オレも手伝っていい?」
「もちろん良いわよ。それじゃあルキアちゃんの方をお願い」
「うん」
まだまだ手に持って飲むには不自由なぶん、イルミが私の哺乳瓶を持ってくれる。
直角で。
いやマジでキツイって!
母を見てよ!抱っこして哺乳瓶は斜めにして。
「イルミちゃん、こうするのよ」
「うん、わかった」
ふわりと抱き抱えられたイルミの胸の中、しっかり抱えてくれて哺乳瓶の位置もバッチリだ。
私は安心感を覚えてごくごくとミルクを飲む。
「ふふ、イルミったら、あの人よりも飲ませ方上手いじゃない」
「···」
何の感情もこもっていない黒い瞳でジッと見つめられながら、私はミルクを飲み終えた。
ゲップの出させ方までマスターしたイルミは、なんだか誇らしげだった。
···そんなゾルディック家に転生を果たした私の物語が、今幕を開けた。