Mirror Rider Stratos【完結】 作:無限正義頑駄無
ラウラと決闘を行った翌朝。
いつもより少し遅めに食堂へ行くと、ラウラが隊員たちと談笑しながら朝食を摂っていた。
早速うまく溶け込んでいるようだな。
「ありがとう一夏。お前のおかげでボーデヴィッヒ隊長は隊員と繋がり始めた。礼を言う」
「それには及びませんよ。ところで……」
後ろから現れたハルフォーフ中尉に向き直る。
「なんでトーストを齧りながら走って来たんです?」
「日本ではトースト片手に走って出勤するのが主流なのだろう?」
(全然違ぇよ!?)
何処のベタなラブコメだよ。
そういえばハルフォーフ中尉は日本のオタク文化に毒されて、間違った日本の常識を覚えてしまっているんだよな。
ラウラ辺りが悪影響を受けそうで怖い。
時は流れて2週間後の朝。
1ヶ月の訓練を終えて日本に帰る日だ。
日本行きの旅客機は正午に出るから、もうじきこの施設から出発しなければならない。
既に荷物を纏め終えている俺はここでの出来事を振り返る。
千冬お姉ちゃんに鍛えられるだけでなく、シュヴァルツェ・ハーゼの人から学んだこともある。
災害救助にフリーランニング、要人警護など様々だ。
今の俺なら暗殺教室に混じることが出来るかもしれない。
千冬お姉ちゃんが部屋に入って来た。
「一夏、準備は出来たか?」
「おはよう、千冬お姉ちゃん。もう終わってるよ。それと……1ヶ月もお世話になりました」
「家族相手にそんな畏まった真似をするんじゃない」
頭を下げた俺に対して、千冬お姉ちゃんはぶっきらぼうに言い放つ。
態度はアレだが、俺はその返答を嬉しく思った。
さて、俺が日本に帰国してから千冬お姉ちゃんが帰国するまでの11ヶ月の間は、俺たちは離れて暮らすことになる。
しばらくの間は、俺の身辺警護が行われるらしい。
その一環として、半年の間は光莉と共に護衛の人の家に世話になるそうだ。
あまり迷惑を掛けないようにしなきゃな。
光莉がミラーモンスターだということは、千冬お姉ちゃんと束お姉ちゃんとラウラを含めた知り合いのライダーたちの合計6人しか知らない。
そちらの方面でも気を付けなければならないだろう。
先方は日本の空港で待ってくれるそうだ。
「元気でね千冬お姉ちゃん。たまに手紙とか送るから」
「あぁ、達者でな」
千冬お姉ちゃんに見送られて部屋から出る。
施設の入口に着くと、シュヴァルツェ・ハーゼの皆が待ち構えていた。
「イチカ、今までありがとう!」
「元気でね!」
「いつか日本に会いに行くからねー!」
皆から様々な言葉を贈られた。
ラウラの件以外にもたまに隊員たちの相談に乗っていたためか、俺の存在はシュヴァルツェ・ハーゼの中で大きくなっていたようだ。
ラウラが一歩前に出て来た。
「ようラウラ」
「お前のおかげでわたしは隊の皆と親しくなり、広い視野で物事を見れるようになった。感謝する」
「あぁ、どういたしまして」
「だっだから……」
ラウラが何やら言い淀む。
何か嫌な予感がするぞ。
「これからはお前のことを『お兄様』と呼ぶことにする!」
「ナ、ナンダッテー!?」
あまりの展開にもしやと思ってハルフォーフ中尉を見ると、グッと親指を立てていた。
ハルフォーフ中尉、アンタって人はぁーっ!!
「次に会えるのが何時になるのかはわからないが、わたしは楽しみにしているぞ、お兄様」
「あ、あぁ……。俺もラウラや皆との再会が楽しみだ」
もはや無難な言葉を口にすることしか、俺には出来なかった。
嬉しいやら疲れるやらな見送りのもと、俺はドイツ政府が出してくれた車に乗って空港へ行き旅客機に乗った。
機内に知り合いは居なかったが、ミラーワールド側の旅客機にドラゴン形態の光莉が張り付いて窓越しに話(俺は筆談だが)をしたので退屈はしなかった。
原作の龍騎が電車の中で戦うシーンでも思ったことだが、ミラーワールド内の乗り物って操縦者が居ないのにどうやって動くんだろうな?
旅客機を何度か乗り継ぎ、数日掛けて約1ヶ月ぶりの日本の土を踏む。
さて、迎えに来ているという護衛の人を探さなきゃな。
空港内を歩き回っていると声を掛けられた。
「織斑一夏くん……で良いかしら?」
相手は水色の髪をした姉妹だった。
もしかして過去に俺が誘拐犯から助けた姉妹か?
「はい、俺が織斑 一夏です。もしかして貴女たちが……?」
「えぇ、あなたのお迎え役の
「……更識
「わかりました。しばらくの間お世話になります」
3人で空港から出て、今度は更識家の車に乗る。
一旦織斑家に寄り、必要なものと一足先に帰宅していた光莉を乗せて更識家に向かう。
車の外ではミラーワールド越しに光莉の部下のモンスターが護衛をしつつ、帰りを祝う言葉を掛けてくれる。
人前なのであまり反応出来ないが、とても嬉しかった。
ふと刀奈さんを見ると何やら窓を凝視していた。
もしかしてミラーモンスターが見えるのか?
「織斑くん、あなたライダーなの?」
あ、こりゃもう決定だな。
ミラーモンスターたちの俺に対する『マスター』という呼び名を聞かれているなら、その問いは疑問じゃなく確信だろう。
俺は観念して
「刀奈さん、あなたもライダーなんですか?」
「そうよ。改めてよろしくね♪」
そう言って刀奈さんは鮫が描かれた水色のカードデッキを見せる。
刀奈さんはアビスか……。
「ちなみに更識家の人たちはミラーライダーのことを知っているから、あまり隠さなくて良いわよ?」
「それは助かりますね。ところで刀奈さんは他のライダーに会ったことはありますか?」
「無いわよ。織斑くんは?」
「刀奈さんで6人目です」
「「えぇっ!?」」
刀奈さんと簪さんが揃って驚く。
「ライダーってそんなに居るものなのね……」
「カードデッキは全部で13個だそうですよ?ミラーワールドを管理しているライダーに聞きました」
「つまり織斑くんは、全ライダーのうち半分と知り合いになったと……」
「世界は狭いのね……」
「世界が狭いのではなく、一夏くんの行動範囲が広いんですけどね」
光莉が苦笑いしている。
まぁ俺は女尊男卑の酷い国なら何処へでも行くからな……。
しかし彼女たちの前で変身すると、俺が
束お姉ちゃんに何か対策をお願いしておこう。
そして着いた更識家はまさに武家屋敷といった感じで、風格があった。
「立派な屋敷だな」
「そうですね」
「ほらほら、ボーッとしてないで早く入りなさい」
刀奈さんに言われて光莉と一緒に敷居を跨ぐと、2人の女性に出迎えられた。
「お帰りなさいませ。刀奈お嬢様、簪お嬢様」
「おかえり〜。なっちゃんにかんちゃん〜」
察するにこの2人は更識家の従者か?
2人目の娘は凄いほんわかしててなんか癒されるな……。
「初めまして、織斑 一夏です」
「巽 光莉です。一夏くん共々お世話になります」
俺と光莉が挨拶をすると2人の方も自己紹介をしてくれた。
姉の虚さんは真面目そうな雰囲気なのに対し妹の本音さんはのほほんとしている。
真反対な姉妹だな。
「本音。2人を部屋に案内してあげて」
「あいあいさ〜。おりむ〜、りっちゃん、こっちだよ〜」
刀奈に言われた本音さんが俺と光莉に手招きする。
どうやら『おりむ〜』と『りっちゃん』は俺と光莉のあだ名らしい。
さて、ライダーの居るこの屋敷でどんな暮らしが俺と光莉を待っているんだろうな……?