Overlord: Blood Dominion ―血の王と死の王―   作:シュエル

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幕間・ナザリック 王は人間を測る

 

 ナザリック地下大墳墓・会議室。

 

 そこは玉座の間ほど荘厳ではない。

 だが、より“実務的”だった。

 

 円卓を囲むのは、守護者たち。

 その中央、わずかに高い位置に――

 **アインズ**が座している。

 

 誰も、言葉を発しない。

 主が口を開くまで、沈黙は絶対だ。

 

「……人間社会の観測結果を共有する」

 

 声は低く、感情を含まない。

 

「今回の事象――

 吸血鬼個体による局地的介入、

 および宗教組織内部の再編を踏まえ、

 人間を以下の基準で分類する」

 

 宙に、魔法陣が展開される。

 光の文字が浮かび上がる。

 

 

【人間分類・暫定指標】

 

第一階層:素材(Material)

• 判断力なし

• 群集心理に完全依存

• 情報操作に極めて脆弱

 

「大多数がここに該当する」

 

 守護者たちは頷く。

 異論はない。

 

 

第二階層:象徴(Symbol)

• 群集を導く存在

• 個体としての能力は二次的

• 破壊よりも“配置”が有効

 

「聖女レオナは、ここに分類される」

 

 一瞬、空気が動いた。

 

 だがアインズは続ける。

 

「彼女自身の善悪は無関係だ。

 重要なのは――

 彼女が自分を“象徴だと自覚していない”点だ」

 

 それは危険であり、

 同時に利用価値でもある。

 

 

第三階層:刃(Blade)

• 単独行動

• 組織と不和

• 破壊力は高いが、持続性に欠ける

 

「アンデルセン神父は、ここに該当する」

 

 評価は冷淡だった。

 

「彼は強力だが、

 盤面を支配する存在ではない。

 放置すれば自壊する」

 

 誰も反論しない。

 

 

第四階層:異物(Anomaly)

• 行動原理が人間社会と乖離

• 組織に属さない

• 影響は間接的かつ広範

 

「吸血鬼個体――アーカード」

 

 その名に、

 守護者の一部がわずかに反応する。

 

「彼は、

 秩序を壊さない。

 だが、壊れた秩序を加速させる」

 

 アインズは、短く結論づけた。

 

「極めて危険。

 だが――管理不能」

 

 

【最終評価】

 

「人間社会は、

 現在“自壊フェーズ初期”にある」

 

 淡々と告げられる言葉。

 

「象徴は固定され、

 刃は孤立し、

 異物は自由に行動している」

 

 それは、

 最も崩れやすい配置だった。

 

「よって――

 ナザリックは介入しない」

 

 その言葉に、

 迷いは一切ない。

 

「観測を継続し、

 格付けを更新する」

 

 それが王の決断だった。

 

          ◇

 

 会議が終わる。

 

 守護者たちは一礼し、退出する。

 

 最後に残ったアインズは、

 ひとり呟いた。

 

「……人間は、

 自分たちが測られていることに、

 永遠に気づかない」

 

 それは侮蔑ではない。

 ただの事実だ。

 

 玉座の間ではなく、

 この静かな会議室で下された判断こそが、

 世界の行方を決めていた。

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