非日常を追い求めて   作:ちゅずめ

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視点:笹木美弥
始まり


みんなには、人生がまるっきり変わった経験はあるかい?私は今まで無かった。平凡な学生としての生活を続けるばかりだったよ。そんな人生がどこまでも可笑しい方向へと変わっていくのは、もう目の前に迫ってたみたいだ。

 

 

 

 

学校に着いてすぐに、スマホを確認する

 

[8月13日]

 

「おはよ、今日は朝から体育だってよー」

「うそぉ、汗だくで午後過ごしたくないよ〜」

教室の窓から外をちらりと覗いてみる。全てを溶かすほどの太陽の光と蝉の鳴き声が響き渡る、なんてことないいつもの夏だった。

「HR始めるぞ、座れ」

またいつもの面白くないしそのくせ無駄に長い世間話が始まるみたいだ。風見先生、こんな暑い日でも嘘みたいに元気な数学教師である。そこは体育だろ、毎日そう思いながら世間話を聞き流していく。

「それじゃ一限目の準備しろよー」

よしよし、やっと終わったか。体育以外は夜のゲームのために睡眠を取るとしよう。

「なんで毎日爆睡してて赤点取らないのよー」

こいつは蒼宮莉菜、真面目なバカで私の親友である。

「これでも私、天才なんで」ドヤッ

「前回の数学は赤点ギリギリだったでしょ。誇らしくないよ」

「うげ、委員長」

我がクラスの学級委員長こと笠井沙羅、成績優秀容姿端麗、欠点は私たちの友達であること。いや本当にどうしてこんな完璧な奴が私たちと一緒にいるのかはわからない。

「あなたも莉菜も、磨けば輝くはずなのよ。しっかり勉強したらいいのに」

「誰があんなめんどーなことを」

「委員長くらいだよなぁ、勉強が好きなの」

私ならゲームの腕を磨いてるけどな。

「はぁ…ほら、授業始まるわよ」

さぁて、ぐっすり睡眠タイムだぜぇ。

 

 

 

 

そんなこんなで十分な睡眠を取り体育もなんとか乗り越え、もう放課後である。莉菜と沙羅は部活があるので帰り道は私1人だ。毎日同じようなことばかり、日常を繰り返しているだけの人生にどんな意味があるのかね。

「そこのお嬢ちゃん」

「…もしかして私…?」

知らない人……道に迷ったお爺さん?助けたらお礼にお金をくれて私は億万長者に…じゃなくて!

「どうしましたか?」

「お嬢ちゃんが退屈そうに見えたもんでな、一ついい提案をしてやろうと思って」

「いい提案…?」

なんだかすごく怪しい、もしかしてこの爺さん変質者だったか?でも、退屈なのは事実だな…

「…いいでしょう、提案を聞かせてください」

人生、こんな見え透いた罠でも引っかかって変えていかないとな!

「思い切りのいいお嬢ちゃんだ。君なら此奴を飼い慣らせそうじゃな」

そう言ってお爺さんは右手で私の目を覆った。その瞬間、私の全身にとてつもない衝撃が走り、すぐさま意識を失ってしまう。あの爺さん、超能力者か?此奴って誰のことだよ。私のアパートはペット禁止だし一人暮らしだから飼う余裕なんてないよ。

 

 

 

 

 

 

私は起きた。あの後目を覚ますと何故か家に居た。記憶はないけど家に帰ったのかな?さすが私だね。さて、今日も学校だし準備しないと。スマホは……あった

 

[8月15日]

 

……あれ?昨日は確か13日で…うん、体育があるのは13日と15日で………てことは…

「…一日飛んでるって…こと…?」

そんなに意識なかったのか?爺さんめ、訴えてやる。

いつもの玄関を開けて表札の[笹木美弥]という文字を流し見しながら学校へと向かっていく。

 

 

 

 

 

「おはよ莉菜」

「あ、おはよ……」

ん?反応がいつもと違うな

「どしたの?」

「いや、昨日あれだけ暴れたのによく来れるなって」

「昨日?私学校来てたの?」

「はぁ?何言ってんのよ。昨日午後からいきなり来て机を蹴散らしたくせに」

何を言ってるんだ。私にそんな記憶は何一つ無いぞ。

「ほら、HR始めるから座れー」

まあそこからは会う人全員から心配された訳なんだけど。私としては身に覚えが無いから困ったもんだ。そもそも机を蹴散らすほどの力と勇気は私には無いわけよ。私の姿をした私では無い何か?二重人格?ついに日常から抜け出せたのか?退屈な日々が終わったと、私の全身が告げている。ワクワクとドキドキで胸がいっぱいだ。まあ、まだ何が何だかわかってないだけだが。

 

 

 

 

 

 

帰り道、珍しく莉菜と沙羅が部活休みなので一緒に帰る。こうやって友達と帰るのもなんだかんだ楽しいもんだ。

「あんたほんとに昨日のこと覚えてないわけ?」

「覚えてないよぉ」

「不思議ですね、いつもならあんなことしないはずのあなたが」

私に言われてもそんなの知らないからなぁ。そんなことを考えながら下校路を歩いていると

「やぁ、お嬢ちゃん」

またこの爺さんか、そういやこの人が非日常に変えたってことか?

「お嬢ちゃん、奴を飼い慣らせてないのぉ。そもそも存在を認知できてないようじゃな」

「…奴?」

「ねぇこの爺さん誰よ、知り合いなの?」

「なんの話を?」

少し黙っててくれ、私にもわからんから頑張って理解してみる。

「お嬢ちゃん、お友達もすまんの。奴を認知してくれ」

爺さんがそう言った刹那、世界は突如闇へと葬り去られ、色の無い違和感だらけでありながらいつもの建物が並ぶ「謎の世界」へと誘われた。

奴?なんのことだよ、それにこの灰一色の世界はなんなんだ?太陽もなく、ただ暗く冷たい世界で何をしろと?

直感でわかるのは、この世界には人は居ないこと、私たちの世界の理では動いていないこと、人ではない知的生命体がいること。何故か感じ取れたことはこれだけだ。

私は考えた、あの爺さんと爺さんの言う「奴」はこの世界の住人だということ。いや、あれこれ考える前に莉菜と沙羅に説明を………

そこで気づいた、先刻まで側に居たはずの彼女達が居なくなっていることに。このイレギュラーな状況で、孤独であることはあまり好ましくない。今私が取るべき行動は

「2人を探す…か」

モンスターでも出たらどうしようか、私の持っているのは教科書とスマホだけだ。なんとなく、スマホを確認してみる。

 

[8譛?5譌・]

 

まじか、完璧に非日常って感じじゃん。求めてたものが手に入っているのに、私はそこまで興奮していなかった。これからの不安や恐怖の方が強いのだろう。それでも、動く足は止めなかった。スマホには二つのメールが来ている。

 

[笹木!ここどこなの?何が起こってるわけ?」

[美弥さん、莉菜さんとも連絡を取りながら合流をしましょう。その後でこの世界について調べましょう]

 

私には、この2人がいるから。私とおんなじ2人が。

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