side.B
一度目の生を、地球・日本で過ごし、没。悪くない生だったな、大往生とは行かなかったが……まあ後悔はない。
二度目の生を──M78星雲・光の国で。目を覚まし、俺を含めた全ての人影が明らかに人間ではなかった時に俺は言葉を失った。人だった頃の記憶を引き継ぎ、俺はウルトラマンという種族になった。
地球人の記憶を持つ俺など、奴らの目にはそれはそれは卑屈にうつったこったろう。同期の実力を妬んだり、相手への情けが薄かったりな……事実、俺自身だってコンプレックスに悩まされたことも一度や二度ではまったく足りない。
だが共に生きていて悪い気はしなかった。前の人生からして友人恋人は一切いなかった寂しい人間である俺に対し、奴らは分け隔てなく朗らかに接してくれる。そのうちの一人である同期のケンは特に実力が高く、ぐんぐんと実績を重ねていった──
言い忘れていたが、俺たちの住まう光の国は宇宙における自警団のような“宇宙警備隊”という組織を発足している……100万人と少ししか所属していない程度のモンだがな。なにしろあの宇宙は危険や災厄が多かった。
とにかく話を戻して、ケンはその実力をいかんなく発揮して警備隊隊長にまで登り詰めた。……俺か?俺はまァ、そうだな──180億人っつう人口の中じゃあ上澄みも上澄みなんだろう。ケンへの劣等感は否めなかったが、なんとかへこたれずに俺は悪と戦った!警備隊の隊員だったからな。ベテランってやつさ。
俺は口も悪ぃし態度も真面目とは言い難かっただろう。が、部下は良く俺に付き合ってくれたと思うぜ。
そしてある日俺は部下を連れつつ銀河郊外の辺境まで足を伸ばしていた。宇宙の大犯罪者──レイブラッド星人って奴の目撃が報告されたからだ。しかし、誰からの報告かもはっきりしない上に内容もあやふやで……有り体に言えば眉唾モンの情報だった。だから少数で偵察に向かった。あ゛あ゛ぁッ、それが失敗だった!
そうさ、俺は甘かった。レイブラッドは肉体を持たずに亡霊として宇宙を彷徨っていた。俺は必死に部下を逃したものの、物理的な対抗手段もなく何に抗えばいいのかも解らねえまま、襲われた俺は──
ケンや同族への劣等感。クソみてえな俺のプライド。燻っていた、更なる力への欲求──得体の知れねえ声で煽られる度に俺は理性を削られた。無理やりに呼び起こされる、操られてしまう俺の醜い欲求……
そんな事は考えてもねえぜと吹っ切るには心当たりがありすぎた。銀に輝いていた俺の身体が黒く染められちまった時……俺は絶望して気を失っちまった。ぐあ゛ァ、今でもレイブラッド……奴をブチ殺してやりたいね。
俺は──洗脳だか憑依だか知らねえが、レイブラッドに身体を操られちまった。光の国に戻った時に、変わり果てた俺の姿を見てどよめくケン共はどうすればいいのかと戸惑っていた。俺は俺に、俺の体を操るヤツに叫ぼうとした。
「やめろォ゛オォオ゛オ!!!」
実際は口から漏れる程度の囁きだったようだがな。俺は暴れた。手当たり次第建物をぶっ壊して、警備隊員だろうが一般市民だろうがお構いなしで薙ぎ倒しながらある場所へと向かった。……違う、違うんだよ。ケン、あんな形でお前を超えたかった訳じゃッ──……
……あ゛ぁー、また取り乱しちまったぜ。誰かに止めて欲しかったわけだが、皮肉にもこの悪の力を与えられた俺は警備隊の実力を上回り、「プラズマスパークタワー」のコアの元へと辿り着いた。百人以上で囲んでる状況で勝てねーなんて鈍ってるんじゃねえのか?ええケンよ。クケケ。
プラズマスパークっつうのはあの星の全エネルギーやディファレーター光線を司る核で……まあとにかく光の国の心臓だと思えば良い。俺の体はボロボロになってまで必死に引き留めるケンの腕を蹴り飛ばし、そのコアを奪取すべく近づいた。……しかし──
コアの光はあまりにも強すぎた。過ぎた力は毒だ。強く尊い光を発するそれをもぎ取らんとするように掴んだ俺は、それを手にしたままもがいて頭を抱えた。
俺は身体を蝕む暗い力が湧き立ち増幅する痛み、ディファレーター光線が俺の体を作り変える感覚に発狂しちまって、頭振り乱してバランス崩してタワーのてっぺんから落ちた。地上へ真っ逆さま、ズドンってなァ。
だが俺は死ななかった。皮肉にも格段に強化されちまったその黒い体で起き上がり、まだフラフラと暴れていた俺の元に、「キング」がやってきた。
もうこの頃になると俺の意識も朦朧とし、あまり明瞭に覚えちゃいねえが……キングっつってもこの星の王って訳じゃねえ、あまりに強いその力に敬意を表した呼び名って訳さ。正体は誰も知らねえ。いつも
暴れる俺をいとも容易く捉えたキングは、そのまま俺を封印した……身動き一つ取れない拘束と、時を示す物も何もない「宇宙牢獄」って空間での数万年は気が狂いそうだったぜ──
──いや、実際俺は自我を喪失しかけていたのかもな。だが、ウルトラマンのハイスペックな身体能力とレイブラッドの与えた力が俺に発狂を許さなかった。
レイブラッドの意思は数十年もしないうちに無様な俺を見限ってさっさと消え去っちまったがな。はあ、思い出すだけで腑が煮え繰り返る。
転機を迎えたのは皮肉にも悪党の手によってだった。ザラブって知ってるか?狡い悪党さ、恥も外聞もねえ凶悪宇宙人として知られる奴らだ。そんなんが宇宙牢獄の警備を破って俺の監獄に入ってきやがったんだ、何事かと思ったぜ。
聞けばその手にする武器をレイブラッドから与えられたというし、俺に
「共に宇宙を制覇しよう」
「やったぞ!これでこの宇宙は我々の物だ」
と持ちかけてきやがった。即座にブチ殺してやったぜ。疑問顔のまま爆散する姿は痛快だった。
だが俺は、疲れちまった。数万年独りで閉じこもって、つーかレイブラッドに見つかればまた身体を操られるかもしれねえし、そうでなくともそんな身体と見た目だ。
それにザラブが無理やり脱獄させた様な奴、光の国に再び受け入れられるとは思えなかった。……悲観的だっただけかも知れねえがな。
遠目には警報を受け取った宇宙警備隊たち──それも、遠き日に見たケンの息子を先頭に、俺の元へ急行してくるのが見えた。泣きたくなったぜ、すっかりデカくなってたんだからよ。
「そこまでだ!ベリアル!大人しく牢獄に戻れっ」
俺はザラブが持っていた強力な武器、ギガバトルナイザーを手にした。何も奴らに迎え撃とうってんじゃない。言ったろう?俺は疲れてたんだよ。俺はこれで良いのかと迷ったが、最終的には寸分の狂いなく心臓をギガバトルナイザーの雷撃で貫いた。
……そう、自殺──自決、切腹、ハラキリ。ケンの息子、タロウの顔が驚愕に染まるのを尻目に、俺はその長い長い十何万年の生涯に幕を閉じた。
安らかな心地だったぜ……ケンに謝れなかったのが心残りだったがな。
「勇者様ッ!」
……あン?
「“勇者召喚”の儀に応えし3人の選ばれし者達よ──どうかこのレイセヘル王国をお救いください!」
──なんだ?俺は死んだ。確実に死んだ。まさかあの世があるとでも……
……
「3人の──あらっ?」
「よ、4人いる……」
「とっ……とにかく鑑定を!」
足元を見さげれば、醜悪な意図の渦巻く人間どもの渦があった。だが、汚くない魂の人間もそこそこいる……ソイツらの言葉から察するに、勝手に呼び出されたみてぇだなァ。
……クソが、反吐が出そうだぜ。ケン達だったら無条件でこの場の全ての人間に救いを与えようとするんだろう──清濁関係なく、救いを求めているのならな。だがその実、この豚共は便利に扱える兵器を求めているのみっつうのがオチだ。
俺は元人間だ。人間の薄汚い部分は知っているさ。眼下のソイツらは呑気に別世界の
……哀れな奴らだ。声の一つでもくれてやろうか。
『おい』
「「「「ッッッ!?!?」」」」
『この俺を呼び出したのは──テメェらかァ』
「ッ、ぁ……」
「何を……呼び出して……ッしまったというのだ…………!!」
いや答えろや。まあ良いが、今の俺には肉体がねえ。とは言えこの世界にはディファレーター光線とはまた別の、
これに俺の魂を注げば──ほらな。
「なんという──魔力の奔流……!!」
「敵うわけがない……終わりだぁ……」
ちぃとばかし人間からは外れた姿だが、良い。
『おい、そこのガキ共』
「「!!」」
「……なんだっ!!」
『そう警戒するな。別にとって食おうってんじゃあねえ……だがな。そのままじゃテメェら、近いうちに死ぬぜ』
「はあ……?!」
おー、(ガキ共も含めて)豚共の顔が面白え位に青くなってやがる。そりゃあそうだよなァ。都合の良い手駒が手に入るって思ってたら部外者にバラされてんだもんなあ。*2
「きゅ、急に出てきてなんだってんだ!あんた何なんだよ!」
『……フッ』
威勢の良いガキだ。態度は悪いが、嫌いじゃあねえ。
『まあ良いぜ。やるよ』
俺の魂を抽出して、結晶にする──……ちと禍々しさが強いが、オレンジ色のクリスタルだ。持ちやすいように人差し指サイズだ。ケッ、お優しいだろう?
「……っこんな、怪しいモン……!」
『死にたくなきゃあ持っとけってんだよ』
物分かりの悪いやつだぜ、ちと強い言葉になったがこれぐらい言わねえと聞かねえガキにも非があるってもんだ。
『俺を呼び出したテメェらのトップは誰だ?もし会わせるつもりなら、早くしな。勝手に動き回られたかぁねえだろ』
この国の王は──それはそれは胡散臭い野郎だった。この俺を前にしてたらたらと茶番口上を告げていられたその面の皮の厚さだけは褒めてやっても良いかもな。
レインセル王国ゥ?の王様らしいが、ゴッテゴテの重そうで下品な装飾に身を包んでばかりでこっちからしちゃあ見てらんねえくらいだぜ。そのくせ主張が……
“
ここまで嘘臭えゴミカスは初めてだぜ。助け求めるならそれなりのカッコやタイドしろってんだ。
俺としてはコイツらを別世界から誘拐してきた事実について触れねえのが一番胸ックソ悪い。
『縊り殺してやろうかァ……』
だがまァ、こいつはクソでも国の人間に罪はねえっつー盾があるから、今この場では見逃してやらあ。
「あの!」
『あ?』
サラリーマン風の地球人が手を挙げたかと思えば、なるほど上手いこと言って逃れる算段のようだな。勇者じゃあねえしスキルも役に立たねえ、と……んで当分の金を少しもらえりゃ去りますよってか。
フン、ま悪くない択だな。とは言えこの世界の事情を知らねえ貧弱な男一人で生きていけるかっつうのは心配だ。だから──
『気に入ったぜサラリーマン。当分の間は面倒見てやるよ』
「エッ?!あっ、えっと、アッハイ……」
『ウハハ……まあそんな嫌そうな顔すんなって。おいお前ら、俺の分の金ァ要らねえぜ、その代わり自由にさせてもらうがな。グハハハッ』
まさか死後にこんな姿でもう一度俺として生きるとは思ってなかったが……
おいおい憎らしげな顔で豚に見つめられたところで俺は照れやしねえぞ。ハハハハハ!
side.M
俺の名前は
気がつくと剣と魔法のファンタジー世界にいた。暇つぶしのネット小説でその手の話は嫌というほど読んだけど、まさか自分が……いや勇者とかそんなんじゃないらしいんだけど。
正直ちょっと期待したけど──俺のスキルは『ネットスーパー』だって。他に召喚されてた三人の勇者にも笑われるし、その子らはなんかすげーカッコいいスキルばっかりだしで、まあ違うんだろうなって。
それでも王様には謁見できるらしくて、まあついて行くかーって思ってたら……!
俺たちの背後にやばいのがいた。
全長50m以上はありそうな巨人のシルエットが宙に浮かんでいて、そのめっちゃおどろおどろしいソイツが威圧感タップリで喋り出したんだ。むしろなんで気付けなかったんだ……!?
俺を呼び出したのはお前らかって、苛立ち気味な声に誰も返事ができないでいると、何も見えないはずなのに
それが人の形をとって……いやそりゃ肌は黒い*4し服着てないし控えめに言ってバケモノだったけど人間サイズになった。
これは死んだか……?って思ってたけど、なんだか(口は悪いけど)高校生の子らをなんだか気遣うみたいな言葉を話したり、なんかお守りみたいなオレンジ色の何かを投げ渡したりしていた。
それから四人
とにかくここにいちゃろくな目に遭わなさそうだと思って必死に言葉を捻り出した。王様の言い振り的にこの国は危機的状況にあるはず。だというのにこれ見よがしな贅沢三昧──あかんタイプの異世界召喚としか思えない!
「あの!」
『あ?』
勇者でもない俺なんかロクな扱いもされないだろうし、ここは今すぐにでも城から出なきゃ……
「私は勇者でもありませんし、こちらにいては皆様にご迷惑をかけるだけです──……ですので職に就くまでの少しの間暮らしていけるお金をいただければ、あとは自分でなんとかしていこうと思います」
言ってやった、言ってやった!うおおドキドキする!通るか?通ってくれ……!
『気に入ったぜサラリーマン』
エッ?
『当分の間は面倒見てやるよ』
そう……なぜか、俺たちの背後にいた超強そうな
『ウハハ……まあそんな嫌そうな顔すんなって。おいお前ら、俺の分の金ァ要らねえぜ、その代わり自由にさせてもらうがな。グハハハッ』
いやだから怖いんですって!なんだよその重低音の響き渡る迫力ありすぎな笑い声!なんですかその一国の王への態度!
『良いか、よく聞け──俺は基本的に人を害しはしない……』
なんかまた怖いこと言い始めちゃったんだけど……!!
『だがなァ……誘拐同然に連れてきたソイツらや、無辜なる人々の自由や尊厳を
あっ怖いけど良い人(?)かもしれない。
ベリアルは綺麗に死にました。
ウルトラマンは罪の在処を知りました。
悲しみに暮れ、後悔に浸かり、慰霊碑を建てました。
しかし死体があまりにも綺麗でしたから、数々のわるものがその身体を狙いました。
そう──レイブラッドたちも。
(要約:ベリアル死後の
(要約の要約:ストーリーに問題なし)