Mirror Rider Stratos【完結】 作:無限正義頑駄無
俺・光莉・セシリア・シャル・ラウラは、無事に旅館へ帰還した。
「全員、よくやった。事情聴取や報告書の類は必要ないため、後はゆっくり休むと良い」
「「「「はい!」」」」
「うむ。織斑兄・オルコット・デュノア・ボーデヴィッヒはそれで構わん。だが……」
千冬お姉ちゃんは光莉に視線を向ける。
「光莉、何だその状態は?」
「わたしは怪我が完治していないのに出撃するという無茶をしたので、マスターの罰を受けている最中なのです」
「『それ』は罰と言えるのか……?」
千冬お姉ちゃんは呆れている。
何故なら今の光莉の状態は『お姫様抱っこ』だからだ。
俺としては光莉を抱っこするのは帰還するまでの予定だったのだが、旅館に着いても光莉に離れるつもりは無いらしい。
「ハァ……。まぁ良い、光莉も怪我が完治していないのだろう?お前も休め」
「わかりました」
医務室に行ってもう1度光莉の手当てをした俺は、医務室に光莉を残してとある部屋に足を運んだ。
「お邪魔します」
「ん、いらっしゃい」
部屋の中には、気絶したままの福音の操縦者と束お姉ちゃんが居た。
束お姉ちゃんは、アメリカ政府の同意の上で『暴走機の鎮静化』と『今回の事件の原因究明』という名目で福音を解析中だ。
「束お姉ちゃん、何かわかった?」
「うん。実は……」
「うっ……」
束お姉ちゃんが口を開いたと同時に、福音の操縦者の意識が戻ったようだ。
「意識が戻ったようだね。きみの名前は?」
「……ナターシャ・ファイルス。わたしは一体……」
「あなたの機体『
「そう、ですか……。あの、『この子』はどうなるのでしょう?」
そう言って、ファイルスさんは待機状態の福音を見る。
「暴走を起こした軍用ISだからな……。凍結処分が妥当ってところか?」
「いっくん、それは機体に原因がある場合だよ」
「てことは、今回の事件は別の原因があるってこと?」
「うん。さっき福音を解析した結果、暴走の原因は外部からのクラッキングだとわかったよ」
「なっ……!?誰が一体何のために……」
「恐らく、福音が欲しいテロリストなんじゃないか?今回の事件で福音が凍結処分になったら機体は操縦者から隔離される。操縦者の居ないISってのは、奪う側にとっては格好の獲物だからな……」
「いっくんの推測は多分当たってるよ。クラッキングの痕跡はかなり巧妙に隠されていたからね」
「そんな……。あの……貴女は篠ノ之 束博士ですよね?この子を助けるにはどうすれば……」
「う〜ん……。正直に言ってアラスカ条約を無視した軍用ISなんて糞食らえなんだけど、きみに免じて手を貸してあげよう。その子はきみのことを大事に思っているみたいだからね」
「そういえば福音は俺たちとの戦闘で
「この子が、わたしを……?」
ファイルスさんは、信じられないといった表情で福音を見つめる。
後は束お姉ちゃんに任せれば大丈夫だろう。
俺は部屋を出て、光莉の居る医務室へ戻った。
俺と光莉は、医務室に鋼夜を招いて『原作』ではどうだったのかを聞いてみた。
そして聞いた俺と光莉の感想は同じだった。
「「何そのご都合主義?」」
いや、篠ノ之に束お姉ちゃんから専用機が与えられたことも驚きだが、福音との戦闘で
しかも
馬鹿じゃねぇの?
それで取り逃がした福音が日本に上陸して暴れたら、密猟者より大勢の一般市民が犠牲になるんだぞ?
目先の命にとらわれ過ぎだろ。
それに
代表候補生の乗るパッケージをインストール済の専用IS4機と第4世代ISがあったにも関わらず、だ。
俺たちの場合は、セシリアはほぼ不参加だし、ラウラは援護射撃に徹していたのでノーダメージ。
俺とシャルも多少の被弾はしたが、それでもシールドエネルギーは8割以上残っていた。
つまりこちらは実質3対1で余裕勝ちしたのに対し、原作は6対1での辛勝。
原作の皆が弱いのか、それとも原作の福音が強いのか……。
前者だとしたら引くな……。
そうだとしたら、こちらにライダーとしての経験値があるとはいえ、実力差があり過ぎだろ。
☆
「では、面会時間は10分です」
「わかりました、山田先生」
臨海学校
俺は旅館に作られた即席の懲罰房に足を運んでいた。
ここには篠ノ之が拘束されている。
光莉に対する殺人未遂は完全に篠ノ之が悪いのだが、歪んだ好意を向けられているとわかっていながら目を逸らし続けた俺にも原因があるだろう。
山田先生の許可を貰って中に入る。
篠ノ之が全身を拘束されていること以外は普通の部屋だな。
「一夏……」
「よう篠ノ之。犯罪者になった気分はどうだ?」
昨日の一件で、篠ノ之は銃刀法違反・傷害罪・殺人未遂の現行犯だ。
例え未成年でも、刑務所行きは免れないだろう。
「一夏、あの巽とかいう女と婚約しているのは事実なのか?」
「あぁ、そうだ」
「何故わたしじゃないんだ?」
「じゃあ聞くが、何故篠ノ之は俺がお前を伴侶に選ぶと思っているんだ?」
「わたしとお前は幼馴染だろう」
「また『幼馴染』か……。俺とお前は幼馴染なんて親しい関係じゃないと言っているだろう。百歩譲って幼馴染だとしても、その肩書きは何をやっても許される免罪符じゃないんだぞ?」
「…………」
「それに千冬お姉ちゃんから聞いたんだろう?俺にとっての幼馴染はお前よりも早く出会った光莉だと」
「あんな女のどこが良いんだ!?」
こいつ……!
光莉のことをろくすっぽ知りもしないで『あんな女』呼ばわりだと……!
「俺が光莉を愛しているのは、彼女が誰よりも俺に愛と信頼を寄せてくれて、俺が誰よりも愛し信じることが出来るからだ。それに対してお前はどうなんだ?お前は俺のことを理解しているのか?俺はお前の何を信じれば良い?」
「くっ……。でも、昔はわたしをいじめから助けたりしてくれて、あんなに仲良くしていたじゃないか!それなのに何故!?」
「お前は努力したんだろうが、俺の心を動かすまでには至らなかったということだ。つまり俺を振り向かせられなかったお前の落ち度だ」
「そんな……」
「そろそろ面会の制限時間だから最後に1つ言っておく。俺はお前の都合の良い人形じゃない。意思を持った人間だ。俺が光莉を愛する想いも俺だけのものだ。お前にも、他の誰にも変えられはしない」
そう言い残して、俺は懲罰房を出る。
外では、山田先生の他に千冬お姉ちゃんと肩にブランウイングを乗せた光莉が居た。
「どうでした、マスター?」
「また幼馴染の肩書きを免罪符にしようとしていたよ。これで治らないようなら取り調べの前に精神鑑定が必要だな」
「そうか……」
「ピィ……」
俺には、篠ノ之が刑務所で少しでも自身の行ないを悔いることを祈るしかない。
光莉は
それは嬉しいが、今の気分的に素直に喜べない。