トレセン学園が誇る破天荒ウマ娘――ゴールドシップ
その名前を聞くだけで、10人中12人が「ああ、あのバカか」と答える。
ゴルゴル星に招待され、被害を被ったウマ娘は数知れず。
そんな彼女に、ある日予想外の一言が降ってきた。
『休日にお出かけしないかしら?』
発言者:トレーナー
状況:平日の昼
(…… 耳が壊れたか? “外出禁止”の聞き間違いじゃねーのか?)
ゴルシちゃんの脳内は混乱状態だった。
これまで幾多の騒動を共にしてきた(一方的に巻き込んだ)仲とはいえ、休日に“お出かけ”に誘われるのは初めての事態。
何か裏があるに違いない――そう思ってゴルシちゃんは調べてみた。
だが、彼女の得意分野である詮索は通じなかった。
ネットで名前を検索しても、出てくるのは「アクセス拒否」の文字。
跡を付けて電子ロック付きの施設に潜入を試みたが、三重のセキュリティの前に敗北を喫した。
「くっそ、あのトレーナー、経歴どころか名前すらヒットしないとか、どんなラスボスだよ……」
それでも、約束は約束だ。
ゴールドシップは意外と時間に律儀なウマ娘である。
待ち合わせの15分前には、駅前の噴水広場に颯爽と到着していた。
「ゴルシちゃんを顎で使おうなんて、百億年早いぜ!
今日は馬車馬のようにこき使ってやるか~!」
鼻を鳴らして胸を張る。
だがその背後から、妙なざわめきが近づいてきた。
通行人たちが道を開け、視線を向けた方向――
黒服のボディーガードたちに囲まれた一団がゆっくりと歩いてくる。
最初は見物人のひとりとして眺めていたが
その一団がそのままゴルシの目の前に立った瞬間、時が止まった。
「お待たせいたしました、ゴールドシップさん。
さあ、お出かけに参りましょうか」
「……………ふぇ?」
あまりの衝撃に、思わず顎が外れかけたゴールドシップ。
目の前には、妄想の世界ですらお目にかかれない
――絶世の美男子がそこには居た。
神が気まぐれで創りかけた芸術作品を、間違って人間界に落としたような存在。
女性なら拝観料を払ってでも、ご尊顔を賜りたいと思うレベル
そんな神の使徒のような男性を前に、ゴールドシップは過呼吸に陥りそうになった。
「あ、あの……人違いじゃ、ありません?」
思わず敬語を使うゴールドシップ。
ゴルシちゃんから丁寧語を引き出したのは、彼が史上初である。
「つれないですね、私ですよ。
こうすれば、わかりますか?」
男は軽く咳払いし、声色を変える。
『ゴールドシップ、いつも将棋指してないで練習に参加しなさい』
どこかで聞いたことのある声質。
しかし、それを結びつけるのがこれほど恐ろしいと感じたことはない。
「……と、トレーナー……なのか?」
彼はにっこりと微笑んだ。
その笑顔だけで、ゴルシちゃんにクリティカルダメージを与えた。
➤トレーナーの防御貫通攻撃
➤ゴールドシップに564ダメージ!
HP 残り1 (気力)
「いやぁ、最近の技術はすごいですよね。
三十分もあれば特殊メイクで女性に変装できますし
ウマ娘の鋭敏な嗅覚を誤魔化す香水もあるんですから」
さらりととんでもない事実を口にしてのける目の前の男性。
ゴルシちゃんは完全に混乱していた。
「さあ、時間は有限です。
今日はあなたのために時間を設けましたから」
そう言って、ボディーガードに囲まれながら手を差し伸べてくるトレーナー(トゥルーフォーム)
ゴルシちゃんは、流れに逆らえなかった。
後日。
普段の奇行が鳴りを潜め、トレーナーの指示にも素直に従うゴールドシップの姿があった。
その異常事態に、学園は軽いパニックを迎え
「明日は空から錨が降ってくる」
と騒ぐ生徒が続出した。
ゴールドシップが真面目に学園生活を送る
それすなわち、“不吉の予兆”である。
コメントして下さった方、有難うございます。
実はこっそり覗いてます。
リアルが落ち着いたら、ゆっくり返信していきます。