白月の君といつまでも   作:はすみく

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-- Spring, about 17 years old

▽前回のあらすじ
花梨のマンション前で迷うコナンの前に、刑事・松田が現れる。ひょんなことから松田に担がれ、共に部屋へサプライズ訪問することに。気まずい再会を越え、花梨はコナンを夕食に誘い、二人で買い物へ向かうことにした。

第108話
前回からの続き。
コナン君とごはんを食べます☆


108:コナンとディナーを

 

「おさいふ持った。スマホもOK。じゃあ行こっか」

 

「ん!」

 

 

 花梨がスマホをポシェットにしまい、さあ出発だと思ったらコナンが近づき手を差し出した。

 

 

「う、ん?」

 

「オメーはすぐ迷子になるからな」

 

「……ふふっ、もう一年以上住んでるし、近所じゃさすがに迷子にならないよ?」

 

「いーから!」

 

 

 コナンに強引に手を取られ、繋がれる。

 小さい手だけれど、温かくて力強くて不思議と安心できる手だ。

 

 

「……ふふっ。こないだのトロピカルランドもそうだけど、昔もよく手を繋いだよねー」

 

 

 ――あの頃から新ちゃんは頼もしかったよね……!

 

 

 半歩前を先導するコナンに、花梨は昔の新一を思い出して笑みをこぼした。

 

 

「オメーは放っておくと、すーぐどっか行っちまうからな! とろいし」

 

「とろいって……ひどーい、そんなにとろくないよー。私、そこそこ走るの早いよ?」

 

「ふーん? 成長したってか?」

 

「そうそう。追われることが多いから、自然と逃げ足も速くなったの」

 

 

 ――逃げ足の速さは誰にも負けない……! と言いたいとこだけど、まあ実際はそこまで早くはないか……。

 

 

 昔に比べれば足は速くなったが、花梨は陸上選手ではない。

 恐らくサッカーをやっていた元の姿の新一には、簡単に追いつかれてしまうだろう。

 それでも必死で逃げる時は、火事場のバカ力なんてものが働くから、その時はきっといつも以上にスピードが出ているはず。

 

 

「そうか……オメー苦労してんだもんな、わりぃ。けど、今日は繋いでよーぜ? なんかあっても一昨日みてぇにオレが守ってやっから」

 

「……新ちゃん……。心配してくれてありがと♡」

 

 

 ――日曜のことや前に襲われた件もあるから、心配してくれてるのかな……。

 

 

 小さくなっても兄になってくれようとするコナンに花梨は微笑む。

 手はぎゅっと強く握られて、外れにくいように指が絡まった。

 

 ……そういえば快斗もこういう繋ぎ方をしていた。

 青子も……両親にされた記憶はないが、こういう繋ぎ方が普通なのかもしれない。

 花梨は理解しながら、コナンの後ろに続いた。

 

 

「へへっ♡ フーン♪ フンフーン♪」

 

「なんかうれしそうだね?」

 

 

 機嫌が良さそうに音程がめちゃくちゃな鼻歌を歌うコナン……。

 コナンの音痴を知っている花梨は、そこを上手くスルーし隣に並んだ。

 

 

「っ、オメーのハンバーグ食うの久しぶりだからだよ!」

 

「え? 新ちゃんてハンバーグそんなに好きだったっけ?」

 

「いや、別に?」

 

「んん……?」

 

「いーからいーから♪」

 

 

 急に慌てふためくコナンに花梨の首が傾く。

 不思議顔をする花梨にコナンはニコニコ。

 ……この笑顔に花梨は弱くて釣られてはにかんでしまう。

 

 そのまま強引に押し切られてスーパーで買い物をして帰り、今日は何もなくて良かったと思いながら夕食を作り始めた。

 

 

「新ちゃんは包丁持っちゃダメだからね!」

 

 

 料理が出揃うまでコナンにはいつものように皿の準備や、テレビを見たり、新聞を読んだりしてもらいながら待機してもらう。

 調理の手伝いは危険なため、絶対させたりしない。火事でも起こされたら堪ったものではない。

 

 

「……」

 

 

 ――こういうの、なんかいいよな……。

 

 

 キッチンで花梨が忙しく動いているのを、コナンは時々チラチラと気にしながら時間を潰す。

 エプロン姿の花梨はいつ見ても可愛いと思うが、実際に口に出して言ったことはない。

 ……なんとなく言えないでいる。

 

 

「はい、では手を合わせて下さい、いただきます!」

 

「……いただきます」

 

 

 ――バーロ、オレは子どもか! ってそういやこいつ、元の姿ん時もやってたな……。

 

 

 しばらくして花梨特製チーズハンバーグが出来上がり、主食と副菜諸々がカウンターテーブルに並べられ、隣同士席に着いた二人は花梨の掛け声で手を合わせた。

 ……呆れ顔のコナンだが、渋々付き合う。

 

 ふとそんな時に“ピコン!”。花梨のスマホにメッセージが届いた。

 

 

「あ、蘭ちゃんだ……なになに? あ」

 

「ん? 蘭……?」

 

 

 すでに食事を始めたコナンの頬に米粒が付着する。

 

 

「コナンくんがお邪魔してませんかーって。もう暗いから心配してるみたい。そういえば連絡してなかったね」

 

「あ……、そうだな……」

 

 

 ――やべ、そういやオレ、今コナンだってことすっかり忘れてたぜ……。

 

 

 花梨が以前と同じように“新ちゃん”と呼ぶから、自分がコナンであることを失念していた。

 

 部屋の時計を見れば、二十時前。

 外はすでに日が暮れた後だ。

 

 朝、学校に行く前に、蘭には放課後、花梨の家に行くかもと話しておいたから連絡してきたのだろう。

 「遠いから一人で行っちゃダメよ」とも言われたが、そんなもの無視して来てしまった。

 

 

「新ちゃんどうする?」

 

「どうするって?」

 

「小学生が出歩くにはもう遅いし、泊まってく? 明日学校でしょ、朝送ってくけど……」

 

 

 高校生の新一ならともかく、小学一年生を一人で帰すわけにいかない。

 

 それに、この時間の電車は混んでいるから送ってやることも難しい……。

 権堂に頼めばいいが、コナンといれば何か起こりそうで、あまり迷惑を掛けるのも申し訳なくて。

 花梨は送るのは明日ということにして、泊まっていくかと誘ってみた。

 

 

「っ! 泊まる!」

 

 

 ……コナンが即答する。

 

 

「あら、今日はすんなり……」

 

「……この姿じゃ可愛すぎて危ねーしなー。オレ、可愛いから?」

 

「ふふっ♡ 可愛い可愛い♡ わかった、じゃあ蘭ちゃんに電話するね」

 

 

 ドヤァと自信満々で自らの可愛さをアピールするコナンに、思わずプッと噴き出した花梨の首が縦に振れる。

 蘭に連絡をとスマホを操作し、通話ボタンをタップした。

 

 ……プルルルル、プルルルル。

 数回コールした後で蘭と繋がる。

 

 

『もしもし花梨ちゃん?』

 

「もしもし……蘭ちゃん? コナンくんうちに来てるよ」

 

『やっぱり? も~、勝手に一人で行っちゃダメって言ったのに……無事でよかった。コナン君が遅くまでお邪魔してごめんね~』

 

「ううん、今ご飯食べてもらってるんだけど、もう暗くなっちゃったから、今日は平日だけどうちに泊めようと思って。コナンくんも泊まりたいって言ってるんだけど大丈夫かな?」

 

 

 ――新ちゃんは今コナンくんだから、浮気にはならないからね……!

 

 

 花梨には快斗がいるから浮気をするつもりはないが、蘭の好きな新一を家に泊めるのならば、前もってきちんと断りを入れておかないといけない。

 すべてを話せないのは申し訳ないが、どうしても断りだけは入れておきたかった。

 

 

『まっ♡ も~コナン君てば、花梨ちゃんが大好きなんだから~……♡』

 

「えぇ? 蘭ちゃんたら、またそんなこと言って……はは……」

 

 

 ――新ちゃんは私じゃなくて、蘭ちゃんが大好きなんだよー!

 

 

 スマホの向こうで楽しそうな蘭の声が聞こえて花梨は苦笑する。

 

 

『うふふ♡ じゃあ今晩はコナン君をよろしくね』

 

「あ、うん。明日の朝送ってくね」

 

『りょ~か~い!』

 

 

 ……ピッ。

 蘭の明るい声を聞いてからスマホの通話終了ボタンをタップ。通話を終えた。

 

 

「ねえ、蘭ちゃんに言われたんだけどね、コナンくんて私のこと大好きらしいんだけど……? ホント?」

 

 

 蘭の言っていたことが釈然としなくて、隣で茶碗を手にしながら耳をそばだてるコナンを見やる。

 

 

「……べ、別にオレは花梨のことなんか……」

 

「ふふっ、そうだよね~! 知ってるよ~!」

 

「……あっ、ちがっ……」

 

 

 プイッとコナンに顔を背けられ、花梨がにこにこと目を細めれば、彼は慌てて目を合わせてくる。

 なぜ慌てているのかは知らないが、なんだかコナンが可愛く思えて、花梨は頬杖をついてじっと見つめた。

 

 

「おいしい? おかわりもあるからね?」

 

「っ……、お、おいしい……です……」

 

 

 ――なん、って綺麗な目してんだよ……、吸い込まれそうだ……。

 

 

 満月を思わせる宝石のような瞳に間近で見つめられ、コナンの頬が赤く染まる。

 こんなに近距離で目を合わせることなんて滅多になくて、急に恥ずかしくなった。

 顔が熱い気がしたコナンは、花梨に気取られたくなくて俯く。

 

 

「いっぱい食べてね♡」

 

「っ……あ、ああ……」

 

「いっぱい食べて、大きくなるんだよ? 今の新ちゃん、小学一年生の平均身長に満たないんだからね?」

 

 

 花梨は通学中に小学一年生の子を見かけたことがあるが、どの子もコナンより背が高かった。

 恐らくコナンは平均より背が小さい。

 

 小さくて可愛いのはまあいいのだが、しっかり栄養は取らせてやりたいと思う……のは母性なのだろうか。

 産んだことのない息子を育てている気分だ。

 

 

「ん? ……、オメー……からかってんな……?」

 

「ふふふ♡ そんなことないよ?」

 

「かっわ……っ、コホンッ!」

 

 

 コナンがジト目を送ると、花梨は柔らかい笑みを浮かべる。

 思わず“カワイイ”と言いかけてコナンは咳払いをした。

 

 

「ん? あ、新ちゃん、ほっぺにご飯粒が付いてるよ? 取ったげるね。ん、取れた。はい、あーん」

 

「っ……! ……っ、くそっ……」

 

 

 何の気もないのだとわかっているが、花梨がコナンの頬に付いた米粒を取って、口に入れてくる。

 彼女の指先がコナン、自分の唇に触れると、以前したキスを急に思い出して胸が締め付けられると同時、頭が沸騰した。

 

 

 ――ああ~……っ、くそっ、なんだよ胸が痛い……! 花梨、無邪気に笑うんじゃねー!!

 

 

 いつもより距離が近くて、つい花梨の唇に目がいってしまう。

 ふっくらした唇は、ハンバーグを食べているからか油でツヤッツヤだ。

 

 蘭もそうだが、なんで女ってヤツは突飛な行動を取るんだ。わけがわからない。

 ……そう思いながら箸を物凄いスピードで操り、無言でひたすらパクパクと食を進めるコナンの行動も意味不明であった。

 

 

「うふふ♡ ごはんて誰かと一緒に食べるとおいしいね♪」

 

「っ、……だな……」

 

 

 しばらくコナンの様子を見ていた花梨だったが、そのうち食事を再開した。

 

 コナンは頬が熱いなと思いながら花梨の手料理を完食。

 食後には松田が持って来た限定スイーツと、快斗がくれた炭酸水で作ったしそ巻きあんずの蜜のソーダ割りを楽しんだ。

 

 

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