「…虐殺…か…」
数分前にフリゲートに言われた言葉を僕以外他に誰もいない暗い空間で呟いた。正直今までそんなことをしようとも思ったことはないし、こんなことになる前はむしろその逆の仕事をしていた。急にそんなやりたくもない事をしろと言われてもできるわけがない。
「はぁ……」
どうするべきなのかな…でも今ここで死ぬとあっちにも悪いし…
少し考えた後、僕は来いと伝えられた“ベイ4“なる場所に行ってみることにした。
これから僕がやらされることは残酷で酷いものだろう。でもそれが「私」の方の自分の生存に繋がるなら「僕」はなんでもする。それが約束だから。
決心した僕の足取りはいつもよりは重かった。
部屋から出るための鍵はかかっていなかった。
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「ベイ4って言ったって知ってるわけないのに…」
部屋を出て、船のメンテナンスが行き届いていないのか5秒おきに点滅する照明に視界の邪魔をされながら真っ直ぐに歩き続ける。
いまだに船の見回りをしていそうな人物には遭遇していない。
この船の警備雑過ぎない…?現に捕虜が僕がこうも簡単に船の中を自由に行き来できているし…。この船の人たちは一体何を考えてるんだろう?
今まで暮らしてきた環境とのあまりの違いに、一歩進めるごとに違和感が増す気がした。が、この船がただの船ではない海賊船なのだから違くて当たり前だと自分に言い聞かせながらこれが海賊という彼ら、彼女らの生き方を表しているのだと言う事を実感した。
「おー!こんな場所を誰が歩いていると思ったらガラスくんではないですか〜!」
「あ、あなたは確か…」
薄暗く感じてきた廊下のせいかあるいは突然自分のコールサインを呼ばれことに対する緊張からなのか僕は少しびくつきながら後ろを向くと、そこには名前こそ出てこないが見覚えがある女性が僕の方をじっと見つめながら立っていた。
誰だっけ?
「ラグだよ、ラグ。もしかして覚えてないの?」
「ラグ…?」
そういえばそんな人もいたなと言いそうになったが、なんだか言うとまずそうなことになる予感がしたのでひとまず言葉を飲み込んだ。
「その感じ覚えてなさそうだね…。ふふ」
「うぅ…」
ラグは自分があまり覚えられていない事を残念そうな素振りを一瞬見せた後、少し笑った。目が笑っていないその笑顔は点滅する電灯の下では少しホラーに見え、無意識に半歩下がってしまった。
地味に怖い。
「ところでこんなところで何してたの?」
変わらず笑顔を顔に浮かべながら一歩ずつ近づいてくるラグが聞いてくる。
「えっと…ベイ4?に行きたくて…」
「ベイ4?それなら…」
「え?わわ!?」
いつの間にかすぐそこまで近づいていたラグに僕は手を掴まれると体が宙に浮きそうなほど強い力で反対方向思い切り引っ張られた。
力強くない!?今僕空中に投げ出されそうになったんだけど!?
「メックベイなら船の下側に固まってるから降りないとねー」
「そうなんですね…知らなかったです」
「まあ君なんかが知ってる訳ないんだけど」
「……」
ラグについて行くと、大きめのエレベーターと階段があった。
「これでとりあえず下に降りれるよ。これからここで生活するなら覚えて置いてね」
「は、はい」
いまだに慣れないテンションの上下が激しい彼女にたじたじになりながらも僕たちはエレベーターに乗った。
「ひぃ!?」
「ん?もしかして怖いの?」
「い、いえ…。」
ガコンと今にも壊れそうな鈍い音を立てて動き出したエレベーターに思わず情けない声を出してしまったが、それ以外は相変わらず点滅する電灯以外は特になくラグの言う”ベイ4”に辿りついた。
「あ。船長だ」
ラグがタブレット端末をいじるフリゲートをメックベイにいるフリゲートを見つけた瞬間幼い子供のように彼に走って行った。
「やかましい。隊長か船長かどっちかにしろ」
「別にどっちでもいいじゃないですか〜」
くねくねしたように喋るラグに呆れたように返すフリゲートの2人の様子を少し遠くから見ていると、フリゲートがこちらに気づき僕に向かって「こっちに来い」と手招きをした。
「…!!」
背筋がゾワっとするのを感じながらも僕はフリゲートの方へ歩いて行った。
「遅い。殺すぞ」
「え、えぇ…」
困惑する僕の頭上にはLCT-1V、ローカストが整備され終えた状態で新しいパイロットを待っていた。
もっと頻繁に更新する事を目指していきます…どうぞこれからもよろしくお願いします