仮面ライダーパラレルワールドクロニクル 作:アウトレットホール
「おーい、早く行こうぜー」
「おう、わかったー」
銀色の鎧に身を包んだ男が魔法使いのエナン帽子姿の男に声をかける。
緑の草原が広がる場所。整備された道を歩き続ける二人のパーティーがいた。
「ユグドラシルもついにサービス終了かー」
「目的が無くなってからは惰性でやってたけど、いざ終了すると思うともったいない感じがするよな」
ユグドラシル
かつては圧倒的アクティブユーザーを誇った体感型DMMO-RPGのことである。
ユーザーは広大な世界を冒険するもよし、仲間と絆を深め合うもよし、未知のダンジョンを踏破するもよしと圧倒的自由度を誇るオンラインゲームだ。
しかし、そのユグドラシルもついにサービス終了のときが来てしまったのだ。
原因はわからないがアクティブユーザーの減少が最たるものであると数々のプレイヤーたちは推測する。
「ま、最後くらいはのんびりやろうぜ。古参のお前と別れるのも名残惜しいし」
「おう、別のゲームでも一緒にやれたらいいのにな…あれ?」
「どうした?」
「いや、あそこに行商人NPCがいる」
エナン帽子が指さした先には確かにいた。道の脇で風呂敷を広げアイテムを置いている。全身をローブで覆っていて顔は良く見えない。
珍しい光景ではないが、なぜか気にせずにいられない雰囲気のNPCだった。
「せっかくだし寄ってみるか」
「ん」
二人は頷くと行商人NPCに近づく。
目の間にホログラムウィンドウが表示され、アイテム一覧と金額がずらりと並ぶ。
「なんかあるかなー」
「おい、なんか見たことないのがあんぞ」
二人が一つのアイテムに目を止めた。
基盤と持ち手のようなものが付いている紫色の謎のアイテム。金額は0円。
「0円!なんだぁ?運営がこの期に及んで追加アプデでもしたか?」
「しかも見ろよ。説明欄に『不死の身体が手に入る』って」
おいおいそんなの買いだろ!エンドコンテンツばんざーい!
と大はしゃぎする二人。早速購入のボタンを押して二人は目の前に具現化されたアイテムを手に取る。
行商人NPCがニヤリと邪悪な笑みを浮かべたことに気が付かず_
「んでこれどうやって使うんだろうな?説明ないの?」
「んー………あ!これじゃね?持ち手に付いてる黒い突起部分!」
とりあえず押してみるか、と何の疑いもなく突起部分を押し込む二人。
すると基盤がキュイーン!という音と共に白く発光する。
アイテムを見つめたまましばらく様子を見るが………。
特に何の変化もない。
「おーこれで不死の身体…ガ…ガッ…!!」
「お、おい!どうしタ…!アッ…!!」
突如ノイズのようなものが身体を蝕む。何か様子がおかしい。
ジタバタともがくような仕草を見せ、何かの症状に抗っているようだ。
ついに足に力が入らなくなり床に手をつく。
だが、異変はこれで終わりではなかった。
アイテムから紫色の粒子が出てきたかと思うと二人の身体を覆いつくした。
「ガ…ガァアアアアアアア!!!!」
「ギィエアアアアアアア!!!!」
粒子が纏わりつきしばらく悶え苦しむ。
そして、それが無くなった頃にはさっきまでの二人の姿はそこになかった。
持ち主を失ったアイテムがカランと音を立てて床に落ちる。
GAMEOVER
と鈍い機械音声がアイテムから流れる。
その光景を終始見ていたNPCはおもむろに立ち上がり、目の前に向けて紫色の菱形をした機械を向けた。
未だ漂っている紫色の粒子がなんと機械に吸い込まれていく。
それを見たNPCは満足そうな笑みを浮かべる。
「そう、君たちは不死の身体に生まれ変わるんだ…。『新たなバグスター』という生を得てね_」
機械にずりずりと頬ずりをかます。傍目から見れば変態の所業だろう。
BUGLEUUUUUUP!!!
機械からさらに音声が流れる。
「さて、もう前準備はこのくらいでいいだろう…!これだけのプレイヤーのレベルが集まれば…」
もう一度、機械を前に向ける。
すると紫色の粒子が放たれ、それはボコボコと人型のナニかを形成していった。
特徴的な3つのトサカ。左肩には鋭利なドラゴンの爪。白い仮面。
そして、最後に紫色の布を纏った身体を成して粒子の放出は止まった。
しばらくして機械から生まれたモンスターは動き出す。
「…っ!?な、なんだここは?俺は一体なぜ…?!」
確かに消滅したはず…!と自分の両手を見ながら驚愕している様子。
「久しぶりだね、グラファイト。仮面ライダークロニクル以来の再開だ」
「檀…黎斗!?」
すかさず距離を取り、鋭い爪が両端に付いているグラファイトファングを構える。切っ先を向けられても黎斗の表情は一切変わらない。そんな態度も癪に障ったのか。
「答えろ!!俺は確かに死んだはずだ!!仮面ライダークロニクルはどうなった!?檀正宗は!?」
ニチャリ_
顔を限界まで歪ませた笑顔を作る。
仮面ライダークロニクル
それは世界中の人間がゲーム病で消えた人々を救うためにライドプレイヤーに変身。
そしてラスボス『ゲムデウス』討伐を目指す生と死をかけたリアル世界が舞台のゲームのことだ。
グラファイトはそのゲームの最中、仮面ライダークロニクルの敵キャラを全うし命を落とすこととなる。
彼にとってその死に様はこれ以上ない至福だった。それを目の前の男、檀黎斗は汚したのだ。
怒りなんてものでは収まらない感情が駆け巡った。
「少々やかましい。クロノスは死んだ。私の手によってな_
そしてここは私たちがいた世界ではない。いわゆる『異世界』という場所らしい。
バグスターも仮面ライダーも存在しない」
切っ先が下がる。あまりの情報密度に一気に感情が冷めたのだ。
「何を…言ってる…?説明しろ…!!」
「ふふふ…全ては神の才能が為したことだ…」
***
私は真っ白な空間にいた。
九条貴利矢(仮面ライザーレーザー)にゾンビクロニクルを攻略され、儚くゲームオーバーを喫したあと、
私は消滅し実体が無くなってしまった今も復活の機会を伺っていた。
宝生永夢(仮面ライダーエグゼイド)を攻略し、私が現世に復活するためのゲーム「マイティノベルX」に全てを託していたのだが_
「やはり一筋縄ではいかないということか」
マイティノベルXには私自身(厳密に言えばコピーだが)をプログラミングしていた。
宝生永夢がこのゲームをクリアできなければ、私は再度現世に蘇り神の才能の復活を果たす。
そういうシナリオを想定していたのだが、プロゲーマー永夢の機転によりすんなりと攻略されたのだ。
普通の人間ならばこれで諦めてしまうだろう。だが、神の才能を持つ私の場合は違う。
そんな事態に陥ろうと次の一手を考えることに集中する_
これが凡人と神の差だ。
「さて、マイティノベルXを通じてさらにデータは私に蓄積された。このデータを基に次のゲームは易々とクリアできないものにしなくては_」
思案を巡らせていると唐突に声が聞こえてくる。
「あのーお取込み中のところごめんねー」
眉間に皺を寄せる。一体何だというのか。
声をかけた主に顔を向ける。
そこには全身がテクスチャの貼られていないプロトタイプの3Dモデルのような得体のしれない何かがいた。
フワフワと空中に漂っているような姿勢でこちらを見下げている。
私を見下げる_?なんと不愉快なやつだ。
「いや、てかこんな状況で少しは慌てない?…なんかやばそうな人が転生者に選ばれちゃったなー」
「一体何の用かね?私は今忙しいのだ。貴様の正体などどうでもよいが名を名乗ることを許可してやろう。そして、目線は私より下になれ」
「えーそこ重要…?全然こっちの話に興味がなさそうだし」
新手のバグスター?消滅したはずの私を認識できてる時点でその考えが浮かぶ。
しかし、どうにもそれだと腑に落ちない。こいつは私を呼び出したかのような口ぶりをしていた。
転生者とも_ん?転生…?
得体のしれないやつはしぶしぶY座標を下に設定したかのようにスライド移動すると続ける。
「えーと僕は神です。あなたは転生者に選ばれました!」
「神…?」
転生
確か肉体が死んだ後に魂が別の肉体や形に生まれ変わることを言うか。
ゲーム病にかかって消滅した人間がバグスターとなって生まれ変わるのもある種転生と言える。
なのでその用語に驚くことは特段なかった。だが
「ちょっとちょっと!ここはもっとテンション上がるところなんだよ!?転生特典とかもらえt_「黙れ」
神…??神だと…??
私という神を差し置いてこいつは神を自称した。
その事実が非常に不愉快な事実を叩きつけた。
私の沸点は一瞬で最高潮に達した。
身体を大きく後ろに反らし一気に前のめりになり_
「私以外にいいいいいいいい!!!!!神が存在するなどぉおおおおおお!!!!ありえなあああぁぁぁぁあああい!!!!!!」
「ヒッ」
キュッと身を縮こませる。
不愉快、不愉快不愉快不愉快不愉快!!!!
状況を飲み込む前に目の前の不愉快な神に対して拳を突き出した。
しかし、その攻撃はスカッと空を切る。確かに直撃したはずなのに一体なぜ_
そんなことを思う暇もなくがむしゃらに拳をそいつに振り続ける。
「な、なんだよコイツ…!?か、神にそんなものが効くわけないだろ!」
「なにぃ…!?」
ブンブン!と空を切り続ける攻撃。
限界まで攻撃を空ぶった後肩で息をしながら膝に手をつく。
「も、もうこれでわかっただろ?ほら、許してやるから転生特典と転生先を_」
言い終わる前に不愉快な神は言葉を止めた。
何もない空間から黄緑色とピンク色の色鮮やかなものを取り出して腰に巻き付けたからだ。
ゲーマドライバー
こんなこともあろうかと私自身に機能をプログラミングしておいたのだ。
バグスターの身体を持つ私だからこそできる芸当。さらにそれだけではない。
キュイーン!
マイティノベルゴッドマキシマムX!!
「え?え?な、なに?!」
私の背後にホログラムモニタが表示される。
そこには筆をもった紫色のパンダとスタイリッシュなロゴが映し出されていた。
何が起きているか事態を飲み込めず不愉快な神は狼狽える。
これはマイティノベルXで得られた戦闘データを基に私専用に改良したガシャット。
これもまた私自身に予めプログラミングしていたものだ。
しかし、このガシャットは
万が一、この力を奪われてしまったときのリスクを考慮したのだ。
本来は宝生永夢と対峙したときに使う予定だったが…予定変更。
まずは目の前の不快な輩をこの力でゲームオーバーにすることにしよう。
「お前が本当に神だというなら…貴様の物語は私のものとしてやろう!!ブェハハハハ!!!!変身!!!!」
ガッシャット!
ガッチャーン!
マイティノベルゴッドマキシマムXをスロットに挿入しレバーを開く。
マイティノベル、神の言う通り!マイティノベル、神のストーリー!エーックス!!
音声が流れ終わると紫色を基調とした全身に白いラインがデザインされた仮面ライダーゲンム ゴッドマキシマムノベルゲーマーレベルXに変身する。
ふ、ふは、フハハハハ!!!私はやはり天才だ!!!
やはり私こそが神!!檀…黎斗神なのだぁあああああ!!!!
フゥと一息つくと目の前の偽物に告げる。
『お前の力は私のものとなる。お前は消えろ』
「は…?な、何言ってんの…さ…?」
すぐに異変は訪れた。
身体にノイズが走る。足、指先、そして全身が徐々に消滅していたのだ。
消えた箇所は粒子の光と化していき、焦りが止まらない。
「な、なんで…!!?うそだ…!僕の身体が…!!!精神が…!!消えていく…!!!」
「私に生意気な口をきいた罰だ。甘んじて受け入れろ_」
や、やだ…!!やだやだやだやだぁああああああああksjdskそをwtbんm!!!!
………
GAMEOVER
頭を抱えて叫ぶ姿を最後に奴は消滅した。いい気味だ。
粒子の光が動き出す。それらは全てシュウウウウウと私の体内に収まっていった。
神は二人もいらない。覚えておくがいい。
ガッシューン
ガシャットとベルトを外し変身を解除。
さて今奪った力は何ができるのか。
早速使ってみるとするか。
少し念じると何もない空間にホログラムモニタが複数表示された。
なんだと…!これは一体…!?
ウズウズと体の内側から沸き起こるこの感じ。
私の才能を刺激している…!!
奴は本当に神だったことを確信した。映し出されてるものをそれぞれ一瞥してみる。
そこにはいろんな世界の情報が表示されていたのだ。
魔王が支配する世界
イカれた宗教団体が暴れまわる世界
魔法と銃を使ってあちこちで戦争が勃発している世界
盾などの武器を持った勇者が滅びの運命に抗う世界
スライムが多種族の組織を形成し支配を広げいている世界
年端も行かない少年が魔法を駆使して過酷な運命を生き抜いている世界
これはどうやら現在の世界の姿を映し出しているらしい。
当然、私たちの世界も存在した。
私はどうやらとんでもない奴の力を手にしてしまったらしい。
マイティノベルXに未来を予言する力を与える。
宝生永夢がそれをしなければこんなことにはならなかった。
はは…!!ふははは…!!!!
「やはり君はぁ…最高の
しばらく世界の様子を見まわしていたが、どうやらその世界に転生することもできるらしい。
気になる世界があるかを確認していたらたった一つ。その世界は私の目に止まった。
ユグドラシル
プレイヤーがアバターを用意してゲームの世界を生きる。DMMO-RPGというなるものがある世界。
そこには数多のゲームプレイヤーが存在するのだ。
この世界を選ばない理由がなかった。
「このゲーム…今の私の力をもって少し解析すれば…!!」
できてしまう_
これまでのゲームなど目ではない究極のゲームが…!!
「感謝してやろう愚かな神…!!!貴様は最高のプレゼントを私に与えてくれたのだ…!!!!」
これなら今度こそ…永夢を倒すことができる…!!絶対に…!!!
「はっはっはっは…!!!ブゥウェアーハッハッハッハッハ!!!!!!!」
上体を逸らして不滅の夢が実現できることに歓喜する。
もはや私の邪魔をできるものは…いない_