特定人類絶対守護 ベリアル   作:ぶ千切れた尻尾

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断罪の時です。


6-1-ex

 

 

 

 

 

side.B

 

「あああああああああぁぁぁ────」

 

遠目に街の門が見えてきた。流石にこのままの勢いで突っ込んだりはしねえよな?……いや、やる。フェルはやるな、それの何が悪いかも気にしないことだろう。

 

「フェル、そろそろ街だから止まれよ」

 

『む……そうだな』

 

「ァァァァ──ゲホッゲッホッ!おま、お前!フェルぅ!加減しろよッ!」

 

『遅くなるから乗れと提案したのは我だが、乗ることを選んだのはお主ではないか』

 

「そうだけどさぁ……!」

 

「俺は止め……ちゃいないが、諌めはしたぜ」

 

そうだなァ……なんつーか、さっきのフェルの爆走がスポーツカーのフルスロットルとして、今は軽自動車の通常運転くらいか?少なくともそれくらいの速さで走ってて、今でも充分速いんだろうが、もう向田もフェルに乗るときの速さに慣れてきちまったみてェだな。

 

「着いたな」

 

「死ぬかと思った……」

 

『フン、あれくらいで音を上げるとは腑抜けたやつだ』

 

「あんなスピードで走られたらそら怖いって……」

 

「ま、向田はフェルみたいに自分でそれだけスピードを出せるワケじゃあねェ。誰だって自分より速いものに乗ったならそりゃ速いぜ」

 

ギルドカードを怯える門番に見せてやりつつ、向田はギルドまで向かう為にフェルから降りた。……降り立ったは良いが、足がガクガクしてるからちょっと慣れるまで肩を貸してやる。

 

「大体、俺が落ちたらどうすんだよ」

 

『知らん。お主が悪いんだろう』

 

「ククッ、そりゃねェぜフェル」

「そういうこと言うんだ?!──俺にもしものことがあったら異世界の飯は二度と食えないんだからな!」

 

『ぐっ……』

 

「フッ、向田もあんましでけェ声で異世界だなんだって言うんじゃねー。バレんだろ」

 

「アッ」

 

 

 

 

 

 

 

昼過ぎだからか、冒険者ギルドはまァ当たり前に閑散としている。依頼を受けるのは朝だろうし、他の奴ら全員の依頼がそんなに早く終わるワケでもねーだろうしな。

 

まばらに依頼完了を伝えに来たんだろう奴らと職員が居るが、冒険者はフェルにちとビビり気味だっつーのに、職員はキモが据わってやがる。もう慣れたってわけだなァ。

 

「依頼完了しましたー、お願いします」

 

「薬草採取ですね。キアユ草が40本、マージュ草が──……今朝受注したばかりでこんなに採取できたんですか?」

 

「エッ あっ たまたま見つけて……」*1

 

「群生地帯を見つけたんですね、運がいいです」

 

フーン、やっぱ向田の薬草摘みは他より効率が良いんだなァ。やけに一本摘んでから次の草を見つけるのが早かったし、向田が使うっつう鑑定がヤベーわけだ。

 

「あと、レッドボアとかもあるんですが買い取りできますか?」

 

「えっ?でもあなた方はGランクなんじゃ」

 

「俺らじゃねぇよ」

 

ダラっとしてるフェルを目線と指で指せば、「ああ!」と納得した様子を見せた。フン、俺も狩れねえわけじゃねーぞ。まァそら実際全部フェルが狩ってきた獲物だがよ。

 

「大きい魔物の買い取りは向こうの窓口でどうぞ」

 

「ん……?おう!どれを買い取るって?」

 

「ええと、結構数があるんですが……まずオークが五匹に「うわっ」レッドボアが二頭。ロックバードにジャイアントドードー、それから──」

 

「ちょ、ちょーっと待て!ストップ!ここでそんなにドサドサ出すな!……はぁ、ここじゃ置き場がねぇ。裏まで来な」

 

「あっはい」

 

「ククッ、確かにこりゃ多いからなァ。仕方ないぜ向田」

 

「確かに、出しきれるはずなかったですね……」

 

「まだそんな言うほどあんのかよ……」

 

あんだけの数、森の中でも山じゃねーかって見紛うくらいあったんだからこんな普通のロビーで出しちまったらそりゃあ迷惑だよなァ。ハハハ!査定額は一体いくらになる────

 

────…………はァ。

 

()()()()か…………

 

……チッ。ガキ共に何があったんだか……ギルドに来る度になんかねーか?いや、そんなことねェんだが妙なジンクスとか発生してんじゃねーだろうなァ。

 

「向田」

 

「はい?どうしました」

「すまんが、また離れる。夜にも戻れるかわからん」

 

「え」

「悪いな」

 

それだけ告げて、俺はギルドを出た。こうなっちゃ憎たらしいくらいの日差しを睨み、すっかりディファレーター光線から魔力に移行した俺のエネルギー源に火をつける。

 

「あんまりダラダラしてる時間もなさそォだぜ」

 

まあ、見られても構わん。俺は下半身に力を込め、一度屈む様にその脚を歪め──()んだ。

 

デュアッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

side. Braver

 

俺たちが勇者として召喚されてから、数日しか経っていない。あの悪魔の不穏な発言があって、俺はそれに反発したけど……内心では少しこの国のことを怪しんでしまっていた。

 

でも俺たちの面倒を見てくれるという3人の騎士は優しかったし、何より……その、見惚れるくらいには美しかった。花音と莉緒についた騎士たちも紳士的で顔面は良かったな。

 

この国の中で一番偉いっていう王様に直々にお願いされたんだっていうことも相まって、今になって考えればかなり迂闊だった気がする。

 

あの巻き込まれたリーマンのパッとしないステータスと俺たちのステータスを見比べたりして、俺こそ、俺たちこそこの世界を救う勇者なんだって……思った。

 

だから、完全に警戒心が解ける前でよかったってことかもしれない。

 

「待ってくれよ、それ──莉緒に何をつけるんだ?」

 

「……(わたくし)どもから、贈り物をと」

 

「だ、だからってそんな不意打ちみたいに」

 

「そうだぜ。一言断りを入れてからだって──」

 

チッ……いえ、その通りでしたね。こちらの落ち度です」

 

聞こえない様に言ったのかもしれないが、俺には微かに舌打ちの音が聞こえた。

 

現在は数度の依頼をこなして、何度目かの冒険者ギルドからの帰路だ。馬車の中は俺たち以外は勿論騎士たちだけしかいない。

 

ここで事が起きたら、抵抗できな──

「では、我々から改めて贈り物をさせていただきませんか」

 

「さる魔法の道具にもなっていて、成長を助ける働きがあるんですよ」

 

「お三方とも、是非……」

 

花音が生唾を飲み込む音が聞こえた。やっぱり、俺たちは迂闊だった。俺の声は震えていなかっただろうか。

 

「……え、っと。そのアクセサリーに、鑑定を──させてもらっても」

 

騎士たちの目つきが変わった。

 

「無理だな」「誤魔化しきれんか」

「な、なにを言って」

 

「ぐあっ!」

 

その時。俺は目もくれていなかった背後の騎士に腕と首根っこを押さえ込まれてしまった。車内の座面と床に押し付ける形で、鍛えられている騎士のその膂力に敵う気配がまるでない。

 

「は、放せっ!」

 

「櫂斗を放してよっ!何するのっ!」

 

「暴れるなよ」

 

「悪く思わないでね。私たちの昇給のチャンスなの」

 

「い、いやっ……!」

 

なりふり構わず拘束を解こうと身を捩っても何もできない。ここは依頼を受けた街と王都の中間の街道──周りはだだっ広い草原で、助けはこない。

 

視界の端では、莉緒が何かに縋るみたいにオレンジ色のクリスタルを握りしめていて──

 

「たす……助けてっ……!」

 

パキンと、何かが割れた様な音がした。

 

 

 

 

 

 

おォオオォオォォ!!

 

空気がビリビリと震える。

 

「「「は?」」」

 

……この馬車には屋根がない。正確には屋根を広げることはできるけど、今はその屋根を付けていない。だから、俺を押さえつける騎士の手が緩んだ隙に周りを見たんだ。そしたら、

「ヒッ!?おま、お前は──」

 

「あの時のッッ……」

 

「あ、悪魔だ……」

 

馬車の進行方向にあの時の悪魔(闇の巨人)が佇んでいたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side.B

 

あの時俺は言った。自由や尊厳を侵略しようとしなければ、俺は何もしないと。

 

だが、結局はお前達……貴様らは外道に堕ちた。

 

人の大切なものを須く奪おうとし、その上で何を思うでもなくただ嘲り、自らの身勝手な欲望の為にただ躵べと宣う。

 

俺はッ!お前らみたいなクズが!!

 

大ッッ嫌いなんだぜェエェ!!

 

「ヒッ」「うっ、く……」

 

情けねえ顔だなァ。メフィラスだろうがマグマだろうが、もちっとまともな面してたモンだぜ……たかが王やてめーらの私益を求め、無辜なる民やそいつらを苛んでおいて、自分がその側に回ったら被害者ヅラかァ……

 

我慢ならねェ、ああ〜……我慢ならねェんだ。

 

さあ、滅べ。

 

おっ……!恐れるな!あくッ悪魔など!高が知れている!ころせッ!殺してしまえェッ!」

 

「お」「ぅおおォオォオオ!!?」「うわあァアァッ」

 

「死ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side.King

 

【王は焦っていた】。

 

私腹を肥やすのであれば民から税を毟ればよい。しかし、他国の勢力に対抗するのにも金はかかる。だから圧倒的な力を持つに至るという伝説がある勇者を、態々七面倒くさい儀式を行ってまで王自ら呼んでやったのだ。

 

魔族の国はプライドが不必要に高い。我々に仕えることの何が不満だと言うのか……あの魔王という名の雌も不遜な事に我が奴隷となることを拒んだ。理解が及ばない。家畜如きが何を望んでいるというのか。隣国も隣国だ、高貴なる血を持つ我が国がいるというのに、迎合(侵攻)に抵抗し剰え自治を叫んで争おうなどと……*2

 

そしてそれに役立たせる為に召喚を執り行ったのだ。だというのに勇者を呼んでやったと思ったら埒外のバケモノも一緒にやって来てしまう始末。そのバケモノはこちらのことを理不尽に脅すだけ脅してフラっと何故かそこにいた無能と共に消えたものの……

 

召喚術式を書いた魔術師は即始末した。あんな役立たずが一時でも宮廷魔術師を名乗っていたと思うと王はぞっとした。

 

そしてバケモノという脅威を乗り越えて居着いた勇者共はそのバケモノのせいで不信感を露わにしていて鬱陶しい。なぜあんな悪魔の言うことを間に受けてしまうのか、やはり異世界人は頭がまぬけなのかもしれない。

 

こちらからの指示にあの悪魔から植え付けられた不信感のせいでワンアクション挟むことになり、育成も滞って上手くいかない。これでは宣戦布告した我が国の前線に送り込む事ができないうえに、育成自体にもダラダラと人員を割かれる。

 

幸い愚鈍な隣国は我がレイセヘルの国軍に恐れをなして国境で睨むことしかできない臆病者であるからして、まだ王の腹に支障はなかった。

 

だがしかしそれはそれとして、役に立たない大元の勇者達には苛立ちが募って仕方がない。スキルばかり一丁前だというのに……これではまだ下士官たる騎士達の方が何倍も役に立つ。

 

だから王は策を講じた*3。いや、あのガキ共を呼び寄せた頃から考えていたことではあったのだが……

 

そう、隷属の枷である。着けさせるだけで我々の意のままに動かす事ができる便利な道具だ。愚かにも我々に逆らう貴族達を窘める時にも役立っている。奴らの娘共をコレクションにしてやった時は痛快であった。笑みが溢れる。

 

剥いてから並べてやったり、この王を奉仕する栄誉を与えてやった時はとてもえも言われぬ至高の時間であった。

 

考えてみれば、異世界の勇者の中でも小娘どもは中々味わいがいのありそうな面をしていた。異なる基準では美人なのだろう。それに、若い……王は、勇者の一人である男や、悪魔のことなど忘れて女に贅を凝らす妄想に体が疼ついて仕方がなかった。

 

我に帰り、そう。王は本日ついに勇者共にその隷属の枷を着けよという令を出したのである。勇者共の態度にはほとほと愛想が尽きたのだ。

 

しかし、なんとも集中できない。部屋の外がどうにも騒がしく、王たる者の時間を邪魔しているという事を皆理解していないのか、その喧騒はおさまる気配を見せない。

 

渋々座り心地の良い椅子から腰を持ち上げ、窓から外を覗いてやろうとした──

 

「よォ」

 

「ッッ?!?!」

 

王はバッと後ろを振り向く。その声は、その気配は、あの忌まわしき悪魔──

 

「そう怯えるなよ、豚がフガフガしてると神経が苛立って仕方がねェ」

 

その無礼な物言いも耳に入らないほど困惑がどんどん強くなっていく。何故。何のために!悪魔は城を出ていったのではなかったのか!

 

「……この国も救いようが無えなァ。国民には心底同情するぜ」

 

「え──えらッ、偉そうに語るな悪魔めが!我は高貴にして絶対なるレイセヘルの王であるぞッ!疾く頭を垂れぬか!はっ這いつくばれえっ!この世はわ!我を軸に回っているのだあぁッ!」

 

「心配すんな。貴様が居なくても世界は回る──それに、忠告を破ったてめえらを逃す気なんて、俺にァさらさらねーしなァ」

 

「衛兵!衛兵はいないのかぁあぁ?!?!

 このっこっこの悪魔をひっ捕えよぉぉっ」

 

王の王たる心臓が加速し続けている。王は王たる命と栄達の終焉など認めはしない。ガタガタと物音を立てて後退り、やたらめったらに叫んでいても、王は王であるから王なのだ!

 

「醜悪で姑息な王もいたモンだぜ……フン。隣国の中からまともそォなとこを見繕って呼んである。数日中にゃこの国は陥落してまともな政治を取り戻すこったろう。安堵して死ね」

 

「ぃぃいやだッ!貴様になんの故があって我を害そうというのだ!我に従え!そうすればこの世の富は全てお前のものだぞ!」

 

「こりゃ酷ぇぜ、現実も見えてねーときたか」

 

【城門も、城壁も、虚構の城を守るものはもう全て壊されて存在を許されなかった】。

 

悪魔がその様相を崩し、黒い闇となって大口を開ける。牙が迫り、涎を垂らし、口内に王が収まろうと言う時には──すでに王の意識はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おゥ、マルベール王国の王か」

 

「おお、ベリアル殿。この度はお力添え誠に感謝いたします」

 

「逆だぜェ……俺は私怨私欲で奴らを滅ぼした。その後始末を頼もうってんだからな、迷惑かけんのはこっちさ」

 

「そう、ですか……しかし、それでもレイセヘルの悪政には近隣の国、皆で困っていたのですよ」

 

「フン。そォだろうな……だが、マルベール王国だろうが道を外しちまえば、俺が見てたら滅ぶと思え──……ま、心配はなさそうで安心したぜ。魔族の国とも仲は悪くないんだろ」

 

「ええ。国交も結んでおりますし、レイセヘルの民を纏め救ける為に共に動いてくれるとのことです」

 

「結局はレイセヘルの人種差別ってだけだったんだろ?」

 

「……その上、魔族の皆さんも無理やり奴隷として連れていかれるという誘拐事件が多発していました。

 全てがレイセヘルであると宣うつもりはないですが、それでも大部分は減ることでしょう。奴らは他種族を質の良い奴隷のようにしか思っていない」

 

「人を人とも思わねェ所業は俺が一番嫌うところさ……ま、お前らが悪法じゃねー法に則ってやるだけなら異はねぇ」*4

 

「そうですか……そう、今レイセヘル王はどうなって?」

 

「俺の見せた幻覚にビビっちまってお漏らしして昏倒中だ。拘束してあるが、全く汚ねえ事この上ねェぜ」

 

「しかし──宜しかったのですか?聞くに私怨によってレイセヘルの王を討ったと。しかし命は奪わず、そのうえ我々に引き渡してくれるという」

 

「フン。なにも許さなかったワケじゃねえ……クズにも使い道ってのはあるもんだろう?国民の溜飲をさげるなり、見せしめにするなり、やりようはあんだろと思っただけさ」

 

「ふむ、なるほど……承知いたしました。ベリアル殿のご期待に添えるよう、尽力して参りましょう」

 

「応援はしてんぜェ。勇者の身柄は勝手にもらうがな」

 

「もちろんです。ベリアル殿なら手荒な扱いはされないことでしょうし」

 

「期待を裏切ってくれるんじゃねーぞォ」

 

「はい。改めて、感謝申し上げます」

 

 

 

*1
鑑定様々

*2
棚上げ

*3
足りない頭を絞って

*4
原作では生活に窮した者たちの職業斡旋所的な面も存在する。犯罪奴隷は除く




お久しぶりです。遅くなりまして、大変申し訳ございません。ここに謝罪させていただきます。これからの展望だけ語り、書かずにぶん投げて、大変申し訳ありませんでした。

毎日少しではありますがこの小説を読んでくださっている方々がいらしまして、大変に嬉しく思っております。

さて、二度目のex話ですが、次回もおそらくとんスキのキャラを絡めたexが続くと思われます。ムコーダさんとも合流するでしょう。

勇者たちをどうするか悩んでおります。

読んでいただきありがとうございました。
よろしければ、感想やお気に入り登録、評価をよろしくお願いします。月並みな言葉ではございますが、モチベーションがあがって執筆速度がマシになります。

筆を置いていた時期に感想をくださったお二方、本当にありがとうございました。
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