ナリタブライアンはエリートの集まるトレセン学園においても、飛びぬけた実績と強さを誇っている。
三冠という輝かしい実績が何よりの証だ。
しかし、彼女には悩みがあった。
それは、男勝りな見た目と性格のせいで、女子生徒からの視線が妙に熱いということ。
世界線が違えば、周りも違う
このトレセン学園において、ナリタブライアンという存在は
云わば、群れの中に紛れ込んだご馳走
肉食獣どもが理性を失うのも、無理はなかった。
男性の減少に伴い、自然と恋愛のベクトルが多様化してきた弊害でもある。
「ブライアンさんの背中を見るとパトスが溢れだしそうなのよね~」
「抱かれたいウマ娘ランキング、ナンバーワンは伊達じゃないわ」
(……ぐあああああ!お前ら、私をそんな恋愛対象としてみるなあああああ!)
そんな内心を胸の内で飲み込みつつ、ブライアンはいつも通り寮の廊下を歩く。
が、視線は刺さる。
肉食獣の檻に放り込まれたウサギの気持ちも、今なら分かるナリタブライアン。
しかし、背後をつけ狙う厄介な存在は彼女たちだけではない。
最も厄介な存在、サクラローレル
彼女のアプローチは、もはや事件性があるレベル。
寝る時は勝手に布団に潜り込んでくる。
飯を食えば、当然のように隣をキープ。
風呂に入れば、いつの間にか背中を流してくる。
(※無断で)
貞操の危機を感じたことは一度や二度ではない。
「ブライアンちゃんの身も心も、全部ワタシのものだよ♡」
そんな囁きを何度も浴びせられ、もはや精神は擦り切れそうだった。
流れでOKしてしまおうかと考えたこともあるが、
ブライアンも一応“女”である。
恋愛の対象はあくまで“男”だ。
「私だって……普通の恋がしたいんだよ!」
それが幻のポケモンの色違いと遭遇するレベルだとしても、ブライアンには譲れない一線があった。
そんな中、最近どうにも気になることがあった。
同じチームのサイレンススズカ。
――あいつの様子がおかしい。
練習では集中が途切れるし、タイムも安定しない。
声をかけても上の空で、「大丈夫です」としか言わない。
人には人の事情があるので、ブライアンは特に深く追及しなかったが、
ある日気づいてしまったのだ。
トレーナーと話している時の若干上ずった声。
頬を染め、視線を泳がせ、挙動不審の様子。
それは、まるで恋する乙女そのもの。
(……いやいやいや、待て。
まさか、そういう方向に突っ走ったのか?)
と思わず疑ってしまうのも無理はない。
今どき女性同士の恋愛も珍しくもない。
セイウンスカイとニシノフラワーの仲だって、もはや公然の秘密だ。
とはいえ、スズカがそっちに目覚めたとは考えにくかった。
彼女は昔から、男性と結婚したい派閥のウマ娘だった。
男に興味がないフリをして、恋愛小説をこっそり読んでるのも知ってる。
つまり、性癖はノーマルだ。
(……となると、必然的に疑うべきはトレーナーか)
チームのメンバー全員をG1勝利に導いた敏腕トレーナー。
彼女の私生活は、実はメンバーの誰も知らない。
休日に何をしているかも不明であり、ブラックボックスに包まれている。
しかし、ナリタブライアンの勝負勘が告げていた。
あのトレーナーに秘密があるではないのかと
そして、スズカの不自然な変化。
ブライアンの中の探偵スイッチが入った。
勘が囁くのだ
“真相を暴け”と。
普段は追われる側のブライアンだが、この時ばかりは追う側に回った。
三冠を獲ったウマ娘は伊達ではない。
走りもストーキング技術も超一流、それがナリタブライアンである。
「ちょ、ちょっと待てええええええええ!!!
ス、スズカ!?
お前、その隣のバチくそイケメンは誰だぁっ!!」
精一杯のおめかしをして初デートに臨むスズカ
それを邪魔する悪い先輩が其処には居た。