Mirror Rider Stratos【完結】   作:無限正義頑駄無

73 / 85
コラボ最終話です。


第6話 虎の剣士、獅子の戦士、そして龍の騎士

 

 

空で戦う彼らと彼女たちの姿を、1人の少女がじっと見つめていた。

ガラスに触れる手が、ギュッと握り締められる。

 

「篠ノ之さん……」

 

声をかけてきた少女に、今は合わせる顔がない。

だから振り向かない。

ただ。

 

「私も……飛べたら……」

 

それは、今の箒が思う、偽らざる本音だった。

そんな箒の呟きを聞かないふりをしつつ、簪も同じように空を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楯無と虚は異変が起きてすぐに指令室に飛び込んだ。

千冬と真耶はミラーモンスターと『強欲』のISコアの融合体の一挙一動を見逃すまいとモニターを睨みつけている。

また、別の小さなモニターには束が解析を試みている姿が映っていた。

 

「織斑先生、アレは一体!?」

「異世界から客が来たことは話したな?」

「はい」

「どうやら、その世界から来た化け物と、隔離していたISコアが融合してしまったらしい」

 

隔離と聞いて、楯無も顔を青くした。

かなり性質が歪んだISコアを、ISに組み込ませないために隔離していたことは知っていたからだ。

 

「それじゃ、アレが『強欲』……」

「それがあのケルベロスのような化け物と融合しちゃったんだよ」

 

そう答えたのは束だった。

もっとも、相性がよほど良かったのだろうと束は言う。

 

「あの化け物、ミラーモンスターって言うんだけど、世界を隔てる壁は本来かなり強いものなんだよ。だから融合なんてできるはずがなかった。でも、それを越えて融合するとなると、あの子はもうとっくに……」

 

その先の言葉を束は口にできなかった。

自分が生みだした未登録のISコア。

それが、気づかないうちに化け物そのものになってしまっていたことが、とても辛いと感じでいたからだ。

 

「……『強欲』は、七つの大罪のうちの一つを示す言葉でもある。生まれたときからなのかもしれないな」

そう千冬は呟いた。

 

七つの大罪、そう呼ばれる七つの個性がある。

 

傲慢、強欲、嫉妬、憤怒、暴食、色欲、怠惰。

 

それぞれに相当する魔王も示されている。

そのことを考えれば、『強欲』のISコアが化け物になってしまったのは、どうしようもないことなのかもしれない。

束の辛さが理解できる千冬としては、せめてそれで納得してほしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園の上空に浮かぶソレを一夏、諒兵、春十は睨みつける。

『殺人鬼』の性格を持つIS。

そんな存在を解き放ってしまったら、これまでのような被害ではすまない。

一方的な虐殺になってしまうだけだ。

覚醒ISたちはただ人を襲っているというより、今まで兵器として扱われていたことに対する怒りをぶつけているというほうが正しい。

しかし、目の前のケルベロスのような化け物は違う。

ただ殺すこと、奪うことだけが望みの、まさに怪物のような存在だ。

 

(人とは人の心があるかどうかって、こっちの世界の千冬お姉ちゃんが言ってたな……)

 

人の心がある光莉や白虎やレオは、千冬の言葉を考えれば、自分たちと同じ人ということができる。

だが、目の前のこいつは完全に対極の、まさに化け物ということができてしまう。

 

倒すしかない。

 

春十はそう覚悟を決めたが、チラッと一夏と諒兵に視線を向けると、戸惑っている様子が見て取れた。

やはりどうしても、どんな形であれISを相手にすることに、2人は忌避感を持ったままだった。

春十が声をかけようとすると、いきなり頭に声が響いてくる。

 

『寄越セ、オ前タチノ命……』

 

おぞましい。

そうとしか言えないような暗い響きを持つ『声』に3人とも顔を顰める。

「お前……」と、諒兵が呟くと、声は答えてきた。

 

『我ヲ破壊シタ者共ヨ』

「恨んでるのか?」

 

一夏が少し悲しそうな表情を見せる。

無人機として倒したときは、敵だという意識に突き動かされた。

何より、鈴音を傷つけたことに2人ともが激しい怒りを覚えたのだ。

ゆえに、無人機であったころのこのISコアに、怒りを叩きつけた。

それを恨んでいるというのであれば、否定はできない。

しかし、返ってきたのは意外な答えだった。

 

『恨ミハ無イ』

「どういう意味だ?」

 

そう春十が問いかけると、トライドッグスラッシュの姿をしたISコアは答えてくる。

 

『我ガ欲シイノハ命。ソレヲ寄越セバイイ』

「恨んでんじゃねえかよ」

『否、我ハ命ガ欲シイダケダ』

 

倒されたことや、隔離されたことなどどうでもいい。

ただ人の命が欲しい。

奪い取りたい。

それだけで満たされる。

 

『コノ地ニ満チル数多ノ命。奪イ尽クスコトハキット楽シイ』

 

そういってニヤリと笑う。

さすがに3人ともが感じていた。

イカレている、と。

欲しいという心を満たしたい、それだけで化け物にまでなってしまった『強欲』のISコア。

倒すしかないことがわかっていても、その覚悟ができているのは春十だけだ。

だが。

 

「旦那様!」

「一夏、諒兵!」

「だんなさまあっ!」

 

光莉と鈴音たちが一斉に飛び上がってくる。

 

「バカヤロウッ、何で出てきた!」

 

思わず諒兵が声を荒げるが、気持ちは春十も一夏も同じだ。

この『殺人狂』…………『強欲』のISコアに、大切な者を近づけたいと思うはずがない。

 

「戦力は少しでも多いほうがいいでしょ!」

 

負けじと怒鳴り返す鈴音をフォローするように、セシリアとシャルロットが続ける。

 

「サポートなら今の私たちも可能ですわ」

「敵の戦闘能力がわからないからね。分析なら任せてよ」

 

確かに、特に一夏と諒兵は特攻型ともいえる戦い方をするので、サポートがいるだけでだいぶ生存確率が上がる。

後方支援をしてくれるなら、安心もできる。

しかし……。

 

「光莉……」

「私も気持ちは同じですから」

 

ミラーモンスターとしての力を解放したその姿は、春十の背を守ろうという気迫に満ちていた。

本当なら戦わせたくない。

しかし、ただのミラーモンスターならともかく、この世界のISコアと融合してしまった相手だ。

光莉の力も必要になるだろう。

 

「……俺から離れるな。いいな?」

「はい」

 

その姿を見たセシリアが、指示を出してくる。

 

「一夏さん、諒兵さん、春十さんに前衛を務めていただきます。光莉さんは春十さんを、ラウラさんは諒兵さんを」

 

そこでいったん言葉を切ると、意を決したようにセシリアは口を開く。

 

「鈴さん、一夏さんのサポートを」

「……うん。わかってる」

「私とシャルロットさんで後方支援と敵の戦闘能力の解析をします。織斑先生、バックアップをお願いします」

『こちらは任せておけ』

 

千冬がそう答えたとたん、痺れを切らしたのか、化け物が雄叫びを上げてきた。

即座にセシリアが指示をだす。

 

「各機、散開!」

 

全員が化け物を取り囲むように一気に飛び上がった。

初撃は諒兵。

 

「使えラウラ!」

「うむっ!」

 

応えたラウラに諒兵は足の分の獅子吼を回した。

レールカノンに3つ。

左手に3つ。

そしてレールカノンで撃ち放たれた獅子吼とタイミングを合わせ、諒兵は螺旋攻撃をぶちかます。

さらに、時間差でラウラが左手に構えた爪をぶちかました。

 

「いいタイミングだぜ」

「夫と息を合わせることくらい、妻である私にとって訳は無い」

「あのな……」

 

唸り声を上げて後退する化け物を余所に、夫婦漫才に興じる2人だった。

 

春十はいきなり近づくと光莉を巻き込んでしまう可能性があると判断し、連射式ビーム銃『シャインブラスター』を構え、正面から連射を放った。

だが、やはりミラーモンスターと融合したせいか、化け物はライダーである春十を敵だと認識しているらしい。

尾を振り、無数の斬撃を放ってくる。

 

「させません」

 

そう静かに呟き、光莉はその両手の爪で斬撃を弾き飛ばす。

 

「何か、いつもとは感覚が違うな」

「こうして一緒に戦うのも悪くありませんね。私もISに乗れたら、楽しいのかもしれません」

 

いつもは契約者とミラーモンスターとして戦っていたが、背中を預ける戦友のような戦い方も悪くないと2人は感じていた。

 

そして。

 

「隙を作るわ一夏。合わせてくれる?」

「任せてくれ」

 

そう答えた一夏に笑いかけると、鈴音は化け物に向けて龍砲を連撃で放つ。

頭と胴体に衝撃を喰らった化け物の動きが止まると、一夏は一気に弾丸加速を使って迫った。

 

「頼むから眠ってくれ」

 

そう呟き、肩に担いだ白虎徹を振り下ろし、一気に胴体を斬り裂いた。

そこに。

 

「一夏、下よっ!」

 

鈴音の叫びを聞いて一気に下降した一夏が、再び上昇しようと目を向けると、切り口を抉るかのように、投げ放たれた双牙天月がぶつけられているのが見える。

反撃をさせまいと、鈴音が離脱の隙間で作ってくれたことに一夏は感謝した。

 

そこを狙い、諒兵は獅子吼で螺旋撃を撃ち放つ。

このまま胴体を真っ二つに折るつもりか。

そう感じた春十は、サポートするつもりでシャインブラスターを何発も撃ち放った。

 

「待ってください!」

「えっ、セシリア?」

「そいつを分裂させちゃいけない!」

 

答えたのはシャルロットのほうだった。

焦った様子で叫んでいるが、一足遅かったらしい。

胴体を輪切りにされた化け物は、墜ちるどころか、更なる異変を見せてくる。

頭のある上半身は、そのまま下半身を生やし、尻尾がある下半身は、何故かドリル状の尻尾に変化したかと思うと、2つの頭を持つ犬の姿へと変化したのだ。

最初から、2体のミラーモンスターが1匹の化け物になっていたらしい。

分裂したことで、本来の姿に戻ってしまったのだ。

 

「あれは……デュアルドッグスラスト!」

「光莉!?」

「あの2体を合体(ユナイト)させてはいけません!まったく別の化け物になります!」

 

だが、それこそが目的であったらしい。

3つ首の犬と2つ首の犬はお互いに雄叫びを上げると、ひとつに融合した。

右手に円盤型の鋸、左手に巨大なドリルを持ち、背中に使徒の翼を生やした巨人へと。

 

「ウェポナイズゴーレム……」

「あいつは強いのか?」

「あの形態は、私の本来の姿と同等の力を持ちます。それがこの世界のISコアと融合している以上……」

 

現状で、シャインナーガを超えるモンスターになっているということになる。

その場にいた全員が戦慄してしまう。

いわば最悪の堕天使が光臨したということができるからだ。

だが、そこに救いの声が聞こえてきた。

 

『弱点はあるよ』

「束さん!?」

『頭を破壊して、粉々に』

 

一夏の声を無視して、束は説明してくる。

だが、その声は激痛に耐えているかのように痛々しくて、思わず全員が胸を抑えてしまう。

 

「どういうこった、束さんよ?」

『そこにあの子がいるの。あの子を破壊すれば、あのミラーモンスターも消える。もともと、現実世界じゃあ活動出来ない存在だから』

 

束は驚くことに、自分が作り出した無人機のコア、すなわち『強欲』のISコアを殺せといってきたのだ。

 

「そんなっ、できるわけないだろう!」

「凍結すりゃいいんじゃねえのか!?」

『あの子の凍結は、私や博士(あいつ)でももう無理なんだよ……』

『一夏、諒兵、倒さなければ奴はこの世界の災厄に成る。躊躇っている場合ではないんだ』

 

殺す以外に手がないと千冬もいう。

そうしなければ多くの人に被害が出るからだ。

その状況でも、やはり一夏と諒兵はためらってしまう。

 

『いっくん、りょうくん、はるくん……。あの子はもう戻れないところまで行っちゃったの。だから……』

 

その先を束は口にしなかった。いや、できなかったのだろう。

自分が生みだしたISコア。

すなわち、我が子を殺せなどと言えるはずがない。

そんな束の辛い想いを春十は理解した。

 

「俺がやる」

「春十っ、お前……本気で言ってるのかっ!?』

「落ち着いてよ一夏!」

 

一夏が掴みかかろうとするのを、鈴音が必死に止める。

それが正しい答えだと理解しているからだ。

そんな鈴音に感謝しつつ、春十は諒兵へと顔を向ける。

 

「諒兵、あのときの答えだ」

「何?」

「大事な人を傷つけてまで、全てを救おうとは思わない。だから、例え光莉の同属でも、敵となったなら俺は倒す」

 

決意の眼差しで諒兵を見据える。

一夏も諒兵も、春十の覚悟を感じて、言葉を飲み込んだ。

倒さなければいけないということは、2人ともわかっているのだ。

すると。

 

主君よ、カードを抜くのだ

 

龍騎士(ドラグナー)、どうしたんだ?」

 

僅かな時間だが、私の本来の力を使えるようにする

 

そうすれば、ISコアを破壊できると龍騎士(ドラグナー)はいう。

この世界のISコアの強度は、覚醒したことでもとの世界よりも遥かに上になっている。

敵となった『強欲』のISコアを殺せる力を持つのは、同じISコアだけなのだ。

「わかった」と肯き、カードを抜くと、そこには今までとはまったく違う姿の春十が描かれていた。

シャインバイザーにセットすると、馴染みのある独特の音声が、聞いたことのないカードの名前を告げる。

 

『ANGELIC VENT!!』

 

それはまさに龍の騎士とも言うべき姿だった。

龍の頭を模した兜に、騎士のごとき白銀と黄金の鎧。

背負うは鋼鉄でできた翼。

 

『この状態ではライダーの力は使えない。主君よ、求める武器を己が作るのだ』

 

そう告げられ、イメージしたのは光莉との絆である召喚機。

シャインバイザーツバイ。

盾にもなる鞘に納められた、聖なる光の剣。

この力であの悲しい化け物を倒す。春十はそう覚悟を決める。

 

「光莉、それに一夏、諒兵、そしてみんな。力を貸してくれ。俺1人じゃあ、きっと届かない」

「わかった。背負わせてごめん」

「確実に届かせてやる。きっちり仕留めろよ」

 

そこに、巨人の巨大な右腕が、全てを断ち切るような轟音を響かせて襲いかかってくる。

 

「俺を斬れると思うな」

 

そう、静かに呟いた一夏は、その右腕を白虎徹で受け止めた。

回転する刃が凄まじい金属音を立てるが、一夏はそこから微動だにしない。

 

『何故、斬レヌッ!?』

「斬るのは、俺の専売だ」

 

苛立ったのか、ウェポナイズゴーレムは全てを抉り抜かんとする左腕を突き入れてくる。

だが、諒兵が右腕の獅子吼を回転させ、巨大なドリルに叩きつけた。

体格差が圧倒的にあるにもかかわらず、力が拮抗するどころか、逆に弾き返した。

 

「ぶち抜け」

 

追撃とばかりに、その左腕の間接を狙って獅子吼の螺旋撃を撃ち放つ。

さすがに折ることはできなかったが、巨人は大きくバランスを崩した。

 

『ヌウッ!?』

「一緒に生きてくには、お前はでか過ぎんだよ」

 

本当の理由はそこではないことを理解して、それでも倒さずにすめばいいというわずかな願いを諒兵も一夏も否定できない。

だからこそ。

 

「一緒に来てくれ」

「はい」

 

翼を広げ、巨人の頭に向かって一気に飛び立つ春十の背にぴったりと張り付くように光莉も飛ぶ。

両腕は一夏と諒兵が完全に押さえているが、両の肩口に存在する犬の3つ首と2つ首が、必死になって反撃しようと衝撃波とレーザーを放ってきた。

春十が、手に持つシャインバイザーツヴァイの盾でレーザーを防ぐと、光莉はシャイナーガの翼を大きく広げて衝撃波から春十を守る。

 

『来ルナッ、我ハマダ命ヲ一ツモ奪エテオラヌトイウニッ!』

「お前が奪っていい命なんて、一つもない」

 

ウェポナイズゴーレムの悲鳴にも似た叫びを春十は否定し、その強大な頭の眉間に、光の剣を突き立てる。

バキンッと嫌な音が響いた。

それは。

 

『こやつの本体に届いた。主君よ、気を込めよ』

 

こいつを倒す。

その意志を強く持てと龍騎士(ドラグナー)は言ってくる。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

雄叫びを上げると、剣は小さな太陽の如くまばゆく光り輝き…………そして。

ドガァンッという轟音と共に、その頭が粉々に砕け散る。

その瞬間、その場にいた全員に『声』が聞こえてきた。

 

『一ツモ奪エナカッタ……。ナラバ……我ハ何故、生マレテ来タノダ……?』

 

その問いに答えられる者は誰もいなかった。

 

 

束の瞳から、一滴の涙が零れ落ちる。

 

「束……」

「これが、罪の意識なのかなあ、ちーちゃん……」

「お前だけの問題じゃない。ISを兵器にしてしまったのは、世界の人々自体が望んでいた面もある」

 

最初から宇宙だけを見て作り上げていればよかったのだろうか。

でも、自分が飛べる翼は、他の人たちの翼にもなると束は思った。

ただ、誰も飛ぶだけの翼を求めなかっただけで。

一夏と諒兵というただ飛ぶことだけを望んだ2人が、世界を動かし、IS自身をも動かした。

それがこの悲劇を生んだというのなら、世界はあまりにも束にとって優しくなかったのだろう。

それでも、最後まで責任を取る覚悟を束は抱いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから2日。

一夏と光莉はこの世界のことを知りつつ、のんびりと観光した。

辛い経験もしたが、いい思い出も残しておきたいと思ったからだ。

そして、旅立ちのときがやってくる。

 

「世話になったな」

「こっちこそ」

 

一夏(春十)とこの世界の一夏。

2人はわだかまりを作ることはなかった。

優しすぎるこの世界の一夏が、『強欲』のISコアを殺してしまったことを責めてくるかと一夏は思ったが。

 

「全部救いたいっていうのはわがままだってわかってるんだ。ただ……」

「ただ、何だ?」

「それでも、その道を探すことはやめたくねえんだよ」

 

諒兵がこの世界の一夏の言葉を代弁してくる。

諦めが悪いのではなく、希望を決して捨てない。

その優しさが、最初に白虎とレオの心を動かしたのだろうと思うと、一夏としても否定はできない。

 

『ゴメンね。イヤな役、押し付けて』

『このお礼は必ず』

 

白虎とレオの言葉に、一夏はこの2人はあの結末が見えていたのだろうと感じ取る。

今の段階では、この世界の一夏と諒兵の心を変えるのは難しいのだ。

 

「まあ、心配しないでよ。自分たちのことだもん。自分たちでなんとかするわ」

 

そういって笑う鈴音の顔に、決意と覚悟があるのを光莉だけが見抜いたが、口には出さないでおいた。

せめてその覚悟が良い結果につながることを祈りながら。

 

「私たちも日々成長していますから、ご心配なさることはありませんわ」

「今度来るときがあったら、二人が楽しめる旅行になるようにするからね」

「元気でね~、仲良くね~」

「次は私たちの子どもに会わせてやろう」

「待てコラ、そんな18禁展開になってたまるかっ!」

 

ラウラの挨拶だけ明後日の方向にすっ飛んでいるのを諒兵が必死に突っ込んでいた。

そんな緊張感の無さが、逆に温かさを感じさせてくれると一夏と光莉は思わず笑ってしまう。

そして。

 

「また機会があったら来るよ」

「お世話になりました」

 

次に出会うときがあるなら、きっとこの世界の一夏と諒兵は強くなっている。

そう感じながら、一夏と光莉の意識は光に飲み込まれていった。

 

 




次回から2学期編です。
そろそろクライマックスかも。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。