特定人類絶対守護 ベリアル   作:ぶ千切れた尻尾

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勇者組の同行はおそらく一時的なものです


6-3

 

 

 

 

 

side.M

 

腹もくちくなって一息ついたものの、もう辺りも真っ暗になっちゃったな。夜空とか街の光、それとなんか薄らと発光してるフェルのおかげで周りも見えなくはないけど……

 

洗い物もしなきゃだし、前に買っておいたランタンを取り出して明かりを灯す。幸いこの獣舎に今は他の動物もいないし、もう少しだけ長居させてもらうことにしよう。

 

今日はなんか良く驚く日だったな。あんなに大量に獲物があるとは思わなかったし、ベリアルさんはあの時の勇者くん達を連れてくるし。あれだけ大量にお肉があればある程度は保つだろ──……え、保つよな?

 

というか勇者くん達はずっと鎧とかローブとか、異世界っぽいファンタジーな服を着てたんだし、俺が最初に気付かなかったのも無理はない、よなあ……いやまあ顔は見えてたし苦しいか。

 

こっちの世界の人の目がないのを良いことに、日本の食器洗剤を存分に使って調理器具や食器を洗っていく。あぁー、水道の蛇口を捻れば水がいくらでも出てきたあの頃が懐かしいよ。

 

「あの……」

 

「ん?」

 

皿の水気を拭き取っていると、勇者くん達が話しかけてきた。とりあえず手は止めないけど、体と顔だけそっちに向けて話を聞くことにした。

 

「あの、俺たちまでご飯頂いちゃって、ありがとうございます」

 

「ありがとうございます」

 

「美味しかったです」

 

「ああ!いや、全然構わないですよ。寧ろ口に合ったようで良かった」

 

うんうん。嫌いな味だったりしなくて良かった、若い子らはいっぱい食べるべきなんだよ。健全な精神は食から生まれる、ってね。言い過ぎかな?

 

「その……俺、召喚された時に向田さんのことバカにして笑っちゃって……すいませんでした!」

 

「私達を助けてくれて、本当にありがとうございます!」

 

「このご恩は忘れないです!」

 

ん……?後者はともかく、なんかそんな嘲られるようなことあったっけ。

 

あー!俺の固有スキルがネットスーパーしかなかったからね!あれね!いやいや全然気にしてなかったんだけどなあ。寧ろあの時はあの国のヤバさとベリアルさんの気迫にばっかり意識が向いてたというか……

 

「いやあ、良いよ良いよそんなに気にしなくって。助けたのも助けようと思ったのもベリアルさんだし、俺はホントになにもしてないしね」

 

それに、今思い返しても別に「ネットスーパー?ウケる」くらいしか言ってなかった気がするし……それくらいで目くじら立ててちゃ社会に出てからやっていけないんだぜ、少年少女よ。ワハハ!

 

「寧ろ俺は君たちがどうなってるかとか、知らなくってさ。だからお礼はベリアルさんにね!今日はもう遅いし、寝たら良いよ……君たちの宿代はベリアルさんが払ってるって言ってたし」

 

……ん?ベリアルさん、男女でちゃんと部屋は分けたんだろうか。まあ、いかに宇宙人とはいえど……高校生の異性を同じ部屋に泊めることの不味さくらいわかってるんじゃない?*1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side.B

 

翌朝────

 

……マズったかァ?そういえば地球人は性別の違いがあった。いや、この世界でもそうだな……ま、いいか。事は起こってなさそうだし、満更でもなさそうだしなァ……一応聞いとくか。*2

 

「……すまん、男女の概念を忘れててなァ……部屋は分けた方がいいか?」

 

「……いえ、大丈夫ですよ」

 

「うん。これからも……一緒でいい」

 

「そうかァ……」

 

櫂斗には聞いてねェが、良いだろもう。3分の2了承してんだし。

 

今日はまた移動するんだったか?ま、この町に長居する用事は無えからな。出る前になんかする事はあったんだっけかァ。

 

「ああ、冒険者ギルドに肉と買取代金を受け取りに行かなきゃいけないんですよね」

 

「なるほどなァ。そりゃああんだけの量の魔物だ、数時間やそこらで解体できるわけが無え。一晩頑張ってくれたっつうわけだ」

 

「いやあ、ほんとありがたいです……もし自分でやらなきゃ行けなかったかもって考えると怖い怖い」

 

恐ろしく手間がかかった上に、そんなモンに日々時間を溶かしてちゃあ料理を楽しむなんて暇はなかったろうなァ。それに引き換えギルドっつうのに頼んじまえば、人海戦術でパパっと済ませてくれるってェんだからなあ。

 

まったく冒険者ギルドに頭が上がらねー話だぜ……と、あいつら3人も修行かなんかで冒険者に登録してたよな。ちらちら盗み聞いてた時に知った話だが。

 

「そういや、櫂斗達3人は冒険者登録してるし俺たちよりランクは一つ上だぜ」

 

「えっ」

 

「その、つい先日上がったばかりなんですけどね」

 

「まあ俺たち最低ランクですしね……」

 

「フン、別に冒険者の方のランクは気にしちゃ居ねえんだろ?ほれ行くぞ、3人もだ。さっさと肉を回収しに行かなくちゃなァ」

 

『肉か。我が狩った獲物どもが美味なる食事に様変わりすると考えたら、嗚呼……腹が鳴る』

 

「フ、朝飯は食ったろ?」

 

『仕方あるまい。肉はいくらでも食える』

 

お前にゃ限度ってもんが無ェ様だなァ。確かにフェルの食いっぷりってやつは見てて快い程豪快で美味そうに食う。肉料理の時は殊更にだ。

 

……ま、俺としても今まで食った事が無え肉を向田に料理してもらうっつーのは楽しみな事だ。どんな美味いモンが出来上がるのか、それはどんな香りでどんな味をしてどんな食感なのか──クク。確かに腹が減るぜ。減る腹はねーハズなんだがなァ。

 

 

 

 

「おはようございます」

 

「おう、用意できてるぜ。そっちの奴らは昨日見なかったな」

 

「ツレだぜ。仕事あんがとよ」

 

「ヘッ、解体は任せな……んでこれが頼まれてた肉だ」

 

少し冷気の漂う部屋で、天井から吊り下げられた肉の数々とそれに届いちまいそうなくらい台に山積みにされた大量の肉達。

 

クク、こんだけありゃあいくらフェルの胃袋があったって暫くは保つだろうさ。壮観だぜェ……俺の十何万年の生涯でもこれだけの量の肉を見たのは初めてかもしれねェな、怪獣を除けば。

 

「あとは素材の買取の精算が──これだ」

 

ドッ

 

「うわ」「すごい……」

 

徐にテーブルに乗せられた大袋から、がじゃらがじゃら──つって重そうな金属同士が擦れ合う音が聞こえる。……アレの中身、全部硬貨かァ?

 

「こ、この重そうなのは一体……?」

 

「精算って言ったろ。今回は高ランクの魔物を多く回してくれたからな、解体費用は少し割引して金貨二枚に端数の銀貨四枚──それを差し引いて全部で金貨202枚だ

 

 

「……エェーーッ?!!

 に…にひゃく……!?」

 

大した額、だなァ。物価がどれくらいかちとまだ知りきれて無えが、相当の金が入ってきたことはわかる。向田のスキルならどれくらいの食材を買えるんだ?

 

「なんだ相場も知らねえのか、田舎出か?……いくら従魔が強くても主人が価値を知らねえと意味がねえからな、いいか?」

 

「…………」

 

「例えばオークだと睾丸一対。これは精力剤の材料になる……五匹分で大体金貨二枚と銀貨五枚だ。これが人気で、すげー効くんだと!どうだ?」

「いえ、いいです……オークのキン◯マはちょっと」

「おいおい若いの(ガキ)が聞いてんだぞ、クッ」

 

「「「…………」」」

 

「へっ、悪い悪い。レッドボアなんかは皮が革製品の素材になるし牙は工芸品になる。コカトリスの羽は枕に使われたりするな」

 

「なんでも素材になるんですね」

 

聞けば薬や実用品に回される素材の種類はかなり多岐に渡るみてえだな。冒険者どもの武器や防具なんかはさておき、この世界における高級品にまで魔物の素材が使われていやがる、人間側の活用が上手いと言うべきかァ……

 

「他には魔石だな、その名の通り魔力の詰まった石だ。属性によって色々使い道があってな……いつも高額で取引される」

 

「ふゥん?体の中にそんなもんがあんのか」

 

「勿論全部の魔物から出るわけじゃねえ、がまあAランク以上の魔物なら確実に持ってるはずだ」

 

「この世界にはそんなものが……」

 

「魔道具についていたのを幾つか見ました」

 

「あ、確かに」

 

怪獣ならともかく、そういう器官を星の生き物が普遍的に持っている……か。種族に限った話でもなく一定以上の力がある個体なら持っているってェ?いや、Aランクとして扱われる魔物の種族ならって解釈の可能性もあるか。

 

俺たちの目が結晶化してるのと似たようなモンかァ……?なんにせよ今の段階じゃなんもわかんねーな。

 

「で、そのAランクのブラックサーペントとマーダーグリズリーだが……俺も久々にお目にかかったぜ。腕がなるってもんよ──とまあ、こんなもんかね」

 

「はぁー……勉強になります」

 

「早いとこ覚えなくちゃなァ」

 

「ああそれとよ、昨日も聞いたが。お前の従魔──そりゃフェンリルで間違いないよな?」

 

「え?」

 

「そいつがグレートウルフだって言うやつも居てなあ、聞いてこいって周りがうるせえんだ」

 

「グレートウルフ、ねェ」*3

 

「そういえば俺たち、あのデカい狼……フェル?さんのこと」

「聞いてなかったよね……」

「なんかとにかく強そう」

 

……そうか、言ってなかったなァ。とりあえず昨日は俺もこいつらも疲れてたからさっさと寝ちまったし、メシ中は全員メシに夢中でがっついてたからすっかり俺も忘れてたぜ。

 

「“フェンリルを従魔にした奴が来た”っていう噂は立ってるものの、“伝説の魔獣が人に従うわけがない”“いやいやあれこそ伝え聞くフェンリルだ”……と、フェンリル説とグレートウルフ説かで二分されててよ。隣に見た事ねえ人種の男連れてんのも謎だーつってな」

 

「ハハ……」

 

「そもそもフェンリルを見たことあるやつなんていやしないがな!ガハハッ──……まあ、前はそれなりの冒険者だった俺からすればだな。その佇まいだけでフェンリル以外考えられんぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それで受け取りを済ませて街の中をブラブラ歩いてるわけだが。確かにギルドの解体屋の言ってた通り、そこらの冒険者ってナリした奴らがコソコソとフェンリルかグレートウルフかで言い合ってやがる。

 

「ええと、このままここに留まってフェルのことがレイセヘル王国の耳に入るとまずいからもっと国境から離れないと──と思ったんですけど、レイセヘル王国潰れたんでしたっけ」

 

「ン、まぁ……トップが()げ替わったんだよ。とはいえ国が荒れてたのは事実だし、再建にかけて更に面倒臭ェことにはなる。離れるに越したことはねえぜ」

 

「櫂斗くん達はギルドカードを持ってるんだったよね?」

 

「え、ああ!レイセヘル王国の騎士達からベリアルさんが()()()()()くれてたみたいで」

 

「昨日の夜にきちんと渡されました」

 

「じゃあ……俺たちのギルドカードも手に入ったし。すぐにでもこの街を出発しようと思うんだけど、どうだ?フェル」

 

『我は構わんぞ。美味い飯さえ食わせてくれればな』

 

「じゃ、行きますか!それで良いですかね?」

 

「あァ、勿論だぜ」

 

「大丈夫です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──そういえば、だが……向田」

 

「はい?」

 

「お前は帰りたくなったりしないのか?」

 

「え?うーん。こっちの生活が気楽なもんで、今の所全然……恋人とかもいなかったですしね」

 

「そうかァ──そうかそうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

街の外。後ろをちらりと振り返れば、どんどん街の外壁が遠ざかっていく。相変わらずの徒歩の旅だが、ガキ共は慣れてねェだろう……ま、精々気にかけてやる。

 

俺がアイツらにポロッと喋っちまった、なくもねえ()()は三つ……どれも“だったら良いな”レベルのクソみてえなアテだ。ったく、俺に生身があったらなァ。もっと色々やりようはあった、前に便利だと言ったが訂正したくなってくるぜ。

 

一つ。

 

ワープ……それも、星間移動やもしかしたら次元間移動を求められるレベルのワープの習得だ。

俺が今使えるワープは良くて星の半径程度──地球に届くとは思えねえし、光の国の技術を結集させたって“俺が居た頃”に宇宙を越えるのは無理だった。

 

二つ目。

 

俺がこの星を飛び出して、こいつらの故郷の地球や……別の宇宙である可能性を考えれば、この宇宙全体の外殻まで貫いての捜索だ。

 

正直に言やこれァ最終手段だ。確実に途方もない時間がかかる。警備隊の頃の部下や仲間がいるならまだしも、俺がたった一人で見つけ出すっつうのはかなりの無理がある。

 

こいつらの寿命が保つかもわからねえし、そうなっちまったら、あぁ、俺が耐えられねェ……!

 

最後。

 

()()()()()()()だ。*4

可能性は低い……が、無いわけじゃねェ。この宇宙に俺たちとは別のウルトラマンが居たら?パラレルワールドを越えて俺の元いた光の国に届きやしてくれねえか?なんにせよ、やるしかない。

 

他のウルトラマンが元の世界に帰す力を持っているかどうかは賭けだが、それでも亡霊みてェな今の俺よりは万倍はマシだろう。

 

……もし、俺を知るウルトラ戦士が来てくれたとして、その上で光の国を滅茶苦茶にした罪人である俺を赦さなかったら──だが、それじゃあ三人を帰すことはできない。

 

その時は這いつくばって、頭を地面に擦りつけてでも頼み込むしかねェ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このサインは……M78に行った時に教えてもらったもの!あまりにも酷似していやがるぜ。こんな辺境の世界に誰が──」

*5

 

 

 

 


 

番外編、お泊まり勇者

 

「ど、どうする?」

 

「部屋……一つ、だね」

 

「お……っ俺!今からでも頼んで、男部屋に入れてもらうから──」

「待って」

 

「え?」

 

「……ぃ、行かなくて、いいよ」

 

「花音まで、そんな」

 

「だからっ……!」

「一緒に、さぁっ」

「寝ようって、言ってるの……!」

 

 


 

ベリアルの性別に関して厳密に記しますと、このベリアルが性別の概念を忘れかけているのはガチです。でもなんかベリアルさんアイアン・ウィルのパーティ編成についてもなんか喋ってましたし…… 勿論ウルトラマンという種族にも男女はきちんと存在します。

 

が、根本として人間だった頃の視点で見ればウルトラマンの容姿は性別関係なく“宇宙人”でしかないので彼が性別を意識することは少なかったのです。なまじ変に人間性をほんと中途半端に残せてしまった弊害ですね。

 

そして数万年を経て警備隊で様々な星々を任務で巡るようになった頃には己の性別などというどうでも良いことは忘れ去り……利便性を取ってその場の状況によって見た目の性別を使い分けるようになりました。

(セブン21やジャスティスなど、他にも女性の変身者形態があるウルトラマンは居ます)

 

そして、10万年を生きた頃にはかろうじて男性っぽい口調を残しただけの性別不詳ウルトラマン、現在の弊ベリアルが出来上がったのです。

 

レイセヘル王国で顕現した時に男の姿だったのは威圧感を出したかったから。それと、今は魔力で身体を形作っているのでウルトラマン形態でもその気になればウルトラウーマンになれる……

と、矛盾点がないか読み返している時に二話でなんか書いてたことに気づき慌てて書き連ねた謎の補足文書でした。

 

 

 

 

 

ちなみにウルトラマン達は宇宙での遠く離れた場所へのワープは結構気軽にします。m78のウルトラマンの別世界への移動はすごいコストかかるっぽいけど……

 

*1
フラグ

*2
ベリアルは自分に性別がないので性別の概念を忘れかけています

*3
Aランク/狼の魔物。フェルと同程度の体格。グレーの毛並み

*4
https://dic.pixiv.net/a/ウルトラサイン

*5
m78/光の国の座標





これからもよろしくお願いいたします。
なんと小説検索“ウルトラマン”で高平均評価順で一ページ目に食い込んでいました。なんたる幸福……ありがたや、ありがたや。
本ッ当に嬉しいなあ〜……マジですか。
あんな作品やこんな作品に並べているつもりは全くないですが、精進していきたいと思います。

ムコーダさんの今後の使用するかもしれない武器

  • 棒(殴って突いて、頑張ります)
  • 剣(ダンジョン行く頃に魔剣ゲット)
  • 槍(もっと後に魔槍ゲット)
  • 魔法(加護の力でなんとか頑張る)
  • 素手(対人戦ならなんとか?)
  • 銃(ベリアルお手製の銃を贈呈します)
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