白月の君といつまでも   作:はすみく

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-- Spring, about 17 years old

▽前回のあらすじ
達也のジャンパーを借りた花梨は、ある「異変」に気づく。新一(コナン)を連れ出すため、彼女が取った行動は、達也にコーヒーを浴びせ、強引にシャツを脱がせることだった!困惑する一同を背に、花梨はコナンと共に部屋を後にする。彼女が嗅ぎ取った「におい」の正体とは――!?

第120話
原作とは異なる展開ってーことで!


120:相談

 

 

 

 

 

 園子が達也に花梨の過去を話す一方で、部屋を出た花梨とコナンは空き部屋にこっそり侵入する。

 防犯カメラから死角になる場所に移動すると、コナンが口火を切った。

 

 

「……で? なんであんな突拍子もねえことしたんだ? オメーの行動にはいつも驚かされるぜ。黒羽に教えたら何て言うんだろうな?」

 

「ちょっ!? いま快斗関係なくない!? あの人焼きもち焼きなんだから、余計なこと言わないでよ~……また睡眠不足になったら困る……」

 

「睡眠ぶそ……っ! バーロ。言うわけねーだろっ!!」

 

 

 花梨をちょっと困らせてやろうかと思い、ニヤニヤと彼氏の話を出したら、小声ながら聞きたくない言葉を聞いてしまい、コナンは藪蛇した。

 聞くんじゃなかったと後悔しても後の祭りで。

 

 ……コナンの顔が真っ赤に染まった。

 

 

「あ、聞こえた?」

 

「っ、聞こえてねーっ! ……と、冗談はさておき……、オメーがあんなことした理由、なんかあるんだろ?」

 

 

 いつもの気安い冗談はここまで。

 コナンは花梨の相談とやらが今だと理解している。

 

 さあ話してみろと促すと、花梨は口を開いた。

 

 

「うん……、新ちゃんはこのニオイ、なにかわかる?」

 

「ん? ニオイ……?」

 

 

 花梨も急に真剣な表情を見せ、着ているジャンパーの袖、ちょうど肘に当たる部分を触れないように捲ってコナンに差し出した。「あんまり鼻近づけ過ぎちゃダメだよ」と付け加えて……。

 コナンは言われるままにスンッと臭いを嗅いでみる。

 

 

「……っ!? これは……まさか……!?」

 

 

 ――アーモンドの臭い……これは青酸カリ……か?

 

 

 袖から香るその臭いにコナンの目が見開かれた。

 アーモンド臭は青酸カリが酸に反応したことで現れる特有の臭いであり、青酸カリの状態では臭いがないもの……。

 

 

「……たぶん、何らかの形で酸が少しだけ付着して反応したんだと思う。袖を通そうとして気づいたんだけど……達也さんの香水と違うニオイだから、変だと思って。私、このニオイ知ってるの。でも、なんでこんなとこから臭ってるのかわからなくて。だから新ちゃん、チカラを貸して欲しいの」

 

「ん…………、あ!」

 

「ん? なにか思い当たることあった?」

 

「……そうか……、あの時オメー、レモンに触って手に酸が付いてたから反応したんだな……、……っ!? 花梨っ!!」

 

 

 花梨の話にコナンは思い当たる節があり、自身の見解を語っていたが、途中でハッとして花梨の手を強く引く。

 

 

「ん……? あっ、新ちゃん!? 急にどうしたの??」

 

「中毒になる前にすぐ手ぇ洗いに行くぞ!!」

 

 

 青酸カリは猛毒。吸収率が非常に高く、触れただけでも皮膚から吸収し、中毒を引き起こす。

 ……すぐに水で洗い流さなければ命に関わる。

 コナンは部屋から出て化粧室に行こうとしたが、花梨は動かなかった。

 

 

「えっ、だ、大丈夫だよ!? コップに付いてた結露でもう洗い流されてるし、ほんのちょっとしか掠ってないから、青酸ガスも殆ど出てないと思うよ? もし出てたら今頃みんな倒れてるはずだし」

 

「そ、そうか……。頭痛は? めまいは? 本当に大丈夫なんだな?」

 

「ん、ないない。ぴんぴんしてるでしょ?」

 

 

 繋がれた手を引かれ、花梨はコナンの身長に合わせてしゃがむ。心配そうに様子をうかがってくるコナンに、片手ピースでにっこり笑ってみせた。

 

 

「……はあ。ま、そうだな……。ってーことは……つまり、あの人が狙われたってことか……」

 

 

 よかった……大丈夫そうだ。

 花梨の無事を確認したコナンから、安堵のため息が漏れる。

 

 

「……サンキューな、花梨。オメーのお陰で、誰も死なずに済んだ」

 

「ううん、たまたま気づいただけだから」

 

 

 青酸カリが付いていたのはジャンパーの左袖、内側肘辺り。

 花梨が達也のシャツを脱がせたのは、シャツにも青酸カリが付着しているのでは――と思って、そうしたということ……。

 念には念をと達也の左腕、肘付近は気づかれないように濡れたおしぼりで拭いておいたらしい。

 

 狙われたのは木村達也……。未遂で終わってよかった。

 目の前で殺人事件なんて起こさせて堪るか。

 

 ……コナンは眉を寄せた。

 

 

「うん、たぶんね。でも、もう凶器はないからとりあえずは大丈夫だと思う。他にも仕込まれてたらわかんないけど……」

 

「……こんなわけわかんねー場所に毒を仕込む奴だ。仕込むリスクもあるし、他のとこには仕込んでねーんじゃねえかな……、それに……」

 

「それに?」

 

「仕込んだ場所には何らかの意味があると思う。……そこでなければならなかった意味がな」

 

「肘じゃなきゃダメだった意味? それは犯人に尋ねてみなきゃわかんないね」

 

 

 椅子に広げられたジャンパーとシャツの左の袖部分を見下ろし、花梨はコナンの言う“意味”とやらが知りたい。

 

 未遂だったとはいえ、花梨が気づかなければ達也は、今頃死んでいたかもしれないのだ。

 人を殺めようとするなんてとても許せることじゃない。

 

 ……花梨は悲しそうに、でも芯の強い瞳で口を引き結ぶ。

 

 

「だな。それにはまず、犯人を探さねーと……。」

 

「うん、未遂でも犯罪は犯罪だもんね!」

 

 

 青酸カリなど、明らかな殺意がなければ用意しないものだ。

 今回は未遂で終わるが、れっきとした犯罪である。しっかり法の裁きを受けてもらわなければ。

 

 

「……花梨、オレはこれからこの事件の解決を図る。オレが犯人を見つけてやっからオメー、オレの言う通りに動けるか?」

 

「指示してもらえれば頑張るよ」

 

「よし、ならまずは警察を呼ぶか」

 

「ん? うん、わかった。でも新ちゃん、もう犯人の目星が付いてるの?」

 

 

 ――さっすが新ちゃん! きっともう目星が付いたのね……!

 

 

 顎に手を当てニッと不敵に笑うコナンに花梨は尊敬の眼差しを送る。

 ところが目星が付いたわけではないようで……。

 

 

「いや……まだはっきりとは……、けど犯人はこの店内にいると思う」

 

「へ? どうしてそう思うの? 外部の人かもしれないじゃない」

 

「……達也さんがどのタイミングで死ぬかわからないんだ。犯人は近くで見届けたいはず。しかも、自分は安全圏にいた状態でな。つまり犯人はあの部屋にいる蘭と園子を除いた誰かっていう可能性が高くなる」

 

「ほぉ~……! なるほど!」

 

 

 ――よくわかんないけど、うん! 新ちゃんが言うからそうなんだろうなあ……。

 

 

 推理に関してはポンコツな花梨にはよくわからないが、続くコナンの話を黙って傾聴する。

 

 彼の予想では、花梨に殺人を阻止された犯人は、今後凶器の回収をそれとなく行い、殺害を取りやめるか、達也を再び殺そうとする――というどちらかの行動に出るはず……。

 だがその前に警察が介入すれば、二つの行動を止めることができる……ということだが、警察の出るタイミングが重要らしい。

 あまり早く警察が介入すると、犯人の炙り出しができなくなる――とのこと。

 

 

「花梨から達也さんのジャンパーを奪おうとする人が、犯人ってわけだが……、そう簡単に引っかかってくれるかはわからない。犯人を炙り出すにはオレが言う通りに目暮警部を呼んで……――」

 

「うんうん……、ね、それなら――」

 

「それはいいかもしれねーな。じゃあ――で――」

 

 

 ……コナンは花梨に、これから犯人にトラップを仕掛ける方法を相談したのだった。

 

 

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