Mirror Rider Stratos【完結】   作:無限正義頑駄無

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第57話 スニーキングミッション

IS学園から少し離れたところにある臨海公園前のカフェ。

そこに俺と光莉、そして千冬お姉ちゃんは来ていた。

コーヒーを注文したあと、テーブルのひとつに目的の人物が居るのを発見する。

その相手はちょうど立ち上がろうとしていたが、千冬お姉ちゃんが呼び止める。

 

「相席させてもらおうか」

「…………」

 

無言だが、『ぎくり』となった様子だ。

目を閉じているため、もしかしたら俺と光莉には気付いていないかもしれない。

 

「織斑、千冬……」

「まぁ座れ。そら、お前の分のコーヒーだ。ブラックで構わないな?」

 

相手が千冬お姉ちゃんからコーヒーを受け取り、俺と光莉も席に座る。

 

「さて、結論から言おうか。…………束に言っておけ、『余計なことはするな』と」

 

今回のIS学園へのハッキング。

その犯人はこの世界の束お姉ちゃんだと千冬お姉ちゃんは判断した。

俺と光莉も同意見だ。

独立したシステムで動いているIS学園にハッキングするなんて離れ業、出来るのは束お姉ちゃんくらいだ。

こっちの世界の束お姉ちゃんは、かなり過激な性格らしい。

白騎士事件も、千冬お姉ちゃんと束お姉ちゃんの自作自演なんだとか。

バレたらただじゃ済まないだろうな、それ。

俺たちの世界では束お姉ちゃんは潔白だし、俺が龍騎士(ドラグナー)だということを公表した際、千冬お姉ちゃんが白騎士だということも明かしている。

やましいことは何1つ無い。

 

「…………」

 

相手から殺気が漏れだした。

だが、俺たち3人にとってはそよ風みたいなものだ。

 

「やめとけやめとけ。お前の戦闘能力じゃ俺たちの誰1人として殺せやしねぇよ。例えISを使ったとしてもな」

「……ッ!」

 

相手が閉ざされた両目を開く。

そこには、黒い眼球に金の瞳という異色の双眸があった。

 

「生体同期型のISか。束のやつはそこまで開発していたのか」

 

千冬お姉ちゃんが溜息をつきながら、コーヒーカップを置く。

その瞬間、俺たちは上下も左右も無い真っ白な世界に閉じ込められた。

 

「ふむ、なるほど。電脳世界では相手の精神に干渉し、現実世界では大気成分を変質させることで幻影を見せる能力か。大したものだ」

 

首筋を狙って飛んで来たナイフをキャッチする。

恐らく千冬お姉ちゃんと光莉も同じだろうが、大丈夫だろう。

 

「抉られたいか」

 

どうやら千冬お姉ちゃんは反撃の一手を打ったらしい。

相手が能力を解除して、視界が元に戻る。

 

「それでいい。……そういえば、お前の妹に会わなくていいのか?」

「あれは、妹じゃない……。なれなかったわたし……、『完成型のラウラ・ボーデヴィッヒ』」

 

そして彼女はこう付け加える。

 

「わたしはクロエ。クロエ・クロニクルなのだから」

「……そうか」

 

そして彼女……クロエはコーヒーを1口だけ飲む。

 

「…………苦い」

 

ははは。

確かにブラックコーヒーは苦いわな。

俺と光莉は甘党だからよくわかる。

今回は千冬お姉ちゃんに付き合ってブラックで飲んだがな。

そしてクロエが去っていく。

 

(ん?あれは……)

 

とある人物を見つけた俺は、シャインバイザーを展開し、1枚のアドベントカードを取り出す。

 

「アラスカ条約違反だぞ」

「緊急時の使用は認められているでしょう。今がその時ですよ」

「……ふん」

 

千冬お姉ちゃんはあまり止めるつもりが無いらしい。

 

「じゃあ光莉。ちょっと行って来る」

「はい。行ってらっしゃいませ、旦那様」

『CLEAR VENT!!』

 

クリアーベントで姿を消した俺は、とある人物を追って行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのねぇ、わたしってば天才天才って言われちゃうけどね〜、それって思考とか頭脳だけじゃないんだよ〜。…………肉体も、細胞単位でオーバースペックなんだよ」

 

とある地下レストラン。

そこで亡国機業(ファントム・タスク)のスコール・ミューゼルとISの開発者こと篠ノ之束は食事をしていた。

さっきまでは。

春十(一夏)・光莉・千冬と別れた後、オータムによって拘束されたクロエを人質に、亡国機業(ファントム・タスク)に新造ISをコア込みで提供するよう要求した瞬間、事態は一変した。

束が驚異的な身体能力でオータムをねじ伏せ、クロエを解放したのだ。

 

「ちーちゃんくらいなのさ、わたしに生身で挑めるのは。まぁ最近1人増えたみたいだけど……」

「動くな」

 

外で待機していた織斑マドカが騒ぎを聞きつけ、IS『サイレント・ゼフィルス』を展開した状態でレストランに入り、ライフルを突き付ける。

 

(やったわ、マドカ(エム)。いいタイミングよ)

 

スコールの思惑通りこれで勝負は五分五分、かと思いきや。

 

「ふぅん。オモシロ機体に乗ってるねぇ」

 

束は一瞬でマドカとの距離を詰め、10本の指でライフルを『解体』する。

 

「なっ!?」

 

束の指はそこで止まらず、ビットもアーマーも次々と『解体』されていき、光の粒子となって消えていく。

そしてヘッドギアが『解体』され、マドカの顔が露わになったところで束の指が止まる。

 

「ん?んんん?」

 

束がマドカの顔をじっと見つめる。

マドカは動けない。

動けば生身が『解体』されてしまう。

 

「あは」

「……?」

「あははははっ!キミ、名前は?」

「…………」

 

戸惑いのあまり、マドカは答えられない。

 

「ふふっ、じゃあ当ててあげようか?…………織斑……マドカ、かな?」

「「!?」」

 

スコールとマドカが驚愕の表情を浮かべる。

 

「当たったぁ!へへ、そうだねぇ〜」

 

しばし考え込んだ後、束はスコールの方を向く。

 

「ねぇ、この娘の専用機なら作ってもいいよ?」

「え……」

「だからさぁ、わたしのところにおいでよ。ねぇねぇ、この娘もらっていい?」

「そ、それは困りますが……」

 

スコールにとって、マドカは切り札だ。

失う訳にはいかない。

 

「なんだよ〜、ケチだなぁ。まぁいいや。ねぇねぇマドっち、どんな専用機が欲しい?遠距離型?近距離型?特殊武装は?アーマー重視?機動力は欲しい?」

 

創作意欲が湧いたと言わんばかりに、束はまくし立てる。

 

「まぁその話は追い追いでいいかな。よ〜し、ご飯を一緒に食べよう!くーちゃんもマドっちも、食べないと大きくなれないぞ〜」

 

そう言って再びテーブルに着く束を、その場の全員が唖然とした顔で眺めていた。

 

「じゃあ俺もいただこうかな」

 

全員ではなかった。

先程からクリアーベントで身を潜めていた平行世界の織斑一夏こと星村春十だ。

 

「へぇ、キミの方から来てくれるとはね」

「クロエを尾行しているオータムさんを見かけたからな。後を尾けさせてもらったよ」

「キミは何者なのかな?」

「平行世界の織斑一夏だよ。元の世界の篠ノ之束の技術で光莉()と共にこの世界へやって来た」

「平行世界ねぇ〜。俄かには信じられないなぁ〜」

「じゃあこれを見るかい?」

 

一夏は食事をしながら龍騎士(ドラグナー)を起動し、元の世界の『白騎士・龍騎士事件』の記録映像を流す。

 

「……なるほど。元の世界じゃあ、キミもちーちゃんと一緒にミサイルを撃ち落とした、と」

「その通り」

「そしてその頃からISに関わっていれば、わたしやちーちゃんと同じ領域に踏み込むのも容易い訳ね。ちーちゃんがキミに敗けた瞬間を衛星越しに見た時はさすがの束さんも開いた口が塞がらなかったよ」

「なっ!?」

 

驚愕の声を上げたのはマドカだ。

何せ、織斑千冬が目の前の男に敗北したというのだ。

驚くなという方が無理だろう。

 

「それでだが、マドカの専用機を作るのに俺や妻も混ぜてくれないか?面白そうだしな」

「ISを作れるのかい?」

「俺と妻とクロエの3人で、元の世界の貴女が太鼓判を押す量産型第3世代ISを作ったことがある」

「へぇ〜それは興味深いね。…………良いよ、奥さんも呼んで来たら?」

「決まりだな」

「よろしくね〜。あ、そっちの世界のことを話してくれないかな?」

「あぁ、わかった。まずは……」

 

束と春十は会話に花を咲かせるが、周囲の者はやはり唖然としたままだ。

ただ、元の世界のマドカのブラコンっぷりが龍騎士(ドラグナー)の記録映像で明かされた時、マドカは顔を真っ赤にして羞恥に悶え、いつの間にか復活したオータムは大爆笑していた。




という訳で黒騎士が魔改造されます。
お楽しみに。
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