白月の君といつまでも   作:はすみく

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-- Spring, about 17 years old

▽前回のあらすじ
快斗の強い独占欲と白馬の警戒に挟まれる花梨。キッド予告のあった列車に乗る快斗に、白馬は牽制をかける。花梨は、その特急で二年前会った女王と再会する可能性に気づき戸惑う。

第160話
準備が着々と…。


160:いつかくるさよならの前に

 

 

 

 

 校門を出て帰路につき、いつものように快斗が花梨の鞄を持ち、手を繋いで歩く。

 

 

「ったく青子のやつ……余計なこと言いやがって……」

 

 

 ……話題は青子のこと。

 快斗は口を尖らせ、頬を膨らませた。

 

 

「ん? 青子ちゃんがどうかした?」

 

「白馬のヤローに今夜のこと話しやがったんだってよ。青子から情報仕入れてたんだな……」

 

 

 白馬の情報源は、警察の内部情報をこっそり……というわけではなかった。

 まさか青子から漏れていたとは――。

 

 快斗が、キッドだと思っていない青子からすれば、話してしまうのも無理はない。

 それくらい楽しみにしていたようだし……と、快斗はため息をつく。

 

 

「そうなんだ? でも、白馬くんは乗らないんでしょ?」

 

「まー、そうなんだけど。白馬は、オレのことキッドだって疑ってっからさ、あんまそういう情報、教えたくねえなって」

 

「ふふふっ♡ 白馬くんって鋭いよね。探偵って、みんなああなのかな」

 

 

 花梨は、いつか白馬も新一も、快斗の正体を暴いてしまう気がしてならない。

 

 真実を追い求める探偵は、絶対に諦めないから――。

 そんな存在が近くにいて、快斗は大丈夫なんだろうか……。

 

 微笑みながら心配になって、快斗を見上げる。

 

 

「ん? 探偵みんなって……どういうこと?」

 

「あ、うん、幼なじみの彼も鋭いから」

 

「フーン。けど、花梨は探偵よりも怪盗の方が好きだもんな?」

 

 

 ふいに快斗が前のめりに覗き込んできた。

 

 

「え?」

 

「ん?」

 

 

 花梨が「今、そんな話してたっけ……?」と目を瞬かせると、快斗の首が傾き、大きく見開く。

 

 どうして彼は、新一の話題を出すと張り合おうとするのか――。

 焼きもちだと、なんとなくわかるのだが、今考えていたのは快斗のことだというのに。

 

 ……快斗はおかしな人だ。

 

 

「……ふふふ♡」

 

 

 花梨は口元に手を添えてくすくす笑った。

 

 

「ちょ、そこは『うん♡』だろ!? なあ花梨? な?」

 

 

 笑って誤魔化す花梨に、快斗は必死だ。

 

 

「ふふっ……♡」

 

 

 ――快斗の必死な顔、可愛い……そんなところもすごく好き。

 

 

 快斗はいつも一生懸命で、優しくて頼もしくて。

 でも、彼は大事な目的をもってキッドとして活動している。

 

 ……だから、自分が足枷になってはいけない。

 

 微笑みながら花梨は、繋いだ手を放して走り出す。

 

 

「ちょっと、花梨ちゃん!? そりゃねえよ~~!! こらっ、花梨待てっ!!」

 

「っ、きゃ~~♡♡」

 

 

 逃げる花梨を追いかけるように、快斗も駆け出す。

 すぐに追いつき、快斗は花梨を抱きしめた。

 

 

「ったく、オメーはオレの宝石なんだから、逃げるのは許さんっ!」

 

「あはははっ! なにそれ~……! いたっ!」

 

「――も~、今夜ぜったい食っちまうからな……!!(大阪着いたら覚えとけよ……♡)」

 

 

 がぶっと頬に噛みつかれた花梨は、痛みに身を捩る。

 ……あむあむと甘噛みされた。

 

 道の真ん中でこんな風にじゃれ合うなんて、バカップルもいいところだ。

 けれど花梨は、そんなじゃれ合いがすごく楽しかった。

 

 

「いたた……そういえば快斗、授業中抜け出してたけど、どこ行ってたの?」

 

「ん? あー、ちょっと……な?」

 

「ふぅん?」

 

「へへっ、今夜のお楽しみ♪」

 

 

 花梨の質問に、快斗はいたずらっ子のように笑う。

 よくわからないが、楽しそうなので花梨もにこにこと笑っておいた。

 

 二人はそのまま花梨のマンションへ――。

 

 

「――よし、荷物持ったな?」

 

 

 快斗が花梨の家の玄関で言った。

 花梨が私服に着替え、荷物を持ったら快斗の家まで行き、そのあと青子とともに駅へ行く予定だ。

 

 一泊旅行ということで、花梨は前日、小さめのスーツケースに着替えを詰めてある。

 

 花梨の今日の装いは、キッドに初めて逢った時と初デートの時に着た想い出の白いワンピースに、夜は冷えるのでベージュのトレンチコート、今は腕に掛けている。

 

 

(くぅ~~っ!! 花梨はやっぱ白が似合うなっ!! マジ天使!! かんわええっ♡ 好きだっ♡♡)

 

 

 その姿を見た快斗はしばし見惚れ、頬はポッと赤く染まった。

 

 

「うん。あ、戸締りを確認してくるね」

 

「わかった、待ってる♡」

 

 

 快斗を玄関に残し、花梨は踵を返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お世話になりました」

 

 

 ――ここにも長くいられなかったなぁ……。

 

 

 花梨はリビングで一人、丁寧に頭を下げる。

 

 鍵は朝、きちんと閉めてあり、戸締りの確認など本当は必要ない。

 けれど、最後に部屋にも挨拶をしたい花梨は、一年半住んだ部屋に戻り頭を下げた。

 

 幼い頃から、一つのところに長居できない根無し草のような生活は、最期までそうみたいだ。

 そう思うと、なぜか笑えてしまう。

 

 

「……」

 

 

 ――この部屋で、快斗や新ちゃん、お兄ちゃんたち、権堂さんと過ごせて楽しかった……ありがとう……。

 

 

 部屋を見渡せば、この部屋であった出来事が、次々と思い出されて目の奥が痛む。

 

 ……快斗が玄関で待っているから泣くわけにはいかない。

 後処理のお願いは手紙に書き置いておいたし、そこは申し訳ないと思うが、許してもらおう。

 

 花梨はすんと鼻をすすって玄関に向かった。

 

 

「戸締り、OK?」

 

「うん、ばっちり!」

 

 

 玄関に行くと快斗が微笑みかけてくれる。

 優しい笑顔に少し泣きそうになった花梨だが、笑顔とサムズアップで答えた。

 

 

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