白月の君といつまでも   作:はすみく

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-- Spring, about 17 years old

▽前回のあらすじ
花梨手作り弁当を完食し、幸せ絶頂の快斗。屋上で良い雰囲気になる二人だが、快斗の学ランから花梨の「失くしたはずの下着」が飛び出して……!?
動揺する快斗と純粋すぎる花梨。怪盗、まさかの私物窃盗が発覚。

第101話
白馬くんの扱いをどうしようか迷い中だったりします。


101:木曜日の約束

 

 

 

 

 

 キーンコーン、カーンコーン……。

 終業を知らせるチャイムが鳴り、あっという間に放課後になった。

 

 

「花梨、行くぞー」

 

「あ、うん」

 

 

 今日は帰りに警察署に寄らなければならないため、ホームルームを終えると快斗の掛け声で花梨は席を立つ。

 ところが――。

 

 

「ねえねえ、花梨ちゃん! 快斗も! 木曜日のことなんだけど~」

 

「「ん?」」

 

 

 ふいに、帰り支度をする青子から声を掛けられ、花梨と快斗は足を止めた。

 

 

「木曜? あー、みんなでゲーセンにってやつか?」

 

「そうそう! 快斗のくせによく憶えてたわね!」

 

「快斗のくせにって……ったりめーだろ……。大事な彼女が楽しみにしてんだから忘れるわけねーよ……な~、花梨?」

 

 

 木曜に行くゲームセンターは米花町にあり、花梨が住んでいた頃にはなかったもので、カラオケ店も近くにあったりする。

 ゲームセンターとカラオケのどちらも行ったことがないという花梨を連れて行ってやろうと、青子と恵子が企画した寄り道コースだ。

 始め快斗は、花梨が心配なあまり勝手に断ろうと思っていたが、青子から話を聞いた花梨の瞳が輝いているのを見て「オレも行く!」となり、四人で行くことに……。

 

 

「ぁっ……、うん……楽しみ……♡」

 

 

 快斗から問われた花梨はぽっと頬を赤く染め、照れ臭そうに頷く。

 

 

「っ、ほらな~?(なに、花梨ちゃん、その可愛い反応は……! 食べちゃうぞ♡)」

 

 

 今日は平日だけど花梨の家に泊まって帰ろう……。

 ……花梨の照れた顔にお泊りを勝手に決める快斗であった。

 

 

「うわぁ~、恥ずかし気もなく大事な彼女とか、やらしー顔で言っちゃって~。見てるこっちが恥ずかしいわ。ちゃんと彼氏やってるじゃない」

 

「やらしー顔って、なんだその言い草はよ……。さっきから失礼だぞ青子」

 

「まあそんなことはどうでもよくて」

 

「どうでもよくてって……ひでえ……」

 

 

 青子にどうでもいい扱いをされ、快斗は眉を寄せる。

 

 

「木曜日なんだけどね、あ……」

 

 

 ふと、青子の視線が快斗の背後に注がれた。

 

 

「ん?」

 

「ボクも参加させて頂くことになりました」

 

「おわっ!? 白馬おまっ、急に後ろに立つんじゃねーよっ!」

 

 

 ――びっくりしたー!!

 

 

 快斗のすぐ後ろに白馬が立ち、軽く頭を下げてくる。

 頭を下げた白馬は一歩前に出て、快斗と花梨の席の間に割って入り、告げた。

 

 

「葵花梨さん。どうも、白馬探です。身長180センチ、体重65キロ、生年月日8月29日、おとめ座、A型……ボクもよければご一緒させていただきたい」

 

「……あ、あの……」

 

 

 戸惑う花梨に白馬がホームルーム時と同じように手を取り、そっと手の甲に唇を落としてくる。

 個人情報をつまびらかに語られてもどう扱えばいいのか、花梨にはわからない。

 

 ところで身長が180センチもあるのか……道理で大きい。

 快斗ともかなり身長差があるというのに、白馬の影に入ると後ろにいる快斗が全く見えなくなる。

 

 

(零お兄ちゃんたちと同じくらいだよね……?)

 

 

 ……降谷たちなら慣れているが、変な男によく絡まれる花梨は、白馬をちょっぴり怖いなと思った。

 

 初めて逢った時から変わった人だなとは思っていたが、やはり変わっているのかもしれない。

 悪い人ではなさそうなため、花梨はどうしていいのかわからず、とりあえず微苦笑を浮かべようとした。

 

 

「勝手に人の彼女の手に触ってんじゃねー!!」

 

 

 戸惑う花梨の握られた手は瞬時に快斗に奪取され、プシューっとアルコール消毒液が白馬の唇が触れた箇所に噴射される。

 その後は丁寧に撫でられた。

 

 

「おっと、ただの挨拶ですよ? そんな目くじらを立てないでください。お近づきのしるしに紳士たる挨拶をしたまで」

 

「ここは日本だ、普通に挨拶しろ、普通に!」

 

「木曜はボクも参加させていただきます」

 

「なんでおめえが来んだよ!」

 

 

 快斗が花梨の前に立ちはだかり注意を促すも、白馬は快斗を無視するように話を進める。

 

 

「花梨さん、構いませんか? 青子くんからは許可を頂いているんですが……」

 

「え、あ……。それなら……、うん」

 

 

 白馬の言い分にチラッと青子を見やると、彼女は首を縦に何度か振りにっこり。親指と人差し指でOKのハンドサイン。

 青子が許可しているのであれば、花梨に断る理由はない。

 よく知らない男の人は少々怖いが、青子のお墨付きがあるのなら……と、花梨はこれも経験かと了承した。

 

 

「フフ、よかった。……おっと、次の予定まであと4分12秒ですね。木曜を楽しみにしてますね。では今日はお先に失礼」

 

「あ、うん、白馬くん、さよなら」

 

「はい……さようなら、また明日……」

 

 

 もっとグイグイ来るかと思われたが、意外にもあっさり引き下がり、白馬は会釈し教室を出ようと歩き出す。

 花梨が手を振ると、彼は振り返って嬉しそうに目を細めた。

 そうして、爽やかなスマイルとともに軽く手を挙げ去って行く。

 

 ……白い歯がキラリと光っていたような……。

 

 白馬のその笑顔に、残っていた女子たちがまた「きゃぁああああ~~♡♡」と、黄色い声を上げて追いかけて行き、やがて教室は静かになった。

 

 

「なんだあのキザ野郎は。歯が光ってたぞ……」

 

「ふふ、面白い人だねー」

 

「お、面白いかあ?」

 

 

 快斗には花梨の面白ポイントがわからなかったが、彼女の笑顔を引き出した白馬に少しばかり嫉妬する。

 

 白馬も木曜に来るのかと思うと腹立たしい。

 これ以上、花梨には自分以外の男と接点を持って欲しくないというのに。

 くすくすと微笑む花梨は可愛いが、その笑顔が自分が引き出したものではないと思うと、むかむかしてくる。

 

 こういう時は早く二人きりになるに限る。

 ……これから警察署に行かなければならないんだ、さっさと出よう。

 

 

「なー、青子、もう帰っていいか?」

 

「ん? うん」

 

「じゃーな! 花梨、行くぞ」

 

 

 ちょっぴり不機嫌な表情で、用事は済んだよなと快斗は青子に尋ね、花梨の鞄と手を取り歩き出した。

 

 

(……っ、嫌なんだよ。あんな奴に、花梨の“特別”を見せたくねえ。……いつまでこうして、オレが隣に居られるかも分からねーんだからよ)

 

 

 自分でも余裕がないのは分かっている。

 だが、少しでも目を離せば、彼女がどこか遠くへ消えてしまいそうな――そんな「終わりの予感」が、快斗の胸を絶えずかき乱していた。

 

 

「あっ、ちょ、快斗……! 青子ちゃんまた明日ー!」

 

 

 早足で歩く快斗に花梨は駆け出す。

 そんな二人を青子は手を振り見送った。

 

 

「あらら~、快斗君不機嫌になっちゃったみたいね」

 

「あはは。快斗は嫉妬深いからなあ……」

 

 

 帰り支度を終えた恵子が青子の席にやって来る。

 ……青子たちのやり取りを見ていたようだ。

 

 

「にしても白馬君、人気者だねえ。女の子たちみんなついて行っちゃったよー」

 

「そうだねー」

 

 

 恵子は教科書を鞄に詰める青子に、今度は白馬の話をする。

 二人は休憩時間になる度、白馬がクラスの女子たちに囲まれているのを見て知っていた。

 しかも、白馬がロンドン帰りの名探偵だということもわかっている。

 

 

「彼、花梨ちゃん狙いみたいだったけど……、快斗君大丈夫かな? 誘ってよかったの?」

 

「ね~……。けど、花梨ちゃんも、快斗だけじゃなくて他の友達も欲しいと思うんだよね。だってさ、快斗のヤツ、花梨ちゃんのこと囲い過ぎだと思わない?」

 

「あー、溺愛ってやつ? 重い……んだっけ? 青子が最近言ってるよね?」

 

「うーん。快斗、なーんか病的なんだよね……。青子ちょっと心配なんだ。花梨ちゃん、時々戸惑ってるように見えるし……」

 

 

 以前、フードコートで見た快斗の目つきがおかしかった。

 常に周りを警戒するようにキョロキョロしていたし、花梨に近づく男に喧嘩を売り、女好きだったくせに女性にも睨みを利かせていて。

 

 青子たちの前で、快斗があまりそういった面を見せることはないものの、先ほど白馬から花梨の手を奪った時の目は鋭く、不機嫌オーラ全開。

 ……さっきも、花梨の手を乱暴に引っ張って行ったような気がする。

 

 

「あー、わかる~! 快斗君こないだまでそんなことなかったのに、今は花梨ちゃん命~って感じ? でもそれって恋は盲目ってやつなんじゃない?」

 

「盲目なら盲目でいいんだけど……、なんかね……心配」

 

「青子?」

 

「……青子は二人が心から笑顔でいられるなら、それだけでいいんだけどねっ」

 

「青子……」

 

 

 青子が何を心配しているのか恵子にはわからないが、幼なじみゆえの何か気づきみたいなものがあるのだろう。

 恵子は青子の心配が杞憂に終わるといいなと思った。

 

 

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