特定人類絶対守護 ベリアル   作:ぶ千切れた尻尾

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side.B

 

「だっ、だが……お前ほどの存在が在野に降れば混乱は必至……!!」

 

どの口でほざきやがる。自国民の安寧なんて毛ほども気にしちゃいねえくせによく戯言吐けたもんだぜェ。

 

『フン、そういうことはまともな統治をしてから言うこったなァ。ま気にすんな、言ったろうが。俺は基本的に人を害しはしねェとな』

 

 

 

 

 

 

『つーことで城を出たワケだが……』

 

「えーっと……」

 

『あぁ?……そうだな、俺の名前ァベリアルだ。だが悪魔じゃあねーからな』

 

「そ、そうなんですか?あっ…私は向田剛志と言います」

 

『あーそんなに畏まってんじゃねー、俺ァそう大した存在でもねえ』

 

「エッ」

 

 

 

 

『まあ強制はしねえが、気楽にやれよ。お前が疲労してちゃ本末転倒ってやつだぜェ』

 

「日本語にご堪能で……」

 

『何度か行ったからなァ』

 

「エッ?!」

 

面白えやつだな。だがウルトラマンは知らなさそうだし、俺が行った地球とはまた別の地球かもしれねえなあ……もしや前々世は一緒か?覚えてねーんだよなァ。

 

『きちんと奴らから金はもらったか?』

 

「あ、ハイ。金貨を二十枚ほどいただきまして」

 

『価値のほどは知らねェが、服の一つくらい買えるだろ。服買いに行くぞ』

 

 

スーツの向田はこの別世界の街の中じゃァ目立って目立って仕方がねぇ。だがこの世界に馴染んだ格好すりゃちったぁおさまるだろ。

 

「え、どうして……うわ。めっちゃ見られてる……スーツだから?いやベリアルさんが目立ってるんじゃ??」

 

『俺ァ今あいつらには見えてねぇ、お前だけ視界に俺が映ってるんだよ』

 

「えぇ……すご……」

 

『今の俺ァまあ肉体(魔力製)のある幽霊みたいなモンでな。なんなら姿見せる方が気ィ遣うぜ』

 

「はぁ〜」

 

まあこの身体、中々便利なんだがなァ。思念体と実体の中間もしくは良いとこどりっつーか。当分は特にきちんとした肉体は要らねえかもな。

 

 

 

 

 

 

向田は服屋で銀貨数枚分の古着を買ったみてえだな。おゥ、中々似合ってんぜ。んで俺ァこうして街を眺めて「この世界の服ってこんなもの」っつーのが解りさえすりゃあ──

 

「お待たせしましたー……アレっ?ベリアルさんもいつの間に服を……?」

 

『魔力で再現した見かけだけのモンさ。お前の着てるやつみてえに羊毛でできてたりはしねえ』

 

「便利っすねえ」

 

『だろ?』

 

全身黒じゃあつまらないからそれならと脳裏に浮かんだケン(親友)の赤──を作ろうとしたらちょっと暗くなってボルドーって感じになっちまったが、まあ概ね馴染んでるんじゃねえか?*1

 

『まあこの国を出る頃には実体化してやろうと思ってな、服くらいなきゃ格好つかんだろ』

 

「良いじゃないですか、似合ってると思います」

 

『フハハ!赤が好きでな!

 それと、取り敢えず今日の宿を取るべきだぜェ。時間帯は把握してないが……日の沈み方を見るに、それなりに夕に近いらしい』

 

きちんと熱源/光源になる星がある星っつうのは珍しいが、ないわけじゃない。もしかしたら遠いだけで、光の国がある宇宙と地続きかもしれねえな。まあ別宇宙となると俺の力では越えられねえんだが……ま、越えたところでどのツラ下げてって話だわなァ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし」

 

ベリアルさんにアドバイスを貰って取った宿の部屋で、ベッドに腰掛けて一息つく。

 

「ステータスオープン」

城で教えてもらった通りに呟けば──

 

「おお出た!」

 

眼前にフワッと浮かび上がる俺の情報。なんでも鑑定スキルを持つ召喚勇者は、いつでも自分のステータスを確認できるそうだ。……城じゃ御大層な魔道具?使ってたっけ。

 

「で、一番の問題は──」

 

【スキル】 ネットスーパー

 

これね。

 

「どうやって使うんだこれ。いや、普段から大いに利用させてもらってたけど……オホン。

 ネットスーパー」

 

唱えてみるけど、変化ナシ。なら触れてみるのは……俺はツンと指先でスキルが書いてあるそこに触れた。

 

「うわっ!」

 

途端に広がった明るい画面!いや、て言うか……

 

「いつも使ってるネットスーパーのサイト、そのまんまじゃねえか」

 

『戻ったぞ……何してんだ?』

 

「あ、ベリアルさん。俺のスキルの検証を」

 

『ふーん。こっちからは虚空に手を伸ばしてるようにしか見えねぇなァ。“ネットスーパー”だったか?』

 

「そうですそうです」

 

あ。よくよく見れば、価格のところがこの世界の単価になってる……買えるのか?取り敢えず適当にカートに入れて……と。

 

【残高が不足しています チャージしてください】

 

「あっ。……金をチャージ?」

 

まさかここに直接か?

そろーり手を伸ばして金貨を近づけてみれば、画面の中にスウッと金貨が一枚消えた。見ていたベリアルさんも突然消えた金貨に少し驚いたみたいで、小さく眦をあげている。

 

ゴトン!

 

『んだそれ』

 

「ダン……ボール?」

 

そばに降ってきた◯オンの段ボール。普段家に届くものとなんら違いがないように見える。ガサガサ封を解いて蓋を開けてみれば──

 

「おおーっ!さっき注文した水とパン!」

 

これはかなり使えるぞ……!

 

戦闘スキルじゃないしお偉いさん側にはなんのこっちゃ分からなかったろうけど、金さえあれば食うに困らないし。その金だってこのスキルで稼げるかもしれない!

 

となるとなおさらこの国に留まって目につくのはまずいなぁ……

 

『地球産のモノを金と引き換えに呼び出す、か……目をつけられたら怖えなァ』

 

「やっぱそうですよねぇ」

 

ベッドに横になる。シングルの部屋を取ったんだけど、ベリアルさんは寝ないそうで気にするなとのことだ。

 

 

 

 

 

 

翌日。街の子ども達に話を聞いて、この国から脱する為に国境の街キールスに向かうことにする。乗り合い馬車が出ているらしいので、それに乗っていこう。

 

「キールスー!キールスゆきー」

 

「乗ります乗りまーす!」

 

「はいよー毎度ぉ」

 

とにかくこのレイセヘル王国を離れることが第一だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は宙に浮かびつつゴトゴト揺れ走る眼下の幌馬車を眺めている。にしても長閑で自然が残る星っつうのは久しぶりだなァ……何万年も閉じ込められてちゃ感慨深いってもんだぜ。

 

何処迄も青くチリ一つない空。ささやかな風に揺れる植物。俺たちを追い越すように飛ぶ鳥類……

 

『クックック』

 

身じろぎ一つとれねえような灼熱の拘束具に閉鎖的で澱んだ空間、顔の上を這う人間よりも大きな害虫──そんな場所に比べられちまえばどこでも天上だよなァ!ハッハッハ!あ゛ーーッ良い気分だぜ。

 

向田は上手くやっているようだ。隣に座った行商に声をかけて、情報収集に勤しんでいる。逞しくてなによりだぜ、さっき見てきたガキ共とはまるきり違うってレベルだなぁ……

 

だがガキ共も悪い奴らじゃあねえ。俺の蘇った贖罪と守護の精神を舐めんじゃねえぜ。

 

一応この幌馬車にほど近い距離で向田の会話を聞いちゃいるが、向田のスキル関係の情報の他はとにかくまあこの国がヤベぇってこと、さっさと離れた方が健全な選択だってことだろうな。

 

 

 

そこからしばらく馬車に揺られる向田達を眺めていれば、最初の目的地であるキールスに到着した。良くも悪くも牧歌的な町だな、俺としちゃ嫌いじゃねぇぜ。

 

 

 

【運行停止中】

との張り紙が国境を越えるはずの馬車の情報看板に貼り付けられていやがる。

 

「……ウソだろ?マジかー……」

 

『フン。あの王は余程ヒトっつう資材をよそにやりたくねぇと見える』

 

「えっ、まさかもう国境が?」

 

『どーだろォなぁ……だが、ここの人間にそこまで緊迫感ってやつはねぇようだぜ』

 

「んん?確かに……そんなことになったら街もこんなに落ち着いてないよなぁ……」

 

ぐぅう……

「あッ」

 

ククク。良いことじゃねえか、人間は生きてりゃ腹が減るんだ、()()()()()()()()()()。なんも間違ったことも恥ずかしいこともない。そうだろ?

 

「取り敢えず腹ごしらえも兼ねて、色々話聞いてきます」

 

『良いじゃねえか、荒くたが来りゃァ俺が止めてやる。任せたぜ』

 

向田は日本人にしちゃ引っ込み思案なところがないからなァ、情報収集は得意に見える。国籍どころか世界が違う人間に躊躇わず話しかけられる日本人。いやあ、社会の波に揉まれましたってかァ?日本人は地球人の中じゃ好きな方だが(前々世だし)、労働社会の偏屈さだけァ不健全に過ぎる気がするぜ。

 

にしてもこの“冒険者”達、美味そうに呑むなァ……。飯の味なんざ数万年前に忘れちまったが、そんなに心を揺さぶれるモンだったかねぇ。ちっと気になるじゃねえか。ま向田の金を使うわけにもいくまいし、別に良いがな。

 

「あのー、ベリアルさん」

 

『ん?どうした。飯は食い終わったみてェだな』

 

「あ、はい。それと今後の方針について相談があるんですけど」

 

『そうか。もちろん構わねぇが……ここはちと人目につく、お前も一人で喋るおかしな奴だと思われたくなきゃ路地裏行くぞ』

 

「アッ」

 

俺が見えねーってこと失念してたっぽいな。優秀な奴だと思ったが、存外抜けてるところもあるっつうワケだなァ。

 

「そ、それでなんですが」

 

向田の話を纏めると、隣国のフェーネンつう国に行きたいが、向田一人では無理そうだから冒険者を雇うことを思いついた。

しかし、この俺がいるならもしかして雇わずに国境を渡れるかもと思って聞きたかったと。

 

『純粋な戦力だけで考えりゃ余裕だがな』

 

「おお、それじゃ」

 

『待て待て。お前はあの王の元から“無能”を装って逃げてきたんだろ?もし監視がついてりゃの話だが、護衛も連れずに強行する力があるって思われるのァ……ま俺が目眩しになるが、ちと気になるだろ?それになにより一番の問題が──』

 

「(ゴクリ)」

 

『俺に土地勘がねぇ』

 

「……あー」

 

 

いや、まァ上空に昇って見渡しゃ行きたい方向くらいは判るだろォがな。だがそれだと向田が歩みやすい道を判別するのは無理だ。一番楽なのは()()()()()行くことだが……身体を使われるっつうのは向田も嫌だろ。

 

『ま、つーわけでお前の言う通り冒険者は雇ったら良いんじゃねェの?勿論、最悪俺たちだけでも行けねぇことはねぇがな』

 

「納得です。金はかかるだろうけど、ここでケチってもしょうがない、ちょっと行ってきます」

 

『おォ』

 

 

 

 

 

 

どうやら無事に依頼を出せたようだな。向田と行くなら俺も手っ取り早く金を稼ぐ方法としちゃ冒険者っつーのはアリなのかもなァ。

 

「さて……あとは旅に必要そうなものを揃えとかないと」

 

『あァ、寝具とかか?食材はお前のスキルで調達できるんだったっけなァ』

 

「そうですそうです」

 

 

 

 

 

 

 

 

宿に戻った後は、向田が事前に食料なんかを購入してアイテムボックスとやらに収納していた。……便利そうだなそれ。んでひとまずはやることもやった。あとァちゃっちゃと護衛してくれる冒険者が見つかりゃ良いんだがなァ。

 

『冒険者が見つかったら、その日から俺も姿は見せておくぜ』

 

「あ、はーい」

 

俺のこの黒い肌やらなんやらがちと不安だが……まあ人間以外の種族もいる世界だ、ゴリ押せるだろ。

 

 

 

 

 

 

 

俺たちはその翌日には俺たちの護衛をやるっつう冒険者と対面していた。フーン、案外あっさり見つかったなァ。良かったじゃねえか向田、さっさと国を出れるみてェだぜ。

 

「どうも。“鉄の意志(アイアンウィル)”のリーダー、ヴェルナーだ。あんたが依頼人か?」

 

「はい。私と彼が……私はムコーダといいます」

 

「俺ァベリアルだ。よろしく」

 

「宜しく頼む」

 

「こちらこそ」

 

礼儀のしっかりしたチームの様だなァ。装備品にもガタがねえように見えるし、こりゃ当たりの冒険者を引いたんじゃねえか?

 

「ベリアルさんの方は随分強そうだが……護衛が要るのか?」

 

「雇いたい事情があってなァ。ま、俺がこの辺りの土地勘に疎いっつうのもある」

 

「なるほどな。道中は任せてくれ」

 

「頼りにしてるぜ」

 

「そうだ、メンバーを紹介しよう。剣士のヴィンセント、斥候のリタ、魔法使いのラモンに回復役のフランカだ」

 

「よろしく」

 

五人パーティか。男女混合っつうのは尊敬すんぜ、男女関係のトラブルが起きてねぇんだからな。

 

どいつも気の良さそうな面してやがるが、かと言って実力が伴わねぇワケでもなさそうだ。ヴェルナーの腕はその大きな盾を操る為の筋肉でできた太い腕と傷跡が物語ってやがる。

 

「よし。それじゃあフェーネン王国へ──出発!」

 

 

 

 

 

 

街道を越え、周りには鬱蒼とした木々が見え始めてやがる。斜面も増えて、いよいよ国境を阻む山を越えようかというところだ。

 

「ムコーダよ。お前革靴で山道って大丈夫なのかァ?」

 

「じ、実は結構……」

 

「あら。厳しかったら言ってくださいね、回復魔法なら痛みがスッと取れますわ」

 

「ありがたいです……」

 

ったく、我慢せずに言えってんだ。余計な我慢は良いことねぇぜ?なにより道行も悪くなって、自分の首を絞めることになるからなァ。

 

「いざとなったら背負ってやらァ」

 

「そういうベリアルさんは余裕そうだよな。なんか冒険者みたいなことしてたの?」

 

「ん、まァ……国の警備みてぇなことを少しやってたぜ」

 

「へぇー!エリートじゃん!ねぇねぇその国ってどんなとこだったの?」

 

「こらリタ!依頼人の事情に踏み込むんじゃない!」

 

俺の居た国(光の国)がどんな国、なあ……ハハ。あァ、良いところだったぜ。

 

「気にすんな。別に隠してるワケでもねぇ……ああ、すっげェ良い国だったぜ?国の奴らは皆んな明るくて気のいい奴ばかりだった。親友もいたぜ、真面目な奴がな」

 

おいおい黙るんじゃねーぞ?空気がシケちまうじゃねぇか。確かに郷愁を漂わせたのは俺だが、別に今元気なんだから良いだるォォ?

 

「この辺りでどれほど通用するかはわからねぇが、俺ァ棍術を嗜んでてなァ」

 

「へぇ、珍しいっすね」

 

「手合わせしてみるかァ?」

 

「いやーどーしよーかなー強そーだしなぁー」

「ククッ」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

ベリアルさん/魔力の姿

*1
真っ黒な身体から目を逸らしつつ




チンピラみたいな口調ですが、前世では彼もそれなりの地位に上り詰めました。親友だったケン(ウルトラの父)は隊長──全体をまとめる長でしたが、ベリアルも部隊を率いる様な立場でした。

戦う際も相手に容赦というものがなく、精神的な余裕も感じられずカリスマはあまりありませんでしたが、それでもその容赦のなさは仲間の為と理解されており、また部下想いな人物として皆にちゃんと慕われていました。

原作ではマリー(ウルトラの母)に恋し、その上でケンに掻っ攫われるベリアルの失恋ですが……いくら頑丈になっているとはいえ、精神は人間の頃の影響を受けています。ウルトラマンの容姿は恋情を向けるには前世と違いすぎました。更に数万年も生きていると、己の性別も自分の中ではあやふやになっていました。

現在はかろうじて言動は少し男寄りですが、別の星に赴いて人間体に擬態する際は状況に応じて女性の体と男性の体を使い分けていました。この世界では威圧感を感じさせる様な男の姿に変身。この擬態は魔力を用いてのものなので体が無彩色の黒ですが、過去の擬態ではきちんとその場の人に馴染む肌の色を選んで擬態していました。

戦闘力としてはケンにあまり劣っておらず、勝負の勝敗はいつも精神的な強弱で決まっていました。徒手格闘もしますが、彼は主に武器を用いた戦闘を鍛えておりました。棍を主に、剣類、槍類、時には銃と、まさになんでも使いこなしました。武器術の指南役にまでなるほどです。

そうして確かに多くのウルトラマンに慕われていたベリアルですが、慕われていたからこそウルトラマン達のショックは大きく、更なる動揺を誘いました。レイブラッドとプラズマスパークの強大な力と、ウルトラマン達の精神的な動揺が期待できる素性。宇宙に数多存在する凶悪な者たちの格好の餌食になってしまいました。

深い後悔に苛まれるウルトラマン達を嘲笑うかのように──ベリアルの遺体はやはり、盗み出されてしまいました。

彼の身体は今もなお、平穏に暮らしていた遍く宇宙の住人に最悪の皇帝としてその恐怖を刻み込み続けているのでしょう。








あ…………
あの………………
出来たらでいいんで……
評価お願いします……

パソコン壊れてデータ飛んで死にそうなってたから読んでくれる人が少しでもいるのがめっちゃ救い
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