白月の君といつまでも   作:はすみく

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-- Spring, about 17 years old

▽前回のあらすじ
快斗が語った「偶然の再会」は、愛ゆえの嘘だった。花梨を心配するあまり米花町へ急行した快斗は、バイトに変装して現場に潜入。そこで「花梨が男のシャツを剥いだ」という衝撃の事実を知り、嫉妬と不安に震える。彼女を安心させるために仮面を被る快斗だが、その心根には深く、重い執着が渦巻いており――。

第128話
今回はコナンサイドのお話です。


128:オレ、格好いいんだな

 

 

 

 

「っ、黒羽……オメー……」

 

 

 突然現れた“花梨の彼氏”に、コナンは一瞬、目を見開いた。

 だが、次の瞬間には眉を寄せる。

 

 

 ――今は関係者以外、入れねーはずだろ?

 

 

 ロビーのガラス越しに見える外には、まだ警官が立っている。

 捜査が終わるまでは、店内は立ち入り禁止のはずだ。

 園子の迎えが来たときも、彼女が外に出ていっただけで、迎えは一歩も中に入ってこなかった。

 

 ……じゃあ、黒羽はどうやって?

 

 コナンが怪訝な顔をしていると、その間に花梨はあっという間に彼の腕に抱きかかえられ、連れ去られてしまった。

 

 

「あ……」

 

 

 横抱きにされた花梨が、去り際に申し訳なさそうな顔でこちらを見てきた。

 その視線を受けて、コナンは思わず苦笑し、軽く手を振って見送った。

 

 

(あいつ、やっぱ独占欲すごくね……?)

 

 

 自分のものだと言わんばかりの手際の良さ。

 花梨に対する異様な距離感の近さに、少しだけ背筋がひやりとする。

 

 ……厄介な相手に惚れられたもんだな。

 

 コナンは花梨を少しばかり不憫に思った。

 

 

「花梨ちゃ~ん、コナン君、お待たせ! お父さん、今着いて、外で待ってるって。出よっか」

 

「あ、うん」

 

「あれ? 花梨ちゃんは?」

 

 

 ふと、蘭が周囲を見渡す。

 花梨の姿がないことに気づき、きょろきょろとロビーを見回した。

 椅子には誰も座っておらず、静まり返った空間に、かすかな違和感が残る。

 

 

「花梨姉ちゃんなら、ついさっき、彼氏が迎えに来て帰ったよ」

 

「えっ!? 花梨ちゃんの彼氏!? え~~!? 会いたかったな~! イケメンだった?」

 

「……別に、……普通だと思う」

 

 

 “イケメンだった?”

 

 蘭に問われたコナンは、花梨の彼氏の顔を思い出しながら、無意識に頬を膨らませた。

 

 ……まあ、世間一般で見れば、確かに“イケメン”に分類される顔かもしれない。

 だが、花梨の彼氏となると話は別だ。褒めてやる義理なんて、どこにもない。

 

 それに――元の姿に戻れば、自分の方が絶対イケてるはずだし。

 

 

「え~、そうなんだ~。花梨ちゃんほどの美少女の彼氏でしょ? きっと格好いいんだと思ったんだけどな~」

 

 

 蘭は無邪気に笑いながら、まるで芸能人の噂でもしているかのように軽やかな声で言った。

 そんな蘭を見て、コナンはわずかに眉をひそめる。

 

 

「蘭姉ちゃん、夢見すぎ」

 

 

 呆れたように言いつつも、コナンの胸の内には小さなモヤモヤが渦を巻いていた。

 

 

「だって、新一がそばにいて惚れなかった花梨ちゃんだよ? 彼氏さん、どんなタイプなんだろ……」

 

 

 蘭は無意識のまま続ける。

 その言葉が、コナン――いや、“新一”としての自分の胸に、ちくりと刺さった。

 

 が――。

 

 

「ら、蘭姉ちゃん、それどういう意味?」

 

 

 コナンは思わず問い返す。

 しかし蘭は悪びれる様子もなく、ケロリとした顔で答えた。

 

 

「ん? 新一って格好いいじゃない! イケメンだよね!」

 

 

 その言葉に、コナンの心臓が一瞬だけ跳ね上がる。

 

 

「へっ? ……そ、そうかなあ?」

 

 

 とぼけるように返しながらも、コナンは頬が熱くなるのを感じた。

 耳のあたりまでじんわりと赤くなっているのが、自分でもわかる。

 

 

「あっ、新一には内緒よ~? アイツ、ちょっと褒めるとす~ぐ調子乗るんだから」

 

 

 蘭はいたずらっぽく笑い、唇に指を当ててウインクする。

 コナンは咄嗟に頷くが、胸の奥がくすぐったくて、どこか落ち着かない。

 

 

「う、うん、わかった……」

 

 

 声がほんの少しだけ裏返ってしまったのを、蘭は見逃さなかった。

 

 

「なんでコナン君が赤くなってるのよっ」

 

 

 ツッコミ混じりにのぞきこまれ、コナンは慌てて視線をそらす。

 

 

「べ、別に……」

 

 

 小さくむくれたように口をとがらせるが、顔の火照りは隠せない。

 蘭の何気ない言葉が、こんなにも胸を熱くさせるなんて、自分でも思っていなかった。

 

 

 ――オレ、格好いいんだな……。

 

 

 思わずこぼれた心の声。

 誰にも聞こえないように、コナンは照れくさそうに頬を掻いた。

 それでも口元には、どうしても隠しきれない小さな笑みが浮かんでいた。

 

 

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