Mirror Rider Stratos【完結】   作:無限正義頑駄無

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第56話 ワールド・パージ

「では、状況を説明する」

 

IS学園地下特別区画、オペレーションルーム。

千冬お姉ちゃんと山田先生によって、現在学園に居る専用機持ちが全員集められた。

俺・簪・楯無さん・篠ノ之・セシリア・鈴・シャル・ラウラ、そして光莉が立って並んでいる。

このオペレーションルームは完全独立した電源で動いているらしく、周囲の機器はちゃんと機能している。

 

「現在、IS学園では全てのシステムがダウンしています。これらは何らかの電子的攻撃、つまりハッキングを受けているものだと断定します」

 

山田先生が普段より堅い声で説明する。

 

「今のところ、生徒に被害は出ていません。防壁によって閉じ込められることはあっても、命に別状があるようなことはありません。全ての防壁を下ろした訳ではなく、どうやらそれぞれ一部分のみの動作のようです。だからトイレにも行けますよ」

 

山田先生、この状況にユーモアは似合いませんよ。

実際、誰も笑わなかったし。

 

「現状について質問はありますか?」

 

その言葉にラウラがシステムに関する質問をして、千冬お姉ちゃんが答える。

他に挙手する者が居なかったので、話は作戦の説明に移った。

 

「それでは、これから篠ノ之さん・オルコットさん・凰さん・デュノアさん・ボーデヴィッヒさんはアクセスルームへ移動、そこでISコア・ネットワーク経由で電脳ダイブをしていただきます。更識簪さんは皆さんのバックアップをお願いします」

『…………』

「あれ?どうしたんですか、皆さん?」

「「「「「「で、電脳ダイブ!?」」」」」」

 

俺・光莉・楯無さん以外の全員が驚愕の反応を示す。

 

「はい。理論上可能なのはわかっていますよね?ISの操縦者保護神経バイパスから電脳世界へと仮想可視化しての進入が出来る。あれは理論上ではないんです。実際のところ、アラスカ条約で規制されていますが、現時点では特例に該当するケース4であるため、許可されます」

「そ、そういうことを聞いてるんじゃなくて!」

「そうですわ!電脳ダイブというのは、もしかして、あの……」

「個人の意識をISの同調機能とナノマシンの信号伝達によって、電脳世界へと進入させる……」

「それ自体に危険性は無い。しかし、まずメリットが無いはずだ。どんなコンピュータであれ、ISの電脳ダイブを行なうよりもソフトかハードか、あるいはその両方をいじった方が早い」

「しかも電脳ダイブ中は操縦者が無防備。何かあったら困るかと……」

「それに、1箇所に専用機持ちを集めるのはやはり危険ではないでしょうか?」

 

鈴➡︎セシリア➡︎シャル➡︎ラウラ➡︎簪➡︎篠ノ之の順で意見を述べる。

 

「駄目だ。この作戦は電脳ダイブでのシステム侵入者排除を絶対とする。異論は聞いていない。嫌ならば、辞退するがいい」

 

有無を言わせない物言いだな、オイ。

 

「い……いや、別に嫌とは……」

「ただ、ちょっと驚いただけで……」

「で、出来るよね。ラウラ?」

「あ……あぁ、そうだな」

「ベストを尽くします」

「や……やるからには、成功させましょう」

 

そう言って、6人は同意する。

 

「よし!それでは電脳ダイブを始めるため、各人はアクセスルームへ移動!作戦を開始する!」

 

千冬お姉ちゃんからの檄を受けて、6人はオペレーションルームを出る。

そして千冬お姉ちゃんは楯無さんへ視線を移す。

 

「さて、お前には別の任務を与える」

「なんなりと」

「星村夫妻も頼めるだろうか?」

「構いませんよ、なぁ光莉?」

「はい。それで、任務とは?」

「おそらく、このシステムダウンとは別の勢力が学園にやって来るだろう」

「敵、ですね」

「そうだ。今のあいつらは戦えない。悪いが、頼らせてもらう」

「任されましょう」

「了解」

「わかりました」

 

千冬お姉ちゃんに一礼して、俺たち3人はオペレーションルームを退室する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれは、確か周囲の風景を撮影して表面投射する最新型の光学迷彩ね」

「へぇ〜、そんなものがね……」

 

IS学園の校舎のとある一角。

楯無さんが学園に無断で設置したカメラから6名の侵入者の映像が送られてくる。

 

「しかし、システムダウンからこんな短時間でやって来るとは……」

「同じ勢力だったら、もっと早く突入して来るはず。つまり……」

「常時監視されているってことね。まったく、乙女が通う学園に対して無粋なんだから」

 

3人で溜息をつく。

 

「ん?」

 

遠くまで真っ直ぐに続く廊下。

そこには何も見えず、足音もしない。

しかし何かがいる。

 

「こんなに早く接触だなんて、わたしってばは運命因果に愛された女かしら?」

「ちなみにわたしは旦那様に愛されている女です」

「こんなところで惚気話は勘弁してちょいだい」

 

プシッ、プシシッ。

 

短い音が鳴り、特殊合金製の弾丸が放たれる。

 

「ふん」

ガキンッ。

 

弾丸をカードデッキで弾く。

 

「人間離れしてるわね〜」

「褒め言葉だな」

『Set!!』

『Are you ready?』

「光莉」

「わかりました」

『Powered custom!!』

『It's morphin time!!』

「パワードモーフィン!!」

「それじゃあわたしも、変身!!っと」

 

光莉と共に緋鼠の衣(スカーレット・バスター)・パワードカスタムに変身し、楯無さんも専用機『霧纏いの淑女(ミステリアス・レイディ)』を部分展開する。

銃弾を防がれたことによる、敵の動揺が感じ取れる。

 

「ぽちっとな」

 

楯無さんがそう言って親指を閉じた瞬間、廊下が大爆発に包まれる。

 

「ミステリアス・レイディの技が1つ。『清き熱情(クリア・パッション)』のお味はいかが?」

 

周囲を分析すると、ミステリアス・レイディからアクア・ナノマシンが散布されていた。

つまり今のは水蒸気爆発か。

えげつない技だな……。

空間が限られている屋内だから尚更だ。

 

「さあ、いくわよ。必殺、楯無ファイブ!!」

 

楯無さんが5人になった。

 

「まぁ、ミステリアス・レイディの機能なんだけどね」

 

なるほど。

ナノマシン・レンズによって作り出した幻と、アクア・ナノマシンの水人形か。

だが、甘いな。

 

「楯無さん、分身ってのはこうやるんですよ」

『TRICK VENT!!』

 

トリックベントで、8人に分身する。

現在、楯無さん×5人に俺×8人。

合計13人。

敵が焦って銃を乱射してくる。

だが……。

 

「どっかーん」

 

水人形は爆発機能付きの実体だ。

しかも、水でできているので銃弾は効かない。

俺の分身たちも突撃し、相手の戦線は崩れはじめた。

 

「は、班長!このままでは……」

「うわあああああっ!?」

「ひ、退け!退けぇーッ!」

 

さっきカメラに映った6人も合流してきたが、纏めて蹂躙する。

 

「うふふふ♪」

(((((((((楯無さん、完全に悪役の顔だ……)))))))))

 

俺と光莉、そして7人の分身が同時に同じことを考えた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、こんなものかしら」

「ですね」

「はい」

 

俺・光莉・楯無さんは特殊ファイバーロープで特殊部隊の男たちを縛り上げる。

こいつらはどうやらアメリカ国籍らしい。

拘束する際、隠し持っていた装備は全て取り上げたため、抜け出される心配は無いだろう。

 

「う〜ん生徒会長自らが破壊行為ってのは、流石にちょっと……」

「まぁそう言わずに……」

 

現在、俺たち3人は各教室のシャッターを破壊して外気を取り入れている最中だ。

すると、緋鼠の衣(スカーレット・バスター)が高速で接近してくる1機のISの存在を知らせる。

 

「楯無さんっ!」

「あら、一夏くんじゃない」

 

専用機の開発元に行っていたんじゃないのか?

どうやって今回の事件を察知したんだ?

 

「一夏くん、今から地下のこの場所に行ってちょうだい。そこに織斑先生も居るから、彼女に指示を仰いで」

「わかりました!」

 

楯無さんからオペレーションルームへの行き先を記したデータを受け取った一夏は、大急ぎで飛び去った。

 

「アイツにも電脳ダイブをやらせるのですか?」

「まぁ、眠り姫を起こすのは王子様の役目だしね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事態が収束したあと、千冬お姉ちゃんや簪からいろいろ聞いた。

千冬お姉ちゃんの方には、アメリカの第3世代IS『ファング・クエイク』がやってきて、山田先生がガトリング・パッケージ『クアッド・ファランクス』をインストールし終えるまでの間、千冬お姉ちゃんが対通常兵器用の装備で時間を稼いだそうだ。

緋鼠の衣(スカーレット・バスター)を貸してあげるべきだったかな?

俺には龍騎士(ドラグナー)があるし。

 

電脳ダイブに関しては、侵入者側の単なる時間稼ぎだったらしい。

そして侵入者の『ワールド・パージ』という能力で篠ノ之・鈴・セシリア・シャル・ラウラはそれぞれの願望を実現させたニセ一夏に惑わされていたのだとか。

篠ノ之は神社での2人暮らし。

鈴は普通の学園での交際。

セシリアは主人と執事。

シャルはメイドと主人。

ラウラは新婚夫婦といった感じだったのだとか。

それを後から来た本物の一夏がニセ一夏を殴り飛ばして解決。

その際、5人全員にラッキースケベが発生したが、一夏に過剰な暴力を振るった者は居なかった。

せいぜいがビンタ1発だ。

さっそく俺と光莉が言ったことを実践してくれたようでなによりだ。

今回の件で一夏も少しは『異性』ってものを意識し始めたようだし、関係が進展してくれることを願うばかりだ。

 

 

 

…………まさか侵入者の狙いって、それじゃないだろうな!?

 

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