出生率の狂った世界線の美男子トレーナー   作:鼻毛王

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カレンチャン 4

 

ウマ娘界のインフルエンサー、カレンチャン。

 

そのフォロワー数は、実に三百万人を超え

もはや下手な著名人よりも世間の知名度は高い。

 

ちなみに自己紹介文は

 

Currenこと、カレンチャンでーす!

世界を“カワイイ”で包んじゃいます☆

よそ見はめっ。カレンだけを見ててね♪

 

――とかいう、この世界の住人にとっては理解に苦しむ文章だったりする。

 

しかし、フォロワー300万人という数字に噓偽りはない。

 

投稿のたびにハートマークが爆発し、コメントで溢れかえる。

 

一見すれば、立派なウマスタグラマー。

だが、実態はまるで異なる。

 

 

 

カレンちゃん家の溜まり場

通称、“独身喪女の集い”

 

或いは、恋愛競争のスタートラインにすら立てなかった敗北者たちの集会所。

 

――類は友を呼ぶ。

イカれた自己紹介文には、イカれたフォロワーが群がる。

 

ウマ娘という社会的に風当たりの強い存在を見下すことで、なんとか自尊心を保てる魑魅魍魎の女性たち

 

そんな連中が、己のコンプレックスを誤魔化すためにフォローしていたりする。

 

フォロワー数三百万。

そのうちの純粋なファンは、一割にも満たない。

 

この世界が終わっている証拠である。

 

 

しかし、そんな世の中でも、カレンチャンはめげなかった。

 

 

 

 

画面の向こうにいる人たちに向けて、今日も笑顔を発信する。

 

 

 

 

おはよ〜!

カレンチャンだよ〜♪

 

今日は前日に募集したマシュマロを見ていくよ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なあ、バイクより男に跨りたいんだが、どこに行けばいいんだ?

 ―― ロシアのお酒さん より

 

 

 

カイチョーみたいな大人の雰囲気でもモテないって、どうすればインダヨー!?

 ――幼体テイオーさん より

 

 

 

スイーツショップに行っても“男味”のメニューが無いですわ!!

季節限定で出してほしいですわ!!

 ――パクパクしたい、MANさん より

 

 

 

最近、レースより“恋の出走”がしたいんだが、ゲートが一生開かない。

どうすればいいんだ?

 ――シンデレラしたいさん より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あまりにも酷い内容である。

 

 

しかし、通報しても誰も文句を言わないマシュマロにも、律儀に返信していくカレンチャン。

 

人の心に寄り添える、聖人の心を兼ね備えたウマ娘は伊達ではない。

 

たとえゴミのような内容であっても

彼女はきっかり返事を返し、相手の心をフォローする。

 

 

 

幼体テイオーさんへ

 

人生これからだよ!

いつか、きっと、たぶん、もしかしたら、出会いがくるかもねっ☆

 

 

 

 

パクパクしたい、MANさんへ

 

原材料が絶滅寸前だから~販売は無理だよ♡

 

 

 

 

 

シンデレラしたいさんへ

 

ゲートは抽選制だから、

次の開催までに運試ししとこっ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カワイイようで、まったくカワイくない返事をするカレンちゃん

 

ちなみに、一つ目のマシュマロに対し、彼女は返信をしなかった。

 

代わりに――あと一歩を踏み出せない緋色のティアラを被ったウマ娘に、こうメッセージを送った。

 

 

『同室の子が外で寒い思いをしてるよ!

急いで人肌で温めてあげて☆』

 

小悪魔どころか、もはや悪魔の所業

 

後ろでそれを眺めていたトレーナーは、ただ苦笑するしかなかった。

 

 

 

「こらこら、カレンさん。あまり虐めてはかわいそうですよ」

 

「だって、“お兄ちゃん”が構ってくれないからぁ〜♡」

 

小首を傾げながら甘えるように言うその仕草に

トレーナーも少しだけ困った様子である。

 

「確かに、貴方との時間が確保できなくなっていることは謝ります。

ですが、スピーディーに事を運ばなければ、どこで情報が漏れるか分かりませんからね」

 

 

そして、少しだけ真顔になって忠告する。

 

「貴方もSNSの取扱いには気をつけてくださいね。

……からかい過ぎた結果、いつか痛い目を見ても私は知りませんよ?」

 

 

 

 

 

 

 

その言葉は、ただの冗談で終わらなかった。

やがて現実となって、近い将来――彼女を直撃する。

 

フォロワーが全員、アンチと化す――。

そんな前代未聞の大事件が起こる日も、もはや遠くなかった。

 

 




残り二話で完結します。
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