Mirror Rider Stratos【完結】   作:無限正義頑駄無

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第47話 臨海学校の終わり

臨海学校3日目。

専用機持ちの皆は、銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)の暴走で流れてしまった、パッケージのデータ収集をしていた。

パッケージの無い俺は、光莉と一緒に龍騎士(ドラグナー)のメンテナンスだ。

束お姉ちゃんは、福音を凍結処分にさせないための報告書を作成している最中である。

 

インストールしたパッケージでドローンを撃ち落としていく皆だが、最もパッケージを使いこなしているのはシャルのようだ。

IWSPは万能型のストライカーパックであるため、シャルとの相性が良いのだろう。

本体である雷轟も、フェイズシフト装甲じゃないため燃費も悪くないしな。

 

2番手はマドカだ。

ブレード・ビットはレーザー・ビットとは使い勝手が違うが、マドカは問題無く扱えているみたいだ。

それどころか初期装備(プリセット)のビットを合わせた16基のビットによる戦闘を模索しているらしい。

俺も自分が何基のドラグーンを同時に扱えるか今度チャレンジしてみるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして旅館における全ての活動が終わり、生徒たちはバスに乗車する。

ファイルスさんは報告書を持って、迎えの車で既に空港へ向かっている。

束お姉ちゃんもいつの間にか居なくなっていた。

俺はこっそりミラーワールドに潜り、ミラーワールド内のバスに乗車する。

 

「マスター、いらっしゃい」

「おう、隣座るぞ」

 

現実世界で1組の生徒が乗っている1号車内で、光莉と相席する。

ライダーの皆の契約モンスターも、ほとんどがこの1号車に乗っている。

すると光莉が、俺の肩に頭を乗せてくる。

 

「マスター。しばらく、このままでお願いします……」

「あぁ、わかった」

 

光莉の願いを聞き入れた俺は、光莉の腰に手を回して抱き寄せる。

 

「……?どうなさいました、マスター?」

「そういえば、光莉に言い忘れていたことがあってな」

「何でしょう?」

「『ただいま』、光莉……」

 

この言葉が無ければ、『必ず帰って来る』という約束を果たしたことにはならないだろう。

 

「はい。『お帰りなさい』、マスター」

 

光莉は満面の笑みで、言葉を返してくれる。

この時、光莉にキスをしてしまった俺は悪くないと思う。

この幸せな気持ちを表現するには、それしか思い付かなかった。

だが、IS学園に戻った後でミラーワールド越しに見ていたマドカとラウラと鋼夜と本音には生温かい目で見られ、セシリアとシャル(とシャルから一部始終を聞いた鈴と簪と楯無さん)には冷やかされてしまった。

 

しばらくすると、8号車のバスが発車した。

この旅館には1号車を先頭にして来たため、帰りは8号車が先頭なのだ。

そして1号車も動き出す。

俺は1号車の後を走る1台の車に視線を向ける。

ボディーを黒塗りした覆面パトカーだ。

現実世界では、拘束された篠ノ之と監視役の千冬お姉ちゃんがあれに乗っている。

篠ノ之はあれから進展があったのだろうか?

どちらにせよ、酌量の余地などありはしないのだが。

 

SIDE OUT

 

SIDE 千冬

 

わたしは今、篠ノ之と共に覆面パトカーに乗っている。

教師であるわたしや真耶だが、さすがに傷害殺人未遂の生徒を庇う程の権力は無い。

もっとも、光莉を殺して(ると思い込み)哄笑を上げた篠ノ之を庇おうという思いはこれっぽっちも湧かないのだが。

 

点呼で真耶は一夏が居ないと言っていたが、一夏は恐らくミラーワールドのバスで光莉と共に学園へ戻るつもりなのだろう。

真耶には『問題無い』と伝えておいた。

チラリと窓を見ると、ミラーワールドの覆面パトカーに乗っている竜人型のモンスター『ドラゴニュートサムライ』がこちらを見て会釈する。

わたしと同じく、『篠ノ之の監視』という理由で乗車している一夏の契約モンスターだ。

侍という名の通り、ブランウイングを除けば最も忠義の厚いモンスターらしい。

聞いてみたいことがあったので、わたしはドラゴニュートサムライに(まばた)きによるモールス信号で話しかける。

 

(篠ノ之は一夏と光莉をかなり傷付けた。なのにお前たちは殺さないのか?やろうと思えば出来るだろう?)

 

やって欲しくないのが本音だが、聞かずにはいられない。

 

一夏(主君)光莉(頭領)に止められております故。それに我らが手を下さずとも、その女は人間の法で裁かれる身。ならば一瞬で訪れる死よりも、合法的な罰の方がより苦しみを与えられるというものです」

 

と、合理的な理由が返って来た。

確かにそうだが、一夏と光莉もお人好しだな。

篠ノ之はミラーライダーとその契約モンスターに犯罪レベルの喧嘩を売ったのだ。

命があるだけでも、かなりの温情処分と言えるだろう。

『篠ノ之 束の妹』であろうと、ミラーモンスターたちにとっては容赦をする理由にならないため、尚更だ。

 

「確かに我らは主君や頭領と共に、大勢の人間を殺して来ました。ですがそれらは全て女性権力団体やマッドサイエンティストばかり。女尊男卑の風潮や各国の思惑により、法で裁けず更生の余地も無い者たちです。法で裁ける者まで殺したりは致しませぬ」

 

そう言われると、人間がミラーモンスターに比べて大きく劣った存在のように思えてしまう。

わたしは隣に座る篠ノ之に視線を移す。

篠ノ之は懲罰房を出る時からずっと(だんま)りだ。

護送中は会話が禁止されているので寧ろありがたいのだが……。

わたしは前の座席に乗っている警察官2人に特別に許可を貰い、篠ノ之に話しかける。

 

「篠ノ之」

「……何でしょうか?」

「お前には足りないものがあるとわたしは言ったな。昨日のわたしとの会話と今朝の一夏との面会を通して、それが何かわかったか?」

「……いいえ」

「お前に足りないのは、物事の変化やありのままの相手を受け止める心。いわば『受容力』だ」

「『受容力』……」

「それの無いお前は、相手に自分の考えや理想を押し付け、思い通りにならなければ癇癪を起こして実力行使に出る。お前は一夏の優しさに惹かれたのだろうが、その優しさをもってしても許容出来るものではない。だから一夏はお前を突き離す」

「千冬さんは……どうして巽という女のことを認めているのですか……?」

「光莉はわたしと束の前で『一夏を命懸けで愛する』と誓い、それを行動に移した。それだけだ」

「何があったのですか?」

「一夏と光莉はかつてお互いの愛を成就させるため、オーディンとの(死の危険が伴う)戦いに身を投じた。重要人保護プログラムでお前が転校していった約1年後の出来事だ」

「それって……一夏がまだ10歳の頃の話じゃないですか!?」

「そうだ。そして一夏と光莉は無事生き残った。わたしと束は間近で見ていたからわかる。今も昔も誰かを傷付けることしか出来ないお前がパートナーだったら、一夏は10歳でその短い生涯を終えていただろう」

「そんな……」

「そしてIS学園でお前は一夏に対して何度も暴力を振るい、一夏の戦闘スタイルを侮辱し、この臨海学校では婚約者を殺しかけた。今更関係を修復するのは不可能だろう。刑務所でゼロからやり直せ」

「…………」

 

篠ノ之はそれっきり黙り込んで項垂れる。

これで今までの自分の行ないを悔い改めるのなら、弁護のやり甲斐があるのだが、果たしてどうなるか……。

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