グラスキャノン   作:ピローマンサー

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選択肢

3010年1月29日 午後3時21分 ドロップシップ “プライベティア” 医務室内

「うぅ…」

僕はうめき声を上げながら目を覚ました。

 

「知らない天井」

目に映った最初のものを自分に言い聞かせるように口にする。

視線を落とし、自分の体を見る。腕には点滴が打たれている以外は至って普通だ。

 

「…ここどこ?」

いろんな質問が僕の頭の中を駆け巡る。そんなたくさんの問いの中でダントツで一番気になるのは…

「なんで僕は生きてるんだ…?」

意識が暗闇に呑み込まれる前、確かに僕自身でライフルマンのコックピットが斜めに打ち出されるのは見た。過去に敵のコックピットのイジェクトシステムに同じ不具合が生じたのを見たことがある。が、その時の残骸を回収しに行った時、パイロットは、いや、パイロットだったものは酷い有様になっていてのは覚えている。

 

自分が今どのような状況に放り込まれているのかを把握しようと必死に思考を巡らせていると、僕がいるベッドの左後ろの鉄扉がゆっくりと開いた。

 

 

扉からは大柄な一人の男が入ってきた。

男は白髪で、顎ひげを伸ばしていた。さらに、着ているパイロットスーツはかなり使い古されているようで、かなり汚れている。パッと見たところ50〜60代ぐらいに見えた。

「やっと起きたか」

男はそう僕の方を向くと言い、僕のベッドの前まで歩いてきた。

 

「あなたは?」

僕は少し起き上がりながら、しかし警戒しながら言った。

 

「めんどくせぇな…」

男は僕が取った態度に明らかにイラついている様子を見せた。

 

「…ったく。何でよりによってこんなガキなんだよ」

そう少し、僕に向かって文句を言った。すると、少し頭をかいた後、言った。

 

「お前にこれから二つの選択肢をやる」

男は僕の目をしっかりとみながら言った。

 

「…はぁ?」

意味がわからない。知らない場所で寝てたと思ったら急に選択肢をやるとか意味がわからな…

 

「一回しか言わないからよく聞け」

男は急に腰のホルスターに手を伸ばしたかと思えば、拳銃を取り出したかと思えば、僕に向けた。男の両目は開いているが、しっかりとその銃口は僕の眉間を捉えていた。

 

「そ、それは?」

僕はさっきまでの警戒するような声ではなく、内心怯えながら震え声で声で言った。

 

「ここで今すぐ俺に頭を撃ち抜かれて死ぬか…」

 

「俺のために死ぬかだ」

 

「……!」

そう男が言い切った瞬間。僕はさらに混乱した。

こいつのために死ぬ?こんな顔を合わせてたかが数分の、何も知らないやつのために?そんなの冗談じゃない!

 

「決めるなら早めにしろ」

 

「………」

どうする…!?いや、ここは今生き延びるためにもこいつに従った方がいいんだろうけど…だけど“本当にこいつのために死ぬ“って言ってもすぐに死なない保証はどこにもない…本当にどうするべきなんだ!?

 

「10、9、8、7、6…」

男がカウントダウンし始める。

 

「分かった!分かったから!」

 

「何が?」

 

「あんたが言ったようにあんたのために死んでやるよ!」

 

「…ふん」

男は浅くため息のようなものをつく。

 

「本当にいいんだな?」

 

「もう何でも言い!生き残れるなら全部クソ喰らえだ!」

 

「…随分とまた威勢がいいやつだな」

男が銃を下ろす。

 

「が、悪くない」

男の顔が緩む。

その顔はさっきまでとは同一人物と疑うまで違い、少し優しそうだった。

 

「…え?」

男のあまりの変化に素っ頓狂な声が出る。

 

 

「そういえば自己紹介がまだだったな」

男が言う。

 

「俺はフリゲートだ。この船、プライベティアと部隊のキャプテンをやらせてもらってる」

 

「フリゲート…?」

名前がフリゲートなのか…?だとしたら随分と物騒な名前だな…

 

「さてと自己紹介も終わった事だし。お前、コールサインは?」

 

「コールサイン…?」

 

「あぁ、ここだと…」

 

「コールサインでお互いの事を呼ぶからね」

いつのまにか部屋に入っていた一人の若い女性が言った。

 

「ラグ…お前ってやつは…」

 

「まあ良いじゃないですかーキャプテン」

 

「はぁ…」

 

「で、ほら。君、コールサインは?」

女性が僕の方を見て言う。

 

「え、ぐ、グラスです…」

 

「グラス?」

 

「それはまた変なコールサインだな」

 

「……」

グラス

実際変なコールサインだと自分でも思う。元はと言えば僕が乗っていたライフルマンの腕部あたりに書いてあった落書きから取り、少佐が僕につけたものだ。

今思えばあの機体に乗る人に向けた悪口だったのかもしれない。

 

「あ、ごめん!私はラグ。よろしくね!」

 

「よ、よろしくお願いします…?」

 

「おい、ラグ。まだこいつには説明しなきゃなんないことがあるんだ。どっか行ってろ」

 

「はーい」

そう返事をするとラグと名乗った女性はどこかへ走り去って行った。

 

「はぁ…邪魔が入って悪かったな」

フリゲートが僕に向き合う。

 

「あの…ここってどこですか?」

僕はずっと気になっていた事を聞いた。

 

「ん?どこって…」

  

「宇宙(そら)だよ」




ちなみにキャプテンの名前、「フリゲート」は戦艦の一種類です。
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