ここは一人ひとりの人生が絵本として記される世界の図書館。優しい人は優しい色の表紙。明るい人は明るい色の表紙になる。そんな中、真っ黒で煤けてて汚れてる絵本があります。ジョルジオ・ヴェルハーレンの絵本です。
ジョルジオ・ベルハーレンは悪いことが大好き。物も壊すし盗みもいたずらもなんでもやります。警察に捕まり、牢屋に入っては出て入っては出てを繰り返していました。そんな翌る日、住む場所もなく根無草なジョルジオ・ヴェルハーレンは教会にたどり着きました。ジョルジオ・ヴェルハーレンは教会で悪いことをしようと思い立ち寄ることにしました。教会に入るとギョロギョロと教会のなかを見て回ります。すると年老いた神父に声をかけられました。『礼拝ですかな?』ジョルジオ・ヴェルハーレンは『そんなんじゃねぇ。俺はココに悪いことをしにきたんだ』と答えます。すると神父は笑ってこう言いました。『はっはっは、あまり聞いたことのない罪の告白だ。これから犯す未来の罪の懺悔とは。』ジョルジオ・ヴェルハーレンは馬鹿にされたと思い、『てめぇ、ふざけるんじゃねぇ!』と怒鳴りつけながら掴み掛かろうとしました。しかし神父は意に介さず『ふむ、そんなつもりはなかったんだが。どれ、その罪を犯すまでここにいるといい。寝床はこっちだ』と朗らかに言ったあと、奥に引っ込みました。呆気にとられ毒気を抜かれたジョルジオ・ヴェルハーレンはすごすごとついて行きます。
それからは神父と共に過ごしました。教会の掃除・洗濯など炊事洗濯はもちろんのこと、礼拝に来る方や懺悔に来る方の対応、貧困者への炊き出しなどと大忙しです。『悪いことをする前にこっちを少し手伝ってくれ。その後にいくらでも悪いことをしていいから』と神父に言われ、なし崩しに教会の手伝いをしてしまったジョルジオ・ヴェルハーレン。1日が終わるころまで動き回り、もうヘトヘトです。すっかり夜になってしまった時間に神父に言われます。『今日はもう疲れただろう。悪いことは明日にしたらどうだ?』それにはジョルジオ・ヴェルハーレンも大賛成。『そうさせてもらうぜ。明日は覚悟しておくんだな』とそう言うと、ベッドに入りすぐにグッスリ眠ってしまいました。翌日ジョルジオ・ヴェルハーレンが起きると、神父はすでに朝ごはんの準備をしてました。『おぉ、起きたか。おはよう。お前さんが昨日手伝ってくれた掃除のおかげで、礼拝堂はピカピカだ。もうすぐ朝ごはんだがそれまでちょっと見てきたらどうだ?』と声をかけてきます。昨日あんなに疲れるまで手伝いをしたんだ、どんなもんだ?と思ったジョルジオ・ヴェルハーレンは礼拝堂に向かいます。朝日が差し込む礼拝堂は朝の澄んだ空気も相俟って、とても気持ちがいいものに感じました。ジョルジオ・ヴェルハーレンは不思議な気分になりました。そんなときお腹がペコペコだったジョルジオ・ヴェルハーレンのお腹がぐぅと鳴りました。後ろから『ご飯の準備ができたぞ。食べよう。腹が膨れたあとに悪いことをすればいい』と神父に言われジョルジオ・ヴェルハーレンは素直に従いました。ご飯が終わるや否や、教会に礼拝者が入ってきます。『よし!今日も1日の始まりだ!お前さんは食器を片して洗ったあと表を掃いておいてくれ。頼んだぞ。』と神父は対応に向かいます。バタバタしている間にジョルジオ・ヴェルハーレンは今日もまた悪いことをすることなく、教会の手伝いをして1日をすごしました。その翌日もそのまた翌日も悪いことができませんでした。
そんな日々を慌ただしく過ごしていたジョルジオ・ヴェルハーレン。教会で過ごすようになってしばらく経ちますが悪いことは一向にできていません。それでもジョルジオ・ヴェルハーレンはまんざらでもない気分で日々を送っていました。ですが、たまたま教会に来た人の会話が耳に入りました。『さっきの見たか?ジョルジオ・ヴェルハーレンだったな。悪いことばっかりしてたのに今さらなんだってんだ。』『ほんとだぜ。もうあそこの教会には近づかない方がいいな』と言っていたのです。ジョルジオ・ヴェルハーレンは怒りました。『まんざらでもない気分だなんて気のせいだ!悪いことをするぞ!そうだ!さっきの2人を殺してしまおう!』そう言うと、ジョルジオ・ヴェルハーレンはキッチンの包丁を取り出します。教会から出ようとした時、神父に声をかけられます。『出掛けるのか?ついでに卵を買ってきてくれ』するとジョルジオ・ヴェルハーレンは『俺は悪い人間なんだ!さっきの2人を殺しに行くんだ!邪魔するならまずはお前を殺してやる!!』と言います。神父は『ジョルジオ・ヴェルハーレン。お前さんはそんなに悪い人間じゃない。人を殺すなんてできないだろう。包丁は置いてきなさい。包丁はご飯を作るための道具だ。』そう伝えながらジョルジオ・ヴェルハーレンに近寄ります。『うるせぇ!寄るんじゃねぇ!』とジョルジオ・ヴェルハーレンは激昂します。そして、はずみで神父を刺してしまうのです。神父は穏やかな表情のまま『大丈夫だジョルジオ・ヴェルハーレン。私が転んだ先にたまたまお前さんが持ってた包丁があったんだ。これは事故だったんだ。いいね。』そう言い気を失いました。慌てたジョルジオ・ヴェルハーレンは神父を急いで病院に連れて行きます。神父は一命を取り留めました。病院では、刺し傷ということもあり警察もやってきます。警察官たちはジョルジオ・ヴェルハーレンの顔を見るなり、『ついに人まで刺したか。今回は牢屋から出られないと思え』と言いながらジョルジオ・ヴェルハーレンを連れて行き、牢屋に入れます。ジョルジオ・ヴェルハーレンの話は聞きません。それでも構わないと言わんばかりにジョルジオ・ヴェルハーレンも俯きながら黙って警察官に従います。ジョルジオ・ヴェルハーレンは大人しく牢屋で日々を過ごしていました。神父を刺した日からジョルジオ・ヴェルハーレンは暗い顔のまま喋りません。ですが、何日も経ったあと牢屋の外から怒鳴り声が聞こえました。『、、、と言っているだろう!なぜジョルジオ・ヴェルハーレンの話をひとつも聞かないんだ!あれは私が転んだだけだ!!受け止めようとしたジョルジオ・ヴェルハーレンがたまたま持っていた包丁に、私が刺さりに行っただけだ!いい加減にして今すぐジョルジオ・ヴェルハーレンを牢屋からだすんだ!!』と神父の声でした。ジョルジオ・ヴェルハーレンはいつも優しく穏やかだった神父の怒声を初めて耳にしました。その怒りが、自分を擁護するためのものだと気づいた時ジョルジオ・ヴェルハーレンは涙が溢れました。牢屋の前までやってきた神父はジョルジオ・ヴェルハーレンに手を差し出しながら声をかけます。『待たせて済まなかったな、ジョルジオ・ヴェルハーレン。さあ、一緒に帰ろう』と。ジョルジオ・ヴェルハーレンは嗚咽混じりに『すまなかった。ごめんなさい。ありがとう』と言うと神父の手を取りました。
牢屋から出たジョルジオ・ヴェルハーレンは心を入れ替え、教会で神父ととも過ごしました。年月が流れて行き、年老いた神父は亡くなりましたがジョルジオ・ヴェルハーレンが神父として教会で暮らしています。そんな教会に1人の男がやってきました。男は礼拝をするでもなくギョロギョロと教会のなかを見ています。その男に向かってジョルジオ・ヴェルハーレンは声をかけます。『礼拝ですかな?』と。
ジョルジオ・ヴェルハーレンの絵本は表紙は真っ黒で煤けてて汚れたものですが、裏表紙はとてもキレイな優しい色をしていました。
お読みいただきありがとうございました。