Mirror Rider Stratos【完結】   作:無限正義頑駄無

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「AS -エンジェリック・ストラトスフィア-」とのコラボです。
この番外編は、あちら側の作者である枯田様が書いてくださったプロットに、私が枯田様の了承のもと手を加えるという形でお送りしております。


番外編 龍と天使の輪舞曲
第1話 異邦人夫婦


 

織斑一夏、そしてその妻・光莉が平行世界への旅行から戻った翌日。

 

「いっくん、光莉ちゃん、次はどの世界に行きたい?」

 

いきなり束の声が聞こえてくる。

どうやらちゃんと見ていたようだ。

 

「どの世界って……?」

「あれ以外にもあるんですか?」

「うん、あるよ。並行世界っていうのは、本みたいなものだからね」

 

「本?」と、二人が口を揃えると束は解説してきた。

要は、自分の世界は本の1ページだと考えると良い。

ページをめくれば、似て非なる世界がそこには在る。

だが、最初のページと最後のページの内容がまったく異なるように、世界も離れるほどまったく別の世界になっていくといわれているのである。

 

「昨日まで行ってきたのは、最初の1ページかな」

「俺たちの世界じゃなくて?」

「私たちの世界は、そこからだとずいぶん離れてるみたいだね」

 

あんなのが最初だなんて思いたくないけどと、束はぼやく。

どうやら過激すぎる篠ノ之束という存在は、彼女にとっては忌避したい存在のようだと一夏と光莉は思った。

 

「それはそれとして、行ってみたい世界はない?」

「そうは言っても想像つかないしな」

「旦那様がモテてない世界がいいです」

 

あるのかそんな世界、と、言いたくなってしまった一夏だが、意外な言葉が返ってくる。

 

「ある……けど……」

「束お姉ちゃん?」

「いっくんがこき下ろされてるような世界に行きたい?」

 

やだなあとまじめに考える一夏である。

さっきまでいた世界の一夏だと突っ込みどころ満載な感はあるが、それでも自分自身だ。

こき下ろしたくないし、こき下ろされたくない。

 

「それは、私だって嫌です。旦那様は私の大切な人ですから……」

「光莉……」

 

ふとした拍子に二人の世界に入り込もうとした一夏と光を束が必死に止めた。

 

「それなら、1つ在る。ただ、覚悟してね」

「えっ?」

「そこ、戦争の真っ最中だから」

 

束がそう答えるなり、いきなりまばゆい光が襲いかかってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を開くと、どこかの町並みが見えた。

日本ではない。

明らかに外国だ。

 

「ここは……」

「旦那様が『モテてなくて』、でもこき下ろされてない世界なんでしょうか」

「何でそこにこだわる」

 

思わず突っ込む一夏だが、唐突な悲鳴にハッとした。

 

「ミラーモンスターか!?」

「旦那様、変身の準備を!」

 

だが、鏡やそれに類するものには何も映っていないし、例の金切り音もしない。

おかしい。

一夏と光莉がそう思っていると上空から殺気が降り注いできた。

 

「これは!?」

「そんなバカな……」

 

呆然と上空を見つめる光莉に釣られ、一夏が目を向けると、信じられないものが飛んでいた。

 

「IS……なのか……?」

「無人で飛んでいるなんて……」

 

飛んでいたのは多数の打鉄やラファール・リヴァイブ。

ただし、人が乗っていない。

ISだけが空を飛び、そして逃げ惑う人々を襲っていた。

考え事をしている場合ではない。

 

「なんだかわからねぇが、今はとにかく……変身!!」

 

そう叫び、一夏は龍騎士となって空へと飛び上がった。

 

『STRIKE VENT!!』

「光莉!」

「はいっ!」

 

ナーガクローを呼び出して、光莉に投げ渡す。

ここがどんな世界なのかはっきりとわからない以上、光莉のミラーモンスターとしての姿を晒す訳にはいかない。

 

「さて、俺は……」

『THRUST VENT!!』

 

2本のシャインランサーを構え、ラファールの1機を刺し貫く。

ラファールは打鉄に比べて装甲が薄いため、何度目かの刺突で撃墜される。

 

『ACCEL VENT!!』

螺旋槍殺(スパイラル・シェイバー)!!」

 

アクセルベントによる高速移動で、他のラファール・リヴァイブを纏めて一掃していく。

一夏がそうやってラファール・リヴァイブを相手にしている一方で、打鉄と戦っている光莉はというと……。

 

「ガ○ティラ岩烈パンチ!!」

 

強き竜の戦隊のレッドが使っていた必殺パンチを、ナーガクローを嵌めた右拳で再現していた。

それをくらった打鉄は、装甲がボロボロになって吹き飛ぶ。

光莉の元の姿は、第3世代ISが相手でも力押しだけで勝てる3つ首龍だ。

人化しているとはいえ、7000APのミラーモンスターの実力は伊達ではない。

一夏と光莉はその勢いを維持したまま、ラファール・リヴァイブと打鉄を沈めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦ってみての感想は、そこまで強くはないというものだった。

ただ、数が多すぎる上に人が乗るISやミラーモンスターとは戦いの勝手が違う。

強いというより、戦い辛いのだ。

その戸惑いが、隙となる。

 

主君よ、後ろだッ!

 

「何!?」

 

唐突に頭の中に声が響いてきた。

だが、決して不快ではない。

本気で心配しているような声だった。

一夏はすぐに振り向いて放たれたレーザーを防御する。

 

「旦那様!?」

「今の声はお前なのか、光莉?」

「いえ、私は何も……」

 

そう答えることはわかっていた。

なぜなら、声音こそ女性のものだったたが、光莉のものとは明らかに違ったからだ。

一言でいうなら、義理堅いというか、『仁義』を通すような雰囲気を感じさせる声だった。

そこに、別の声が響いてくる。

 

「誰だか知らないが下がってくれ!」

「のんびりしてんじゃねぇっ!」

 

光と共に現れたのは、翼の生えた鎧を纏う、白い虎と黒い獅子。

 

「嘘……」

 

白い虎、正確には白い虎を模した翼の生えた鎧を身に纏う者の顔を見た光莉は驚愕した。

似ているのだ。

自分の伴侶である一夏に。

顔かたちではなく、戦う覚悟を秘めているとわかるのだ。

彼らは一気に無人のISたちを蹴散らそうとする。

ただ、その戦い方は一夏から見れば、甘いものだった。

殺そうとしていない。

倒そうとしていない。

逃げ惑う人々を守ろうというより、罪を犯す友人を必死に止めようとしているように見える。

覚悟はあるのだろうが、どこか歪な物に一夏には見えた。

そして。

 

「君は?」

「つかよ……まさかISか、それ?」

 

戦い終えた白い虎は織斑一夏、黒い獅子は日野諒兵と名乗ってきた。

 

「ああ。えっと俺は星村(ほしむら)春十(はると)。これは龍騎士(ドラグナー)っていうんだ」

「束さんが言ってるんだけど、もしかしてそのIS、君と共生してるのか?」

「共生?」

「知らねえで乗ってんのかよ。ISが離反してから、男も女も乗れる可能性はあるらしいぜ」

 

春十(一夏)は、その言葉に違和感を持つ。

まずISが離反したということ。

そして男も女もISに乗れる可能性があるということ。

この世界ではいったい何が起きているのか。

少なくとも、気楽な新婚旅行はできなそうだと感じつつ、春十(一夏)は、織斑一夏と日野諒兵の誘いを受け、IS学園へと向かうことにしたのだった。

そんな中。

 

(この世界の旦那様(織斑一夏)と、この日野諒兵という人は……、ミラーモンスターと同類になってしまってる……)

 

戦う覚悟を秘めている点は似ていても、既に人として別種のものになっていることを光莉は気づいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園までの道のりはわかる。

ただ、光になって飛んでいく一夏と諒兵のような真似はできない。

そこで、自分は裏道を知っているからと断って、春十(一夏)は光莉と共にミラーワールドを抜けていくことにした。

二人きりになったことで、光莉のほうから話しかけた。

 

「本当か?」

「はい。あの二人は私たちミラーモンスターと同類です。おそらく後天的なものだと思いますが」

「なんでそんなことになってるんだ?」

「それは……わかりません。ISが無人で飛び、人を襲っていたことなども関わっているのかもしれませんし」

 

ただ、と光莉は言葉を濁す。

そんな彼女を春十(一夏)は促した。

IS学園に着くまでに、こちらでできるだけ情報を集めておきたい。

最悪、戦うことになるかもしれないと考えたからだ。

性格を考えると、こちらの一夏と諒兵は決して悪人ではないと思う。だが、だから戦わないということにはならない。

考え方が違えば、善人同士が戦うこともあるのだ。

ならば、情報は勝つために重要なファクターとなる。

 

「私と旦那様の契約とは異なりますが、異種族的なつながりをそれぞれに感じました」

「つまり、こっちの一夏()と諒兵ってやつには、俺にとっての光莉みたいなパートナーがいるってことか」

 

だとしたら、自分と光莉のことを受け入れるのは、それほど難しいことではないだろうと春十(一夏)は思う。

ナニカと交流を深め、信頼の絆を結んだというのなら、共感もできる。

敵対するなら容赦するつもりはないが、戦いたくはなかった。

 

「おそらく、ですが。ただ、雰囲気から考えると常に密着してるような印象を受けました」

「密着?」

「はい。そこで考えたのが彼らのISです。形状が独特すぎますしライダーとも異なります。鎧という意味では近いのですが」

「確かにな……」

 

こちらの一夏は虎を模した肩当てが特徴的な騎士鎧。

諒兵は獅子そのもののような鎧。

そしてどちらも大きな翼を持っている。

まるで天使のようだと最初に見たときは感じたものだ。

つまり、あの鎧のようなISこそがこの世界でのミラーモンスターに相当するのかもしれない。

 

「それだけじゃない。さっきのISは無人で飛んで人を襲ってた。まるで意思があるみたいに」

「たぶん、あるんです。この世界のISには。いえ、束さんが言っていたことを考えると、私たちの世界のISにもあるのかもしれません」

 

光莉の言葉にふと思った。

先ほど自分を助けようと叱責してきた声。

光莉ではなく、他の契約モンスターたちとも違っていた声。

あれこそ、ISである龍騎士(ドラグナー)自身の声だったのではないか、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園に着いた春十(一夏)と光莉は、良く見知った者たちに驚いた顔で迎えられた。

これはどうしようもないかと苦笑してしまう。

 

「そっくりなんてもんじゃねえぞ」

「世の中には似た人が3人はいるっていうけど、驚くほど似てるわね」

「なんか、すごく複雑な気分だなあ」

 

諒兵・鈴音・一夏の順に感想を述べる。

また、セシリア・シャルロット・ラウラ・本音がその場にいた。

 

「お三方とも、そちらの星村さんのことばかりではなく、こちらの方もちゃんとお迎えすべきですわ」

 

と、セシリアは一夏と諒兵、そして鈴音を窘めると春十(一夏)と光莉に挨拶してきた。

 

「IS学園にようこそ。もてなせる状況ではありませんが歓迎いたしますわ」

「あぁ、ありがとう」

「ありがとうございます」

 

お互いに頭を下げる姿を見て反省したのか、一夏と諒兵は苦笑しつつ、改めて挨拶すると、光莉について尋ねてきた。

 

「てっきり1人だと思ってたけど、連れがいたんだな。気を悪くしないでほしいんだけど、どんな関係なんだ?」

 

そう尋ねる一夏に対し、どう答えようかと悩む春十(一夏)だが、光莉がかまわずに名乗る。

 

「私は星村光莉といいます。先日結婚したばかりですが、旦那様(春十さん)の妻です」

 

その場にいた全員が、たっぷり五分は固まってしまった。

そして。

 

「ええぇえぇぇぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇぇッ!?」

 

まさに大絶叫というべきだろう。

ほぼ全員が目を見張っていた。

本音を除いて。

 

「くっ、何だこの敗北感……」

 

一夏が膝を、そして両手を地面についてうなだれる。

 

「同じ顔でもえらい違いだな」

 

逆に諒兵は楽しそうに笑う。

 

「結婚って、あんたら私らと年変わんないでしょっ!?」

「いろいろ理由はありますが、ちゃんと法に則って結婚してますよ?」

 

詰め寄ってくる鈴音に対し、光莉は胸を張って答えた。

春十(一夏)と光莉の世界の法に』という注釈がつくことは内緒である。

 

「大人なんだね~」

「正直、実感がありませんわ」

「恋もまだなのに、結婚してるとか聞いてもピンと来ないよね」

 

と、本音、セシリア、シャルロットは苦笑いしつつ、わりとあっさり二人の関係を受け入れていた。

 

「どうするんだよ、この状況」

 

春十(一夏)としては、光莉の自己主張は嬉しいが、ここでいきなり言うなと突っ込みたい気分である。

だが、一人のみ、ぐっと拳を握るものがいた。

 

「光莉といったな」

「はい」

「私もだんなさま、諒兵にとって良妻になるべく努力中だ。是非意見交換をしたい」

「えっ?」

 

まさかこちらにも結婚している者がいるとは思わず、さすがに光莉も驚いてしまう。

というか、以前いった世界ではラウラは一夏に惚れていたが、この世界ではどうやら諒兵に惚れているらしい。

これも並行世界の違いなのかと光莉はおかしなところで感心していた。

 

「待てコラっ、結婚してるみてえにいうんじゃねぇっ!」

「してないのか?」

「自称だっ、ラウラのっ!」

 

諒兵の必死の突っ込みに思わずトンチンカンな疑問を述べてしまう春十(一夏)だった。

 

さて、一夏と諒兵のパートナーたる二人は、周りには聞こえないようにして話していた。

 

『う~ん……』

『どうしたんです、ビャッコ?』

『みんな気づいてないけど、イチカなんだよね……』

 

あの春十って人、と白虎が続けるとさすがにレオも驚いたような声を出す。

 

『どういうわけかはわかんないけど、完全に同じ心を持ってる。イチカなのは間違いないよ』

『パラレルトラベルしてきたんでしょうか?』

 

『たぶん』と、白虎はレオの推測を正しいと認めた。

心でつながっている白虎には、さすがに春十(一夏)が自分のパートナーの一夏と同一人物であることがわかるらしい。

また、並行世界移動に関しては、情報がエンジェル・ハイロゥに存在するため、二人とも理解していた。

 

『でも、今は言えないよね』

『今の状況だと特大の爆弾ですね』

 

とりあえず状況を収めてくれる人、千冬や真耶あたりがくるまで黙っておこうと判断した白虎とレオだった。

 

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