傲慢たれ罪の王《リメイク》   作:もちゃもちゃの玉ねぎ

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お久しぶりです。前回エタってしまったものをリメイクしました。今回は頑張ります。


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____5年前

 

中学1年生の夏、父と母に連れられ異国の地にやってきた。

父と母は紛争地帯を周り、負傷した人々を治すことを生き甲斐にしている医者だった。そんな2人は俺の誇りだったし、憧れだった。

異国の地を訪れ、半年程経った時、悲劇は起きた。

突如、天使が舞い降りた

その天使は全てを破壊した。

建物を破壊し、戦争を破壊し、文明を破壊し、人々を破壊した。

父も、母も、患者達も死に絶えた。

生き残ったのは俺だけだった。

死にたくなかった、

ただ、ただ、死にたくない、それだけだった。

逃げるのをやめた、立ち向かった、正面にたった瞬間理解した。

圧倒的強者、美しいまでの絶望、己など、この怪物の毛1本にも適わないと。

その時、自分の中で何かが切れた。

無我夢中、乾坤一擲、そんな言葉では生ぬるい、己の総てを出し切った。

 

そして、地面に倒れた。

 

 

 

 

 

 

「………まさか、……まさかこの我が人風情に、それも年端も行かぬ小童に破られようとはな。ククク、クハハハハハハハハ!!!」

心の底から愉しそうに笑う神。ただの中学生だった彼が出会った、何よりも美しく、傲慢な神。漆黒の羽、諸人を平伏させる威厳を持つ美しき男神。

その胸には錆びた剣が突き刺さっていた。

人生で最も濃厚な、この先どれだけ長生きしても決して忘れられないだろう時間。

それもいま終わり―――否、始まろうとしているのだ。

簒奪の宴が。

 

「なんとも面白き小童よ。汝の幸運と汝の欲望。

何よりそのこの世の人間の誰よりも傲慢な小童にこの我が敬意を示そう。」

 

「ふふっ、ルシファー様ったら討たれたというのに嬉しそうでいらっしゃるわね」

 

「おお、汝が噂に聞く全てを与える女神か。汝が此処に居るということは、愚者と魔女の落とし子を産む暗黒の聖誕祭が始まるのだな!」

 

「ええ、あたしは神と人の狭間に立つ者。あらゆる災厄と一掴みの希望を与える女なのですから!

新たな息子を迎えにいく労を惜しむことはありませんわ」

 

新たに現れた女は一度言葉を切り、愛おし気な声を無残に横たわる人の子へと向ける。

 

「貴方が私の七番目の義息ね。ふふ、ルシファー様の神力は貴方の心身に流れ込んでいるわ。今貴方が感じている熱と苦痛は貴方を魔王の高みへと到達させるための代償よ。甘んじてお受けなさい」

 

甘く可憐な美声が耳朶を打つ。激痛と灼熱感で意識は切れ切れとなっていても分かる誰よりも『女』を感じさせる声。誰だ、と疑問が浮かんで答えを結ばずに消えていく。

 

「さあルシファー様、この子に祝福と憎悪を与えて頂戴! 魔王となり地上に君臨する運命を得たこの子に、聖なる言霊を捧げて頂戴!!」

 

「ククク クハハハハハハハハ!!!!!良いだろう!!良いだろう!!ならばこの我がこの小童に、いや佐条 黎斗に、祝福を与えよう!!______新たなる神殺しよ!!貴様は我が傲慢と金星の権能を簒奪し、神殺しとなる。誰よりも傲慢であれ。貴様が得るであろう権能はこの我の力、主に矛を向け、破れさりながらもそれを否定し、虎視眈々と未だその座を狙い続ける傲慢な者より簒奪したものだ!その者が敗れ去ることなど絶対に認めん!誰よりも傲慢足りえれば貴様は永遠に勝者となるだろう。これから先、貴様には乗り越えなければならない出来事が否応なく迫ってくるだろう。 何度も言うが、傲慢であれ!

我が愛し子よ!!」

 

この言葉を聞き終えると同時にルシファーは消え、意識を失った黎斗の身体のみが残った。

 

 

____これが後に罪王と呼ばれる王の誕生である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我々が!!我々が何をしたというのですか罪王よ!!!!!」

中年の男が顔から涙や汗、唾をごちゃまぜにしたような体液を飛ばしながら叫ぶ

その眼前には、少年期を過ぎ、青年の姿へと成長した黎斗が立っていた。

「________安心しろ。お前たちは”俺には”何もしていない。」

 

「ならば、なぜ、、、?」

困惑した顔をして男が呟く

「”俺以外”にお前たちは何をしてきた?孤児達を使った人体実験。自らの組織以外の人間を人間と認めない傲慢さ。

なぜ貴様ら程度の猿がそこまで傲慢になれる?心底不思議でならない。この世に、俺よりも傲慢である者など存在してはならない。

お前たちは猿の分際で俺を不快にさせた。 お前たちが死ぬ理由はそれだけで十分だろう?”死ね”」

 

「待っ!!『グキャ』」

男は潰された蛙のような声を出して息絶えた。

 

 

黎斗以外が物言わぬ亡骸になり、静寂が広がった直後、ポケットの中のスマホが震える。

「、、、甘粕か。」

電話の相手の名は甘粕冬馬。日本の呪術業界を統括する正史編纂委員会のエージェントであり、黎斗が人と認める数少ない人物である。

「あぁ!佐条さん。やっと出てくれました。犯罪に手を染めていた魔術結社の殲滅は完了したようですね。」

 

「あぁ。今組織の長を殺したところだ。」

 

「それは、それは、お疲れ様です。ほんとに助かりましたよ。その組織は最近では孤児だけでなく片っ端から子供をさらっていたんですよ。」

電話越しだが、彼が心底安心した顔をしているのが伺える。

 

「それはそうと佐条さん。恐らくまつろわぬ神であろう呪力が観測されました。」

 

「なるほど。何処だ?」

変わらぬ無表情のまま黎斗が問う。

 

「三重県、花窟神社です。」

 

「なるほど、伊邪那美か。」

僅かだが黎斗の口が歪む

 

「すぐ戻る。準備しておけ。」

 

「王の仰せのままに。」

 

 

 

 

あの日、俺が神を初めて殺した日から俺の人生は大きく変わった。

普通の中学生ではなくなり世界を支配する王の1人となった。

王として生まれ変わり、様々な地をまわった。その旅で度々神と出会い、弑逆し、魔術師からは罪王と呼ばれ始めた。恐れ、敬い、跪く者が絶えなかった。

 

最初はそれが心地よかった。

人々が自分を見上げ、祈りを捧げる光景は、確かに快感だった。

 

だが、次第に視界は歪んでいった。

巡った都市や村で見たのは、祈りの裏で交わされる取引――人身売買の暗い輪、子供たちが安値で取引される市場、白衣の者たちによる人体実験の痕跡だった。

魔術を使えない者を下等種と嘲る者、力を持たぬ者を蔑む笑い、親が金の為に子を差し出し、兄弟が金のために手を染める光景。

跪く者は表情を変えると同時に裏で刃を研ぎ、助けを乞う声は紙屑のように扱われ、誰の耳にも届かない、いや、聞こえない振りをしている者たちばかり。

 

――ああ、もういい。

これが人なのかと問うたところで、答えは出ない。

醜い心しか持たない、ギャーギャーと騒ぎ立てる猿しかいない。

 

その日から、俺の中で何かが冷え切った。

人を守ることも、救うことも、もうどうでもよくなった。

 

だからこそ、人を超越する力を得た俺が、傲慢な猿どもを、人から獣に落ちた下等種共を救うのでは無く、罰しなければならない。

傲慢を司る神を弑逆した俺には相応しい責務だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あっ!佐条さんこちらです!」

甘粕が車へ黎斗を案内する。黎斗はそれに従い車に乗り込む。

甘粕が運転席に乗り込み車が発進する。

 

 

 

 

 

「現場まであとどれくらいだ?」

待ちくたびれたのか黎斗が甘粕に尋ねる。

 

「近場の空港まで飛ばしてあと数十分、そこから飛行機で1時間、そこからまたまた車で数時間ほど着くのは深夜になるでしょうから貸切にしてあるホテルがありますのでまずはそこに。」

甘粕はうわー苛立ってるなぁーと考えながら明らかに不機嫌で組んだ手を指でトントンとしている黎斗の問いに答える

 

「チッ急げよ。」

 

 

「―――承知しました。王の仰せのままに」

 

うやうやしく頭を下げる甘粕。

ある程度の情報交換を済ませてしまえば特にやることも無い黎斗はさっさとシートを傾け寝入る体勢に入る。神の類が出てきて穏当に終わったことなど一度もないし、今後も有り得ないだろう。今回も厄介事になることは確実であり、そのために体力は温存しておいた方が良いだろうという考えのもと、黎斗は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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あれからいくつかの交通手段を使いホテルにつき、それからすぐに甘粕も黎斗も寝入ってしまった。

 

 

 

 

 

「佐条さん。起きてくださーい。」

寝ている黎斗を甘粕が恐る恐る起こす

 

「………………”あぁ”?」

 

「相変わらず寝起きが悪いですねー」

甘粕は肩を落としてトホホと嘆きの笑いを零す。

 

 

 

 

 

 

 

_____数時間後

黎斗と甘粕は花窟神社に到着した。

外見はいつもと変わらないはずの花窟神社から普段とは確実に違うほどの重い気配がひしひしと伝わってくる。

 

「佐条さん呪力を感じますか?」

 

「あぁ。凄まじい圧力。流石は日本の母神。と言ったところか。」

クククと笑いを零し黎斗が呟く。

 

「伊邪那美についての逸話は?」

 

「もちろん知っている。もう行って良いか?あっちも俺が来るのを待ちわびているようだ。」

黎斗の体が神と戦いたいとうずうずしている。その姿はさながら我慢が出来ぬ子供のようであった。それには理由がある。神殺しの肉体は神を知覚すると力が湧きでてくる。今の黎斗の肉体はまさにその状態であった。

 

「もちろんです。ご武運を。」

そう甘粕は言い、頭を下げた。

黎斗はそれからは何も言わず神がいるであろう神社に向かって飛び去った。

 

 

 

 

報告で聞いた通り伊邪那美は日本の巫女服のような物を身にまとい、頭には鏡のようなものを身につけている。容姿はこの世の者とは思えぬほど美しく、”美”というものを体現していた。

 

目を瞑っていた伊邪那美がその瞳を静かに開け、それと同時に口を開く。

 

「妾の招待に応じ、よくぞ参りましたね神殺し。妾の名は伊邪那美。この日ノ本の産みの親。この地に住まう人の子、全ての母であります。」

伊邪那美は優しく微笑みながら美しい声色で囁く。

 

「 ”知ったことか”そんなことに興味はない。この地の猿共の産みの親?だからどうした。なんだ?それを言えば俺がお前のことを母とでも呼ぶと思ったか?俺にとって人など気に入った者を除いてゴミ、道具以外の何者でもない。

あぁ、確かにお前に礼を言わねばな。ありがとう俺の道具を産んでくれて。」

黎斗が伊邪那美を挑発するように腹黒い笑みを浮かべ、言い放つ。

 

 

「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふなんと傲慢なことでしょう。良いでしょう!良いでしょう!この伊邪那美が貴方を殺して差し上げましょう!!この世の者とは思えぬ惨いやり方で殺して差し上げましょう!!」

 

 

 

 

 

日本の母神と日本初の魔王と対決が始まる

 

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