白月の君といつまでも   作:はすみく

132 / 190
-- Spring, about 17 years old

▽前回のあらすじ
朝を迎え、昨夜の不機嫌が嘘のように甘える快斗。花梨は彼の執着に困惑しつつも、学校へ行こうと健気に促す。独占欲ゆえの「印」を刻まれ、甘く狂気的な愛に翻弄されながらも、花梨は隣にいる幸せを噛みしめる。

第131話
金・土は何もなく平和に過ごせたようですw
蘭ちゃんからメッセージが来たヨ!


131:蘭からのメッセージ

 

 

 

 

 “ピコン!”

 

 

 ……土曜の夜、風呂から上がった花梨のスマホに、メッセージアプリの通知が届いた。

 相手は蘭――。

 

 どうしたのだろうと思いながら、メッセージを開く。すると……。

 

 

「え……、あ、私に、会いたい……?」

 

 

 花梨はぱちぱちと瞬きをした。

 蘭からのメッセージには、こうあった。

 

 

 “水曜に会った広田雅美さんって覚えてる? 彼女が花梨ちゃんに会いたいって言ってるんだけど、明日うちに来れないかな? どうしても会いたいんだって”

 

 

 “広田雅美”――。

 たまたまぶつかった拍子に、彼女が近い未来で遭遇する“死”が視えてしまった。

 

 花梨には、それを彼女に伝えることも、未来を変えてあげることも――何もできない。

 その人の未来は、その人のもの。

 その人自身が気づき、どうにかするしかない。

 

 だからせめてもの思いで、花梨は雅美に、祖母から教わった“幸運のおまじない”をかけてあげた。

 

 ……祖母は花梨に精神修行と称して、四時間の正座をさせたあと、こう言った。

 

 

『いいかい、花梨。よくお聞き。お前は気に入った相手に、それだけやってやりゃいいんだ。あとは相手が勝手にどうにかするもんだ』

 

 

 花梨は足が痛いわ、言っていることはよく分からないわで、祖母の言葉は半分しか頭に入ってこず……。

 

 けれど、正座させられたのは花梨だけではなく、親戚の“彼女”もだった。

 “彼女”は「お前のお役目をしっかり果たしなさい」と言われ、嬉しそうにしていたが、やはり足の痛みに悶絶していた。

 

 

(お婆さまって、みんなに平等に厳しい人だったなあ……)

 

 

 ……誰に対しても厳格な祖母を思い出し、花梨は微苦笑する。

 

 

「明日かあ……。会うのは構わないけど……快斗、米花町に行くの怒るんだよな~」

 

 

 最近、毎週日曜になると米花町に行っている気がする……。

 花梨は、風呂掃除を買って出てくれた快斗がバスルームから出てくるのを待って、相談することにした。

 

 

「は? ダメに決まってんだろ? また命狙われるだろ?」

 

 

 下着姿でバスルームから出てきた快斗が、頭をタオルでガシガシ拭きながら眉をひそめる。

 

 ……土日のどちらかは、“彼女”から送り込まれた刺客(しかく)に命を狙われる――。

 米花町は犯罪率が高いのだから、他の事件に巻き込まれる可能性も大。

 

 快斗の答えが“ノー”なのは当然だった。

 

 

「う、んー……。でも、どうしても会いたいって言ってるらしくって」

 

「は? なんでだよ。花梨は探偵でもなんでもねーだろ?」

 

 

 花梨の話を聞きながら、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出した快斗は、それを一口飲んで、濡れた口元をぬぐう。

 

 

「そうなんだけど、彼女ね……」

 

 

 ……どう言えば快斗は納得してくれるのだろうか。

 

 “彼女、もう少ししたら死んじゃうから、会ってあげたくて”――なんて、本当のことはとても言えない。

 なにか、うまい言い訳はないだろうか――。

 

 花梨は、体裁のいい理由を探した。

 

 

「彼女がなに? それ、花梨の命とどっちが大事?」

 

「っ」

 

「オレは、花梨一択。とにかく米花町はやばい。花梨の脅威がなくなるまでは、近づかない方がいい」

 

「でも……」

 

 

 快斗はペットボトルをキッチンカウンターに置くと、花梨に近づき、ぎゅっと抱きしめてきた。

 心配してくれているのは痛いほどわかっているけれど――。

 

 花梨はちらっと上目遣いで、快斗を見上げた。

 

 

「……うっ。そういう可愛い顔してもダメなもんはダメっ!」

 

「ダメ……なの?」

 

 

 目が合った瞬間、快斗の頬がわずかに赤く染まる。

 花梨は今度、快斗の腕にそっと触れ、じっと彼を見つめた。

 

 ……快斗の顔がみるみる真っ赤になっていく。

 

 

「……っあ、もー!! 花梨ちゃんはあざといなぁ~っ! ダメったらだぁめっ! めっ!」

 

 

 真っ赤な顔のまま、快斗は花梨の鼻先を人差し指でツンと突いた。

 

 

「ン。ホントにダメ? 米花町じゃなかったらどうかな~? 大丈夫そうじゃない?」

 

「う……、っ、だからだめだって……」

 

「ね、快斗くん? 本当にダメなの?」

 

 

 じぃ~~っと、花梨に見つめられている快斗から“はあー……”と諦めのため息が漏れ聞こえた。

 

 

 ――よし、もうちょっとかな……?

 

 

 花梨は、快斗が自分に甘いことを知っている。

 だから、あとひと押しすれば――。

 

 

「っ、……さ、さっき泊まりはダメだって言ってたけど……オレ、今日泊まってもいい? そしたら明日付き合ってやるよ」

 

 

 ついに快斗が折れ、花梨を胸の中へと抱きしめる。

 頭上から聞こえたその返事は、交換条件を満たせばOKということ――。

 

 ……花梨の勝利だ。

 

 

「快斗っ♡ うんうん! 蘭ちゃんに、会う場所は米花町じゃないところにしてもらうねっ♡ ありがとう、快斗! だいすきっ♡」

 

 

 “チュッ!”

 

 快斗の腕を引き、花梨は背伸びして頬にキスをした。

 

 

「くっ! ……くっそかわええ……♡ なんだよそのおねだり! ああ、も~、なんでも言うこと聞いちゃる!! ほら今すぐベッド行こ、ベッド!!」

 

 

 ――オレって、花梨に甘いよなぁ……。

 

 

 可愛い笑顔を浮かべる花梨の背中に腕を回し、快斗はそのまま彼女をひょいっと抱き上げる。

 「わっ!?」と、毎度のことながら驚く花梨の声に目を細めつつ、快斗は足を寝室へと向けた。

 

 

「ちょ、ちょっと待って! 先に、蘭ちゃんにメッセージだけ送らせて?」

 

「わかったっ♡ 待ってる♡」

 

 

 ベッドにたどり着いた快斗は、さっそく花梨に覆いかぶさろうとしたが、あえなく制止される。

 

 ……まあ、報酬はあとでもらえる。ここは大人しく待つか。

 

 快斗は、犬のように尻尾を振る気持ちで、蘭にメッセージを送る花梨を待った。

 メッセージの送信が終わると、犬だった快斗は、狼へと変貌――。

 

 二人は甘く、幸せな時を過ごしたのだった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。