白月の君といつまでも   作:はすみく

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-- Spring, about 17 years old

▽前回のあらすじ
放課後、快斗は花梨の家へ行き、初めての家デートで妄想を爆発させる。しかし、花梨は元警察官の父の繋がりで家に来る警察官や探偵の存在を告白。快斗はキッドの正体がばれるリスクを知りつつも、「別れる気はない」と彼女への狂気じみた想いを固める。

第41話
彼女の家にお邪魔したらこうなるよね。
いちゃらぶ回。


041:Honey flavor

 

「黒羽くん……」

 

「快斗」

 

「ん?」

 

「快斗って呼んでよ。黒羽くんじゃなくてさ、ね? 花梨ちゃん」

 

「っ、快斗……くん……」

 

 

 そういえば花梨は“黒羽くん”と苗字で呼んでいたなと気付いた快斗は、名前で呼んで欲しいと頼む。

 苗字よりも名前で呼んでもらえた方が、より親しみを感じるじゃないか。

 

 すると花梨の顔が真っ赤に染まって、照れ臭そうにモジモジしながら呼んでくれた。

 だが敬称付きだ……。

 

 

「……っ、呼び捨てすんの恥ずかしいの? 呼び捨てもできないなんて、可愛すぎ……♡」

 

 

 ――あああぁああっ! なに? そのキュートなお顔っ、ちゅーしてぇ……!

 

 

 名前の呼び方ごときで恥じらう花梨が可愛すぎて、快斗の顔が愉悦に歪む。

 

 ……全オレ! ゆっくり関係を構築していきたいから今は我慢だ。

 快斗は自分に対し必死に言い聞かせた。

 

 

「快斗くん……」

 

「花梨ちゃん、オレ前にも言ったけど、花梨ちゃんのこと好きだけじゃなくて、愛してるんだよ」

 

「あ、愛……? 恋じゃなくて……?」

 

「へへっ。そっ! 愛だぜ、愛! 花梨ちゃんのことはまるっとオレが守ってやるって決めてんの! だから何でもこいってな!」

 

 

 ――重いかもしれねぇけど、ここまで惚れさせたんだから、責任取ってオレのこと好きになってもらわなきゃ困るんだよ。

 

 

 まだ付き合い始めて三日目だ。

 だが快斗の想いはとにかく重い。

 

 快斗自身も重いかもと思っているが、花梨に対する想いはどうしても止められなかった。

 

 

「快斗くん……」

 

 

 花梨が頬を赤く染めたまま上目遣いで見つめてくる。

 あざとい姿だが、好きな女にそれをやられると愛おしさが込み上げて仕方ない。

 

 

「花梨ちゃん……っ、キ、キス、してもいい?」

 

「ぁ……ん……」

 

 

 花梨のことが大切だから、本当はもっとゆっくり関係を構築したかった。

 だが、快斗は今、キスしたくて堪らない。

 

 花梨が目を閉じてくれたため、快斗はそっと唇を重ねた。

 大切なものに触れるみたいに、力を入れないよう細心の注意を払って。

 

 快斗の鼓動がいつになく早鐘を打っている。

 ……一度触れてしまったら――大切にしたいのに、欲しい気持ちが勝ちそうで怖い。

 

 

「……甘い」

 

 

 ――うわ、オレ、ファーストキスだわ。ファーストキスがハチミツ味とかやばくない?

 

 

 なんて甘いひと時なのだろう……。

 快斗はそっと触れただけのキスの余韻に目を閉じて浸る。

 

 

「あ、ハチミツティーの味!」

 

「そっ、そーだなっ!」

 

 

 意外にもあっさりした花梨の言葉に快斗がまぶたを開くと、花梨は嬉しそうに微笑んでいた。

 

 

「……快斗くん、すき……だよ?」

 

「っ、オレも♡ オレの方がだーいすきっ! 花梨ちゃん♡」

 

「わっ!? 快斗くんっ!?」

 

 

 小首を傾げ、好きと言われてしまえば快斗の胸は鷲掴みにされ、堪らず花梨に抱きつく。

 その拍子にソファに彼女を押し倒してしまった。

 

 

「ごめ……っ……」

 

「ぁ……っ」

 

 

 互いの距離があまりに近く、快斗は倒れた彼女を見下ろす。

 このままもう少し、大人のキスをしても大丈夫だろうか……。

 

 さらに快斗がスッと顔を近付けると、花梨は目を閉じた。

 

 

「っ、抵抗しないの? もっとチューしちゃうよ?」

 

「快斗くんとならキス、もう少し、してみたい」

 

「……オレも」

 

 

 花梨が小さな唇を少しばかり開けてゆっくり言葉を紡ぐ。

 “キスしたい”なんて言われたら、断る理由は何もない。

 

 快斗は彼女の少し開いた唇に魅せられるように、顔を近付け再び唇を塞いだ。

 

 

「ンン……はっ……」

 

 

 ちゅっ、ちゅっ、ちゅっと水音を立て互いの唇を時に甘噛みしたり、口内に舌を差し入れてみたり。

 花梨の舌に自分の舌を絡めてみたり、歯列をなぞってくすぐってみたり。

 

 

「んっ、はあっ……かぃ……くん」

 

「かりんちゃ……はあ……すき……」

 

「ンン……わらしも……はあ、はあ」

 

 

 舌が絡み合う度、背中にぞくぞくとした感覚が襲ってくる。

 次第に花梨の赤い顔がとろんとしてきて、瞳から涙が溢れた。

 

 

「っ、大丈夫か?」

 

「ん、平気……、気持ちよくて。こんなキス、初めて。はあはあ……」

 

「っ、オレも……」

 

 

 静かな部屋に小さな水音が響く中、熱に浮かされたような顔の花梨は少し息苦しそうだが、最高に艶っぽい。

 快斗もキスに熱中するあまり、意識がぼーっとした。

 きっとお互い同じ表情をしているんじゃないかと快斗は思う。

 

 

「……はあ……」

 

 

 ――このままずっとキスしていたいけど……。

 

 

 今日はこれくらいでやめた方がいいかもしれない。

 花梨の呼吸がなんだか苦しそうな気がする。

 嫌そうではないが泣いちゃってるし……と、快斗は最後に下唇を吸ってちゅっぽんと離し、一息。親指で彼女の瞳から溢れた涙をそっと拭ってやった。

 

 

「……はあ、はあ……キス、息するの難しい……ね。はあ、はあ……いま私、鼻づまりしてて」

 

「鼻づま……? ……ぷっ! 花梨ちゃん、キミ面白すぎ!」

 

 

 ――道理で苦しそうだなと思った……!

 

 

 強く吸ったせいか、少し赤くなった下唇の花梨が鼻づまりだと今頃伝えてくる。

 せっかくの甘い雰囲気が一気に和んで、快斗は噴き出してしまった。

 

 

「へ? あ……ふふふっ、そう?」

 

 

 花梨の手を引いて上体を起こしてやると、まだ少しぼぅっとしたまま彼女が笑う。

 押し倒されたからか、髪に癖がついて少し乱れている様も可愛くて、快斗の手は知らずのうちに、花梨の髪を整えるように撫でていた。

 

 

「……今日はもう帰るよ。これ以上一緒にいると不味い気がする。けど、次はもう少し先に進めてもいい?」

 

 

 ――これ以上一緒にいると、理性が持たない。

 

 

 意外にも花梨が無防備すぎて、このままだと本能が求めるままに振舞ってしまいそうだ。

 途中で止めてと泣かれても、止められない気がする。

 

 まだ付き合いが浅いうちにそんな関係になっては、あまりに軽率じゃなかろうか。

 快斗自身もそうだが、彼女の反応からして恐らく初めてだろうし、急に関係を迫られたら困るだろう。

 

 だが、彼女にいっぱい触れたい衝動はあるわけで……。

 それに今日は準備もできていないし――、と。

 次回の楽しみにしておくのがいいのかもしれない。

 

 ……快斗は花梨をじっと見つめて尋ねる。

 

 

「え? あ、先にって……えと?」

 

「……ん~、わかんないか。ならもう少しゆっくりでもオレはいーから」

 

 

 花梨は何のことかわからない様子で首を傾げた。

 

 わからないならわからないで、少しずつ進めたらいいか……。

 時間はたくさんあるのだから。

 

 彼女の髪を撫で、快斗の目は細くなる。

 ところが、次に花梨の口から出た言葉に、快斗は驚くことに――。

 

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