白月の君といつまでも   作:はすみく

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-- Spring, about 17 years old

▽前回のあらすじ
部屋に隠れたコナンを「新ちゃん」と呼び探す花梨。カーテン越しに涙を隠す彼をホットタオルで癒やし、幼馴染の絆を深める。だが、事件の真相を追うコナンに対し、花梨は「先週も襲われた」と衝撃の事実を告白して……。

第106話
デコピン♡
※Pixiv版とタイトルが異なります。


106:デコピン・コンフリクト ~怒りと笑顔の間で~

 

「あっ、ええと……映画観てたらボーガンの矢がビューンって飛んできてね」

 

「は? ボーガン? 花梨、オメー何言って……、なんで……」

 

「え? だから、ボーガンは私、中学の時に弓道やってたからその繋がりでしょ? それに、ゴルフボールは親戚の趣味だから……多分そうかなーって思って。推理してみたの!」

 

 

 花梨は身振り手振りを加え、自身の身に起こったことを明るく説明するのだが、話を進めるうちにコナンの眉間の皺がどんどん深くなり……――。

 

 

「っ、花梨っっ!!」

 

 

 ついに彼は、怒気を孕んだ大きな声で花梨の名を叫んだ。

 

 

「っ!? な、なに? 私、変なこと言ってる……? これでも苦手な推理頑張ったんだけど……」

 

 

 ――び、びっくりした……。

 

 

 急に大きな声で怒鳴られ、花梨はビクッと身を縮める。

 そんな花梨の両肩にコナンの手が添えられた。

 

 

「なん、でっ……!! 襲われたって……なんでそんな大事なこと、すぐオレに相談しねーんだよっ!?」

 

「え……? だって、新ちゃんは自分のことで大変でしょ? 私のことは私で対処するから大丈夫だよ~。警護してくれてる人もいるし、新ちゃんに迷惑はかけたくなくって――」

 

「っ……!! バッカリン!!」

 

 

 “バンッ!”

 

 花梨が話の途中ではあるが、コナンの両手が花梨の肩を強く叩く。

 コナンは顔を歪ませていて、花梨に鋭い視線を送っていた。

 

 

「ぃっ! ばっかりんって……、頭痛薬かな?」

 

「バーロ! そりゃバファリンだろーが!」

 

 

 とぼけた花梨の額にコナンのデコピンが炸裂する。

 

 

「いったっ!? ちょ、もぉ、なに? 急にデコピンとか、新ちゃんヒドイ~……そういうのDVっていうんだよぉ~……」

 

 

 ――また不機嫌になってるし……!

 

 

 勢いよく弾かれたデコピンに、花梨は赤くなった額を両手で押さえた。あまりに痛くて涙が滲んでしまう。

 高校生の新一にやられた時はここまで痛くなかったのに、小学生になったら痛いとは……。

 きっと思いっきりやったに違いない。

 ということは、高校生の新一は手加減してくれていた……?

 

 

「……オレはっ! こうして身体は小さくなっちまってるけど、オメーの兄貴だろーがっ! 腕力や体力は下がっちまったが、頭脳くらい役に立ってやれるっ!」

 

 

 コナンは急にソファの上に立ち上がり、花梨を見下ろした。

 その様子に高校生の頼もしい新一の姿が重なる。

 

 

「新ちゃん……。でも私、新ちゃんには私のことじゃなくて、自分のことに集中して欲しいっていうか……」

 

 

 ――新ちゃんはちっちゃくなって大変なんだし、巻き込むのはよくないもんね……!

 

 

 快斗もそうだが、花梨はコナンになった新一を、自分の事情に巻き込むつもりは毛頭ない。

 どうせ来月には散る命なのだから、捨て置いてくれていいのだ。

 けれど、そんな花梨の気持ちとコナンの気持ちは別物で。

 

 

「オレは充分、自分のことに集中してる。小さくなっても事件を解決してるし、黒ずくめの野郎たちのことだって常に考えてる。そこに花梨の問題が入ったところで、大したことねーんだよ(オメーは家族みてーなもんなんだから、オレを巻き込めばいいんだよ……)」

 

 

 ポンッとコナンの小さな手が花梨の頭にのっかった。

 その手が撫でるように前後に動く。

 

 

「新ちゃん……」

 

「あー……けど、うん。オレも花梨の推理と一緒だ。日曜のはやっぱオメーの親戚の差し金の線が濃厚だと思う」

 

「ぁ、だよね……!」

 

 

 「よく推理できました!」……と、ぐしゃぐしゃ頭を撫でられた花梨は髪が崩れたが、ちょっと嬉しい。

 昔、小さな新一に褒められると嬉しかったことを思い出して、あの時と同じように勝手に笑顔になった。

 

 

「オメー……命狙われたくせにやけに明るいな……」

 

「あはは……、まあ未遂で終わったし……」

 

「バーロ! 死ぬとこだったんだぞ!?」

 

「死ななかったもん」

 

「バッカリン!!」

 

「あー頭痛い、頭痛いよぉ!?」

 

 

 呆れるように話すコナンに笑顔で返せば、今度はぐりぐりと拳で上から頭を強く押さえ付けられる。

 身体が小さくなっても、花梨からすればコナンは力が強い。

 

 

「……っ、っかやろ……! オレと警護の人がいなきゃオメーは今頃……」

 

 

 頭にのっかっていたコナンの手が一度離れたかと思ったら、今度は両手拳が近づく。

 次にくる攻撃が読めた花梨は。

 

 

「おっと……! その手にはのらないよ~!」

 

 

 花梨は慌てて立ち上がり、コナンから距離を取った。

 

 

「っ……くそっ!」

 

「ふふっ、物理的に届かないもんね~っ!」

 

「……」

 

 

 ソファから離れ、腰に手を当て満面の笑みを見せる花梨に、コナンは不服そうに頬を膨らませる。

 悔しそうにしている顔が「可愛い」なんて言えば、きっと怒るのだろう。

 ……彼を揶揄(からか)うのは、これくらいにしておいた方が良さそうだ。

 

 

「訊きたいことってそれだけかな?」

 

「ん……? ……まあ。あ、いや……」

 

「ん?」

 

「……オメー、黒羽とどこまで……っ、あ、いやなんでもない」

 

 

 黒羽とどこまで……。

 コナンは一度口にして首を左右に振り、花梨からまた目を逸らした。

 さっきからあまり目が合わないのはなぜなのだろう……、花梨は少し気になる。

 

 

「ン~? どこまでって、どういうことなのかはよくわかんないけど、そうね……」

 

「答えなくていい」

 

「……そう?」

 

 

 ――新ちゃん、快斗のこと聞きたかったの……?

 

 

 日曜日、快斗はキッドのような動きは一切見せていなかった。普通の高校生だったと思う。

 だからまさか彼の正体を……は考えにくいが、コナンにはあまり快斗に興味を持って欲しくない。

 

 ……答えなくていいと言うから、深入りはしないでおこう。

 

 花梨は兄貴分として気になっただけかなと、ほんのりはにかんで済ませようとしたが――。

 

 

「……、……ブラ、外れてんぞ」

 

「え? あっ!? や、やだっ! もぅっ!! 早く言ってよ~っ」

 

 

 ふいに、横目でチラッと頬を赤らめたコナンに指摘され、花梨は自身を見下ろす。

 そしてブラジャーが不自然に胸の上まで上げられていることに気が付いてしまった。

 案の定、シャツが透けて以下略――。

 

 

 ――そうだった……!

 

 

 そういえば快斗にブラを外されたままだった……。

 

 “またこのパターン!”

 

 先週、降谷たちの前で晒したというのに、今度はコナンの前。

 しかもコナンには新一の時に、一度全裸を晒しているから二度目だ。

 

 ……花梨は一目散でキッチンに走り、しゃがむとブラを直した。

 

 

「……コホン。高校生なんだからもっと清い交際から、だな……」

 

 

 キッチンから戻って来た花梨にコナンは赤い顔で一言物申す。

 

 

「あはは……、わかってるよ」

 

「わかってねーから言ってんだよ」

 

「……わかってるよ。新ちゃんも自分を大事にって言うんでしょ? わかってる」

 

「わかってるならっ! ……っ」

 

 

 ――簡単に抱かれてんじゃねーよ! まだ交際始めて一月も経ってねーんだろうが!!

 

 

 コナンの語気が強くなる。

 

 この前までキスもしたことなかったくせに!

 人のファーストキスを奪っておいて、あっさり他の男に抱かれるとか頭が緩いにも程がある!

 

 なんでオレは小学生の姿なんだよ……!

 これじゃ花梨を止められないじゃないか!

 花梨には清らかな身体のままでいて欲しかったのに……!!

 

 ……なんて、心の中に蘭と花梨を同時に住まわせる新一には、花梨の色恋をどうこう言う資格なんてなく、それ以上何も言えなかった。

 

 

「ところで新ちゃん、陣平さんと来たのね?」

 

「ん? あ、ああ……エントランスで声をかけられてな。オメーの知り合いだって言うから一緒に来たんだ」

 

「そっかぁ……、一言メッセージ送ってくれればよかったのに」

 

 

 ――あんな場面を見られちゃって恥ずかしいじゃない……。

 

 

 せめて事前に訪問することを教えてもらえていたら。

 ……思い出した花梨の頬が羞恥にポッと赤く染まる。

 

 

「入れた」

 

「え? そうだったの?」

 

「そう」

 

「そっか~……じゃあ、私が気づかなかったのね」

 

「そういうことだ」

 

 

 なぜ松田とコナンが一緒だったのか尋ねてみれば、エントランスで会ったらしいが二人は初対面のはず。

 二人がどういう話をしたのかはわからないが、松田はあんな成りでいて小さな子に優しい。

 四年前も口は悪いが優しくしてくれたな、と思い出しつつ、花梨はカウンターテーブルに置いたスマホを見る。

 

 スマホにはコナンの言った通りメッセージが届いていた。

 

 

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