白月の君といつまでも   作:はすみく

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-- Spring, about 17 years old

▽前回のあらすじ
キッドに助けられた花梨は、公園でタクシーを呼んでもらい急ぎ帰宅する。その間、キッドは花梨の可愛さに心を奪われ、去り際の彼女のいたずらっぽい笑顔と「次に会ったらバラを」という言葉に胸を高鳴らせる。正体を隠す花梨に、キッドは驚きとときめきを感じるのだった。

第36話
快斗って気障だからきっと花言葉知ってる。


036:十二本の白いバラ

 

 

 

 

 

 快斗が白い髪の少女と再会した次の日の朝、江古田高校2-Bの教室では……。

 

 

「おはよう、青子ちゃん」

 

「おはよう、花梨ちゃーん♪ 今日は快斗昼過ぎに来るみたいよ。さっき黒瀬先生に会って聞いた」

 

 

 花梨が教室に入ると青子は既に席に着いており、手を振って花梨を出迎えた。

 

 

「そうなんだ」

 

「最近サボりが多くなったよねー」

 

「出席日数大丈夫なのかな……」

 

「あいつのことだから大丈夫でしょ。何だかんだ計算して休んでると思う」

 

「そっか。黒羽くんはしっかりしてるもんね」

 

 

 快斗が遅刻するのは昨夜帰りが遅くなって疲れたからかもしれない。

 花梨も昨日は家に帰って新一のお説教に一時間付き合わされ少々寝不足だ。

 ……新一が自宅まで来なかっただけマシである。来ていたら恐らく二、三時間コースだっただろう。

 

 

「フフフ、花梨ちゃん快斗のこと心配してるの?」

 

「へ?」

 

「そーかそーか! 心配だよねえ?」

 

「青子ちゃん……?」

 

 

 ニヤニヤと意地悪そうに目を細められたが花梨にはよくわからなかった。

 

 

「……(黒羽くんか……)」

 

 

 花梨の席は窓際なのだが、何となく外を眺め快斗のことを思い出す。

 

 ……黒羽くんにはヒントをあげた。

 もしも気付いてくれたなら、今日バラをくれるはず……。

 

 消しゴムを目の前でバラに変えたあのシーンをもう一度。見たい花梨は快斗が来るのを楽しみに午前の授業を真面目に受けた。

 そうして午後、その時はやってくる。

 

 

「おー、来た来た。おそよー、快斗!」

 

 

 昼休みに花梨がいつものように青子たちと弁当を食べていると、遅刻してきた快斗が両手を後ろに回したまま、若干前のめりの妙な恰好で教室に入ってきた。

 

 ……それは恵子がトイレに行っている間の出来事だった。

 青子がやって来た快斗に声を掛け、花梨も……と。

 

 

「あ、おはよう、黒羽く――」

 

「葵花梨さん!」

 

 

 快斗は花梨が座る席の前で立ち止まり、大きな声で名を呼んだと思ったら頭を深々と下げる。

 

 

「っ、は、はい……?」

 

「好きです。オレと付き合ってくださいっ!」

 

 

 頭を下げたままの快斗。今度はそのまま右手を差し出した。

 

 

「ふぁっ!?(好き!?)」

 

「「「お。おおおお~っ!!」」」

 

 

 花梨が目を見開き驚く中、クラスメイトたちから歓声が湧き上がる。

 

 

「ちょ、快斗! いきなり……!」

 

 

 いつか言うだろうなと思っていた青子も、あまりにも性急過ぎて動揺を隠せない。

 教室には「快斗が告った!」「すげー!」などのどよめきが生まれ、すぐさま花梨に視線が注がれた。

 クラス中が察したようにしんと静まり返り、両隣の教室から喧噪がよく響く。

 皆花梨の返事を固唾を呑んで見守った。

 

 

「……ぇと……」

 

「手を取ってくれたら、バラをあげる」

 

「で、でも……それって……」

 

「じゃあ、友達から(・・)でいいから両手で手を握ってほしい!」

 

「っ、友達()いいなら……」

 

 

 どちらにしても手を取るとOKの返事となるのだが、それに気付かない花梨は手を握ろうとおずおずと自らの両手を差し出した。

 

 するとポンッ!

 

 

「あっ! わぁ……!」

 

 

 小さな破裂音が鳴った次の瞬間、花梨の両手には白いバラの花束が……。

 “ヒュ~♪”と誰かの口笛が聞こえた。

 

 

「花束を貰えるなんて……」

 

「ひい、ふう、みぃ……。快斗これわざと?」

 

「……、へへっ!」

 

 

 驚き過ぎて小さな声しか出せずに固まる花梨の横で、青子がバラの数を数え始める。

 

 バラの数は十二本。

 白いバラの花言葉は“純粋”“純潔”“深い尊敬”“相思相愛”“私はあなたにふさわしい”等あるが、その本数によって意味が異なる。

 

 一本は“一目惚れ”。

 二本は“互いの愛”。

 三本は“愛している”。

 ……と様々続くが、十二本は“私と付き合ってください”で、バラ一本一本に“感謝、誠実、幸福、信頼、希望、愛情、情熱、真実、尊敬、栄光、努力、永遠”という意味が込められプロポーズをする際にも用いられる本数である。

 快斗が意図して贈ったかは不明だが、照れ臭そうに頭の後ろに両手を回してはにかんでいるのを見ると、青子はわかっていて贈ったような気がした。

 

 

「黒羽くん、私……」

 

「葵ちゃんこっち来て」

 

「えっ……あっ……」

 

 

 急に快斗に手首を取られ、花梨は教室から連れ出される。

 

 

「ちょっと快斗!? あんたこれから午後の授ぎょ――」

 

 

 呼び止める青子の声を聞き終える前に、二人は消えてしまった。

 花梨と快斗が教室からいなくなり、少しして恵子が戻って来る。

 

 

「はー……女子トイレ混んでた……。って、あれ? なんか教室静かじゃない?」

 

「……っ恵子! にゅーすにゅーす!」

 

「ん? どうしたのかな~?」

 

 

 戻って来た恵子に駆け寄った青子は、今し方目撃した告白劇の一部始終を嬉々として語った。

 

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