Mirror Rider Stratos【完結】 作:無限正義頑駄無
時は千冬とライダー9人によるビーチバレー対決が始まる前に遡る。
SIDE 千冬
教員としての仕事が一段落したわたしは、水着に着替えて海に出ていた。
遠くを見れば、一夏・マドカ・凰・工藤が水泳対決をしている。
後であいつらのところに顔を出すとしよう。
ふと見ると、断崖に1人の女子生徒が立っていた。
「こんなところで何をしている、篠ノ之?」
「……織斑先生」
篠ノ之が1人でこんなところに居る理由には察しがつく。
明日は7月7日。
篠ノ之の誕生日だ。
束が現れる可能性がある。
「明日、来ると思うか?」
「来ると言っていました。もともと一夏の機体も
「……そうか」
束は一夏の機体である
篠ノ之の件が無くても来るのは決まっていたか……。
丁度良いから、こいつに1つ聞いてみよう。
懲罰房で過ごした2ヶ月で、どこまで反省出来たのかをな。
「篠ノ之、お前の願いは何だ?」
「一夏の隣に立つことです」
「『隣に居る』だけか?」
「っ!?」
「一夏の隣に立つ……それ自体は構わんがそこから先を考えることが出来ない以上、お前はその程度の存在だ。今のお前に一夏の隣に立つ資格は無い。一夏がお前を突き放しているのは、自分の思いを押し付けるお前のそんな一面を知っているからだ」
篠ノ之は白騎士・龍騎士事件が起きる少し前に同級生からいじめに遭い、一夏に助けられた過去がある。
それをきっかけに一夏に好意を抱くだけなら、特に気にすることではない。
だがこいつは、相手の人柄の一面しか見ず自身の考えや理想を押し付けることしかできない。
一夏はそんな篠ノ之の思いを『好意』ではなく『依存』と判断し、まったく取り合わなかった。
当時の篠ノ之の言動は、重要人保護プログラムで篠ノ之が転校した際に一夏が、『束お姉ちゃんには悪いけど、寧ろ清々した』と言っていたことからその酷さが窺える。
そして約6年の月日を経て、IS学園での再会。
度重なる転校で心が荒んでいたことを考慮しても、篠ノ之の素行は昔と変わっていない。
一夏と光莉曰く、『暴力を振るう分、昔より悪化している』とのこと。
篠ノ之は納得がいかないことに出くわすと、すぐに竹刀や木刀を取り出して武力行使をする。
クラス代表トーナメントが良い例だ。
そういえばつい最近、こいつの実家から日本刀が届いていたな。
臨海学校が終わったら没収するべきだろうか?
「一夏はどうして、あんなに変わってしまったのでしょう?」
こいつの目には、一夏は昔と変わったように映るのか……。
「一夏が変わったように思うのは、お前が一夏の一面しか見えていなかったからだ。一夏は昔から何1つ変わってはいない。ただ、背負うものができただけに過ぎん」
「背負うもの……?」
そう、今の一夏は多くのものを背負っている。
まずは光莉のこと。
一夏と光莉は人間とミラーモンスターの壁を越えて、心からお互いのことを愛している。
それこそ篠ノ之や他の誰かが入り込む隙間が無いくらいにな。
一夏の姉で
次に男性IS操縦者という肩書きのこと。
これは昔からだし、今は工藤と共有していることなのであまり大したことは無いのだろう。
そして最後は
ISの普及によって歪んでしまった世界。
それを少しでも正すため、迂闊に動けない束の代わりに一夏はその手を血に染めた。
いくつもの過激な女性権利団体や人体実験などの違法行為を行っている研究施設を潰し、その過程で何百人もの人間を自身の手や契約モンスターで殺害している。
契約モンスターは20体くらい居るらしいが、一夏の腕なら人を殺さずとも野生のミラーモンスターの討伐だけで十分養うことが出来る。
それでも一夏や光莉は人を殺す。
束のために。
そんな束だが、1度だけ電話越しに思いの丈をぶちまけられたことがある。
『わたしはいっくんを人殺しにするためにISを生み出したんじゃないのに』と。
心の底から悔いている涙ながらの声だった。
現在雲隠れしている束は、光莉にIS開発の技術を指導しながら男でもISを動かせる手段を模索しているそうだ。
成果は芳しくないようだが……。
「よく考えることだ。自分に何が足りないのかをな」
「わたしに足りないもの……」
篠ノ之との話を終えて、わたしは一夏たちの元へ行く。
丁度ライダーたちでビーチバレーをやるところらしい。
わたしも混ぜて貰うとしよう。
一夏とは生身・IS(サバイブ以外の特殊カードは封印)のどちらとも勝敗の数が拮抗しているからな。
今日こそは決着をつけたいものだ。
SIDE OUT
SIDE 箒
『今のお前には一夏の隣に立つ資格は無い』
『お前には足りないものがある』
そう千冬さんは指摘して去って行った。
千冬さんがあそこまで言うからには、何かあるのだろう。
わたしには何が足りないんだ?
何があればわたしは一夏の隣に立てるんだ?
わからない……。
SIDE OUT
SIDE 一夏
日が暮れて、夕食の時間になった。
俺たちライダーは1箇所に固まって席を取っている。
俺の右隣はマドカで、左隣はラウラだ。
「うん、美味しい♪」
マドカはお刺身に舌鼓を打っている。
嬉しいようでなによりだ。
「お兄様、この緑色の物体は一体何だ?」
「ん?あぁ、そいつは本わさだな」
「ほんわさ?」
「そう、市販の
「ほう……」
ラウラに本わさについて説明すると、何を思ったのか本わさを丸ごと口に含む。
「〜〜〜〜〜っ!!」
あらら……。
しかし山葵を塊状態で口に含む人なんて初めて見たぜ。
「……日本人は逞しいのだな」
山葵のダメージに悪戦苦闘しているラウラは、そんな言葉を搾り出す。
いやいや、ラウラの食べ方が間違っているんだからな?
そのまま俺たちは、千冬お姉ちゃんの叱責を受けない程度に騒ぎながら夕食を食べ終えた。