超A級小姓 アインクラッドを往く。   作:渚カエデ

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2024年6月24日、リズベット武具店を訪れたランマル。ランマルはキリトがリズベットに頼んだ最高の剣作成の手伝いをするために2人と共に55層の雪山に行くのであった……


第9話 ココロの温度【前編】

6月24日の午後、僕はキリトさんとリズベット武具店を訪れた。理由はキリトさんが最高の剣が欲しいということで今、僕たちが知る最高の武具店であるリズベット武具店に行くことにしたというわけだ。 しかし、店先に着くと大きな揺り椅子にリズベットさんがうたた寝をしていた。キリトさんは低く穏やかな声で……

キリト「あの、君、悪いけど……」

リズ「はっ、はいっ、ごめんなさい!!」

ランマル「うわっ!僕もびっくりした!!」

思ったよりすごい勢いでリズベットさんが起きた。キリトさんは啞然とした顔で硬まっていた。

リズ「あれ……?」

ランマル「どうしたんですか?リズベットさん?」

リズベットさんは周りをキョロキョロ見ると、恥ずかしいのか咳払いして僕たちに挨拶を返す。

リズ「い、いらっしゃいませ。武器をお探しですか?」

キリト「あ、う、うん。」

リズベットさんはキリトさんの装備を上から下まで見る。 この店の商品は要求ステータスが高いから、キリトさんのレベルが武器の要求レベルに足りるか心配なのかもしれない。

リズ「片手剣はこちらの棚ですね。」

リズベットさんは既製品の片手剣の見本が並んだ棚を示す。しかしキリトさんは微笑みながら言う。

キリト「あ、えっと、オーダーメイドを頼みたいんだけど……」

リズ「今ちょっと金属の相場が上がってまして、多少お高くなってしまうかと思うんですが……」

オーダーメイドだと特殊素材を使うことが多いからその分、最低でも代金が十万コルを超えてしまう。だから代金トラブルを減らすために武具店側が、金属の相場が上がっているという嘘を言って客側にオーダーメイド品の注文を諦めてもらうように勧めることもあるそうだ。 しかし、キリトさんは涼しげな顔でとんでもないことを言う。

キリト「予算は気にしなくていいから、今作れる最高の剣を作って欲しいんだ。」

リズベットさんはしばし呆然とキリトさんの顔を眺めたが、やがてどうにか口を開く。

リズ「……と言われても……具体的にプロパティの目標値とか出してもらわないと……」

キリト「それもそうか。じゃあ……」

彼は細い剣帯ごと背中に吊った片手剣を外し、リズベットさんに差し出してくる。

キリト「この剣と同等以上の性能、ってことでどうかな?」

リズベットさんは右手でキリトさんの剣を受け取った途端、あまりの重さに剣を床に落としそうになる。

ランマル「大丈夫ですか!?」

僕も剣を支える。鍛冶屋(スミス)戦棍使い(メイサー)な彼女の筋力ステータスは高いはずだけど、それでも彼女にはこの剣は重すぎたようだ。 彼女が恐る恐る刀身を抜き出すと、ほとんど漆黒に近い色の肉厚の刃がぎらりと光る。

キリトさんから少し前に聞いた話だと、この剣の固有名は【エリュシデータ】製作者の銘は無し。とあるモンスターを倒した時にドロップしたかなりのレアアイテムでとても高いスペックを誇る、所謂[魔剣]らしい。

リズ「う、受け止めてくれてありがとね。ランマル。」

ランマル「当然のことをしただけですよ。リズベットさん。」

彼女が剣をキリトさんに返すと、リズベットさんは店の正面奥の壁に掛けていた一本のロングソードを外した。彼女が鞘から抜き出した刀身は薄赤く輝き、仄かな火焔をまとっているかのように見える。

リズ「これが今うちにある最高の剣よ。多分、そっちの剣に劣ることはないと思うけど。」

キリトさんは無言で彼女が差し出した赤い剣を受け取ると、片手でひゅひゅんと振って、首をかしげた。

キリト「少し軽いかな。」

リズ「……使った金属がスピード系の奴だから……」

キリト「う〜ん。」

キリトさんはしっくりこないという顔でなおも数回剣を振っていたが、やがてリズベットさんに視線を向けて言った。

キリト「ちょっと、試してみてもいいかい?」

リズ「試すって……?」

キリト「耐久力をさ。」

キリトさんは左手に下げていたエリュシデータを抜くと、店のカウンターの上にごとりと横たえた。その前にすっくと立ち、右手にリズベットさんが作った赤い剣を握り、ゆっくりと振りかぶる。

リズ「ちょ、ちょっと、そんなことしたらあんたの剣が折れちゃうわよ!!」

キリト「折れるようじゃ駄目なんだ。その時はその時さ。」

ランマル「無茶ですよ。キリトさん!」

僕も声をあげる。しかし彼はエリュシデータの刀身にペールブルーのライトエフェクトを纏わせると、物凄い勢いで剣を打ち下ろす。一瞬のうちに剣と剣が衝突。炸裂した閃光の眩さに僕とリズベットさんが目を細めて一歩後ずさった。その瞬間。 赤い剣の刀身が見事に真ん中からへし折れ、吹き飛んだ。

リズ「うぎゃああああ!!」

彼女は悲鳴を上げるとキリトさんの右手に飛びつき、残った剣の下半分をもぎ取った。しかし素人の僕から見てもあの剣は修復不可能だと思う。 彼女が肩を落とした直後、半分になった剣がポリゴンの破片を撒き散らして消滅した。

リズ「な……な……」

リズベットさんは唇をわななかせながら、右手でキリトさんの胸ぐらをがしっと掴んだ。

リズ「なにすんのよこのーっ!!折れちゃったじゃないのよーっ!!」

キリト「ご、ごめん!まさか当てたほうが折れるとは思わなくて……」

リズ「それはつまり、あたしの剣が思ったよりヤワっちかったって意味!?」

キリト「えー、あー、うむ、まあ、そうだ。」

リズ「あっ!!開き直ったわね!!」

彼女がキリトさんから離れて、両手を腰に当てて胸を反らす。

リズ「い、言っておきますけどね!材料さえあればあんたの剣なんかぽきぽき折れちゃうくらいのを幾らでも鍛えられるんですからね!」

キリト「ーほほう」

勢いに任せた彼女の言葉を聞いたキリトさんがにやっと笑った。キリトさんのそういうところ、良くないと思うんだけどね……

キリト「そりゃあぜひお願いしたいね。これがぽきぽき折れる奴をね。」

彼はエリュシデータを鞘に収める。それを見たリズベットさんの顔が真っ赤になってる気がする。

リズ「そこまで言ったからには全部付き合ってもらうわよ!金属取りに行くとこからね!」

キリト「……そりゃ構わないけどね。俺一人のほうがいいんじゃないのか?足手まといは御免だぜ。」

リズ「むきーっ!!」

リズベットさんはもう完全にキレている。彼女は両腕をばたばた振り回しながら子供のごとく抗弁する。

リズ「ば、馬鹿にしないでよね!これでもマスターメイサーなんですからね!」

キリト「ほほーお」

キリトさんがひゅう、と口笛を吹く。リズベットさんは完全に遊ばれている。

キリト「そういうことなら腕前を拝見させてもらおうかな。ーとりあえず、さっきの剣の代金を払うよ。」

リズ「いらないわよ!そのかわり、あんたの剣よか強いのができたら、思いっきりふんだくるからね!!」

キリト「どうぞ、幾らでもふんだくってくれ。俺の名前はキリト。剣ができるまでひとまずよろしく。」

リズベットさんは腕を組み、顔をふいっと逸らせて言った。

リズ「よろしく、キリト」

キリト「うわ、いきなり呼び捨てかよ。まあいいけどさ、リズベット。」

リズ「むか!!」

うわぁ……最悪な雰囲気でパーティー組んじゃってるよ……もう見てられない。

ランマル「僕も参加させてください!今の二人だと良くない結果になるかもしれないので!」

キリト「わかった。よろしくな。ランマル。」

リズ「従順そうな子には甘いのね。キリト。」

ランマル「僕はキリトさんに従順な訳じゃありません。僕はあくまでも中立的な立場で参加することにします。」

こうして僕も二人の金属採集に参加することにした。

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