超A級小姓 アインクラッドを往く。   作:渚カエデ

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いよいよ始まる第七十五層の攻略。集結するプレイヤーたち。そんな中、ランマルたち《オダ軍》のメンバーは何を思うか……。


第17話 最後のクォーターポイント

2024年11月のある日、僕は寝る前にルナさんとメッセージでやりとりをしている。

ランマル『聞いてください、ルナさん。キリトさんが今日の昼に、二十二層で池のヌシを釣ったらしいですよ。キリトさん曰く、陸の上も走れる巨大魚で、釣れる直前はこっちの方がヌシに引っ張られそうになったとか。』

ルナ『ソレはすごいね。そのヌシはどうなったの?』

ランマル『アスナさんが倒したそうです。』

ルナ『あ〜、俺もその場に居たかったな〜。キリトがヌシに引っ張られてるところとか、アスナがヌシを倒したところとか見てみたかったな〜。』

ランマル『僕も同じです。きっと面白い光景が見れたんだろうな〜、と思います。』

ルナさんとのメッセージのやり取りは本当に楽しい。

ギルドのみんなとのやり取りも楽しいけど、ルナさんとのやり取りは格別だ。

現実世界に帰ったら、親友同士になりたいな〜。

それを叶えるにはまず、残りの二十五ある層をクリアしないとね。

そう考えていると、キリトさんからメッセージが届く。

メッセージの内容は、『ヒースクリフから明日の朝、血盟騎士団本部まで来て欲しいと招集をかけられた。七十五層の攻略に関わるものだと思うから、君たちも攻略の準備をしてくれ。』というものだった。

いよいよ最後のクォーターポイントでの戦いが始まる。

七十五層のボスは相当強いかもしれない。だからいつも以上に気合を入れなきゃいけないし、たくさん練習したあのOSS(オリジナルソードスキル)を使わなきゃ、勝てないのかもしれない。

僕も明日、うちの本丸(ギルドホーム)に行って準備をしないと。

僕はメッセージウインドウを閉じて眠りにつく。

 

 

 

翌日、僕は《オダ軍》のギルドホームに向かった。その道中で僕はあの人物と出会う。

ランマル「あ、アストルフォさん。久しぶりですね!」

アストルフォ「あ、久しぶりだね!ランマル!」

ランマル「相変わらず元気で何よりです。ところで……一緒に居る方たちはギルドメンバーですか?」

アストルフォ「そうだよ。ギルド《シャルルマーニュ十二勇士》の仲間だよ。」

ランマル「そうなんですか。」

アストルフォさんと話していると、そのギルドのメンバーがこちらに近づいてくる。

男性二人と女性一人のようだ。先頭に立っている黒髪のイケメンが僕に話しかけてきた。

???「お、アンタがアストルフォの友達か。俺はシャルル。このギルドのリーダーをやっている。よろしくな。」

ランマル「シャルルさんですね。いつもアストルフォさんがお世話になっています。」

シャルル「そうだな。アストルフォは元気が余りすぎて、たまに空回りもするけど、カッコいい奴だぜ!」

ランマル「ははは……本当に面白いですよね。アストルフォさんって。」

アストルフォ「む〜。そこまで空回りはしてないって!ボクはただ、考えるより先に動くのが好きだから。」

シャルル「まあ、そこもアストルフォらしいよな。そういうとこ、気に入ってるぜ。あ、他のメンバーの紹介を忘れてたな。男の方はローラン。女の子の方はブラダマンテ。二人共、かなり強いぜ。」

ローラン「前衛をしているローランです。体の頑丈さと筋力、あとイケメンさと脱ぎっぷり……」

ブラダマンテ「槍使いのブラダマンテといいます!よろしくお願いします!」

ローランさんが自己紹介している最中に割り込むブラダマンテさん。今、ローランさん……脱ぎっぷりとか言ってたような……

ローラン「なぜ俺の自己紹介を止めるんだ。ブラダマンテ。」

ブラダマンテ「ローランが初対面の相手に変なこと言うからです。」

ローラン「俺が脱ぐことはそんなにダメなことなのか!?」

ブラダマンテ「ギルドメンバーしかいないところならともかく……って、人前で脱ぐ時点でダメです!」

ローラン「そうか……」

なんか変わった人だな……ローランさん……まあ、こっちのギルドも面白そうだな。アストルフォさんに合ってる。

シャルル「まあ、こんな感じだけど戦いの時は勇ましい面々だ。次のボス戦の時は頼ってくれ。」

ランマル「はい!僕たち《オダ軍》も次のボス戦に参加するので、その時はよろしくお願いします。」

ブラダマンテ「え!?君、オダ軍のメンバーなんですか?どうりで和風要素も入った装備をしていると思ったら……」

ランマル「はい!僕たちのギルドは戦国時代の織田軍のロールプレイをしているところでして、そういうギルド名になっています。あ、自己紹介遅れてましたね。僕はランマルと申します。これからよろしくお願いします。」

シャルル「ああ、一緒になった時は互いに協力し合おうな。」

ランマル「はい!そろそろ僕もギルドホームに行くのでここでお別れですね。では迷宮区攻略の時にまた会いましょう!」

シャルル「そうだな!絶対に迷宮区をみんなで突破しようぜ!」

アストルフォ「また会おうね。ランマル。バイバイ!」

シャルルマーニュ十二勇士の皆さんと別れたあと、僕は転移門をくぐってギルドホームのある層に向かった。

 

 

 

 

ノブナガ「お、来たかランマル。」

ランマル「お待たせしました。主様(あるじさま)。」

ノブナガ「別にそこまでは待っとらん。それにしても……そろそろ七十五層の攻略が始まるのか……いよいよ後半戦というところじゃな。」

ノブカツ「そうですね、マスター。」

ナガヨシ「むしろこれからが、本番というところだな。」

チャチャ「クォーターポイントのボスといっても、(わらわ)の手にかかればチョチョイのチョイなんだからね。」

チャチャさんが強気な姿勢を見せているところに、重苦しい声色でミツヒデさんが話す。

ミツヒデ「チャチャさん、今回のボスはあの血盟騎士団が、五ギルド合同の二十人パーティーを偵察隊として送り込んだそうなのですが……」

ノブカツ「まあ、クォーターポイントのボスですからね。」

ミツヒデ「十人が後衛としてボス部屋入り口で待機し……最初の十人が部屋の中央に到達してボスが出現した途端、入り口の扉が閉じてしまったようです。どうやら扉は五分以上開かなかったようで、鍵開けスキルや直接の打撃攻撃でも開かなかったようです。そしてようやく扉が開いた時……部屋の中には、何も無かったそうです……十人のプレイヤーも、ボスも……転移脱出した形跡もなかったそうで、部屋に入った彼らは……戻ってこなかったようです。」

ミツヒデさんの報告を聞いたギルドメンバーは僕含めて、皆顔が青ざめる。

ノブナガ「それはつまり……結晶無効化空間……というところじゃな……」

ランマル「キリトさんが少し前にボスと戦った、七十四層のボス部屋も同じようでした。」

チャチャ「……ってことは転移結晶いっぱい持って行っても、意味ないじゃん!」

ミツヒデ「この先の層のボス部屋も全て……結晶が使えない可能性があります。ここから先は積極的に他ギルドと手を組んで、ボス部屋の攻略を進める必要がありそうです。」

それを聞いた(ノブナガ)様は悩んでいた。なにせこのギルドは、いつも自信満々な主様の独立路線で動いていたからだ。その為、他ギルドとの交流は圧倒的に少ない。そんな状況でボス攻略に参加すべきか……と皆が悩んでいたその時、僕のメッセージボックスにキリトさんからメールが来る。

その内容は

《ボス部屋攻略は大部隊でやるようだ。ランマルのギルドも参加するのであれば、三時間後の午後一時、七十五層コリニア市ゲートに集合だそうだ。参加は自由だが、来てくれると助かる。》

という物だった。僕はそれを主様に見せる。

ノブナガ「ほう、これは他ギルドも来そうじゃな。そこで(わし)ら【オダ軍】と、他ギルドで共同戦線を組もうではないか。そうすれば攻略速度は早まり、さらに他ギルドとの交流も盛んになるじゃろう。誰か反対する者はないか?」

僕含め、全員賛成のようだった。

ノブナガ「よし!皆の者!集合時間の前に、街で物資を買い集めてボス戦に備えるのじゃ!」

 

 

 

僕は街に出て、いろんな種類のポーションを買い集めていた。

ボスが突然、攻撃属性を変えることは今まで何度も有ったからだ。

備えあれば憂いなし……ってところだね。

そう考えていると、同じ店の中でルナさんと出会う。

ランマル「久しぶりですね。ルナさん。」

ルナ「久しぶりだね。ランマル。」

ランマル「ルナさんはボス戦に参加するんですか?」

ルナ「もちろん。攻略組だからね。」

ランマル「流石です。今回、僕はギルドの一員として参加しますので、ルナさんのアシストはできないと思いますけど、そこは大丈夫ですか?ルナさん、ソロですし……」

ルナ「大丈夫だよ。俺もかなり強くなったから一人でも戦える。だから俺のことは気にせず、ギルドの仲間と戦ってくれ。」

僕はそれを聞いて感慨深さを感じた。

最初の頃は第三層のボス戦に二人で挑戦した時、ルナさんが前に出過ぎてピンチになったこともあった。その時は僕のアシストでなんとか切り抜けたけど、最近では彼の言う通り、僕のアシスト抜きでもうまく戦えてる。むしろ僕が足手まといにならないか心配ってぐらい。

ランマル「ではまだ買い物があるので、ルナさん。ボス部屋で会いましょう。」

ルナ「そうだね。一緒に頑張ろう。ランマル。」

ランマル「はい!」

 

 

 

買い物を終えて、ギルドホームの自室に戻るとルナさんからメッセージが届いていた。

その内容は

《人前だったから言えなかったけど、俺……実はオリジナルソードスキルを使えるようになったんだ。その名は【クレセントファイナル】。三日月型の軌道で剣を振り、相手を切りさく技だ。》

という物だった。

ついにルナさんもOSSを使えるようになったんだ。僕もOSSを使えるようになったからメッセージに返答をする。

《僕もOSS使えますよ。技名は【蘭華流星斬(らんかりゅうせいざん)】。助走をつけてダッシュし、ある程度速度が出たらジャンプして、相手に斬り掛かる技です。》

そのメッセージを送ったあと、ルナさんは僕を褒めてくれた。

《君もよくここまで来たね。これなら最後まで生き残れるかもしれない。互いに頑張ろう。》

ルナさん……あなたがいてくれたから、ここまで来れたんです。絶対に現実世界でも会いましょう。そして親友になりましょう。

僕が想いを馳せていると、部屋のドアがノックされる。

ナガヨシ「そろそろ行くぞ。ランマル。」

ランマル「はい。ナガヨシさん。行きましょう。」

 

 

 

僕らは転移門の前に立つと、主様が言う。

ノブナガ「転移!七十五層コリニア!」

その声の直後、僕らは青い光に包まれて七十五層へ転移した。

 

 

 

七十五層コリニア市のゲート広場には、すでに攻略チームと思われるハイレベルプレイヤーの集団がいた。

その中にはルナさん、ジャンヌさん。そしてギルド【シャルルマーニュ十二勇士】のメンバーも含まれていた。

そして最後に現れたのは、今回リーダー格を務めるキリトさんとアスナさんだ。

彼らが現れると、皆ぴたりと口を閉ざし緊張した表情で目礼を送っていた。中にはギルド式の敬礼をしている者まで居た。

普段はソロプレイヤーのキリトさんは、自分を見つめる大勢に、思わず戸惑って立ち止まってしまったが、隣にいるアスナさんは慣れた手つきで返礼し、キリトさんの脇腹を小突いた。

アスナ「ほら、キリト君はリーダー格なんだからちゃんと挨拶しないとだめだよ!」

キリト「んな……」

彼はぎこちない仕草で敬礼をする。たしかに彼がここまで注目を浴びたのは第一層のボス戦以来だ。

クライン「よう!」

キリトさんの肩を後ろからクラインさんが叩く。クラインさんはちょっと不思議なセンスをしたバンダナの下でにやにやと笑っていた。そしてその横には両手斧で武装したエギルさんもいた。

キリト「なんだ……お前らも参加するのか。」

エギル「なんだってことはないだろう!」

エギルさんは憤慨(ふんがい)したかのような野太い声を出した。

エギル「今回はえらい苦戦しそうだって言うから、商売を投げ出して加勢に来たんじゃねえか。この無私無欲の精神を理解できないたぁ……」

エギルさんは大げさな身ぶりで喋り続けるが、キリトさんは彼の腕をポンと叩き。

キリト「無私の精神はよーく解った。じゃあお前は戦利品の分配からは除外していのな。」

それを聞いたエギルさんはつるつるの頭に手をやり、眉を八の字に寄せた。

エギル「いや、そ、それはだなぁ……」

情けなく口籠るその語尾に、クラインさんとアスナさんの朗らかな笑い声が重なった。笑いは集まったプレイヤーたちにも伝染し、みんなの緊張が徐々に解れていくようだった。

そして午後一時丁度に、転移ゲートから血盟騎士団の精鋭部隊が現れる。先頭に立つのはもちろん団長のヒースクリフさんだ。

アインクラッドでもかなりの強豪ギルドである血盟騎士団の登場で、プレイヤーたちの間に再び緊張が走る。

単純なレベル的強さなら、キリトさんとアスナさんを上回るのはヒースクリフさんだけだが、それでも彼らの結束感には迫力を感じずにはいられない。白赤のギルドカラーを除けば団員皆それぞれ、武装も装備も違うけど、醸し出す集団としての力はかつて目にした軍の部隊とは比べ物にならないと思う。

聖騎士と四人の配下は、プレイヤーの集団を二つに割りながらまっすぐキリトさんたちの方へ向かっていく。

彼らの威圧感にはさすがの主ノブナガ様やルナさんも数歩下がる。そんな中、血盟騎士団の副団長であるアスナさんだけは涼しい顔で敬礼を交わしている。

立ち止まったヒースクリフさんはキリトさんたちに軽く頷きかけると、プレイヤー集団に向かって言葉を発する。

ヒースクリフ「欠員はないようだな。よく集まってくれた。状況はすでに知っていると思う。厳しい戦いになるだろうが、諸君の力なら切り抜けられると信じている。」

その後、ヒースクリフさんは一呼吸を置いて叫ぶ。

ヒースクリフ「解放の日のために!」

彼の力強い叫びに、プレイヤーたちは一斉にときの声で応えた。

……さすがアインクラッド最強の戦士……カリスマ性も高い。

この調子ならあと一年以内にSAOをクリアできるかもしれない。

そんな中、ヒースクリフさんはキリトさんにかすかな笑みを浮かべて言った。

ヒースクリフ「キリト君、今日は頼りにしているよ。《二刀流》、存分に(ふる)ってくれたまえ。」

彼の声にはわずかな気負いも感じられない。予想される死闘を前にしてこの余裕はさすがと言わざるを得ない。

ヒースクリフさんは再び、僕たちプレイヤー集団を振り返り、軽く片手を上げた。

ヒースクリフ「では、出発しよう。目標のボスモンスタールーム直前の場所までコリドーを開く。」

そう言って腰のパックから濃紺色の結晶アイテムを取り出すと、その場のプレイヤーたちから「おお……」という声が漏れる。

今、ヒースクリフさんが出した結晶アイテムは《回廊結晶(かいろうけっしょう)》という物で、任意の地点を記録し、そこに向かって瞬間転移ゲートを開くことができるという極めて便利な代物だ。

しかし、その利便性に比例して希少度も高く、NPCショップでは販売されておらず、迷宮区のトレジャーボックスか、強力なモンスターからのドロップでしか出現しないので、入手してもそれを使おうというプレイヤーはほとんど居ない。先程、プレイヤー集団から嘆声が漏れたのはレアな回廊結晶よりも、それをあっさり使用するヒースクリフさんに驚いたということのほうが大きいと思う。

そんな皆の視線など意に介せぬふうで、彼は結晶を握った右手を高く掲げると「コリドー・オープン」と発声した。極めて高価なクリスタルは瞬時に砕け散り、彼の前の空間に青く揺らめく光の渦が出現した。

ヒースクリフ「では皆、ついてきてくれたまえ。」

僕たちをぐるりと見渡すと、ヒースクリフさんは紅衣の裾をひるがえし、青い光の中へ足を踏み入れた。その姿は瞬時に眩い閃光に包まれて消滅する。間を置かずに四人のKoBメンバーがそれに続く。

後ろを振り向くと、転移門広場の周囲にはかなりの数のプレイヤーが集まってきていた。ボス攻略作戦の話を聞いて見送りに来てくれたのだろう。僕たちは彼らの期待に応えなきゃいけない。さあ……行こう。

ノブナガ「オダ軍も続くぞ!皆の者!中に入るのじゃ!」

ノブカツ「はい!マスター!」

ナガヨシ「そう来なくっちゃな!行くぜ!!」

チャチャ「妾の実力、見せてやるんだから!」

ミツヒデ「了解です!」

ランマル「はい!!」

僕たちオダ軍も光の渦に突入した。

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