Mirror Rider Stratos【完結】   作:無限正義頑駄無

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第62話 一夏 VS 一夏 (後編)

SIDE 春十(一夏)

 

実力差があっても降参なんかしない、か……。

一夏(コイツ)は多分、大きな勘違いをしている。

降参や逃走は、必ずしも臆病者のすることではない。

時としてはそれも勇気の必要な行為だ。

勝てない相手とわかっていてなお挑む無謀こそが、最も忌むべき選択だ。

確かにこれは模擬戦なので、たとえ負けても死にはしない。

だが今の口振りからすると、命懸けの実戦でも同じ姿勢で臨んでいるようだ。

そんな体たらくでは、次の実戦で間違い無く命を失うだろう。

その相手は恐らくマドカになるだろうから尚更だ。

 

マドカを焚き付けた俺だが、一夏(コイツ)に死んで欲しい訳じゃない。

それだとこっちの世界の篠ノ之・セシリア・鈴・シャル・ラウラが悲しむからだ。

だからこそ教えてやろう。

圧倒的な実力差のある相手と戦うことが、どれほど愚かなことかをな。

 

「…………後悔するなよ?」

『『SURVIVE!!』』

 

サバイブ化して、シャインソードを抜剣する。

 

「第2ラウンド開始といこうか。次は剣で相手してやる」

「望むところだ!零落白夜発動!」

 

雪片弐型が光に包まれる。

 

「うおぉぉぉぉぉっ!」

ズガンッ!

 

俺は防御も回避もせず、一夏の攻撃を受け止める。

一夏はお互いのシールドエネルギーを表示している、アリーナのモニターを見て驚愕する。

 

「なんでシールドエネルギーが減ってないんだ!?直撃したのに!」

「ヤタノカガミ装甲はあらゆるエネルギー攻撃を無効化する。零落白夜を発動した雪片も、龍騎士(ドラグナー)サバイブの前ではただの物理刀だ」

「なんだって!?」

「ヤタノカガミ装甲は物理装甲としても優秀だ。一点突破型の攻撃ならともかく、何の変哲もない剣の攻撃では傷1つ付かない。そして装甲で受けきれるならシールドエネルギーを消費する必要も無い。それだけのことだ」

「くそっ、だったら!」

 

一夏はもう1度雪羅の射撃態勢に入る。

ぶっちゃけ効かないどころか跳ね返せるんだが、ここは追い詰める意味合いも込めて……。

 

『『CONFINE VENT!!』』

「雪羅が使用不可能!?またカードかの効果か!」

「さあ、次の一手はどうする?」

「俺には雪片弐型(コレ)しか無いんだ。だったらやることは決まっている」

 

そう言って、一夏は雪片弐型を構える。

表情からして自暴自棄という訳じゃ無さそうだな。

確かに龍騎士(ドラグナー)サバイブはヤタノカガミ装甲で覆われているが、それは完全ではない。

間接部などにある装甲の繋ぎ目をピンポイントで狙われたら、エネルギー系統の攻撃でもダメージを受けてしまう。

恐らくそれに気付いたのだろう。

その事に関しては褒めても良いが、合格点には程遠い。

何故なら、元の世界の千冬お姉ちゃんですら俺が相手では成功率が低い攻撃手段だからだ。

実際、千冬お姉ちゃんがその戦法を閃いた後も俺が勝ち越している。

 

「はあぁぁぁぁぁっ!」

 

一夏が再び突っ込んでくる。

剣VS剣の戦いと言ったのは俺だし、付き合うとしようか。

雪片弐型をシャインソードで受け止める。

そのまま雪片弐型を上に払い、無防備になった一夏を何度も切りつける。

 

「ぐあっ!」

「どうした?得意の剣ですらこの程度なのか?だったら……」

『『FEATHER VENT!!』』

 

8基のドラグーン・ユニットが非固定武装(アンロック・ユニット)から分離して、一夏を包囲する。

 

「セシリアと同じ武装か!うおっ!?」

「運動会でも見せただろう。忘れたのか?…………って、聞いちゃいないか」

 

一夏は回避に必死になっている。

雪片弐型でガードしつつも、徐々に追い詰められていく。

それに対して俺はというと……。

 

『『STEAL VENT!!』』

 

雪片弐型を、零落白夜もろとも奪い取る。

 

「今度は雪片が!?」

「零落白夜、発動」

 

シールドエネルギーが攻撃エネルギーに変換され、雪片弐型を包み込む。

 

「くらえっ!」

ザシュッ!

「ぐはあっ!」

 

雪片弐型の一撃で、一夏は倒れ伏す。

白式のシールドエネルギーが尽きないよう力加減をしたため、試合はまだ続いている。

 

『『STRANGE VENT!!』』

 

俺はストレンジベントのカードを装填する。

望み通りのカードが出なければ、このまま一夏にトドメを刺して試合を終わらせるつもりだ。

 

『『HEAL VENT!!』』

 

望んだ通りの効果が発動し、白式のシールドエネルギーを回復させる。

リターンベントでタイムベントをもう1度使うという手もあるが、それでは封印した雪羅と奪い取った雪片弐型まで元通りになってしまう。

 

「ぐっ……また回復だと……?一体何を……」

「…………」

『『TRICK VENT!!』』

 

一夏の問いには答えず、トリックベントで8人に分身する。

それに応じて、ドラグーン・ユニットの数も8倍の64基に増える。

 

「なっ……!?」

「さっきお前は言ったな?『降参なんて絶対にしない』、と」

「ちょ……ちょっとタンマ!」

「そう言われて待つ敵が居ると思うか?発射(ファイア)!!」

 

フルバーストに晒された一夏は、戦闘不能の1歩手前のダメージを受け、分身の2人に取り押さえられる。

 

「ぐっ……!」

「どうだ一夏、圧倒的な実力差を有する相手に無謀な戦いを仕掛けた挙句、嬲り殺しにされる気分は?」

「春十!お前はこんなことして何がやりたいんだよ!?」

「わからないのか、一夏?」

 

分身が一夏を地面に叩きつける。

 

「これが実戦だったら俺の降伏勧告を断った時点でお前は死んでいる。それだけならまだ良い。だが今のお前の無様な格好はどうだ?全ての武器を失い、何度も回復させられてのサンドバック状態。『尻尾を巻いて逃げたくない』というちっぽけなプライドを守った結果がそれか?」

「くっ……それでも俺は!」

「その言葉の続き、お前の大事な者たちが目の前で嬲り殺しにされても言えるか?」

「……っ!?」

「この状況、俺がお前の敵だったら、篠ノ之たちを捕まえて1人ずつお前の目の前で殺すぞ?『お前が最後まで負けを認めなかったからだ』と言いながらな」

「ふざけるな!そんな真似させてたまるか!」

「どうやってだ?無様に這いつくばるしか出来ない今のお前に俺が止められるのか?」

「それは……」

「今の問いに即答で返せないようでは、俺に一矢報いることすら夢のまた夢だな。弱いくせに吠えるからそうなる」

「くっ……!」

「よかったな一夏?俺がお前の敵じゃなくて。そうじゃなかったら、今言ったことが現実になってたぞ?お前のせいでな」

「…………」

「たとえ格好悪くても命は大事にしろよ?お前の帰りを待ってくれている人たちが居るんだろう?その人たちを泣かせるようじゃ、男失格だぜ?」

 

そう言って、俺は再び雪片弐型を振るう。

そして試合終了のブザーが鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄いね、春十は」

「そうでもねぇよ」

「でも、あれはちょっとやり過ぎだったと思うわよ?」

「俺はそうは思いません。あれくらいのことをしないと、一夏の目は覚めないと思いますよ?」

 

夕日に染まったIS学園の屋上。

俺は簪と楯無さんの2人と別れの挨拶をしていた。

光莉は離れたところで、トラベルマシンの調整中だ。

 

「ねぇ春十、ひとつ聞かせて」

「何だ簪?」

「織斑くんは『皆を守る』という漠然かつ分不相応な夢を抱いている。じゃあ春十は?春十は何を守りたいと思っているの?守りたいものがあるから、そこまで強くなれたんだよね?」

「俺が守りたいものか……。う〜ん、友情……プライド……見えない絆……」

「……それ、『魔法戦隊マジレンジャー』の主題歌の2番の歌詞」

「すまんすまん、今のは冗談だ。俺が守りたいもの…………それは光莉だ。たとえどんなことがあっても」

「……『君だけを守りたい』ってこと?正義の味方のセリフじゃないね」

「かもな。でも俺は……俺だから。だから俺は、自分の大切なものを犠牲にして大勢の誰かを救うなんてことは出来ない。簪は俺のことをヒーローだと思ってくれているみたいだけど、俺はそんな格好良い存在じゃないのさ」

「そんなことない!たとえそうでも、わたしにとって春十はヒーローだもん!」

「……そう思ってくれるのか。ありがとう…………簪」

「……うん」

「旦那様!トラベルマシンの調整が終わりましたよ!」

 

光莉がこちらにやって来た。

この世界とも一旦お別れだな。

 

「では楯無さん、簪、お世話になりました」

「ううん。寧ろお礼を言うのはこっちの方。最初に会った時、助けてくれてありがとう…………春十」

「また会える日を楽しみに待っているわよ」

 

その言葉の直後、トラベルマシンが作動して、俺と光莉は意識が途切れた。

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